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次の日の朝は雪が止んでいて、この時期にしては晴れていた。まぁ、そうは言っても銀世界には変わりなく、慣れない桜子は布団からでられずに震え上がっていた。

「そんなにゆっくりしてたら飛行機に間に合わないわよ?総二郎が行けるのは旭川までなんだから・・・起きなさい、桜子!」

「イヤですッ!先輩、こんな所によく住めますわね!人間の住める場所じゃありませんわっ!」

「何言ってんのよっ!ここより北にも人は住んでるのよ!さぁ、起きてご飯食べなさい!」

バサッと布団を引き剥がしたら・・・そりゃ、寒いでしょうよ。
こんな時期なのにそんなスケスケのネグリジェだかベビードールだかわかんない格好で!北海道を舐めてるとしか思えないわ!
震える桜子に部屋の暖房を最大にしてベッドまで着替え一式を持ってきてあげた。

「早く着替えてきてね?総二郎がもう支度をして待ってるから。あんまりゆっくりしていたらこんな土地だから事故とかあると旭川まで辿り着かないわよ?」

「はーい、わかりましたわ・・・はぁ!死んじゃうっ!」

死なないわよ!この土地の人に失礼だって何回言えばわかるんだろう!むしろこんな場所に住んでいる人の方が強くて逞しいんだって!私はここに来て本当にそう思ったんだから。今までなんて恵まれた環境にいたんだろうって。
暫くしたら全身毛皮みたいな桜子が部屋から出てきた。

「ふふっ!気持ちはわかるわ。私もね、初めてここに来たとき東京と違ってあんまり寒いから家でもマフラーしてたもん!
今でこそ少しは慣れたけどね。桜子、本当にありがとう。嬉しかったよ・・・会えて嬉しかった。子供が産まれたら連絡するね!」

「えぇ!お待ちしていますわ。それと、東京で何か動きがあったらお知らせしますね。手続きとか向こうで動かないといけないのなら
また私がやりますから遠慮なく言ってください。先輩・・・頑張るんですのよ!」

「うん!頑張ってるよ・・・桜子、大好きだよ!」
「先輩・・・絶対に幸せになってね!」


羨ましいのは帰る場所があるということ。
桜子は総二郎が運転する車で26日の朝早くにこの別荘を出た。

私は車が見えなくなるまで手を振り続けていた。こんなに冷たい中で泣いたら顔が凍ってしまうのに涙が溢れて止まらなかった。


******

28日は今年最後の検診日・・・この日、総二郎と一緒にまた病院に向かった。
いつものように個室に彼を送って、私1人で産婦人科と整形外科に診察を受けに行く。今日はあの人に会わないだろうか・・・。
そんな恐怖を抱えながら先に産婦人科に行ったけど、そこにいつもの顔はなかった。

少しホッとして順番を待って、その間に色んなお母さんの様子を見ていた。

不安そうに大きなお腹を抱えてる人は初めてのお産で予定日が近いのかしら。もう貫禄があるあの人は何人目なのかしら。
あの人は妊婦には見えないわ・・・もしかして初めての検診かしら。

その時、急に看護師さんが数人でバタバタと走って来て、診察室に入っていった。
そして私の担当医じゃないもう1人の先生が緑色の術衣を羽織りながら診察室から走って出て行って、その部屋のドアには札がかけられた。

分娩中・暫くお待ち下さい

「赤ちゃんが産まれるんだ!今からなのね?・・・何処だろう、分娩室って」

その先生が走って行った方向を覗いてみると1番奥に「分娩室」と書かれた部屋があった。
あそこで産むんだ・・・何だか自分じゃないのにすごく緊張してきた!その部屋の前でウロウロして落ち着かない男性はお父さんかしら。私はその人に総二郎の姿を重ねてしまった。・・・そしたらもっと緊張してきた!


「牧野さーん、診察ですよ」
「あっ!はい。すみません」

ドキドキしたまま自分の診察に向かう。まだ随分先なのに、いつか自分にもあの瞬間が来るんだと思うと少し怖かった。

**

「はい、問題はないですね。来月になったら5ヶ月です。良かったですねぇ、元気に成長していますからね。もう少ししたら性別もわかるかもしれませんよ?どうですか・・・知りたいですか?」

「性別・・・いいえ、産まれたときの楽しみに取っておこうと思います」

「あはは!それもいいですね。それでは牧野さんにはわかったとしても内緒にしておきましょうね」

ここの検診も前と違って随分と気持ちが楽になっていた。
この子は私に何があっても頑張って、産まれてこようとしているんだもんね・・・これからも大事に守っていくからね。
そんな事を思いながら先生の前で少しだけ出てきたお腹を摩ると、「母親らしい顔になりましたね」・・・だって!

すごく嬉しい言葉だった。
次の検診は来月の終わりでいいらしいから、それまで十分気をつけてと言葉をもらってから診察室を出た。


さっきの人は出産、終わったかしら。
そう思ってもう一度廊下の奥を覗いたときに、分娩室から大きな赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、ドアの外にいたお父さんがガッツポーズをした!

今、産まれたんだ!と、いうことはあの赤ちゃんは私と誕生日が一緒・・・何だか私の方が感動してそのお父さんを見ていた。
すごく嬉しそう!そりゃそうだよね!家族が1人、増えたんだもんね、今この瞬間に!
ホントにおめでとう・・・声には出せないけど小さく手を叩いてその家族を祝福していた。


「何やってんだ?時間過ぎてるぞ?」

「えっ?!うわっ・・・総二郎、ここに来たの?大丈夫?」

「平気だろ・・・で、なんの騒ぎだ?」
「あぁ、あれね!たった今、赤ちゃんが産まれたんだよ?だからね、ここでおめでとうって言ってたの」

私の真後ろから総二郎が抱き付くように覆い被さってきて、同じように分娩室のある方を覗き込んでいた。
色んな妊婦さんが私達を見てクスクス笑うから、恥ずかしくなって彼の手を引っ張って産婦人科を後にした。


「あのお父さんね、ずっとあの前で落ち着かなくて、ウロウロしてて・・・総二郎があんなことするのかなってちょっと考えたわ。
自分はどうしてると思う?イライラして怒鳴りそうじゃない?ふふっ・・・想像しちゃう。ホントにどうしてるんだろうなぁ!」

「俺かぁ?そうだな、お前の身体を支えててやるよ。腕に力が入んないだろ?その分俺ががっちり持っててやる!そうしたらさ、
安心できないかな。いや、やっぱり想像出来ねぇや!男はダメだな・・・」

「そんなことないよ。1人じゃ産めないから絶対に側にいてよ?」

「あぁ!来んなって言われてもついててやるよ。早く外科に行こうぜ?帰ったら今日は俺特製石狩鍋にしようぜ!」

ぷっ!今日もお鍋なんだね?しかも特製ってなによ!
ケーキぐらい作れば良かったかな・・・でも、そんなものなくても2人でこうしていることが1番のプレゼントだった。

外科の検診も問題なく終わって、2人で早めに家に帰り約束どおり今日も総二郎のお鍋でお誕生日会が始まった。
すごく美味しくて暖まって、ほんの少しだけ軽めのお酒も飲んだ。今日は特別だからって一口だけ。全部食べ終わっていつものように総二郎がお茶を入れてくれて、いつものように2人で並んで私は彼の肩に寄り掛かっていた。その時だった・・・。


「つくし・・・誕生日おめでとう。お前と二人っきりの誕生日もこれが最後だな。プレゼント・・・ま、在り来たりなもんだけど」

小さな箱に赤いリボン・・・これって、これって・・・!
ゆっくり開けたら、中にあったのはすごく綺麗なダイヤの指輪・・・!総二郎が自分で取って、私の左手薬指にはめてくれた。
まだ痺れが残る指先だから、手を広げたらちょっと震えるんだけど、こんなの思ってもいなかったから涙が溢れた。

「なんで泣くかな!・・・でもこれは毎日出来ないだろ?俺はつけといてもらいたいけど気になるだろうから普段はこっち!」

「えっ!まだあるの?」

総二郎が次に出してきたのは結婚指輪だった。プラチナと金で作られていてダイヤモンドとタンザナイトが埋められているの。
タンザナイトは私と総二郎の誕生石・・・お揃いで用意してくれていた。

「つくしには俺がつけてやる。だからお前は俺に・・・な!」
「・・・結婚式みたいだね。ありがとう、総二郎・・・」

この後お互いが指輪をはめ合って、総二郎の甘いキスがたくさん降ってきた・・・窓の外の雪みたいにたくさん。



そして、予想通り・・・花沢類からものすごく大きな薔薇の花束とふわふわの暖かそうなコートが届いて総二郎を怒らせた。


hot-chocolate-1908099__340.jpg

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2017/11/27 (Mon) 12:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは♥

むふふ!今は少し微笑ましい場面が続いておりますでしょ?うんうん!
今は・・というとこの後は?って言われそうですけどね(笑)

ぼちぼち西門が動き出しますがここをこえればやっとこのお話しがエンドに・・・。
登場人物は出揃いましたが、なんと自分で考えただけでも12月末で終われるかどうかって感じです。
いや、来年に持ち越したくないっ(笑)

何とか12月には幸せになってもらおうと思います。

で、あきらきゅん?(笑)
申し訳ないタイトルですが、結構甘いお話しになってるんですよ?ん?甘い?
えーっと・・・すでに予定の話数が狂っていますので11月の前半は4話か、5話になります。まだ不明(笑)
12月Xmasに送る後半は予定3話ですが・・・どうだろうか!あきらきゅん次第です!

頑張るそっ!久々のあきらきゅん!

今日もありがとうございました!

2017/11/27 (Mon) 15:36 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/29 (Wed) 13:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

うふふ!この辺りが1番幸せシーンが多いかも?
もうねー・・・事件が続いちゃうからこんな風に総ちゃんのお誕生日シーンから
クリスマスまでは書いてて楽しかった♥

総ちゃんすっかり主婦していますが、案外この人主婦させたら拘るかもね?って思いながら書いてます。
うちでも鍋作ってくれないかなぁ!カニとか鍋に入れるために買ったコトなんてありません(笑)
会社の飲み会でたまーにカニ食べるかも。

1回カニ食べ放題で食中毒になったので実は苦手です(笑)


2017/11/29 (Wed) 15:19 | EDIT | REPLY |   

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