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茶道表千家西門流の宗家、次期家元の西門総二郎と華道牧野流、家元の長女、つくしが結婚したのは今年の初夏。
それまでは今時珍しく清らかな関係を保っていた2人だが、総二郎との初級コースであっさりと妊娠したつくしが少し大きくなってきた
お腹を抱えて今日も西門邸でのんびりしていた。

夏には危うく総二郎の命を縮めるような出来事も起こしている。それに懲りずに二度目の夏祭りに出向いて、食べ過ぎてお腹を壊し
再び入院した。もちろん総二郎付きの特別室だった。
その後はまだ安定期でもないのに町内の運動会に出ると言って、流石に家元夫人に止められた。

あまりに暴れるので総二郎からは叱られてばかり・・・最近は華道教室の回数も減らされてストレスが溜まっているつくしは今日も何か
面白い事がないかと縁側に座って秋の空を眺めていた・・・。


これは、そんな2人が秋のデートに行ったときのお話である。


******


「総二郎さん・・・動かないの。なんでかなぁ・・・」

「は?何が動かないんだ?俺ならお前の3倍ぐらい動いてるけど・・・お前さっきから空ばっか見てボケッとしてるだけだろ?
俺はこう言えて茶碗の手入れしてんだけど。その前には水屋の掃除・・・その前には大炉の準備。少しはやろうと思わねぇのか?」

俺の茶室の前で縁側に座ったつくしがボソッと呟いたのは「動かない」って言葉だった。最近は俺から煩く言われるから大人しく
しているつくしだが、油断するとすぐにとんでもない事をして自分が妊婦だと言うことを忘れてしまうから眼が離せなかった。
元々が細いから少し腹が出てきたとはいえ、まだ身が軽いのかもしれない。俺は男だがら、自分の中にもう1人の命があるなんて
感覚がわからない・・・だから余計に心配でいけないんだ。

つくしの中にいるのは俺の分身だし。つくしごと守ってやらないと、万が一・・・なんて事になったらと思うと気が気じゃない!
そして、昨日の検診で安定期に入ったと医者から言われた。もう、流産の心配もほとんどないと言われたらしいが・・・。
それなのに今日のつくしはあんまり嬉しくなさそうだ。話でも聞いてやるかと、俺は茶碗を片付けてつくしの横に座った。


「どうかしたのか?心配なことがあれば言えよ・・・聞いてやるから」

「・・・だからね?動かないのよ。お腹の赤ちゃん・・・」

「・・・えっ!そっち?」

そ、そりゃ、俺に言われても担当外・・・と、いうかそろそろ動くんだ!
つくしは自分の腹に手を当てて不安そうに見ている。でも、それって個人差だろう?順調に育ってるならそのうち動くんじゃねぇの?
なんて、簡単に口に出したらものすごく怒られる。
最近のつくしは少し神経質になってるから、こんな些細なことで落ち込んだり考えすぎたりしているようだ。その反動が妙な行動に
出てしまう・・・いきなり、はしゃぎ出したり動き出したりするのも色んな不安から逃げるためなのかもしれない。


「そうだ・・・次の休みの日、紅葉でも見に行くか?もう、車も大丈夫なんだろう?少しだけ遠くに行こうか・・3日間ぐらいなら親父も
茶会代わってくれると思うし、お前も毎日この庭じゃ楽しくないだろ?」

「本当っ?!この家から出て行ってもいいのっ?!自由になってもいい?・・・好きな事しても怒んない?」

「・・・ちょっと言葉が違わねぇか?お前、そんなに西門にいるのが苦しいのかよっ!」

そんな言葉を大声で・・・誰かが聞いてたらどうすんだっ!相変わらずの天然ぶり・・・チラッと弟子がこっちを見てんじゃねぇか!
手で向こうに行けと追い払うと小走りでどっかに消えた。ありゃ絶対に妙な噂になって明日にはお袋の耳に届くパターンだ。


「総二郎さん、何処に行くの?ねぇ・・・紅葉なら北の方かしら。2人だけで行くよね?」

「あぁ、そうだな。つくしの身体に負担がかかんない程度だと・・・宮城が限度かな。帰りには仙台で美味いものでも食って帰ろうか。
つくしにはそっちの方がいいのかもな!」

