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次の日の朝、類からもらった書類一式は俺の手元にあった。
怪我についての診断書、後遺症の可能性の説明書、それと妊娠届け・・・つくしの部屋の鍵。

まずは何からするか・・・取り敢えずは部屋の解約。これはすぐには出来ないかもしれないから一番始めに向かった。
場所は西門のすぐ近くだ。見つからないように車は目立たない場所に停めてつくしの部屋に入った。

そして類から聞いた場所に色々と契約書らしきものがきちんと整理されていて、その中からアパートの関係書類を取りだして電話をかけた。
不動産屋を通して解約手続きを進め、その連絡待ちの間に不要品回収業者に頼んでつくしの荷物を取りに来てもらった。
干されたままの洗濯物は誰の眼にも触れさせられないから、人が来ないうちにさっさと鞄に詰め込んだ。ざっと見回して化粧品や
バッグなんかもそこにいれた。引き出しにしまわれた数枚の着物・・・稽古の時に着ていたものだがほとんどは本邸にあるはずだった。
大切なものは自分で管理していたんだろう・・・つくしが成人したときにお袋が作った着物をアパートに置いていたようだ。
それは俺が持って行こう。そう思って他のものとわけて車に運んだ。

何年かかってもいい・・・また、着物を着て茶を楽しめる時間が持てる事を祈った。
バタンと車のドアを閉めて、もう一度部屋に上がろうとしたときに回収業者と思われるトラックがアパートに横付けしてきて、それを見ていた
俺に運転手が声をかけてきた。

「すいませーん!牧野さんですか?頼まれたものを引き取りに来ましたが、このアパートですよね?」

「あぁ・・・2階の部屋だけど、その中のものを全部頼む」


この業者は廃棄だけではなく、引き取った不要品を一時的に預かってくれるらしい。つくしにとって何が大事なのかがわからないから
一応全部取り置いてもらうことにした。俺は小さなダンボールを貰ってつくしが使いそうなものだけを入れていく。

僅かしかない日用品はあっという間にダンボール3箱に詰められて俺の車に積まれた。洋服も少しだけ・・・つくしが気に入ってそうな
ものを纏めて鞄にしまい込む。テレビラックの上に飾られたものはつくしの気に入ってるものだろうか。これがあれば落ち着くのかと
考えながら適当に詰めていった。


「それではこちらのお荷物は2年間は保管できますから。2年経ってもお引き取りがない場合は連絡無しでこちらが処分します」

「あぁ、途中で取りに行ってもいいんだよな?」

「えぇ、構いませんよ。その時は前もって連絡して下さい。それでは・・・」

つくしの荷物を乗せたトラックがアパートから出ていったのは昼過ぎ・・・この後に不動産屋から連絡があった。このアパートの借り主が
つくし名義になってるから、俺からの解約は受け付けられないと。本人からの委任状がここでも必要になった。

仕方なく呼び出そうと思ったのは桜子・・・こいつにも事情を説明しておこうと思った。つくしが相談出来る数少ない友人だ。
女同士でないと出来ない話もあるだろうし、万が一、つくしが縋りたくなったときには助けてやって欲しい・・・桜子のことは苦手だが
少々怒鳴られることは覚悟の上で、会って欲しいと電話を入れた。その日の夕方、桜子と赤坂で待ち合わせをした。


******


桜子が凄く不機嫌な様子で俺の前に座っている。
真っ赤なスーツにルージュを光らせて、白く長い脚を組んで俺を睨みつけた。

「・・・あのな。確かに呼び出したのは俺で、お前には少々頼みたいことがあるから強くは言わないが、始めからその恐ろしい顔で
睨むのはやめてくれないか?」

「あら?睨んでなんかいませんわ。西門さんが先輩抜きで私に会いに来るんですもの・・・相当ヤバいことが起きてるんでしょう?
怒りませんからお話下さいな?協力するかどうかは聞いてからです」

