FC2ブログ

plumeria

plumeria

<side誠・回想>
花沢類にイギリスに行くと言った言葉は本当だった。向こうでもう一度勉強して、高城コーポレーションの名前ををアメリカ以外の国に
も広めてやる・・・父さんへの恩返しのためにそうしようと思った。その気持ちに嘘なんてなかった。


でも・・・本心を言えば本当の父親に会ってみたい。

西門清四郎という人物に会ったときに、自分の感情がどうなるのかを確かめたかった。母さんから聞いた話だとすでに高齢で寝たきりらしい。
あの西門の分家筋で、現在西門一族で存命している最高齢者だという。少しは考えた・・・俺が西門の血を受け継ぐ者だと名乗ればどうなるのか。
清四郎氏には娘しかいなかった。だから今の関西西門はその娘婿が仕切っている。そこに俺が現われたらどうなる?


でも、いくら考えても現実的ではなかった。俺には茶道なんてする気もなかったし、家の歴史なんて重いものなんかに興味がない。
最先端の技術の中で自分の能力を発揮したいんだから・・・そんなことを考えながら大阪に向かってしまった。


一目だけ会ってみよう。おそらくこれが最初で最後だ。
会話なんてなくていい。親子の名乗りもいらない・・・見舞いの理由なんてどうとでも言える。

ただ、俺は実の父親に会ってみたかった。もう、母親には会えないのだから・・・。


高城コーポレーションの名前を出して問い合わせれば、意外と簡単に西門の事務員は彼が入院している病院を教えてくれた。
そこに行って特別室に向かうと面会謝絶の札を無視して俺は中に入った。聞いた話では日中でも寝ているだろうと思ったんだ。
顔だけ見てすぐに帰ろうとした。なのに・・・この時、西門清四郎は起きていたんだ。


「誰だ?・・・ここには誰も入ってこないと思っておったが・・・」

「・・・申し訳ありません。起きていらっしゃるとは思いませんでした。私は・・・高城誠と申します」

「・・・高城?高城って言ったのか?」


「そうです・・・私の事がわかりますか?」

西門清四郎は痩せこけたその顔を強張らせて俺を見つめた・・・そうか、わかるんだ。俺が自分の息子だって・・・わかるんだな。
布団を少し強く握って、しわくちゃの手に筋が立つ。真っ白な頭は実年齢よりも老けて見えた。
この俺の父親にしては老けすぎだろう・・・それでも何故か少し笑ってしまう。

「・・・誠・・・か。まさか、会えるとは思わなかった・・・先日は美智子が急に来たと思ったが気が付いたら帰っておった・・・。
今更だがお前達は何か過去を探っておるのか?・・・そんなものになど構わずに己の先を見なくてはならんぞ?」

「わかっています。ただ、真実がわかってしまったんですよ。20年前にそれぞれが隠した過去がね・・・私の事もそうです。
だから、あなたに会いに来た・・・本当の父親の顔を見にね。話が出来るとは思いませんでした。もう・・・これで十分です。
それでは失礼します。あ、高城の母が困っています・・・もし、またあなたを頼ってきたら話だけでも聞いてやってください。
そのためにも元気になって下さいね・・・」

「・・・美智子が?何故だ?」


それを聞いてもあなたには何も出来ないだろう?
この時に無断で入ったことが看護師にバレて俺は小言を言われ、特別室から出るように言われた。もう帰るつもりだったから
おとなしく出ようとしたら、それを引き留めたのは清四郎氏・・・父だった。

そしてこの後、清四郎氏は全てを俺から聞き、残された体力を振り絞って東京へ行くと言い出した。


「それがお前の希望なのだな?・・・それなら、この儂が動こう。誠にしてやれる事はもう・・・このくらいしかあるまい」

「いいえ、そのような事はありませんよ。そう思われるのなら、私のために長生きをして下さい」


さすが西門の長老だ・・・一度言い出したら聞く耳なんか持っちゃいない。
密かに聞いていた花沢家での話し合いの日に、俺は西門清四郎氏をその場へと連れて行くことになった。


***********


<花沢邸>
勢揃いした面子の中で再び言葉を出したのは父さんだった。

「今までの話では高城さんにはつくしを引き取る意思はないと言うことですかな?つくしも、もういいと言っているが・・・本当はどうお考えなのですか?
あなた方、夫婦間の話はこちらとしては口出しできないが、意思があるかないかだけでも聞かせていただかないと、こちらも弁護士に話が出来ん。
・・・高城社長のお気持ちを聞かせていただけないかな?」

一斉に勇作氏に視線が集まると、彼は俯いたまま首を横に振った。

「私には出来ない・・・確かに私の身体の問題で子供が出来ず誠を養子に迎えたが、それは納得してそうしたんです。つくしさんの
事とはわけが違う。晴男の娘を自分の娘として引き取ることは出来ません・・・申し訳ない。許して欲しい・・・」

「勇作さん!どうしてもダメですか?つくしちゃんの夢を叶えてあげられませんか?・・・私は全てが終わったら高城を出ますから!」

つくしを引き取らないという勇作氏に美智子は同じ頼み事を繰り返した。それまで黙っていた俺も美智子に続いて言葉を出した。
やっとここまで来たんだ・・・つくしはもういいなんて言うけど、俺はそんな事は言えない!このまま兄として暮らすなんて出来るわけがなかった。

「高城社長、俺からもお願いしたい・・・つくしの事を娘として思わなくてもいいんです。ただ、高城の籍に一度入れて欲しいんです。
そうしないとずっと俺たちは生きていくために嘘をつかなくてはならない。知らなければ・・・愛さなければこんな想いはしなくて良かった。
でも、隠し続けることが出来なかった・・・責めるなら俺を責めてくれていい。お願いです・・・高城社長!」