「そんなことないよ!総二郎さんとのデートも久しぶりだね!・・・福岡以来どこにも行ってないもん!」

「・・・ありゃ、デートじゃなかったんじゃないか?お前が空から降ってきただけだし!」


さっきまで、腹の子が動かないだなんて泣きそうな顔していたのにもうすっかり笑顔になって、仙台の美味いものは何かと質問攻めだ。
そんなつくしを抱き寄せて、少しだけ膨らんだ腹に手を当てると、俺の手につくしも自分の手を重ねた。
いいよな・・・こういうの。夫婦って感じがする・・・。俺の手には赤ん坊の心音も胎動ってものわかんないんだけど、確かにここに
愛おしい命があって母親に守られてるんだって思えた。

「もう、つわりなんてなかったんだよな。でも、今って結構食事制限されて体重管理厳しいんだろ?・・・お前、大丈夫かよ」

「つわりなんてほとんどなかったから結構食べてるかも・・・。でも、体重がそこまで増えてないからお医者様が大丈夫だって言ってたわ。
昨日もね、ご飯は1杯に抑えたんだけど、おやつに焼き芋もらって京都のお饅頭とね、お母様が銀座でケーキを買ってきてくれたの。
毎日誰かが差し入れしてくれるから食べるのが大変!少しは総二郎さんも食べたらいいのに!」

「・・・出産が終わったら激しく運動が必要だな・・・!」


はーい!なんて暢気に答えてるけど、俺の言った意味なんてわかってないだろう。妊娠がわかってから抑えてんのは俺の方なのにっ!
つくしには言ってないけど、妊娠中の限界がどこまでかを真剣に医者に聞いてしまった・・・残念だが俺にはかなりの我慢が必要らしい。
それなのにこいつは一つも我慢せずに食欲を満たしやがって!


コトン・・・と、つくしが俺の肩に頭を落とした。

まだ俺の手はつくしの腹の上にあって、つくしと重なったままだ。
特に何かを言うわけでもない。黙って目を閉じて静かに俺の肩で秋の風を感じている・・・そんな感じがした。

見合いから数ヶ月での結婚、それとほぼ同時に妊娠、そして来年には母親だ・・・不安がない方がおかしいよな。
だからつくしの肩を持って俺に引き寄せてやると少し眼を開けて俺を見た。

「たまには二人っきりで楽しもうな。来年は賑やかになってるからゆっくり出来ねぇし・・・」
「うん・・・でも、来年だって行くよ?いつまでもこんな風に恋人でいたいもん・・・」

すっげぇ可愛い一言!
今すぐにでも部屋に閉じ込めて思いっきり抱き締めてしまおうかと思った瞬間だった・・・!


「つくしちゃーん!長野のお友達から栗きんとんもらったわよっ!!いらっしゃーいっ!」
「あっ!はーい!・・・総二郎さん、お母様が呼んでるから行くねっ!じゃあ、デートの準備、宜しくっ!」

え?!って俺の手が緩んだ瞬間につくしはするりと俺の腕から逃げ出して、妊婦とは思えない速さで廊下の遙か彼方へと消えた!
後に残ったのは宙に浮いた俺の両手・・・それと俺の中に溢れていたある種の欲求・・・

視線を感じて振り向いたら、さっきチラ見をしていた弟子がまた見ている・・・!そして俺が追い払う間もなく小走りでどこかへ消えた。
今度はどこの誰に話しに行くつもりだ!


今度は一人になった俺が、秋の空を見上げている・・・雲が薄く広がって澄んだ青空だ。
さて、仕方がないからデートの準備をしてやるか!遠くで聞こえる楽しそうな笑い声に苦笑いして俺はまた道具の手入れに戻った。


頭の中ではつくしが嬉しそうに紅葉の葉を手に取る光景が広がっていた。


kouyou5.jpg
耐えられなくなって書きました・・・楽しい総ちゃん。
今書けるのはこの2人しかいなかった・・・。
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2017/10/25 (Wed) 12:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

もうねっ!向日葵に限界が来たんですっ!!暗すぎてっ!(お前が書いたんだよっ!)
だから、どうしても楽しいのが書きたくなった!

時間も余裕もないのに~!!それでも、自分が楽しみたくて書いてしまったーっ!!
確か、夏の話の時に「これで完全終了です」って書いたんですよ・・・すぐに復活してしまった!(笑)

まぁ、楽しもうかしら・・・激しい運動は出来ないけど(笑)緩めで・・・

2017/10/25 (Wed) 22:18 | EDIT | REPLY |   

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