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12月になって私は4ヶ月目に入った。検診結果も悪くない。これから後期に入るまで1ヶ月おきの検診でいいだろうと言われ、整形外科の方も機能回復は順調で特に問題はないとのことだった。

問題はなくてもまだ完全には動かせない。ようやく苦労せずに肩の高さまではあげられるようになったけど、それ以上になるとビリッとした痛みが走った。まぁ、それを我慢すれば多少は高い所の物をとることも出来るけど、重たい物を持つことは全然出来なかった。
首も同じ・・・左側に向けてもそこまで痛みはなくなった。だけど急な動きには対応できない。


そして今日は総二郎の誕生日。

前からの計画で1人でチョコケーキを作るんだ!
だから総二郎には朝から旭川の方までお買い物を頼んでいた。もう外には雪が降っていて銀世界が広がっている。でも、総二郎の車なら心配ないって言ってたからきっと大丈夫だろう。頼んだお買い物の内容・・・それに少し迷わせるとは思うけどね。

「コホッ・・・あれ?喉が痛い・・・コホンっ!風邪かな・・・でも、風邪薬って市販のはダメだもんね。病院でもらっとけば良かった・・・」

少し風邪っぽかったけど総二郎が帰るまでには終わらせたくて急いで支度をした。
急いでもこの腕だから時間がかかるんだけど・・・取り敢えず材料を全部並べてみた。

この前買っておいたブラックチョコを使って今日はザッハトルテを作るの・・・これは、以前総二郎が唯一2個食べてくれたケーキだから自信があるんだ!
無塩バターに卵黄、粉砂糖にココアパウダー、それと薄力粉。・・・よし!じゃあ、作ろうかな!

オーブンの温めやチョコの湯煎なんて下準備をしてから、さっそくチョコレート生地作りに入った。本当は手で加減しながら泡立てたかったけど、それは無理だから泡立て機を使って進めていった。
左手では力を入れてボウルを支えられないから、身体や肘や、使えるところは全部使って一生懸命に混ぜる・・・こんなにケーキを作るのに体力が必要だったかしら・・・!
汗が流れて手も痺れるんだけど、総二郎の顔を思い浮かべながら頑張った!

やっとの思いで生地を作ってから、次にチョコレートグラサージュにとりかかった。もうここで1時間以上は予定をオーバーしてる。モタモタしてたら総二郎が帰ってきてしまう。自然と私の気持ちは焦ってきた!だって、完成してから見せたいじゃない?

「コホン!コホッ・・・何だろ・・・ぼーっとする・・・熱があるのかな・・・でも、もう少しだし!頑張れ!つくしっ!」

自分で自分を励まして最後の仕上げにかかった。

生クリームを沸騰直前まで温めてから、刻んだブラックチョコに加えて、暫く置いてからゆっくりと混ぜ合わせる・・・ここで空気が入らないように慎重に混ぜるのが綺麗に仕上げるコツ!
少し息が上がってきたけど、神経を尖らせてこの作業を続けた・・・後はこれをケーキ生地に一気にかけて隙間を作らないようにするだけ!

「よしっ!今回も絶対に美味しいわ・・・総二郎、喜んでくれるかなぁ・・・!」


何だろう、手が震える・・・眼が霞む!目の前のケーキが二重に見えるよ?
それでもゆっくりと生地にグラサージュをかけていって・・・後はこのまま冷ますだけ。ここの室温だと暖房のないところで冷ませばいいわよね。


「あれ?・・・やっぱりおかしい?イヤだ・・・私っ!」

全部出来上がったと思った瞬間、突然目眩のような感覚に襲われてキッチンの床に踞った!私の視界にはキッチンの床とテーブルの脚しかなくて、そのうちガクッとその場に伏せてしまった。


いやだ・・・!赤ちゃん・・・私の赤ちゃんは?大丈夫なの?・・・総二郎っ!助け・・・て!

