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日曜日になって私は朝早くからお店で支度をして、職人さんとアランと一緒にホテルに向かった。
ここでお昼に行われる日本企業のパーティーのデザート担当で、会場に用意されたスペースでお客様にケーキをお渡しする役目、フランスでは”セルヴィーズ”って言われてる。でも、着るものはギャルソン風の上下でスカートじゃなかった。
招待されているお嬢様達を引き立てるためにも、あえてギャルソン風にするんだそうで、私も動きやすいから助かった。

始まるまでは厨房でお手伝いして、これでもかっていうぐらい綺麗に飾ったケーキやデザートを盛り付けていった。
もうすぐパーティーが始まる時間になって、慌ててエプロンを外して会場の隅に行って待機。すでに何人かのお客様が入っていて、綺麗なドレスを身に纏ったお嬢様が沢山いた。

いいなぁ、あんなドレス。1回でいいから着てみたいもんだわ。


多分、羨ましそうにお嬢様達を見てたと思う。小さな溜息一つついてケーキを配置していった。
沢山のお花に囲まれたデザートコーナーはこの会場でも目立っていたから、そのうちすごく忙しくなりそう・・・フランス語で聞かれたらどうしようっ!お願いだから日本語で聞いてよねー!って心の中で叫んでいた。

会場に背中を向けてお皿の準備をしていたとき、少し甘い感じの声が聞こえた。

「失礼・・・あの、これは何かしら?教えていただける?」

日本語!良かった・・・って会場に向き直ったら、そこにはびっくりするほど綺麗な人が立っていた。柔らかそうな髪を巻いていて、チューブトップのサーモンピンクのドレスを着ていた。胸元に光るのはダイヤモンドだろう、ゴージャスすぎて眼を見開いてしまった!
ニコッと笑う目元はやっぱりピンクとゴールドのアイカラーで深紅のルージュが大人っぽかった。

「あの・・・聞いてる?これ、何のケーキかしら?」
「あぁっ!ごめんなさい、見とれてしまって!えっと、これはスポンジの外側にココナッツフレークをまぶしたもので上にはキウイのシロップ漬けを載せています。こちらはラム酒のケーキですね。あと、こちらは桃とヨーグルトクリームで薔薇を象ったものです。どれも美味しいですよ。お取りしましょうか?」

「えぇ、そうね。ちょっと待って、彼を呼ぶから・・・類、ちょっと来て?とっても可愛いのがあるわ!」

あぁ、やっぱり彼がいるのね、そりゃそうだわ!いない方がおかしいわよね。こんなに綺麗な人だもん、彼だってすごく素敵な・・・


「静、どうかしたの?ケーキなら俺は・・・あれ?君、あの時の・・・」


すごく素敵な彼がいるって思ったら、あの時の彼が人混みの中から出てきた。るい・・・ってこの人の名前なの?

「あ、あの、こんにちは!この前はありがとうございました!」
「ううん。あれからはどう?もう盗られてない?」

「はいっ!そりゃもう、大事に抱えて歩いてますから!えっと、ケーキはどれをお取りしましょう?」

彼の後ろにいた女性は不思議そうに私達を見ていた。でも、私が説明するのもおかしいし・・・って考えていたら彼がその女性に説明をしてくれた。

「彼女はね、先日パリの路上でスリに遭って全財産盗られちゃったんだけど、そのときに俺が居合わせたんだよ」
「まぁ!そうなの?怪我はなかったの?最近はパリも物騒だから嫌だわ。・・・で、彼女のお名前はなんて言うの?」

「そうだ!俺も聞いてなかったよね?君、なんて言うの?」


「牧野つくしと申します。この夏からパティスリー『プティット・アモール』で働いています。あの、私もお名前、聞いてなくて・・・」

今度は彼女の方が彼を紹介してくれた。私は彼に聞いたつもりだったのに。

「彼は今日のパーティーの主催者の息子さんで花沢類っていうの。フランスと日本を拠点に事業展開している花沢物産のご子息よ。すごく素敵でしょう?ふふっ!実は今日、ここに来ているお嬢様達は類の花嫁候補なの。だからみんなすごく張り切ってるのよ。ね、とっても華やかでしょう?」

「静、余計な事は言わないでいいよ。えっと・・・牧野さん?ごめんね、適当にとってくれる?君のお薦めでいいから」
「あっ!はい、わかりました。少し待ってて下さいね!」

名前を呼び捨て?って事はこの2人はそういう仲なのかしら?でも、会場のお嬢様もみんな花嫁候補って言ったよね?
こんなに素敵な人だもの・・・無理ないかも。私は必死で笑顔を作って、胸の奥がチクチクするのを我慢していた。

ケーキ専用の可愛らしいお皿に今日のために作ったケーキをいくつか載せて、静さんという女性に手渡した。彼女は可愛い!を連発しながら彼と一緒にまた会場の奥へと戻っていった。


なんて言ったっけ・・・花沢類、だっけ?
あの人、こんなパーティーを主催するような会社の息子さんなんだ。どおりでいいスーツ着て、颯爽とあの高級オフィス街に向かって歩いて行ったんだね。そりゃあんな金額ポンって貸してくれるわけだ!ん?お金・・・?あーーーっ!!

借りたお金のことを言うのを忘れてたっ!言わなきゃ!あのお金、ほとんど遣ってないから返さなきゃ!
そう思ったけどケーキコーナーに沢山の女性が詰めかけるから全然身動きが取れなくて、そのうち花沢さんがどこにいるんだかさっぱりわかんなくなった!


********


引ったくり被害に遭った牧野って名前の女の子を偶然パーティー会場で見つけた!何故だかわかんないけど嬉しかった。
自分の周りにいないタイプだからってだけじゃなくて、何故かすごくあの子の事は興味があるんだ。

チラッとみたらすごく真剣な顔でケーキと格闘してる。学生じゃなくて働いてたんだね。でもまだ若いだろうに。1人暮らしなのかな?彼氏とか・・・いるのかな。いろんな事を想像してあの子から眼が離せなかった。
そんな俺の前にシャンパンのグラスをヌッと差し出して、悪戯っぽく笑う静がいる。彼女は俺の幼馴染みで同じくフランスに滞在している藤堂家の一人娘だ。すでに彼氏がいて、今では俺の事を手のかかる弟ぐらいにしか思っていない。

今日も母さんに頼まれたのか俺の相手を探そうとして本人よりも必死だ。まぁ、それも静の自己満足なんだけど。

「あら?類ったらあの子が気になるの?珍しいわ、そんな顔で女の子を見てるだなんて!ここにいるお嬢様達を敵に回すわよ?
あんまりあの子ばっかり見つめていたら良くないわ。少しこっちにいらっしゃいな」

「どうして?見てるだけで何がいけないのさ」

「自分の立場をわかってないのね!表向きは夏に完成した複合施設の記念パーティーになってるけど、本当はおば様があなたのために開いた婚活パーティーみたいなもんなのよ?だから私にも出来るだけ沢山友達を連れてくるようにって電話があったんだから!まったく・・・世話が焼けるわね!」
「マジで?そんな事言ってたけど考えてもいなかった!」

婚活パーティー?まさかそっちがホントの目的だったって言うの?

よく見たらほとんどが女性で、男性といえばその親ぐらいの年齢ばかりだ。そして俺に話しかけたそうな女性がさっきっから不思議な視線を送ってくる。助けを求めるような気分で静を見たら、さりげなく俺の腕に絡みついてきた。

「どうして腕なんて組んでるのさ、静」
「こうしていたら誰も声をかけないでしょ?有り難く思いなさい」

確かに。静がくっついていたら諦めたように俺の近くから女性が去って行く。静の友達は寄ってきてすごく話しかけて来るんだけど、その人達には静が間に入って適当に会話を進めていた。だけど俺は上の空で何を話したかも全然覚えていないんだけど。


あの子に話しかけたいけど俺がケーキ取りに行くのも抵抗あるし。・・・って言うか食べられないから逆に困る。
美味しかったですか?なんて、もし聞かれても返事できないじゃん。

「どうやって彼女に声をかけたらいいと思う?この会場内でそんなことしたら騒ぎになるかな」

「そうね。パーティーが終わってからにしなさい。どうせ彼女は最後までここにいるわよ。向こうは働いてるんだからチャンスは逃さないようにね。今は向こうを見ないようにして、それでも最後まで見逃さないの!いいこと?」

「・・・すごく難しいんだね。声をかけるって」

「うふふ!私は相手がどなたでも類が女性に興味を持ってくれただけで嬉しいわ!私ね、技術を持ってる人って好きなの。
ほら!見過ぎてるとあの子がお嬢様達の標的になるわよ?視界の端っこで見なさいってば!」

「無茶だよ、そんなの」


見ないようにするなんて無理だった。
俺はパーティーの間中彼女を見ていて、一生懸命な姿に笑ってしまったんだ。可笑しかったわけじゃなくて、何だか暖かくなるんだ。変だよね?向こうはすごく真剣に働いているのに、その姿は俺の心をほんわかとする「何か」で包んでしまうんだ。


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2017/12/11 (Mon) 12:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

もちろんです!静嬢フリー野放し状態はあまり書きません!きりっ!
仕方なく登場いただくことはありますが、基本こんな感じ!

お茶目な設定なら書いても大丈夫!
(と、いうことで総ちゃんに更さんや優紀ちゃんがほぼ出ないというのも同じ理由)

むふふ!初デートですよ♥
いきなり再会してデート!パリのことがわかんないからいまいちだけど、
甘々で行かせていただきます!

お楽しみに~!

2017/12/11 (Mon) 20:24 | EDIT | REPLY |   

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