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plumeria

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正月が過ぎてからこの辺りの雪は想像以上になり、俺たちは世間から隔離されたかのような空間で過ごしていた。
窓から見える風景は白一色で庭の木々でさえ遠くの風景と区別が出来なかった。
これは類の別荘が少し丘の上にあるからで、街に出れば問題はなかった。だけど、大事を取ってつくしは病院以外は家の中での生活になり、買い物も俺が全部引き受けるようになった。

まぁ、そのぐらいこの生活に慣れたっていうことだ。

雪掻きもつくしと二人で毎日だ。これは車を出すためには仕方のないことで、こいつは腕のリハビリだと言ってスコップ片手に僅かな雪を掻きだしていた。

「つくし、無理すんなよ?もう安定期って言われても油断すんな?」
「うん!大丈夫だよ。痛くならないようにしてるから・・・少しは動かないと難産になるって妊婦さん仲間が言ってたもん!」

確かにこんなに閉じ籠もって誰とも話さなかったら退屈だろう。俺は家庭教師の仕事があるから時々はここを出て人と話すけど、こいつの場合はそれすらないんだから。雪だるまは返事しないからな・・・。

かじかんだ指先にはぁ・・・っと息を吹きかけるつくし。
手袋なんて二重にしても無意味かと思わせるほどの寒い中でも2人でいたら笑顔になれた。
このまま子供が無事に産まれるまで、穏やかに時間が過ぎていくもんだと信じて疑わなかった。


*********

<side祥一郎>
病院での昼休み、午後からの検診予定表を見ながらコーヒーを飲んでいた。
手元にあるのはつくしのカルテ・・・なんとか5ヶ月まできて安定したようだしこのまま元気な子供を産んでくれれば、なんて事を考えていた時にその電話は鳴った。
画面に出ていた名前をを見て少し苦笑い・・・少しばかり嫌味を言ってやろうと電話に出た。


「もしもし・・・久しぶりだな。どういう事だ?お前、わざと俺にここを勧めたな?」

『あれ?その返事だともうそこの診療所に現われたの?クスッ・・・牧野、風邪でも引いた?』

「よく言うよ!類・・・お前、花沢のSPも名寄に残してるな?」

電話の相手はフランス滞在中の総二郎の幼馴染み、花沢類だった。


俺がこいつと知り合いなのは総二郎の親友だってこともあったが、医大生の時に研修に入ったのが花沢系列の総合病院で、偶然そこで再会したからだった。西門を出てから自分1人で生活をしていた俺に同情でもしたのか、卒業と同時にその総合病院で勤務できるように取り計らってくれたのが類だった。
もちろん西門にも総二郎にも言わないと約束をしてくれた。もう、なんの伝手もない俺は有り難く類の手を取ったんだ。

そしてこの秋・・・類からの依頼でこんな地方の産婦人科に臨時医師として派遣された。


『仕方ないでしょ。総二郎1人だと不安だったんだ。祥兄がそこにいてくれたら俺も安心だったし。よく断わらずに行ってくれたよね。勇気いったでしょ?』

「馬鹿言え!俺が類の頼み事を断わることが出来ないって知ってたくせに!旭川の総合病院からここにデータ送らせてるのもお前だろうっ!恐ろしいほど手回しのいい奴だよな・・・で?今日はなんだ!」


『西門が動き始めた。北海道に数人、入ってる』


電話から聞こえた類の声が急に真面目なものに変わった。
俺までがその言葉に固まってコーヒーカップをテーブルに戻した。横目でつくしのカルテを見ながら話の続きを聞いた。

『これは俺も予想外だったけど、年末に2人の友人の三条桜子が名寄に来てるはずだ。その時に総二郎が彼女に別荘で使うための抹茶を東京で手配させてる。それを西門が情報として掴んだんだ・・・三条が買うところを後援会の人間が見ていたらしい。
花沢のSPに店で確認させたから間違いないと思う・・・西門の連中が三条のことを聞きに行ってるからさ。念のために花沢の人間に西門に張り付かせといて良かったよ』


「それだけで北海道に来たのか?」

『桜子は飛行機で新千歳に向かって、そのあともタクシーで旭川に向かってる。それを全部ネットで予約しているから、西門も何処かの情報屋を使って三条の動きを探ったんじゃないかな。旭川に滞在して総二郎のことを聞き回ってるよ』