床の冷たさがむしろ気持ちいいくらい・・・そこまでは覚えているけど、その後の記憶がなくなってしまった・・・。


********


「何で今日に限ってこんなに買い物させられてるんだ?しかも全然わかんねぇ。何だよ!この手縫い糸のピンク色!どこに行きゃあこんな物に出会えるんだ?それに何だ・・・オーガニックコットンの生地のクリーム色?なんだそりゃ!風呂用の洗剤とトイレ用の洗剤・・・で、ナツメグに薄力粉に白味噌?・・・あいつ、俺がわかんないものばっか書いてねぇかな・・・」

つくしからもらったメモを見ながら全然見当つかない売り場を彷徨うこと1時間・・・頭にきて、とうとうそこら辺にいた店員を1人捕まえて全部案内させた。クスクス笑われたけど仕方ねぇよな・・・マジでわかんねぇんだから!
後はまた食料品の買い出しだが、これはかなり慣れた。米は宅配してもらえ・・・だと?そのぐらい抱えて帰りゃいいんだろうが!

しかも、了解してきたのはいいが、これって旭川まで来る必要ないんじゃないか?名寄で揃えられるだろう・・・!
俺はブツブツ言いながら頼まれた買い物一式を車に積んで別荘へと急いだ。

「げっ!もう昼過ぎてるじゃねぇか。どおりで腹減った!つくし、1人で飯作ってんのかな・・・今日は何だろ?」


暢気に運転しながら名寄まで戻って、別荘の駐車場に車を停めた。いつもなら車の帰った音でつくしが出てくるのに今日はそのドアが開かない。それを少し不思議に思ったがキッチンで手が離せないんだろうと思って、たいして気にもせず荷物を降ろした。
その音を聞いても奥から何の反応もないから大声で叫んでみた。

「おーい!つくしー?今帰ったぞー!・・・あれ?」

それでもなんの音もしない・・・流石にこれはおかしいと思って荷物をその場に置いたままリビングのドアを開けた。


「つくし・・・?どこだ・・・つくし?」

ここには2階はない。この部屋にいなかったら寝室かキッチンか・・・俺は少し緊張しながら電気がついてるキッチンに向かった。
何だか甘い匂いがする。なんだ!やっぱり何か作ってたんだ。夢中になって音に気が付かなかったのか・・・そう思った。

「つくし、そこにいるのか?なにやって・・・・・・」


そこで目に入った光景に心臓が止まりそうになった!

つくしがキッチンのテーブルの下に身体を横向きにして倒れている・・・見た瞬間死んでるのかと思うぐらい身体が硬直した・・・!
テーブルの上には作ったばかりなんだろうかチョコケーキがあったけど、その回りは片付けられてもいない。おそらく作り終えてからこの場に倒れ込んだんだ!

「つくしっ!おい、どうしたんだ!つくし・・・え?熱い・・・熱か!」
「・・・ん?・・・そ・・・う?」

「何してんだよッ!この大馬鹿野郎っ!!具合悪いんなら寝とけよっ!・・・いや、違うな、病院に行くぞ!」

俺は慌てて毛布を掴んできてそれにつくしを包んで抱きかかえ、ドアなんて足で蹴り飛ばして車まで急いだ!
つくしを助手席に寝せてシートベルトで固定し、急いでこの名寄にある産婦人科に向かう!これは旭川の総合病院から緊急事態の時に行くように言われている診療所だ。つくしのデータはその病院にも送られているそうだから連絡もせずに車を走らせた!

助手席から聞こえる苦しそうな声が俺を焦らせる・・・凍った道路に慎重になりながら、俺の額には汗が滲んだ。

そこの診療所には15分ぐらいで辿り着いたがちょうど昼の休診時間だった。でもここで引き下がるわけにはいかない・・・俺は毛布ごとつくしを抱きかかえて病院の入り口で大声を出した!

「すまないが大至急看てくれないか!高熱で倒れてたんだ・・・頼む!誰か、誰かいないか!」

奥からパタパタと足音がして看護婦が1人出てきてくれた。

「どうしました?先生はお昼休憩なんですけど待てない感じ?」
「待てねぇな・・・すまないが呼んできてくれないか?コイツが家の中で倒れてたんだけど、いつから倒れていたのかわからない。ただすごい熱があるんだ・・・ちょうど今は4ヶ月目らしいから、まだ危ないんだろう?どうにかして助けたい・・・先生を頼む!」

看護師は俺の腕の中にいるつくしの様子から緊急事態を感じ取ってくれたのか、今度は大急ぎで医者を呼びに行った。
ここの医者はすぐに看てくれるらしい。つくしは看護師が持ってきた車椅子に乗せられ、診察室に連れて行かれて処置が行われた。奥の方から若そうな医者がやってきて白衣を羽織りながら別のドアから中に入って行く。数人の看護師もバタバタと現われた。


当然俺は廊下に出され、ただ椅子に座って診察終わるのを待つしかなかった・・・その時間がどれだけ長かったことか!
30分ぐらいしたらカチャっとドアが開いてさっきの看護師が出てきた。


「牧野さん・・・のご主人ですか?えっと・・・西門さん?」
「はい!あの、つくしは大丈夫ですか!・・・子供は!」

「お話しがありますからどうぞ・・・大丈夫ですよ。心音の確認は出来ましたからね」

赤ん坊は助かった?ってことはつくしも無事か・・・俺はここでやっと自分が震えていることに気がついた。
両手で自分の顔を覆っていたこの手がすっげぇ震えてる・・・一瞬全部を失ったかと思ったんだ・・・倒れているつくしを見た時、何もかも終わったような恐怖を感じた。


良かった・・・間に合った!俺は看護師がどれだけ言っても椅子から立ち上がることが出来ずにいた。ここまでの不安は初めてだ。
つくしがいなくなった時もそうだったけど、今度は2人分だったから。

仕方なく医者の方が廊下に出てきて、俺の前に膝をついた。俺の指の間から医者の白衣が見える。礼を言わないとな・・・。
そう思ったときにその医者の方から声をかけてきた。


「お前・・・相変わらずだな。総二郎」


その声は・・・俺を呼んだその声は・・・!


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2017/11/20 (Mon) 13:05 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/20 (Mon) 13:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: もしかして

ちびぽち様、こんにちは~!もしかして(笑)初めましてでしょうか?

コメントありがとうございます。
あはは!もう、こんな所で名前をいう人なんて限られてますけどねぇ!
次では確実にわかりますから!待ってて下さいね♥

ホント言うと北海道の寒さをニュースでしか知らないのでどのくらい寒いのかデータでしか推測できなくて。
私みたいに南側に住んでる人間は、北国に住んだら1日で風邪引くかも💦

つくしちゃん、お大事に~!(誰のせいだっ!)

2017/11/20 (Mon) 15:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは~!

総二郎と呼ぶ医者なんて・・・彼しかいないかもですが(笑)
これからはチョコチョコ出てくるかもしれません。結構大事な人なんです(笑)

やっと再登場ですよ!私が忘れそうだった~!
これで少しずつ流れが変わるんです・・・と、言いたいが。どうだろう・・・。

うんうん、頑張ったのでちゃんといただきますよ!
今頃自然の冷蔵庫で総ちゃんが帰ってくるのを待っていると思います。

そういう私は・・・チョコレートを食べられません(笑)
なので必死に調べました!作り方がおかしいぞーって思われたらどうかお許しを💦

2017/11/20 (Mon) 15:43 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/20 (Mon) 21:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 祥一郎?

切山椒様、今晩は!

あっはは!すみませんねぇ!よく言われます・・・Sですよね?って。
そんなつもりはないんですよ?ただね・・・長いお話しは大抵悲劇ものですよ?
だって~楽しくしてたらすぐ終わりますもの。全部短編になります(笑)

彼、そんなに人気があったのかしら(笑)でも、敵か味方かわかりませんよ~?

ふふふ、お楽しみに!


で、カフェオレね!こっちは今から怪しくなりなすが、基本・・・明るいですね。
え~💦ってなるかもですがマッタリと読んで大丈夫(笑)

シスコン!!何でだろう・・・あれだけ本編で嫌われていた彼が!
こんなに皆さんに応援されるとは・・・これは私が一番驚いております!

でも、明日がラストです。誠~幸せにな~!って気分で読んで下さい!

今日もありがとうございました。

2017/11/20 (Mon) 22:52 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/21 (Tue) 00:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

そうそう!類がいけないのよ!彼が風邪移すから・・・ってホントだ!
私が気が付かなかったけど、同時に風邪引いてる(笑)
しかも同時に高熱っ!どおりで最近「倒れた」ってよく書くなぁって思ってた!

書いてるときに気が付けよ(笑)

うんうん、偶然(笑)日本は狭いなぁ!

偶然って怖いですけど、計画的偶然って事もあります(笑)ふふふ・・・
え?意味深だったかしら?
そのうち彼も戻って来ます。待っててね!


2017/11/21 (Tue) 10:02 | EDIT | REPLY |   

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