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plumeria

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夕方になって花沢類がまた病室にやってきた。
朝と同じようにスーツ姿で・・・何度か見たことがあるけどやっぱりカッコいいんだね・・・こんな人が何で私なんかがいいんだろう。
そんなことを思いながら黙って花沢類が看護師さんと何かを話しているのを聞いていた。

「じゃあ、それで頼むね・・・この部屋なら問題ないよね?」

「はぁ・・・ですが、前例がございませんので院長先生に聞いてみた方がいいのではないでしょうか・・・」

「うん。聞いてくれてもいいけど先に運んできてくれる?この事は事後報告でいいと思うから・・・食事も頼むね。ここで一緒にするから」

何だか看護師さんが困ってる・・・花沢類が何を頼んだのかわからなくて、私は2人のやりとりをぼんやりと見ていた。
暫くして運ばれてきたのは簡易ベッドなんてもんじゃない!入院患者用の私のベッドよりも大きなベッドがドン!と運ばれてきて
私のベッドの真横に並べられた・・・え?これって、どういう事?
キョトンとそれを見ていたら、「ご苦労様」って一言声に出して花沢類がニコニコしていた。

「ね、ねぇ・・・花沢類。これって・・・誰が寝るの?」

「え?誰って・・・俺しかいないじゃん。他に誰がいるの?」

うそっ・・・!って思ったけど本人は凄く真面目な顔で私を見ていた。近くにあるっていう花沢の別荘に泊まるんじゃなかったの?
少しドキドキしてる・・・いや、私がこんな怪我をしてるんだから花沢類が何かをしてくるなんて思わなかったけど・・・!
布団の端っこを思わず握り締めたら、それを見た花沢類が眉に皺を寄せて話しかけてきた。

「あのさ・・・俺を何だと思ってるの?そんな怪我人を襲うほど鬼畜じゃないし・・・。1人だと怖いって言うから・・・」

「あっ!そんな意味じゃなかったのよ?ご・・・ごめんなさい!確かに1人じゃ怖かったんだけど・・・でも、あの・・・」

「心配しなくても何もしないし。それに・・・実は俺も滅多に使わない別荘で1人なのがイヤなんだよ!」

へ?って顔を類に向けたら、彼は少し赤い顔でスーツの上着を脱いでいた。
花沢類にも怖いものがあるの?・・・そう思ったらおかしくなってクスッと笑ってしまう・・・私の笑い声で花沢類はもっと機嫌を悪くしたみたい。

いつに間に持ってきていたのか私服に着替えてソファーに座った。そして何かの仕事なのかしら、書類を出してそれを読み込んでいた。
声を掛けにくい・・・だから、私なそんな彼を見ながらウトウトしていた。1人じゃないんだ・・・それはとても心強かった。


どのくらい寝ていたんだろう・・・眼が覚めたら私のベッドの横で花沢類が寝ていた。ちょうど私の左腕の横で両腕を枕代わりにして
俯せてる・・・向こう側のテーブルの上は書類だらけだった。

「花沢類・・・大丈夫?疲れたんじゃないの?やっぱり別荘で休んだら?」

「・・・ん?あれ・・・俺、寝てた?・・・牧野の寝顔見てたのに・・・」

彼は手で眼を擦りながら欠伸をしてる・・・その後に大きく背伸びをして、テーブルの上の書類を片付け始めた。
もうすぐ6時なんだ・・・でも、ここは北海道だから日が暮れるのが東京よりも早いのね。外はもう真っ暗だった。
ドアがノックされて看護師さんが食事を運んできてくれた。私は右手は大丈夫だったから今朝からちゃんと1人で食べていた。

それなのに・・・

「牧野、食べさせてあげようか?どれがいい?・・・豆腐ハンバーグだって!食べる?」

「もうっ!花沢類ったら・・・大丈夫だって!1人で食べられるよ?」

「でも、お皿が押えられないじゃん?ほら、遠慮しないで!」

遠慮じゃなくて・・・私だけがこんなに楽しい食事をしてはいけないような気がするのよ・・・だって総二郎は今頃西門で誰と食べてるの?
千春さん・・・と食べてたらショックだけど、それでもきっと笑わずに食べてるわ・・・美味しいはずのお料理を、味もわからずに食べてる。
そんな気がしてならなかった。だから、私がこうやって類と笑いながら食べちゃいけないのよ。

