FC2ブログ

plumeria

plumeria

夕方になってやっとパーティーはお開きになった。
日本人が多かったから特に言葉でも困らずに何とか無事に終わって会場内で後片付けをしていた。さっきまでここを埋め尽くしていた華やかなお嬢様ももう誰もいない。あの静さんという人もにこやかに手を振ってここを出ていった。

ケーキもほとんどがなくなってホッとした。でも、何処か心が寂しくて動かす手が遅くなる・・・彼の本当の姿を知ってしまったから?
お金に苦労してない人だとは思ったけど、まさかこんなに自分とかけ離れた人だとも思わなかった。

「ツクシ、なにしてるの?帰るのが遅くなるよ?」

アランに急かされながらゴミを片付けていた。その時、真後ろから優しい声が私の名前を呼んだ。


「牧野さん、お疲れ様!仕事終わった?」

まだタキシードのままの花沢さんが目の前でニコッと笑ってる・・・その綺麗な瞳はあの時と同じで、見つめたら魔法にかかったように動けなくなってしまう、なんてお伽話のようなことを考えてしまった!

「うわぁっ!は、花沢さん!あぁ、丁度よかった!お話しがあるんです!」
「うん、俺も話がしたくて待ってたんだよね。この後、食事に行かない?」

「はっ?!食事・・・ですか?」

この超格好いい人の前でゴミ袋持ったまま固まってる私・・・自分でもポカンって口開けてるのがわかるけどその言葉に頭が真っ白になってしまった。

「何時頃自由になるの?ここの下のロビーで待っててもいい?」
「あっ!でも、一度お店に帰って片付けないと。私まだ見習いだから先輩にそんなことさせられないわ」

そっか・・・って考え込んだ彼は、急に何か思いついたかのように笑顔になった。

「じゃあさ、出会った記念の場所に6時でどう?そこで待ってるから来てくれる?服装は普通でいいからね!それじゃあ!」
「あぁっ!花沢さんっ!」

まだ返事もしてないのにさっさと帰って行ってしまった・・・うそっ!いきなりあの人と食事になんて行けないよ?それに先に出ていったあの美人はどうするの?あんな人がいるのに私とご飯なんて食べても美味しくないって!
そう叫びたいのに花沢さんの背中はどんどん遠くなっていって、廊下の曲がり角まで行くと振り向いて片手をあげられた。

「ツクシ、どうしたの?店に帰るよ」
「あぁっ、アラン、ごめんなさい!全部運ばせてしまったのね?」

「いいよ。ツクシに重い物を持たせちゃ可哀相だからね!今日はよく頑張ったね。説明もよく出来てたじゃないか」
「うん、日本語がほとんどだったからね。ありがとう!」

アランと職人さんと一緒にお店に帰ったのは5時だった。普段ならとっくに終わって帰っている時間だから急いで道具を片付けて、
焦りすぎてお皿をひっくり返した!「大丈夫?」ってアランに不思議そうな顔されて、それでもソワソワしてドジばかり!

「ははっ!もういいよ、ツクシ。そんなんじゃ逆に俺たちの手間が増えるからもうお帰り。何か予定があるんだろ?」

先輩の職人さんにそう言われて顔が真っ赤になってしまった!でも、本当に遅れそうだったから頭を下げて帰り支度をした。
そして花沢さんに言われた所に走って行ったの。いや、まだ10分ぐらい早かったんだけどね!待たせちゃいけないって思って走ったのに、もうそこには彼が立っていた。

今度はカジュアルな格好してる。薄手のセーターにジーンズ・・・それなのにすごく格好良くて、まるで天使みたいだって思ったの。背中に羽でも生えてるんじゃないかしら。本当にそう思ったの。

彼は走ってきた私に気が付くと、寄り掛かっていたビルの壁から離れて私に手を振ってくれた。その時の笑顔ったらもう・・・!
なんて言うのかしら・・・心臓に矢が刺さったかのようにドキッとさせられて、危うく1人で転けるところだったわ!

「ごめんなさい!待たせたんですね?花沢さん!」
「ううん、待ってないよ。さっき来たところだから。行こうか?」

「・・・・・・」
「・・・どうしたの?」

いや、だって行こうかって手を差し出されてるけど、この手を私がとるの?すごく綺麗なその手を取るのに戸惑った。
何故なら私の手が洗い物で荒れているから。小さな火傷の跡や切り傷とかも結構あってこんなに綺麗じゃないもの。そう思っていたらスッと手を伸ばされて、サッと手を結ばれた。

「こうしていたらスリが近寄らないよ?クスッ・・・警戒したんでしょ?」
「あっ、いや、そういうわけじゃなくて、手が荒れてるから恥ずかしくて・・・」

「そうなの?気にならないよ」って笑って歩き出した花沢さん・・・見上げたら、彼も少し顔が赤いのかな?照れたように笑っていた。


*********


彼女を連れて来たのはパリの中心にはあるけど、いたって普通のフレンチの店だった。彼女のことはよく知らないけど、ドレスコードのあるような店じゃ気になって食べられないだろうと思ったから。
予約をしていたのは窓側の特別席で小さな薔薇が飾られていた。そこに座ると彼女は店内を見回して何だか嬉しそうだった。

「気に入った?ここ、結構美味しいんだよね。今日はコースを頼んでいるから気にしないでね」
「あの・・・でも、高いんでしょ?私、余裕がなくて・・・」

「あぁ!それも気にしないで?俺が無理に誘ったんだから。それよりなんて呼んだらいい?牧野さん以外で」

「呼び方?あぁ・・・じゃあ名字を呼び捨てで。昔からみんなそう呼んでたから牧野さんって呼ばれるの、実は苦手なんです」

「そうなんだ、じゃあ牧野って呼ぶね?俺は類だけでいいよ。さっきから花沢さんって言ってるでしょ?実は俺も苦手!」

あははっ!って元気よく笑って、それから俺たちはお互いをそう呼び始めた。


フレンチのコースはオードブル(前菜)から出てくる。どれも可愛く飾られているから牧野はそのオードブルを眺めるだけで食べようとしないんだ。「綺麗すぎて食べられない」って言うから俺が突っついて形を崩すとほっぺたを膨らまして怒った!
続くスープはポタージュ。その後のポワソン(魚料理)は舌平目のムニエル、ソルベ(口直し)にはシャーベットが出た。

「どうしよう・・・こんなに美味しいの食べたら明日からなにも食べられないよ~!」
「あははっ!じゃあ、また来ようよ。いつでも連絡して?食べたくなったら連れてきてあげる!」

ヴィヤンド(肉料理)には牛肉のシチューが出てここではデセール(デザート)は一種類。牧野はこれが専門だから興味はあるだろうけどいつでも食べられるしね!でも、さすがこの時は真剣に見ていた。

「牧野はお店でケーキを作ってるの?」
「ううん。まだそんな実力はないから雑用っていうか、飾るぐらいかな?仕上げとかね」

コースの最後はカフェ・ブティフール(コーヒーと焼き菓子)。

ここでやっと牧野の話を聞き始めた。

「私ね、パティシエになりたくて・・・小さい頃からそれが夢だったの。でも、家が貧乏だったから学費を出してもらえなくて、奨学金で専門学校に入って、やっとフランスに留学できたんだ。多分スッゴい幸運だったと思うの。今のお店も紹介してもらって働かせてもらって。普通は有り得ないのよ?パリなんて私達の世界じゃ競争激しくて中々お店も雇ってくれないから」

「こんなに沢山パティスリーがあるのに?街の至る所で見かけるけど雇ってくれるところが少ないの?」

「フランスの人が働くのも大変な時代なんだって。それに私みたいに外国人だと言葉の壁があるでしょう?日本人が来たときにはいいかもしれないけど、そんなことも多いわけじゃないもの。味覚っていうのも東洋人と西洋人は違うから」

「ふーん、そうなんだ。苦労してんだね」

「苦労?ううん。夢のためだから苦労だって思ったことはないわ。ただお金がないのが・・・あーーっ!!また忘れてた!」
「えっ?何?」

急に大声出して、店内の他の客も全員こっちを見てるけど、お構いなしにバッグをガサガサとさせて封筒を取りだした。そして俺の前に差しだして頭を下げた。

「これ、この前お借りしたお金なの。ほとんど遣っていないから取り敢えずこれだけはお返ししたくてずっと持ってたの!
良かった~!返せて・・・もう、毎日このバッグ抱えて歩かなきゃいけなくて大変だったの!」


どうしてかな。
これをすごく寂しく感じてしまったのは。

「でも、困るんじゃないの?」

そう言ったときににっこり笑った牧野の顔が、俺が今まで見てきた女性の中で一番綺麗だった。


WAINN.jpg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/12 (Tue) 18:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

ええっ!!る、類そっくりの彼?
そんなん連れて帰ったら即結婚させます!そして同居!
類似の彼のパンツは私が洗いますともっ!!えぇっ!張り切って!

お部屋は隣。一応気を遣って。でも、夜は見張り番します。
結婚させてもお預け状態(笑)
抱き付く以上に嫌われる姑ですわね!ほほほっ!


今日は初めから○なんですね!(笑)

もう一回言いますと、知識・経験としての行為です。
想像もしてはいけません。下手・・・では困るだけです。(くどいけどそこ重要!)
間違っても「どうしたらいいのかわかんない!」ってことじゃいけません。リードはしなきゃね!
そして私の中では相手は絶対に静ではありません。(ここも重要!)それなら加代の方がまだいい!

さとぴょん様もそうなんだ!
タイトル見ても記憶消去!(笑)そりゃすごい!
確かに超危険です。見ても触れてもいけません・・・ましてや文字には出来ません。
私のパソコンではその名前た打てないようになってます。(どんなんだ!)



2017/12/12 (Tue) 19:30 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/12 (Tue) 21:25 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/12 (Tue) 21:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様(爆笑!)

見張るよっ!だって類似の男と娘が・・・とか考えたら我慢できないでしょ?
似てるんだから2日に1回は私でどうかな?なーんて言ってみたりして!

裸で家を・・・。

もちろん生でも見ますけど、即監視カメラ設置ですね!24時間態勢で見させていただきます!
私、常にココロは解放してますから(笑)
ただし、暗闇でしか脱げません。類似のお兄さん・・・ごめんね?お母さん、シャイだから!

2017/12/12 (Tue) 23:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、想像したの?

「類様、宜しいですか?ここが・・・ですよ?で、この時に女性が・・・になったら男性が・・・ってして、聞いてます?類様!」
「加代それって絶対に必要なの?練習しないとダメなの?」

「類様っ!女性に・・・してはいけません!こういうのは男性が・・・しなくてはっ!さぁ、もう一回いきますよっ!」
「加代、服着ちゃダメ?」


総ちゃんの件、了解しました。
でも、私がその前に狂って死んじゃうからないと思います。

2017/12/13 (Wed) 00:01 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply