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「本気なんだ、牧野・・・俺にしとけよ。理由は知らないけど先輩と何か約束してるんだろ?でもさ、破っても誰も文句なんて言わないよ?」

思いっきり至近距離で囁くように小林くんはそう言った。確かにそうかもしれないけど・・・ね。


「誰も文句なんて言わないだろうけど私が困るのよ。誰にも頼らずに自分の力でやれって言われてるんだから。それで失敗しても後悔はしないけど、約束破ったら一生引きずりそう・・・そのぐらい大事な勝負なの」

「そんなに大事なことを試験結果なんかで決めるわけ?」

「成り行きだもん。でもいいのよ。こんな事で決めちゃいけないって思ってるけど、それでもこの期間は私達の間には約束事があるって事でしょう?なんて言うのかな・・・繋がってるような気がして嬉しいんだよね」

私の真横で呆れ顔の小林くんは「バカバカしい」っていいながら自分の席に戻った。そして、やる気を失ったのか無言で席を立って出て行った。

小林くんの言うとおりなんだよね。彼氏になってくれるかどうかを試験結果で勝ち取るってどうなの?ほぼ無理だってわかってるのに何でこんなにムキになってるの?万が一トップになったとして、それで恋人になってもらって嬉しいの?

ううん。答えはNOだよね。そんな事わかってる。
西門さんだって無理だってわかっててあんな事言ったんだって・・・ちゃんとわかってるよ。
だけどそれが今私が持ってる唯一のチャンスだもん!ほんの少し縮まってる気がする西門さんとの距離をもっと縮めるのよ!

「一度やるって決めたんだもん!頑張らなくちゃ・・・後のことはクリスマスが終わってから考えるわ!」


って・・・それでいいの?牧野つくし!!


********


図書室の入り口で出会した小林・・・生意気にもこの俺に勝ち誇ったような顔ででたらめな言葉を並べやがった。牧野が助けて欲しいってこいつに頼んだだと?そんなの俺が信じるとでも思ったのか!

「好きな女性が困ってるんだから俺としては助けたいんでね。いけませんか?」

「あいつは助けてもらって喜ぶ女じゃねぇよ。どっちかって言うとお節介で人を助けたがるヤツだ。それに1回やるって決めた事は絶対にやるヤツだから小林なんか邪魔なだけじゃねぇの?無意味に近寄ってもあいつには効かねぇぜ?」

「・・・側にいなくても牧野の事がわかるって言う口ぶりですね。恋人でもないくせに・・・!」

「はっ!恋人だって思ってても実は相手のこと何にも知らないってヤツらは結構見てきたつもりだけど?経験値ってもんがお前と俺とじゃ違うからな!」

そう言うと俺を睨みつけたが、そんな顔、正統派を装ってるお前には似合わねぇよ!悪いがこの俺に勝とうったって無理だな。
睨み返したら下唇を噛みながら俺の横を通り過ぎていった。バカなヤツ・・・こいつ牧野のこと、何もわかってねぇじゃん!


図書室に入ったらあいつがこの静かな部屋の中でただ1人、両手を上げて背伸びしてるのが見えた。そして何かブツブツ言いながら首の後ろのマッサージまで始めた。
ふんっ・・・あれが告白された直後の女のすることか!やっぱ小林の言葉なんて頭ん中素通りしたな?

「頑張らなくちゃ・・・後のことはクリスマスが終わってから考えるわ!」

は?なんだその独り言は!終わってから考えてどーすんだよっ!
まわりに全部聞こえてるって何回言っても懲りないヤツだな!俺が入ったのにも気が付いてないみたいだから脅かしてやろうと思って、俺は真後ろまで行くと牧野の耳元で囁いてやった。


「何やってんだ?牧野」
「・・・は?うわぁっ!西門さん!いつからそこにいるの?ずっと見てたの?」

「見られてマズいことでもしてたのかよ・・・さては誰かに教えてもらってたのか?俺との約束破っちゃった?」

いかにも何も知らないってフリして聞いてみた。どんな反応するか見たいってものあったし、勉強の進み具合も気になった。
あれだけバイトもして茶の稽古も休まないで大学では休み時間も全部勉強にまわしてる。それが俺の一言で始まったのかと思うと多少の罪悪感みたいなもんはあるんだ。
ただ、試験は来週・・・今ここで中止にする訳にもいかねぇからな!

