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類が来いと言ったのは夜の8時・・・その時間に俺は以前つくしを迎えに行った類のマンションの前にいた。
見上げたら最上階には電気がついている。
エレベーターに乗って最上階のボタンを押すと静かに動き出した・・・俺は類から何を聞かされるのかでドキドキしていた。
こんなに心臓が煩いのもいつぶりだろうっていうぐらい・・・自分で言うのもなんだがもの凄い恐怖がある。

何故だろう・・・つくしを信じていないわけじゃないのに。


エレベーターが着いて静かにドアが開いた。一歩足を出すのにここまで勇気がいるとは・・・そんな自分が情けなかった。

類の部屋のインターホンを鳴らしたら、自動でロックが解除され俺はそのドアを開けた。
奥のリビングから明かりが漏れている。そこにあいつが待っている・・・自分の拳をグッと握ってそこに向かった。

カチャ・・・っと音をたてて部屋のドアを開けると類はその部屋の真ん中でソファーに座って酒を飲んでいた。
横目でチラッと俺を見て、スッと立ち上がると俺用のグラスを持って来た。


「入って座れば?話は長いと思って?・・・言いたいことが沢山あるから」

「その前につくしが今どこにいるかを教えてくれないか?怪我をしているはずだ・・・考のせいで」

「孝三郎だけのせいじゃないよね?総二郎だって牧野を二の次にするからこんな事になるんじゃないの?」

「・・・そう思いたかったら思えばいい。お前の話を聞く前につくしの居場所を教えてくれ!迎えに行きたい・・・」

そこまで言った時にいきなり飛びかかるような類の拳が俺の左頬にまともに当たった!それは類にしては珍しい行動だった!
油断していたというのもある。まさか類が殴りかかって来るだなんて思いもしなかったから、俺はまともに食らった拳でかなり後ろに
倒れ込んだ!

口元を手で拭うと血が出ている・・・口の中に血の味が広がった。
そして類は肩で息をしながら俺の前に仁王立ちしていて、すぐに倒れ込んだ俺の胸元をグイッと持ち上げた。
いつも柔らかなこいつがこんなに力を込めるなんて・・・だが、俺は類に反撃は出来なかった。

こいつからつくしの事を聞かなくてはいけないから・・・上から睨み付ける類にその手を払い除けることしか出来なかった。

「へぇ・・・反撃してこないなんて総二郎らしくないね。それとも俺がなんで怒ってるのかわかってんの?」

「・・・お前がどこまで知ってるかなんてわかんねぇよ!ただ、俺よりは知ってるだろうけどな!」

類の眉根が微かに歪んだ・・・ここまでの怒りを露わにするのは初めてだ。そんな類を俺も睨み返していた。
類はまたソファーに座って一口グラスの中のものを飲む・・そして俺に座れと指で合図した。それでも動かずに座り込んでいる俺を
無視してテーブルの上に数枚の書類を並べた。


「これ・・・見てみなよ」

ようやく立ち上がって向かい側のソファーに座ると、その書類を俺の目の前に差し出した。

手にとってその書類を広げて、そこに書いてある内容にびっくりした。
それはつくしが西山総合病院でもらった診断書・・・左腕に後遺障害の可能性大と書かれていていた。首にも深い傷があり腕の神経根を
傷つけていることの記載がある。

完治の見込みは不明・・・数回に渡る手術の可能性も書かれていた。

「これは・・・!つくしの怪我はそんなに酷かったのか?考はそんなことは言わなかった・・・ただ腕に怪我をしたとしか言わなかったんだ!
類・・・お前、つくしの怪我を見たんだよな!・・・あいつはどうしてたんだ?左手は動かせないのか?」

「牧野は俺が行ったときにはまだ固定されてたけど、全く動かせないみたいだったよ。右手だけで色んな事してた。首にも固定具を
されてるから動かせないしね・・・見ていられなかったよ。ガラスの破片が結構深く刺さったからね。鋭利な刃物と一緒でしょ。
気を失うほど出血して、凄く痛かったんだと思う・・・それなのに・・・!」

「・・・つくしはどうして類を呼んだんだ?何故、俺を呼ばなかったんだ・・・俺が西門の人間だからか?」

そこまで言うと類がもう一枚の書類をテーブルの上に置いた。
それは一度封を開けられたもの・・・でも薄っぺらい紙一枚が入っているようだった。


「これは・・・?これもつくしの怪我のことが書いてあるのか?」

「自分で確かめたら?」

類は俺の方を全然見ようとしない。露骨に横を向いていた。
これ以上のことが書いてあるのか?この紙の中に・・・俺は少しだけ震える手でその封筒を取って中の紙を取りだして広げた。


『妊娠届け』・・・そう書かれた一枚の紙・・・『牧野つくし、妊娠6週間と推定される』・・・その文字が目に飛び込んできた。


ドキドキしていたはずの心臓が逆に一瞬止まったかのような衝撃だった!その二文字から眼が離せない・・・!


「類・・・これは、これは本当なのか!つくしには子供がいるのか!」
「そんなこと!・・・俺が知るわけがないだろうっ!牧野が妊娠するんなら誰の子供だよっ!」

信じられなかった・・・つくしに何も言われなかったって事もあるけど、まさかあの時の・・・あの時に子供が出来ただなんて!
妊娠届けを何度見ても実感が湧かないけど、これをもらったということはつくしの中の子供は無事だったということか?
つくしはどう思っただろう・・・ただ、何故これを類が持っているんだ?急に思い立った疑問を素直に類にぶつけた。

「なんでこれをお前が持ってるんだ?それに、なんで俺に連絡をしない?この子の父親は俺だ・・・なんで類がこれを俺に出すんだ?」

「どうしてだと思う?・・・福岡にいたらいきなり牧野から電話があったんだ。どうしても会いに来て欲しいって。頼みがあるってさ。
あいつからの頼みだよ?俺が断わるわけないじゃん。牧野はそれを知ってるから俺を利用したってはっきり言ったんだ」

「類を利用した?・・・どういう事だ?」

つくしが誰かを利用する・・・まるで似合わない言葉の組み合わせに俺の頭はパニックになっていた。確かにつくしが頼んだら類は
断わらないだろう。だから余計にそんなことをするとは思えなかった。
類はグラスの中の酒をグイッと全部飲み干した。そんな飲み方もこいつらしくない。


「妊娠のことは牧野から聞いたわけじゃない。偶然看護師が俺に漏らしただけ・・・お父さんですか?って言われたからさ。
牧野は俺にも隠すつもりらしいけどそんなの無理でしょ?次の病院の手配までしたんだから・・・そこでも妊娠してることは言わなきゃいけない。
そうしないと治療が出来ないんだから。自分でも訳がわかんなくなってるんだ。取り敢えず西門から逃げたかったって言ってたから
それだけは確かなんじゃない?守りたかったんだよ・・・お腹の中の子供」

「それでも俺に頼めばいくらでも病院の手配でも何でもしてやるのに・・・何で類なんだ!」

「わかんない?その理由はこっちでしょ?」

類が指さすのは腕の怪我の診断書・・・障害が残りそうだ書かれている診断書をもう一度手に取った。


「牧野は一番始めに総二郎のことを考えたんだよ。お前が茶道を辞めないで済むように、自分が消えようとしたんだと思う。
この先に完治が難しいって言われたんだ。最悪左手で物が持てないかもしれない。上手くいけば通常の生活は支障がない程度に
回復するかもしれない。でもこれは誰にもわからない・・・その悪い方の結果を想像したんだよ」

「左腕が使えないってことの方か?俺がそれを気にするって?」

「そんな身体で西門に戻れないってことじゃないの?俺にだってわかるよ・・・総二郎の手伝いが出来ない自分は西門には必要ない。
あの家にはいられないって考えたんだ。それに子供も守りたい・・・だから、孝三郎や家元夫人が現われる前に鎌倉から消えたい。
そんな時に全部を引き受けて金銭的にも助けてくれそうなのが俺だったんじゃないの?何度も謝られたよ・・・俺しかいないって」


それでもまだ納得できなかった。
俺がその相談を受けて、つくしのために何もしないわけがない。金のことも病院のことも・・・子供のことだってそうだ。
いくらでも俺が守ってやるのに!なんでそこで類に頼む?なんで・・・俺には一言も連絡がないんだ・・・!!

「総二郎がそうやって悔しがるのもわからなくはない・・・でも、総二郎の苦しみなんて牧野に比べたらたいしたことないよ・・・。
あいつ、今から1人で産んで1人で育てようとしてるんだよ?どのくらい動くようになるのかわかんない腕で・・・仕事だって何が出来る?
そんなことを全部1人でやろうって考えてるんだ。口には出さないけどね・・・」


「類・・・つくしは今どこにいるんだ?俺はもう西門を捨てて家を出てきた。遅かったのかもしれないけど、俺はつくしを選んだんだ」

西門を出たという言葉には類も驚いたようだった。でも、すぐに冷静な顔に戻った。



「北海道・・・旭川に連れて行った。そこの病院に入院させてるよ」

北海道?・・・そんな寒いところで今からの冬を1人で過ごすって?

俺の目の前に並んだ病院の書類をもう一度よく見ようとして広げたけど、もうその文字が俺の中には入ってこなかった。
今この時間、誰も知った人間がいないそんな北の土地で、つくしが1人で寝ているなんて想像しただけでゾッとした。


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2017/10/31 (Tue) 13:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: Happy Halloween♪

えみりん様………こんにちは。

どんより………私ね、ハロウィンに久しぶりに専務書こう‼️って張り切ってネタを考えてたんです。
ハロウィンだって気がついたのが昨日の夜だった…。

もう、どんよりしましたよ。
そろそろ色んなヤツを書こうと思ってたのに…。

この叫びかた、好きです♥️なんか、凄く気持ちが伝わる❗

今からは「北の国から」が始まります🎵あはは‼️

山茶花?いいかも!ブタ草よりは(笑)
でも、変えられないのよ(笑)

2017/10/31 (Tue) 16:53 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/01 (Wed) 01:00 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/01 (Wed) 15:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

類くんが怒るのも珍しいでしょう?いいよねーっ・・・殴り合うシーン。好きです♥
しかし、総つくなのに総ちゃん困ってばっかりだわ(笑)

早く会わせてあげないと・・・っ!待っててね!総ちゃん!
そう言いながらまだまだ引き延ばす・・・鬼のような私。

2017/11/01 (Wed) 22:48 | EDIT | REPLY |   

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