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退院してから2週間が過ぎた頃、総二郎とまた検診のために病院に向かった。
こんな地方の街ではそこまで心配しなくてもいいんだろうけど、西門のニュースで総二郎の顔もテレビでその日だけ何回も流れた。
だからちょっとだけ警戒して伊達眼鏡なんてかけてる。しかも黒縁の・・・それがどうしても可笑しくて笑ってしまう!

「何だよっ!これでもメガネが似合うって言われてんだぞ?かけるとさ、すごく真面目な人間に見えるだろ?」
「ぷっ!それって中身は真面目じゃないって言ってるようなもんだよ?でも、カッコいいよ・・・惚れ直しちゃうかも!」

わざとそう言うと、総二郎も調子に乗ってメガネの縁を持ってカッコつけるの・・・もう!それじゃあ隠そうとしてないじゃん!
余計に目立っちゃうよ?そんな事を話しながら私達は先日まで入院していた総合病院まで来て、手を繋いだまま産婦人科に向かった。

あれからだから・・・今は3ヶ月めの真ん中当たり?安定期まではまだ相当かかる。
だからお腹だって全然出ていなかった。ほんの少し体重も増えた程度・・・先生の診察までに色々と検査をしてもらうんだけど、ここには沢山の女性がいるから総二郎は病院にかけあって自分用に個室をもらっていた。流石高額寄付したせいなのか院長先生の計らいで応接室の一つを彼のために用意してくれたみたい。

週刊誌なんかで顔が出るような人だから、どこでそれを知っている人に出会うかなんてわからなかった。
そこで私の検診が終わるのを待つ・・・私もその方が安心だった。まさかと思うけどあの人が来るかもしれない・・・その不安は的中した。

「あら!牧野さん・・・だったよね?今日が検診日だったの?本当に奇遇だよね~!・・・今日は彼氏いないの?」

「・・・えぇ、私1人です」


上野明日香さん・・・退院前に総二郎のことをすごく気にしていたこの人に、何故かすごく危険を感じていた。
だから余計な話なんてするつもりはなかったけど、ちょうど私の目の前に立たれると、すぐそこにあるお腹に眼がいってしまう。
この人は少しお腹が大きくなってるみたい。それが羨ましくて、つい・・・聞いてしまった。

「今は何ヶ月なんですか?予定日はいつ頃なのかしら」

「私の予定日は5月末なの!牧野さんはいつなの?私とあんまり変わらないでしょう?」

「・・・私は6月の終わりです。1ヶ月ぐらい違うんですね・・・私ももう少ししたらお腹が出るかしら。まだ全然変わんないから心配なの」

「ちゃんと育ってるんならそのうち出てくるわよ!心配ばかりしていたらそれこそいけないわ。私もね、今日こそ性別聞こうと思ったんだけどまだわかんないらしいの。ね・・・あなたはどっちが欲しい?」

どっち?男の子か女の子って事だよね・・・

考えたことはあるけど、それは総二郎ともう会わないと思っていたときだった。その時は真剣に男の子がいいって思っていたわ。
彼によく似た男の子・・・その子のために生きるつもりだったから、自分を励ます意味でも似てたらいいなって・・・でも、今はどっちでもいい。

元気だったらどっちでも・・・私の手が上手く動かなくても笑って許してくれる優しい子だったらいいなぁ・・・なんて、勝手なことを考えることはある。

「私はね、絶対に男がいいの!この子が男だったらね、私を捨てた男の家に跡取りがいないからさ・・・使えるかもしれないじゃない?それを狙ってるのよね!」

子供を使ってその家を狙うという明日香さんは私とは正反対・・・私はこの子がどっちであっても西門から守りたかった。
やっぱりこの人に近づいてはいけない・・・そう思った時に私の名前が呼ばれたから、明日香さんに軽く礼をしてその場を離れた。彼女がその時に睨むように私を見ていたなんて気がつきもしなかった。

**

「はい・・・いいですね。出血もないし、順調ですよ。少しは寝られていますか?まだまだ無理をしてはいけないけど牧野さんの場合は外科的なリハビリもありますからね・・・これからも注意だけはして下さいよ?雪が降始めたら特に外出は避けるようにね。
雪慣れしてないんでしょう?尻餅なんて一番危険ですから。それでは今日はいいですよ。この後は外科かな?」

「はい・・・傷口を見てもらうのと機能検査があります。では、そちらに行ってきます」

「次は1ヶ月後ですよ。お大事に」


廊下に出たら、もう明日香さんはいなかった。ホッと胸を撫で下ろして整形外科に向かっていた。

ここでも特に問題はなかった。首の傷はまだ痛むけど前よりは動かしやすくなって左側にも少し顔が向けられるようになったし、左腕も力はまだ入らないけど肩の高さまで上がるようになった。もちろんそこまであげると痛くて痺れも出るんだけど、前は全く上がらなかったんだもの・・・これはすごい進歩のように自分では感じていた。

「はい、いいでしょう。随分冷えてきましたから痺れが酷くないですか?しっかり温かい格好して身体を冷やさないようにね」

「ありがとうございます。・・・ちゃんと動くようになるんでしょうか。育児・・・出来るかな」

「牧野さん?こういう怪我は日にちが薬です。それは1年とか2年じゃないですよ?数年はかかります・・・ここまで神経を切ったらそれは仕方がないことです。焦ってもすぐには治らないものです・・・だから、協力してもらうんですよ?いい旦那さんじゃないですか!
甘えてしまいなさい」

優しい顔で諭すように話してくれる先生・・・もう、十分に甘えてるんですよ?でも、それが苦しいんです・・・そう言いかけたけど、言葉を飲み込んだ。私の悪い癖だ・・・良い方向に考えようとしない。

さぁ、総二郎が待つ部屋に向かおう。そして今日はお買い物をたくさんして帰らなくちゃ!
整形外科の先生に次の診察の予約をしてから診察室を出た。


********


「総二郎・・・お待たせ!両方とも無事に検査が終わったよ?どっちも問題ないって!」
「そうか!良かったな。やっぱり1人で待つのは退屈だな・・・ついていったらヤバいかな」

「大人しくしてないとダメだって・・・そうじゃないと怖い。どこで声をかけられるかって私がビクビクするから・・・。特に女の人って敏感でしょ?こんなに東京から離れてても安心できないよ」

総二郎は再び伊達眼鏡を手にして、私達は来たときと同じように手を繋いで病院を出ようとした。
ここは2階だったからエレベータなんて使わずに階段を降りようとしたその時、後ろから甘ったるいあの声が聞こえた。


「あっ!牧野さん、整形も終わったの?やっぱり今日も彼氏と一緒なんじゃん!」

振り向いたら上野明日香さんがどこから来たのか知らないけどにっこり笑って立っていた。
一瞬でわかった!この人・・・私が診察を終わって出てくるのを見ていたんだ!そして整形も。最後は総二郎の所に行くのも見ていたに違いない・・・そう思った。

何故か背中がゾクッとした・・・。


「今から彼氏と帰るの?いいなぁっ!私も自宅がここから結構離れてんだよね・・・送ってくれないかな!・・・ダメ?彼氏さん」

「あんた、前にも言ったよな?俺たちに纏わり付くんじゃねぇよ・・・悪いけど、俺の車に乗れる女はコイツだけなの!どれだけ席が空いてても誰も乗せねぇよ。自分でここまで来れたんだろ?じゃあ、自分で帰りな・・・じゃあな!」
「・・・そ・・・!」

総二郎って言いかけてやめてしまった!迂闊に名前を出せない・・・珍しい名前じゃないけど、今は話題になってるから!
私の右手は総二郎が握ってるんだけど、そこを明日香さんが見ているような気がする・・・「行こう」って総二郎が囁いたから、私が明日香さんから視線を外したとき・・・背中をトンって何かに押されたような感覚が!

ここは階段一番上・・・思わず身体が前のめりになって、ガクンと一段踏み外したような感じになった!
びっくりして声も出なくて、総二郎の左手にしがみついた!幸いにも踏み外したのは2段だけ・・・全身に冷や汗をかいた。

「危ねぇっ!・・・つくし、大丈夫か!」
「きゃあぁっ!牧野さん大丈夫?しっかり前を見ないとダメじゃないッ!落ちたら赤ちゃんがどうなるかわかんないわよ?」

「・・・・・・ご、ごめん。足が滑ったの」


そうじゃないわ・・・誰かが後ろから押したのよ!それって1人しかいないじゃない!だけど怖すぎて振り向けなかった。
そこでまた、笑ってるような気がするんだもの・・・!総二郎と結ばれた手がなかったら、ここを落ちていたかもしれない。
彼女は私が左側を向きにくいことも知っているはずだ・・・左腕が上手く動かないことももちろん知っている。

それにこんなに人のいるところで騒ぎは起こせない・・・総二郎のことがもし誰かに知られたら・・・!


「ホント、ドジだからな~!お前は・・・ほら、しっかり掴まっとけよ!」
「きゃっ・・・!ちょっと!」

総二郎がいきなり私をお姫様抱っこして階段を降り始めた!
ちょっとーっ!!これじゃあ余計に目立つじゃないのっ!1階の通院患者や見舞客から響めきが起こってるっ・・・っ!
私は慌てて彼の胸に顔を埋めて右腕はその服を握り締めた!

「もうっ!・・・降ろしてよ・・・こんなことしたら目立っちゃうよ?」
「もう遅い。多分、今ここにいる全員が見てる・・・ほら!お前は顔隠しとけ・・・俺は平気だから」

平気って・・・そんな事言ってっ!総二郎の顔を少し見上げた。


その時の総二郎は正面を見据えていて、とても落ち着いた強い眼をしていた。私のように怯えもせず、自信に溢れた眼・・・。
どうしてそんな眼が出来るの?総二郎の方が西門に探されてるんだよ?・・・もし見つかったら、連れ戻されちゃうよ?
それなのにどうしてそんなに綺麗な眼をしてるの?

1階についても降ろしもしないで、抱きかかえられたまま駐車場まで連れて行ってもらった。すれ違う人がみんな私達を見るのに気にもせず・・・誰もいなくなったから、声に出して聞いてみた。

「どうしてそんな目立つことしたの?何かあったらどうする気なの?」


「ん?だって、何よりも大事なもんってお前だから」


それ以外の理由なんてねぇよって・・・笑いながら、車までの道を総二郎と同じ目線でその景色を眺めた。


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Comments 10

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2017/11/18 (Sat) 12:17 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/18 (Sat) 12:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こ、こんにちは~💦

ホントに申し訳ない展開ですみませんっ!もう少し・・・もう少し待ってて下さいね!
必ず春が来ますんでっ!いつかはわかんないけど(笑)

新しい敵も現われるしで、つくしちゃん超ピンチではありますが、ここは総ちゃんが守ってくれるんで大丈夫!
で・・・あきらくん(笑)
お好きですもんねぇっ!でも、あきらくん最近出てこない(笑)

これはそろそろあきらくんのお話を書くしかないかしら?
クリスマスもあるし・・・ちょっと混乱中の頭の隅っこで考えてきます!

今日もありがとうございました!・・・すごく寒くないですか?お風邪には気をつけて下さいね♥

2017/11/18 (Sat) 17:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

もも様、こんにちは。ご訪問とコメント、ありがとうございます!

おぉ!そういう風にお考えでしたか!何者なんでしょうねぇ・・・。
まぁ・・・とんでもない人ですよ。そのうち総ちゃんが退治してくれるといいんだけど(笑)

何かの罠を仕掛けるかも?

そんな事より早く幸せにしてあげて!って声が多い中、またしても変な方向に走ってしまう私をお許し下さい(笑)

あの2人・・・何してるんでしょうか。類くんはしっかりちゃっかり何かしているかもしれませんけどね(笑)
実は雪ん子の格好して別荘近くに住んでいるとか?そんな類くんも可愛いかも~!
・・・はい、ごめんなさい。

真面目にこの恋の終点を考えております。
もう少しだけ見守ってて下さいね。

2017/11/18 (Sat) 17:20 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/18 (Sat) 23:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!爆笑!!

今度は船越・・・!呼んできましょうかね!2時間で解決できるかな!

でもね・・・よく考えたら後ろからトンッってドラマでもよくあるじゃないですか。
崖の上、歩道橋の上、神社の階段、公園の階段・・・

全然違うんだけど、高校生の時にとある有名なお寺に修学旅行の見学で行ったんですけど。
私・・・階段の一番上でつくしちゃんみたいに足滑らして前の子の肩を掴んだんですよ。
もちろんわざとじゃないですよ!?

そしたらね・・・その子が前の子に倒れかかって、とうとう将棋倒しになってすごい惨状になったことがあります。
一番下の子・・・埋もれてましたねぇ。

あの「背中トンッ」をドラマで見る度に自分の事を思い出します。
あ!ちゃんと謝ってますよ?お寺の階段が滑りやすかったのが悪いのよっ!

長く生きてると色んな経験するんですよね・・・(失敗談なら山ほどある私)

2017/11/19 (Sun) 09:39 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/19 (Sun) 10:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様!あはは~!

だってね、友達の肩を押してしまった犯人だけど、私はそれで立ち止まったから落ちてないんです。
私より前の子が将棋倒しなったので、一番上で見ていたの(笑)ありゃ?って顔してね。

もう一つ怖い事言うとね・・・。
高校生の時、学校行事で集団宿泊訓練っていうのがあって旅行じゃないんだけど、宿泊施設にとまって
みんなで色んな体験するってのがあったの。
その時のキャンプファイヤーで、松明作って火をつけて持ってたんだけど・・・

その松明持ったまま後ろにいた友達と話していたら・・・その火が別の子の背中に燃え移ってね。

体操服、焦がしました。

まぁ、怖かった!これは怖かった!
友達の丸焼きが出来るところでした!

もちろんお友達には火傷もさせていませんし、体操服は弁償しました。
そして話しかけた友達とともに反省文書かされました。

色々あるのよね・・・子供の時って♥

2017/11/19 (Sun) 11:01 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/19 (Sun) 11:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちはってか、おPluさんって(笑)

もうっ!お腹痛いってばっ!
先輩達もね、始めはplumeriaさんって書いててくれたんだけど、そのうちプルさんになり
ぷるさんになり、たまにぷるだけになり・・・(笑)

面倒くさい名前ですみませんってなります。でもGip様よりはいいと自分では思っています(笑)
実は私もいまだにGip様のお名前をカタカナでは書けません。

2017/11/19 (Sun) 17:38 | EDIT | REPLY |   

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