絶対に話した後にものすごい剣幕で怒られるんだろうが、桜子にこれまでの経緯を話した。
つくしが西門を辞めさせられたこと、考と話し合おうとしてマンションに出向き、そこで襲われて大怪我をしたこと・・・
そして、俺の子供を妊娠して今は類と北海道にいること・・・どの話を聞いていても桜子の表情が青くなるばかり。コーヒーもすっかり冷めてしまった。

ウエイトレスに頼んで新しいコーヒーを持ってきてもらい、桜子に何通かの書類を見せた。それは区役所に出す委任状と不動産屋に
出す委任状・・・両方共につくしのサインをして欲しいと頼んだ。
その書類をジッと眺めているけど手が動く気配がない。いや、桜子はまだ良く状況が掴めていない様子だった。

「ちょ・・・ちょっと待って下さい!先輩は今はどうして花沢さんと?・・・どうして西門さんを頼らなかったの?おかしいでしょう・・・?
つまり、もう先輩には西門さんが必要ないってことじゃないんですか?それなのに後を追いかける気ですか!やめた方がいいんじゃないの?
先輩は望んでないんですよね・・・だから、花沢さんを選んだんでしょう?・・・それなら私はこれにサインなんて出来ないわ!」

「桜子・・・!委任状なんて本当はお前じゃなくても頼めたんだ。だけど、つくしが相談できる人間を増やしたくてお前を選んだんだ。
確かにつくしが類を呼んで北海道まで逃げたのは事実だ。俺には連絡したくないと言われたのも類から聞いている・・・だけど、
ここに書かれているのは俺の子供だ。あいつに何を言われても傍についててやるのは俺しかいねぇんだよ・・・!
ただ、追いかけたくて行くわけじゃない・・・守らないといけないものがそこにあるんだ。それを守らなかったら俺は男じゃねぇからな」

慌ててバッグからハンカチを出して目頭に当てる・・・。
いつもは毒舌なこいつも、つくしが後遺症を持つほどの怪我をしたと聞いて興奮が収まらないようだった。
それは俺も同じ・・・まだ、つくしにも会ってないんだ。どのくらいの怪我をしてどんな風に過ごしているのかと思うと今すぐに飛行機で
旭川に向かい、つくしの病室まで飛び込んで行きたかった!でも、類との約束だから全てを片付けてから会いに行く・・・。
俺自身がもどかしい気持ちを抑えているんだ。

それでなくてもつくしの側には類がいる・・・俺が行くまではつくしの側についているんだから。


「西門はどうなさるの?・・・西門を捨てられますの?・・・やっぱり、戻るだなんて通用しませんわよ?」

「戻る気はない。今まではあの家を継ぐのが使命だと思っていたから、どうにかしてつくしを受け入れてもらおうなんて甘いことを
考えていたが、その可能性がないとわかったんだ。もう何の未練もない・・・どこかでつくしのために茶を点てるだけでいいんだよ」

「・・・西門に入り込んでいる女性は?彼女のことはどうするのかしら・・・その人は家元夫人の座を狙ってるんでしょう?」

「千春の真実なんて本人しかわかんねぇだろうけど、彼女がどう出ようが関係ない。そう言って出てきた・・・和泉へ帰れってな。
だが、帰らないとは言ってたよ。千春も行き先がわかんない女なんだよ。そういう風にしたのも西門だ・・・」

類と同じ事を聞くんだな・・・暫く俯いていた桜子は、テーブルに置いていたペンを取った。
そして、涙を拭きながら「牧野つくし」・・・その名前を書類に書いていった。


「偽造書類なんて書かせて・・・!罪な方達ですこと。これで幸せにならなかったら、お友達もやめますわよ?そう伝えて下さい」

「すまなかったな。桜子・・・つくしの支えになってやってくれよ。俺じゃダメな話しもあるだろうから」

「・・・考えておきますわ。落ち着いたら一度連絡下さい・・・お顔を見に行きたいわ。偽造のお手伝いのお礼として約束して下さいね」

ただ、つくしの幸せのためだけに協力してくれた桜子と別れた。
次は何をする・・・?もう一度アパートの解約手続きをして、母子手帳を受け取りに行く・・・それが終わったら、つくしに会いに行く!


*********


「牧野、具合どう?よく眠れた?」

類が来たのは朝の回診が終わった10時前だった。
今日はきちんとしたスーツを着ている。北海道で行われているある事業の会議に出席するんだと話してくれた。

「おはよう・・・あんまり寝てないけど気分は悪くないわ。眼を閉じたら思い出しちゃってね・・・お薬もらっちゃった」

「そう?今日の夜は俺がここにいてあげる・・・だから、怖くなったら起こしていいよ?」

あははっ!って笑うけど、総二郎じゃない人と病院とはいえ一緒に過ごしてもいいの?それって・・・総二郎が悲しむよね?
ここに来たことでさえ教えてもいないのに、そんなことを考える。
でも、確かに1人にはなりたくはない。花沢類のことをここでも利用しようとする狡い自分が大嫌い・・・!それでも顔では笑ってしまう。

誰かに優しくされたいの?甘えたいの?・・・でもそれは、この先には出来ないことなんだよ?

私の横に座って左腕をさすってくれる。
まだあんまり感じないこのうでが類の温かさだけは私に伝える・・・この、優しい腕をとることが出来たらどんなにいいだろう。


「牧野・・・愛してるよ」

「花沢類・・・私は・・・」

この後の言葉が止まってしまう・・・私も、と言えばどうなるんだろう。


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2017/11/02 (Thu) 13:44 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/02 (Thu) 14:45 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/02 (Thu) 16:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは。

お腹痛い・・・歌が出たよっ!爆笑しました!キタキツネかぁ・・・出ないかな。出して欲しい?庭で飼いましょうか・・・?
で、北海道編とかないから!(笑)これはそこまで長くはならない・・・と、思う。

北海道は一月に行きました。スキーに行ったんです。
あまりに寒くて髪の毛が凍って折れるってのを体験しましたよ!ダイヤモンドダストも見ることが出来ました!
そしてトドメは薄野の交差点で凍った道路で滑べり、手を骨折して帰ってきました!・・・痛かったわ。

私は広島のスキー場でも事故に遭って入院したんです・・・怪我してね。この怪我・・・なんとアソコを怪我して婦人科で入院したんです。どんな事故だって思うでしょ?・・・実は今でも子宮がん検診で「どうしたの?ここ」って言われますが、ここって言われても
自分じゃ見えないのよ!!「怪我しました」って言うと大抵驚かれるんです。はい!バカな話でしたっ!あはは!

2017/11/02 (Thu) 16:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!・・・なにか不要品回収に預けたいんですか?(笑)
こういう業者さん、あるらしいですよ?私の実家が預けてて本当に忘れてたら捨てられていましたから。
ある日突然「捨てました」みたいな葉書が来たそうです。それもどうなの?って思ったけど。

捨てられたのは私の持ってた家具でした。いや、いいんだけどね。

桜子、この後も何かと世話を焼いてくれる予定です。
唯一女で(つくし以外で)好きなんですよね~!!

総二郎、ご対面が近づいてきましたっ!!やっと総つくになるぞっ!!

今日も沢山ありがとうございました!

2017/11/02 (Thu) 16:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花様~!!それって・・・怖いのかしら。気をつけてね?死なないでね?(笑)

今日ねぇ!昨日のヤツと今朝のヤツでもうテンションが高くてさっ!
何があっても笑ってるのよ・・・何回読み直したかしら・・・!今朝のはマジで好きだったわ・・・!
花さん・・・頑張るのよ!!期待してます!

ドッカンといっちゃってね!!

あ、この話の類?うーん・・・人気があるみたいよ?総つくだけど(笑)
メインが上手く動かない私であります・・・でも、反省してないからタチが悪い!

ごめんね、総ちゃん・・・ここでも北海道に飛ばして(笑)

2017/11/02 (Thu) 16:30 | EDIT | REPLY |   

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