「ま、マズい事なんて何もないわよ!誰も隣に座ってないし誰も教えてやるなんて言ってくれないし!ちゃんと1人でやってるわよ!」

誰も「隣に誰か座ったか」なんて聞いてねぇっての!バカ正直・・・わかりやすくて笑いが出るわ!


「どうだ?あと一週間だけど。自信の程は?」
「あるわけないでしょ!でもやるだけやるわよ。世の中には奇跡ってもんがあるでしょ?それに賭けるのよ!」

「お前、なんでもかんでも賭けてばっかりじゃねぇか!その一つが俺かよ・・・何かムカつくな」
「いいじゃないの。賭けてもらえるだけ有り難いと思ってなきゃ!馬だって年とって走れなくなったら可哀相な扱い受けるんでしょ?それと同じだよ」

「・・・馬?俺と馬が同じってのか!」

図書館だからそこまで声出して笑えねぇが、俺の事を馬呼ばわりして喜んでやがる。今まで色んなものに例えられたことはあるけど馬は始めてだ!師匠の俺に向って・・・マジ信じられねぇ!


「牧野、お前今日は稽古の日だろう?どうする・・・試験勉強するんなら休むか?」

「ううん、これも約束だからちゃんと行くよ。6時からでよかったよね?今日は夜にバイト入れてないから楽だよ。ちゃんとお稽古が終わったら勉強するから。見てなさいよ!私がトップになったからって焦らないでよ?ドタキャンなんて許さないからね?」

「焦るわけねぇだろ?取ってから言え!それじゃ今日も俺、時間わかんねぇから先に行っとけよ」
「はーい!」

心配なんかしてねぇけど、この様子だと小林とはホントに何もなかったようだ。今度はホッとしている自分が可笑しかった。


**********


図書館を出ていく西門さんの背中を見ていた。
相変わらずクールだなぁ・・・。もう頑張らなくてもいいから付き合おうぜ?とかって言いそうにないもんね。やっぱりあの夜の手の温もりって気のせいだったのかなぁ。
単純に心配してきてくれたんなら・・・嬉しいなって思ったのに。

その時、私のスマホにメッセージが入った。相手は・・・バイト仲間の恵美!なんだろう、土日のバイトのことかな?
滅多にしてこない恵美からのメッセージに首を傾げながら開いてみた。

『最近話さないけど彼氏の方は出来たの?嘘つかれたら困るから23日に彼氏を連れてケーキ屋の前に集合だからね!』

うわっ、なんてことを!・・・わざわざ確認のメッセージだったの?
試験は18日には終わって、23日にはもう結果が出てるわ・・・順位だなんて公表されないけど毎年トップテンだけは公開されるのよね・・・そこで一発でわかっちゃう。

「ヤバいわ・・・もう少し勉強しないと危ないかも!ゴホッ、ゴホッ・・・あれ?喉が痛い・・・ゴホッ!」


何だろう、背中もゾクゾクする。図書館ってこんなに冷えたっけ?
それとも誰かに噂されてる?・・・あ、あれはくしゃみか!

時計と睨めっこして今日の予定を確認する。よし、あとここで2時間勉強したら西門さん家に行こう!
私はもう一度気合いを入れ直してペンを持ち直した。



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2017/12/19 (Tue) 18:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

可愛いでしょう(笑)
これ読んだ後に「向日葵」読んだらがっかりするそうですよ(笑)
これから総ちゃんがグイグイと来ますから!(多分ね)

あらら!さとぴょん様も風邪っぽいんですか?
股関節が?何ででしょうね・・・腰は私もまだ悪いんですけどね!寒いからかな?

鼻血・・・久々過ぎてびっくりです。
うちの子はしょっちゅう鼻血出すんで、人のは見慣れてるんですけどねぇ。
自分が出たのは・・・何年ぶりだろう。

お互いに気をつけましょうね!
お大事に~!!

2017/12/19 (Tue) 22:57 | EDIT | REPLY |   

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