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plumeria

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日本に帰国する当日になった。
ここから持って帰るものなんてほとんどないから服を着替える程度ですることもなかった。窓の外からニューヨークの街を遠くに
見ながら、つくしは小さな声で呟くように言った。

「高城さんはもうヨーロッパに着いたかしら・・・大学は退学するのかな。ちょっと寂しいな・・・」

「どうして寂しいの?いいじゃん・・・!この春までいなかったんだから今までと同じでしょ?いきなり他に兄さんが出来たからって
そこまで寂しがることもないんじゃないの?」

「・・・変な類!別に好きだとかって感情じゃないんだから!もう・・・」

それでも他の男の話なんて聞きたくないんだって!つくしの隣に並んで俺もこの町の忙しない朝の風景を眺めていた。
その時、いきなり俺たちの後ろのドアがバンッ!と勢いよく開けられた!びっくりして2人で振り向いた視線の先には、司が仁王立ちしてる・・・。

「この俺に一言の挨拶の無しに帰国するとは!なんて恩知らずな兄妹何だよッ!てめぇらはっ!!」


ノックもせずに開けた上に、大声で怒鳴って、ずかずかと入ってくる・・・そして、つくしの前まで行くと、立っている姿のつくしをジッと見つめた。
今日はどうも仕事じゃないみたい。スーツじゃないし、秘書もSPもついてきてないみたいだ。

「司・・・もう来ないかと思ってたのに。わざと退院する時を狙ってきたの?もうすぐ迎えが来るんだけど?」

「あぁ?俺が空港まで送ってやるからそんなもの追い返せ!ほら・・・荷物はあんのかよ」

「・・・は?荷物?そんなものないわ。だってみんな高城のおば様が日本に送って下さるから・・・それよりも、ありがとう・・・。
会えて良かったわ。ずっと事故現場で待っててくれたんでしょう?加代さんから聞いたの・・・私を運んでくれたんですってね」

つくしがにっこり笑って礼を言うと柄にもなく真っ赤になって、つくしから視線を外した。
そこで恥ずかしがるくらいなら来なきゃいいのに・・・ICUでも、この部屋でも、つくしが寝ていたら大胆なことするのにね!
多分俺がいるからだろう・・・さっきからやたらと俺の方を見ているから。2人になりたいって思ってても無駄だけど?

言葉には出さないけど俺の眼を見て「チッ!」と舌打ちをした。クスッて笑うとつくしまでが真っ赤な顔をした。

「あれは・・・うちの西田が被害に遭ってたから行っただけだ。そうしたら花沢の使用人が慌ててるのが見えたから・・・聞いたら
お前がドジしたって言うからよ!出てきたときに知らないヤツばっかりだと可哀相だから待っててやったんだよっ!」

「・・・はぁ?そうなの?・・・話が随分違うんだけど!」

「何で俺が別れた婚約者の事をいつまでも守らなきゃなんないんだよ!あの時も言っただろ?自分のために・・・ってよ!」

「あの時っていつなの?司・・・」
「・・・なんでもねぇよ!」

司の言うことを聞いて空港までは道明寺のリムジンで送ってもらうことにした。
病院を出るときには覚悟していたが、やはりすごい数の報道陣が入り口を塞ぐようにして取り囲んでいる。
その中を司は真っ直ぐに顔を上げたまま歩いて行った。俺は、まだ歩きにくいつくしの背中を支えながらその後をゆっくりとついていく。

「道明寺さん!助けられたのは以前の婚約者の方ですよね?その後もお付き合いが続いてるんでしょうか?」
「花沢さんはフランスからこちらに向かわれたそうですが、妹さんと道明寺さんについてはどうお考えですか?」
「つくしさん、もう大丈夫ですか?元婚約者の方に助けられたことをどうお考えですか?」

どこかから飛び交うこんな質問に司も俺も答えることはない。つくしも少しは慣れたのか、いちいち驚くこともなかった。
入り口には担当のドクターとナースが並んでつくしに声をかける。大きな花束を受け取って無事に退院できたことを喜んでいた。
その間もフラッシュが止むことはなく、鬱陶しい・・・司はそんなヤツらのことは全く気にせずにドクターと握手を交わすつくしに向かって
笑顔を見せていた。

「ちょっと・・・やめてくれない?気持ち悪いから。それよりもアイツらをどうにかしてくれたらいいのに・・・」
「馬鹿言え!こうしていたら俺との復活劇がホントになるかもしれねぇだろ?・・・撮らせてんだよ!」

「うそ・・・!性格悪・・・っ!」

ふんっ!って鼻で笑って、今度は司がつくしの背中を押してリムジンにまで誘導した。もちろんフラッシュは最高潮だ!
この光景は絶対に日本でも速報だろう・・・総二郎達の笑った顔が見えた気がする。


**


空港にはVIP専用の入り口から入り、報道陣には一切会うこともなく、特別室で搭乗手続きを待っていた。
つくしは加代と並んで特別室の窓から見える空港の景色を眺めていた。今はその表情には不安はない・・・嬉しそうに加代と話していた。

司は気が付いているんだろうか。今でも凄く切なそうにつくしを見ている自分の顔が、寂しくて堪らないって訴えてることを・・・。
以前の司ならこんな表情を他人に見せたりしなかったのに・・・つくしはこの男をこんなにも変えてしまったんだね。
それは俺も同じかもしれない・・・。こんなにも自分より大事なのものがあるだなんて・・・全てを捨てても失いたくないって思った。
こんなにも激しい感情が自分の中にはあるんだって知ることが出来たから。


「日本に戻ったら高城美智子がすべてを話してくれるらしい。総二郎とあきらにも来てもらうんだけど・・・来る?」

「なんで俺がお前の喜ぶ顔を見に行かなきゃいけねぇんだよ!・・・そんなに暇じゃねぇ!」

「俺が喜ぶかどうかなんて決まってないじゃん・・・つくしの父親次第だよ」

「・・・そこで揉めたら俺にはチャンスだ・・・!それが嫌ならお前が何とかするんだな!」

「・・・ホントに諦めが悪いよね」

ふんっ!て笑いながら時間が来るのを待ってる間中、少し離れたところで笑ってるつくしを2人で見ていた。
空港関係者が呼びに来たのはそのすぐ後。司はここで帰ると言ってゲートまでは来なかった。


「じゃあ・・・またな!今度こっちに来るときには連絡しろ。俺が案内してやるよ」

「うん!その時は類も一緒だけどいいかな?もう1人は怖いから・・・ありがとう!道明寺」

「・・・・・・何かムカつく。勝手にしろっ!」

眉間に思いっきり縦皺入れた司につくしの方がポカンとしてる・・・!プッと吹き出したのは俺と加代だったけど全然気が付いていない!
俺がいるんなら司の案内なんていらないのに!司は面白くなさそうに・・・だけど少し赤い顔してつくしに片手を差し出した。
つくしもその手を握り返してる。ここでその手を引き寄せても我慢したやろうかと思ったけど、司はそのまま手を離した・・・。

「早く行け・・・日本でもちゃんと治療して傷跡なんか残すなよ」

「うん・・・そうする。じゃあね」

司を部屋に残したまま俺たちは出国ゲートに向かった。
1人で歩くつくしの横を加代の車椅子を押しながら歩いた。加代は「申し訳ない!」を連発してるけど、これも一つの親孝行みたいなもんだから。
日本に向かう飛行機の中から司のいる特別室が見えた。もうそこには司の姿が見えない・・・。
だけど、ちゃんとわかってるよ?・・・きっとその窓の陰でこっちを見てるよね?


そして、機体はゆっくりと滑走路に向かい、時間通りに空へと飛び立った。
つくしが日本を出てから僅か2週間・・・この間に俺たちに関わる人達の運命が少し変わってしまったんだね。


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2017/10/29 (Sun) 12:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!こんにちは~!

そう!最近の私は司くんを書くことに少々ハマっています!
ふふふ・・・あくまでもちょい役ですけど。

うん!楽しいですね・・・つかつくは書けないけど。
この程度ならいける!頑張ります!!

2017/10/29 (Sun) 14:29 | EDIT | REPLY |   

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