それでも、俺から顔を背ける勇作氏に美智子も母さんも戸惑っていた。
ただつくしはそんな勇作氏を優しい眼で見ている・・・そして、俺たちの正面にいる誠はつくしを優しく見つめていた。
その落ち着いた眼差しに焦る・・・諦めたわけじゃないのに、優しすぎるつくしの瞳が俺の心を不安にさせた。


「少しいいかの?・・・花沢の倅には悪いがこの爺が口を挟もう。勇作・・・もう、その辺で折れたらどうだ?」

「清四郎様!その辺でだなどと・・・私はまだ混乱してるんだ!そんなに簡単に決められない・・・っ!」


「美智子が20年前にどれだけお前に対して申し訳ないと泣いたのか・・・お前は知らんのだろうよ。儂の前で何度も何度も
頭を下げておったのに・・・」

清四郎氏の嗄れた声・・・酸素マスクも付けているから余計に籠もって聞こえる。その声を全員が耳を澄ませて聞いていた。
軽く咳払いをしながら、苦しそうに話を続けた。

「美智子が金策のために晴男に嫌々会いに行ったのは知っておった。あの男が妙な気を起こしていたのも聞いていたから心配での。
まさかと思ったが・・・乱暴した上に一銭も融通しなかったと聞いて驚いた。全ては誰のためだ?・・・勇作、お前の為ではないか?
昼夜走り回って金を集めていたお前のために、美智子は少しでも役に立とうと一番危険な男の所に行ったのではないか?
子供が出来たようだと泣いてきたのはお前が金策のために大阪を離れていたときだったわ・・・もう家には戻れないと泣いて泣いて
それは哀れだった。このままどこかに逃げて1人で子供を産むと言っての・・・儂も堕ろさないかと言ったがそれは男の勝手な言葉であったと思う。
自分の中に生きている命は自分しか守ってやれないから、そんなことは出来ないと泣き続けおった・・・女とは強いのう・・・」

ゴホゴホと咳き込むと誠が背中をさすった。
本当の父親の背中・・・これを高城勇作が悲しそうに見ていた。


「晴男も・・・後悔しておったわ。美智子に酷い事をしたとは言わなかったがな・・・それをずっと悔いておったのは見ていてわかった。
だから、少し経ってから紹介してやった娘と結婚したがな。最後まで自分の犯した罪だけは忘れなかったんだろうと思うぞ。
自分の会社が倒産しかけたときには、どこにも頼み込まなかった・・・1人で全部背負って負債を抱え込んでの・・・その時の心労で
病気になりあっさりと逝ってしもうたわ。最後に見舞いに行ったときには儂にこう言っておった。美智子に謝りたい・・・とな。
難しいのう・・・儂も人のことはいえん。ここに誠がいるからな・・・晴男のことは自分を見るようじゃった・・・」

ここまで話すのが精一杯だったのだろう、激しく咳き込んだために控えていた医者がバタバタと応接室に入ってきて、車椅子を
押して部屋を出ていった。誠は少し不安そうにそれを見ていたがこの場に留まった。


「高城さん・・・まだお気持ちは変わりませんか?」


俺の言葉に勇作氏は今までと違う顔をした。


KOSU40.jpg
半分以上が爺さんで終わった(笑)
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/11/05 (Sun) 06:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、こんにちは。

たまにいるじゃないですか?サスペンス劇場の中で、最後の力を振り絞るひと!
有り得ないって思いながら見てましたけど、いざ自分が話を作るとそういう人が必要なんだってわかりました(笑)
なんかねぇ・・・最初はこの人出てこない設定だったんだけど、どうしても勇作さんが言うこと聞いてくれなくて!
誰の話なら聞くんだろうって思ったら、この爺さんしかいなかったの!

マコッちゃんも会いたがってるし・・・総二郎とも会わせたいし・・・

仕方ない!設定を変えてしまえ!ってなりました。

だから前は昏睡状態だったんですよ~!!この爺さん・・・日本の医療は凄いなぁってことで許して?

2017/11/05 (Sun) 11:29 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/11/05 (Sun) 13:16 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/11/05 (Sun) 13:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様 今晩は!

ね!爺さんよう頑張ったでしょ?
こんな事なら大阪じゃなくて静岡ぐらいにしておけば良かった(笑)
え?お医者さん?・・・どっかにいたんですよ。
天下の西門ですもん!長老が動くんだからきっと医者10人ぐらい連れてきたんじゃないのかな・・・そうしとこ?

イヤもう、なんなの!この年層の高さ!
ラブ要素ゼロがどのくらい続いてんのかしらっ!!

って思ってストレス溜めてる私。だから・・・茶華がある!あはは!

2017/11/05 (Sun) 18:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、今晩は!

えっ!サスペンス劇場の余韻を残すラスト?・・・ひえ~!
なんて難しいことを!余韻なんて残さないですよ(笑)あっさり、さっぱり終わりたいっ!!

そ、それじゃなくても80話で終わる予定が何故こんなに(笑)
それに向日葵も延びてるし・・・向こうは向こうで相当シリアスになったし・・・いいクリスマスは来るんだろうか・・・。
新しいのは・・・童話だと思ってください。

毎日小難しい話と闘っていたので、簡単に・・・簡単に!って感じになりました。

これからは少し短編挟んでクリスマスストーリーに入る予定です。

今日はありがとうございました!が、頑張りまーす!

2017/11/05 (Sun) 18:54 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply