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plumeria

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「総・・・二郎?ホントに・・・総二郎?」

「あぁ・・・待たせたな。っていうかお前が俺を置いて行ったんだぞ?結構探したのに見つけるのが少し遅かったみたいだ」

始めは少ししか開いていなかったつくしの眼が大きく見開いたかと思うと、その両方の瞳から涙が溢れて凄い勢いで頬を伝わり髪を
濡らしていった。
ハンカチでそれを拭ってやったけど治まらない・・・何度も何度も涙をこぼすからとうとう手でそれを拭った。
つくしは自分の顔に触った俺の手を右手で掴むと、ゆっくりと自分から遠ざける・・・そして首を少しだけ横に振った。


「ダメだよ・・・もう、総二郎の手を取れない。私は狡い女だよ?ここを知ってるんなら・・・聞いたんでしょう?花沢類から。
私はあの人を利用してここまで逃げたの。総二郎に何も言わずに・・・西門から逃げたんだから。もう・・・戻れないよ」

「そんな事はない。お前が逃げるのは当たり前だ・・・俺の方こそすまなかった。考がここまでお前を追い詰めるなんて思わなくて、
俺が早くから守ってやれば良かったんだ!つくしのせいじゃない・・・西門の家がすべてを縛り付けてんだ・・・ごめんな」

「総二郎っ・・・!でも、それでも私は・・・」
「類の事ならいいんだ。類が俺をここまで呼んだんだから・・・つくしの事を守れって・・・あいつがここを教えてくれた。だからもういいんだ。
類は近いうちにフランスに戻るらしい。お前に向こうできちんと仕事をするから心配するなって伝えるように言われたよ・・・」

「類が・・・?私のせいなの?私が類を困らせて、それで日本にいられなくさせたの?」


「そうじゃない。あいつはお前が笑っていられたらそれでいいって・・・俺に託してくれたんだ。思いっきり殴られたよ。初めてな・・・」


一度は離された手をもう一度繋ぐと、今度はつくしも力を込めて握り返してくれた・・・だけど、やっぱりダメだと何度も呟いている。
これ以上の興奮は身体に悪い・・・つくしを落ち着かせるために手を解いて少し身体を離した。

そうしたらつくしは右手で俺を探す。
いいのか?それを掴んでも・・・離す気なんてないけど、今は俺がいることで辛いんじゃないのか?
聞きたいことは山ほどあったけど、つくしを目の前にすると何も言えなかった。でも怪我のことだけが気になってつくしの首に手を
伸ばした。そこにはまだ分厚い包帯が巻かれていて傷口は見えない。

ここが一番つくしを苦しめている所か・・・そう思って包帯の上から撫でてみる。


「総二郎・・・どこまで聞いてるの?怪我のことだけ・・・知ってるの?」

「ん?全部知ってるよ。つくしの事なら・・・全部な」

そう言うと俺は上着の内ポケットからつくしが一番欲しがったものを出した。つくしはそれを見て言葉が出なくなった・・・。
震える右手でそれを受け取ると自分の胸に押し当てていた。まだ、名前が書かれていない母子手帳・・・つくしの支えになる手帳だ。

「これ・・・類が取って来いってさ。お前の持ち物から妊娠届け・・・だっけ?それを奪ったのは類だ。あいつ、鎌倉の病院でもう気がついてたんだ。
看護師が口滑らせてな・・・類に「お父さんですか」って聞いたらしい。お前、隠し続けられると思ったのか?バカだな・・・」

「うそ・・・もう、知ってたの?類が・・・知ってて私の我儘に付き合ってくれたの?」

「そんなヤツだから・・・」


我慢できなくなって声をあげて泣くつくしを慌てて両手で抱き締めた!
つくしの右手が俺の背中に回って服を鷲づかみにしてる・・・!顔は俺の胸に埋めてて、その涙が服に染み込んで俺の肌に伝わってきた。

「そんなに泣いたら腹の子が苦しいんじゃないのか?・・・もう泣くな。つくしにも聞きたいことが沢山あるけど、俺にもお前に話さないと
いけないことがあるんだ。ゆっくり話そうぜ?もう、俺たちには時間がたっぷりあるんだから・・・な?つくし」


そう言っても泣き止まないから、とうとう看護師にバレて数人が駆けつけた。
俺はつくしから離されて、つくしには軽い安定剤が打たれたようだ。さっきの担当看護師が怖い顔で睨んできた!

「すみませんが、あなたは牧野さんのご家族ですか?この方は花沢さんからお預かりしている大事な患者さんです!あまり興奮
させるんならお帰りいただきますよ?確かに牧野さんの事はご存知みたいだけど、どういう関係の方ですか?お名前は?」

「俺はつくしの腹の中にいる子供の父親になる者だ。名前は西門総二郎・・・何なら類に聞いてくれ。それに俺はここから帰らない。
つくしが退院するまで付き添うからな」

「え?・・・そのことをご存知なの?・・・そうですか。じゃあ、話が早いわ。少し安静にしないといけない時期なんですよ?
それでなくても何か事情があるようで、精神的にも負担がかかりすぎています。お父さんだという自覚があるなら牧野さんの事、
お願いしますね?それでは、西門さんには今後のこともあるので連絡先を教えてください」

つくしの身元引受人の欄に自分の名前を書いた。
でも、その看護師の持っている書類がチラッと見えたとき、請求先が花沢類になっている・・・それも俺の名前に書き直させた。
ごめんな・・・類。お前はどこかでつくしと繋がっていたいのかもしれないけど、これも俺が責任持つから。


少し落ち着いたつくしがベッドに寝たまま窓の外を見ていた。


**


「どうした?麻酔が切れてきたから少し痛むんじゃないのか?つくし?」

「ん・・・?うん、少しだけ痛い・・・ううん、凄く痛いのかも・・・よくわかんない・・・」

夜遅くになって唸り声が聞こえて眼が覚めた。俺は付添人用のベッドで寝ずに、気がついたらつくしのベッドに俯せていたようだ。
右手をしっかりと持っていたから汗が滲んでる。手を離してつくしの額の汗を拭いてやった。

左手は大きい方で8センチ、もう一つは5センチ程度の傷だそうだからかなり痛いだろう。その上力が入れられないからベッド脇に
作られた台の上に置かれて固定されていた。つくしはそれを見ながら少し荒い息に変わる。
変わってやることも出来ないんだから、俺に出来ることは側についててやることだけ。

泣きそうな顔で俺を見るつくしの髪を撫でて、色んな話で気を紛らわしてやった・・・それしか思いつかなかったんだ。


「そういやさ・・・俺が昔喧嘩してキズつくって帰ってきたら、お前・・・すげぇ怖い顔して待ってたよな。でさ、俺が痛いのにお前が
泣くんだよ。それ、今なら気持ちわかるわ・・・見てるだけって辛いんだな」

「あはは・・今頃言うの?ホントに・・・遅いよ?総ちゃん・・・」

「覚えてるか?裏庭でさ・・・4人でかくれんぼした時につくしが高い木の上に登って降りられなくなってさ・・・」

「あぁ・・・覚えてるよ。総ちゃんが凄い勢いで上がってきて・・・二人で降りられなくなったらさ、祥兄ちゃんがハシゴ持ってきたの。
始めからそうしたらいいんだって祥兄ちゃんが言ったら総ちゃんが真っ赤な顔でどこかに逃げたの・・・」

「くくっ・・・よく覚えてんじゃん!あの時な・・・つくしが落ちたらどうしようって思ったんだ。そしたらもう自分も登っててさ・・・。
よく考えたらお前を抱えてなんて降りられないのに。ガキの時って頭、回んねぇのな!」

「総ちゃんが登ってきてくれるときの必死な顔・・・忘れないよ・・・」



「つくし?・・・寝られそうか?」

「総ちゃん・・・そこにいる?総ちゃん・・・」

「あぁ、いるよ。ずっと・・・つくしといるよ」

すぅーっと寝てしまったつくし。意識がはっきりしなかったから、また俺の事を「総ちゃん」なんて呼んで・・・。
握られた右手はそのままで・・・俺はつくしにそっとキスをした。

掴まえたものはあまりにも愛おしくて、俺はこの日、朝までつくしの顔を見ていた。
布団の上からつくしの腹にもう片方の手を当てた。ここに一つの命があって、それは俺たちの光になる・・・そんな気がした。


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2017/11/08 (Wed) 13:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: はじめまして

切山椒 様、こんにちは!

ご訪問、コメント本当にありがとうございます!超恥ずかしいんですけど(笑)でも、すっごくうれしいです。
今はちょうどシリアスはお話が続いていましたので、気に入っていただけるか心配だったのですがやる気になってきましたよ❤
やっぱり、こちらの類君、可哀想でしたかね(笑)私はこんな類君が好きなのですが、救ってあげて!の声が多くて~!

シスコンは明日で終わるのでづぎはかわいらしいお話になっています。
冬になりますから暖まるようなものを・・・。
変わった設定が多いのですが、最後はほっこりさせたいのでお茶タイムにでも読んでいただけたらなって思っています。

冬の短編もぼちぼち書いてます。

これからもよろしくお願いいたしますね!
今日はありがとうございました。お昼休憩中、気持ち悪いほどにっこりしてるplumeriaでございます❤

2017/11/08 (Wed) 14:28 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/13 (Mon) 23:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!おはようございます。

やっと総つくに戻りました!類つくと思っていた皆さん・・・思いだしていただけたでしょうか!って感じでしょ?
ここねぇ・・・私も好きなんですよ。つくしの「総ちゃん」呼び、本当は全部それでいけば良かったと思うぐらいです。

なんで総二郎呼びにしたんだろ。今さら悔やむんですが、たまにあるからいいのかな?「総ちゃん」・・・。

これから2人で逃亡生活・・・「浪漫飛行」みたいにはいきませんが時々は甘々にしながら頑張ります!
今日はありがとうございました!

2017/11/14 (Tue) 08:42 | EDIT | REPLY |   

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