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茶道表千家西門流の若宗匠、西門総二郎氏の愛妻つくしが妊娠したのは今年の春、そろそろ出産予定日が近づいてきた。
つくし本人よりも数倍緊張気味の総二郎。今にも産まれてきそうな大きなお腹を抱えて邸内をウロウロするつくしの真後ろには必ず総二郎がいて、その世話焼きぶりに弟子達も苦笑いするしかなかった。

今月初めの総二郎の誕生日に起きた二つの事件、もとい二つの工事はこの西門邸の国宝級石庭に被害こそ出さかったが、多少へんてこりんなものに変えてしまい、そこを見る度に溜息が漏れる総二郎であった。
まぁ、今ではすっかり完成していつでも使えるようにはしてあるのだが、果たしてそこを一番初めに使うのは誰か・・・
自分の誕生日プレゼントとは名ばかりの余計な建築物を睨みつけながらの毎日であった。

しかも西門邸敷地外とはいえ、本邸庭園北側に見える何やら不気味な赤いクレーンが余計総二郎にストレスを与えていた。


今日はクリスマス。

今日の仕事先は総二郎氏の母校、英徳学園での特別講師。
終業式の前に生徒達に「心温まる話を・・・」と言われたが、当の本人の心はつくしの出産以外にはまるで関心がなく、世の中のあらゆることにも冷め切っていたのだ。一度は断わったものの、英徳もしぶとかった。
華やかだった彼らが卒業してからは目立った生徒がいなかったために、校長はたまにこうして女子生徒の気を引くために国内に滞在している総二郎を呼びたくて仕方ないのだ。

苦肉の策として家元に人間国宝作の茶碗をクリスマスプレゼントし、何とか家元命令という形で総二郎の仕事が決まった。
そんな25日の午前中、西門邸をとんでもない男が訪れた。


「・・・誰かいないのか!」

「はい、申し訳ございません、お待たせ致しました・・・あぁっ!あなた様はっ・・・!あ、あの、総二郎様なら本日はお仕事で外出でございますが・・・?」

「総二郎なんてどうでもいい。牧野はいるか?まだ産まれてねぇよな?ここに呼んでこい!」

「えぇっ!総二郎様のご不在の時に若奥様とは、ど、どなたもお会いさせるわけには・・・」
「・・・なんだと?もう一回言ってみろ。お前・・・誰に向かって口きいてんだ?」

「ひぇぇっーーっ!お、お待ちをっ!!」

この会話の後にのほほんとしたつくしが嬉しそうに現われたのは言うまでもない。


**********


「なんで1回断わったのに親父の命令でこんなところに来てるんだよっ!おかしくねぇか?クリスマスだからって何で俺がガキに心温まる話しをしなきゃいけねぇんだよっ!俺にはクリスマスなんて関係ねぇよ!」

「総二郎様お鎮まりださいませ!ほんの2時間ですからっ!」
「2時間もだっ!この2時間で俺たちの子供が産まれたらどうしてくれんだよっ!お前が責任取るのか?」

「おめでたい事への責任って・・・そんな無茶な!」


英徳学園の講師控え室で付き人を怒鳴り散らしてたら、狸親父がニコニコして来やがった!

「西門くん、今日は申し訳なかったねぇ、忙しいのにわざわざ来てもらって。おかげで久しぶりに出席率が良くて私も嬉しいよ!
本当にありがとう!そう言えばもうお子様が産まれるらしいじゃないですか。私からもお祝いをさせていただくから、お家元にも宜しく!」

「・・・産まれるのは俺の子供であって親父の子供じゃないですけどね!それに何やら親父が嬉しそうに桐箱抱えてたけど、校長が賄賂贈ったってことはないでしょうね・・・もし、今日の事で裏取引があったら二度と来ねぇけど?」
「そっ、そんな事はないですよ!あっ・・・そろそろですね!それでは宜しく!心温まるお話しを頼むよ!」

校長は禿げた頭に汗かきながら出て行きやがった!やっぱりあの桐箱は校長か!くそ・・・っ!


無茶苦茶頭にきていたが仕方がない。
時間が来て俺は講堂のそでに待機して、紹介アナウンスされるのを待っていた。



『それではこれより当学園の卒業生で現在は茶道西門流の次期家元でいらっしゃいます、西門総二郎先輩からお話しをいただきたいと思いまぁーす!』

すっとぼけた進行係の呼び出しに思わず転けそうになったが、さすが英徳学園・・・この俺の名前を聞いて前回とは違う悲鳴のような叫び声が講堂内に響き渡った!そりゃもう川口の婆さん達とは雲泥の差!何処かのアイドルよりも凄くねぇかってくらいの歓声に少し気分も良くなろうってもんだ。

つい得意の角度で流し目なんて送って、気絶するヤツまで出る中、舞台中央まで進んだ。


講堂のド真ん中でマイクに向って一言。

「ただ今ご紹介いただきました西門総二郎です。今日は皆さんに心温まる話を、と言うことで・・・」

PPPPP!!
この時俺の懐で例のごとく鳴り響いたのが、つくしに緊急事態があったときに使われるEMGスマホ!
そう・・・この時俺は思いだしたんだ!うちの北側庭園に真っ赤な巨大クレーンや真っ赤な大型重機が入り込んで、何かドデカいものを作っていたのが今日になって静かになっていたことを!

そうだ・・・、あの赤い軍団!もしかして今日がその日かっ!
俺はいきなり壇上の椅子から立ち上がって舞台から走り出ようとした!

「西門先輩、まだお話しが全然終わっていませんわっ!心が温ませーんっ!」
「馬鹿野郎っ!!温まりたかったら惚れた奴と抱き合っとけっ!!んなもん常識だっ!」


とんでもない奇声が上がったけどそんなものは知らんっ!
講堂の舞台そでに入ったらそのスマホを耳に当てた!来たヤツの名前なんて聞かなくてもわかる!

「俺だっ!今度はあいつか!・・・もしかしてうちの北側にとんでもないものが出来てるんじゃないだろうな!」
『あぁっ!総二郎様、それがその通りでして、あの方がつくし様を連れてそこに行かれたのです~!』

「何だとっ!つくしはもう予定日間近だぞ!家から出すとは何事だ!すぐに帰るっ!」

俺は講堂から飛び出して廊下に走り出た!
そこではすで弟子が予め用意していたヘルメットを投げ渡してきたので、走りながら受け取り、正面玄関に待機させていた俺の愛車ハーレーに飛び乗って西門本邸に向った!

いつの間にか弟子達も慣れてきてんな?


**


本邸についてから、いつものように着物の裾を持ち上げて廊下をものすごい勢いで走った!北側の庭園奥が見えるところ・・・!
そして庭園が一望できるところに来て、俺はその北側を見て唖然とした。

昨日までなかったものがある。
いや、正確に言えば昨日まではシートに覆われて見えなかったんだ!


そこに慌てて近寄ってきたのはつくしを任せていた弟子の1人。

「あぁっ!総二郎様、お帰りなさいませ!申し訳ございません、あの方が急にお見えになって若奥様は何処かと言われましたので、つい、あの顔に負けて若奥様に引き合わせてしまいました!」

「アホか!何のためにお前達を何人もつくしにつけてると思ってんだ?それじゃあ意味ねぇだろうが!野獣から守れっていつも言ってるのに・・・ところで、あれは何だ。俺の眼がおかしいのかな」

「・・・いえ、総二郎様、私にもハッキリ見えます」


俺の視線の先・・・この優雅な西門庭園の向こう側にものの見事にアンマッチな建造物が見える。
左側を見たら書道家が書いた看板、「スパ・リゾート西門」があるし、振り向いたら・・・ここからは見えないが数寄屋造りの子供部屋も出来てる。


おかしくねぇか?
ここ、誰の家だ?

そんな事言ってる場合じゃなかった!俺は急いであの巨大な「建造物」に向かって走った!


「司ーっ!!てめぇ、何回人の嫁を誘拐すりゃ気がすむんだーーっ!!」


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2017/12/25 (Mon) 18:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あはは!惜しいっ!が、そんなところですよ!
もう西門邸ボロボロ・・・いや、道明寺が建てたのは自分の土地ですけどね。

「スパ・リゾート西門」・・・明日の名前も意外と笑えると思うんだけど(笑)
私はお気に入りです。類の子供部屋にも名前つけりゃ良かったなーっ!!

「寺子屋」に似せて「類部屋」・・・相撲かっ!!


で、ほとんど道明寺は出てないと言うオチ!明日はちゃーんと出てきます!
さて・・・どんな登場シーンかが問題だわ!総ちゃん、可哀想状態です(笑)
でも、「独りぼっちのクリスマス」でいい思いしたから良しとしましょうっ!!


こんなふざけた話の1時間後・・・「向日葵」ですから。チーン・・・

2017/12/25 (Mon) 19:49 | EDIT | REPLY |   

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