「彼女が買った茶を届けた先が名寄とまでは調べてないんだろうか」

『幸い総二郎が頼んだ抹茶の量がそこまで多くなかったから店から宅配しなかったんだろうね。想像だけど三条の動きだけを追ってるから旭川で止まってるんだよ。旭川には総二郎が迎えに行ってるだろ?だからその先は知らないんだと思う』


俺の時にはそこまで探さなかったが・・・やはり総二郎のことは必死だな。
それもそうだろう。残されたのが孝三郎なら、後援会は納得しない。この先の西門を守るためなら家元はどんな手段でも使うかもしれない。たとえ、それがつくしをどれだけ傷つけてもだ。

あと5ヶ月・・・つくしが無事に子供を産むまで西門に見つからずにいられるだろうか。
せめてそこまでは2人を引き離さずにおいてやりたいが、その後は?一生逃げるわけにもいかない。

それなら2人が家族として幸せに暮らせる道って一つしかないんじゃないのか?許されるかどうかはわからないけど。


『祥兄・・・頼みがあるんだけど。話、聞こえてる?』
「あぁ、聞こえてるよ。今度はなんだ?俺に西門を止める力はないぞ?」

『西門の事はうちがそれとなく情報集めるからいいよ。そうじゃなくてさ、牧野の病院、完全に旭川から祥兄の所に移せない?
総合病院には俺からも話しとく。牧野が怪我をしていることは家元夫人がみんなに話してるなら知ってるかもしれないけど、多分家元は何も知らないと思う。そういう夫婦でしょ?』

「多分な。孝三郎を庇うためにお袋は何も言わないだろうな」

『でも、万が一って事もあるからね。旭川に迂闊に近寄らない方がいいからさ・・・頼むよ。そこで無事に出産させて?
それとさ、祥兄の紹介っていうことで宅配業者を別荘に向かわせるから話をあわせてよ。これからは大雪で買い物も大変だからさ。うちの者にそれとなく様子を探らせる。流石に寝室に盗聴器なんて無理だろうけど玄関ぐらいには取り付けさせるよ。
総二郎にバレたら殺されるから秘密だよ?』

「・・・遠距離ストーカーだな、類」


この後類は自分が関わっていることを2人には言わないでくれと念を押して電話を切った。
変なヤツ・・・遠く離れた所からずっとつくしの事を心配してるっていうのか?

それは彼女にも言えることかもしれないな。


総二郎に話すにも俺が何処でこの情報を掴んだか話さないといけないじゃないか。
そのために誰が一番適任かを考えたら、やはりあの人しかいなかった。


仕方がない。数年ぶりかで西門本邸にいる志乃さんに連絡をすることにした。
少しずつ総二郎の近くに西門の影が迫っている・・・この小さな街の隅で幸せに暮らしているのに。

つくしのあの笑顔を守りたいのは類だけじゃない。
俺は電話の通話ボタンを押していた。



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2017/11/29 (Wed) 13:24 | EDIT | REPLY |   
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2017/11/29 (Wed) 13:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは♥

出たっ!その叫び声っ(笑)
そうそう、この私が類を病院から去らせた後に登場させないわけがない!(笑)
祥兄ちゃんと結びつけるのはかなり強引ではございますが、そこは許していただきたいと思います!

そして再び類つくじゃないの?みたいな場面が出るかどうか!そこはお待ち下さいませ。
かなり総ちゃんファンから批判を受けそうではございますが、このお話は総つくです!

多分ね・・・(笑)

私も骨太いんですけど、骨折は3回あります。全部手の指です。バレーボール絡みかな?
アタックして骨折、ブロックして骨折、レシーブを失敗して骨折・・・やめれば良いのにね(笑)

2017/11/29 (Wed) 15:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

そうなの♥総つく書くと必ずお約束のように類を格好良く書きたがる悪い癖!
いつかすごく意地の悪い類くんとか書いてみたいけど、無理だろうなぁ・・・。
いやいや、遠距離ストーカーが格好良いかと言われると違うか!(笑)

まぁ、これで再び類くんが出てくることもわかったし、どんどん終りが見えてきましたっ!
長くなったなぁ・・・始めの頃のことをすっかり忘れましたよ。

何でこのタイトルつけたんだっけ?ってところから思い出さなきゃ!ヤバい(笑)

今日も沢山ありがとうございました♥

2017/11/29 (Wed) 20:11 | EDIT | REPLY |   

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