それなのに彼は熱いからってお箸に乗せたおかずをふぅーって冷ましてくれる・・・はいっ!って差し出されると自然と口が開く。
こんな事、いつまで繰り返すんだろう。それでも私の世話をする類の手を断わることが出来なかった。

**

夜になって仕事を終えた類が疲れたように目頭を押えていた。
随分と長いこと書類を読んでいるのね。学生の時しか知らないから、そんな類を見るのは新鮮だった。だから黙ってその仕草を見ていた。

「あれ?どうかした?・・・随分大人しくなったんだね」

「・・・お仕事が大変なのにごめんね。やっぱり1人で大丈夫だから・・・東京に戻っていいのよ?」

「うん・・・東京には戻るよ。もう少ししたらね・・・牧野、腕の再手術をするよ?そのつもりでいてね」

え?今、再手術って言ったの?でも、私の身体は全身麻酔は出来ないのよ?・・・花沢類は私の知らないところでお医者様と話をしたんだ。
どうしよう・・・もしかしたら、先生から妊娠の事を聞いたのかしら。私が答えずに下を向いていたら、花沢類は言葉を続けた。


「首じゃなくて腕の方だけね。本当は両方した方がいいらしいんだけど、取り敢えず腕だけでもしておこうってさ・・・局所麻酔だから
意識があるかも・・・怖いかな?」

「腕だけ・・・?そうなんだ」

いつかはバレてしまうのにどうしてこの人に話すことを躊躇うんだろう。
自分でもわからない・・・私はこの人に話すタイミングを探していた。でも、今日も話せないまま・・・類の向こうに総二郎を重ねてみていた。


********


類から電話があったのは俺が車で東京を出てから数時間しか経っていない時だった。


『総二郎、今どうしてるの?』

「今は東京を出て茨城に入った辺りかな。どうかしたのか?つくしに何かあったのか?」

『・・・明日には来れそう?北海道に着いたら先に俺に連絡してくれる?明後日、牧野の再手術があるんだ。午後からだけど・・・
そこでバトンタッチしよう。総二郎はうちの別荘に案内するよ・・・それまでは任せておいて』

類の話ではつくしの再手術は腕のみ・・・全身麻酔を躊躇するつくしに病院側も理解を示したようだった。昨日も夜に考の夢を見て
安定剤を投与されたという。不安が強すぎるのに類には何も言えないつくしは、今にも倒れそうだとあいつは言った。

『本当は腕を治すために全身麻酔をして首の手術を受けて欲しいと思ってる。だけど、牧野は自分よりも子供を守りたいんだと思う。
だからせめて腕だけでもと思って受けさせることにしたんだ・・・悪いけど決断は俺がした。余計なことかもしれないけど、このままだと
牧野は手術そのものを拒否するからさ・・・俺はもう手が出せない。いつ俺に妊娠してることがバレるかって心配ばっかりするんだ。
だから、もう総二郎に全部任せるよ。』


「あぁ・・・今からだとそこまで行くのに20時間くらいかかるだろうな。ボチボチ行くからそれまでは頼む。明後日が手術だな?
明日には連絡できるだろうから・・・すまない。類・・・」

高速のサービスエリアで美味くもないコーヒーを買った。
少しだけ仮眠をとったら・・・つくしの待つ北海道まで走ろう。ゆっくり瞼を閉じたらつくしの眩しい笑顔が見える気がした。


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2017/11/04 (Sat) 17:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

お?今回はするどいじゃないですか!ここだけの話・・・当たってますよ?
ふふふ!もう私の癖がわかるんですね?・・・ヤバい!

さとぴょん様が予測しないようなお話しにしないとっ!

私は本州でも西側の人間なので実は東京から北はどうもわかんない・・・東京に行っても1人じゃなくて団体行動だから
空港も駅も全然わかりません!
作家さんの先輩が東京においでよ!なんて言ってくれるけど、行ったら最後・・・戻れる気がしません。
「泊めてあげるよ」なんて嬉しい言葉も恐怖でしかありませんっ!!

だってさ・・・この世界の先輩と夜中中話す内容って何?・・・怖いじゃないですか?
さとぴょん様も呼ばないといけない内容じゃないかな・・・って思うのは私だけ?(笑)

2017/11/04 (Sat) 21:47 | EDIT | REPLY |   

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