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亮という男とは関係をもっていないと牧野は答えた。
女性を抱けない男・・・中にはいるよね、大抵が過去に起きたことのトラウマみたいなもので。見た感じ”あっち”じゃなかったし。
そのことが恥ずかしいのか牧野は俺と眼を合わせようとしなくなった。もしかしたら自分には魅力がなかったんだって思ってんのかな・・・。

そんなわけないのにね。あんまりにも長い時間、何も喋らなくなったから逆にどうしていいのかわからなくなって赤くなってきた。


「そんな顔しなくていいじゃないの?俺は今さ、すごく安心してるんだけど。もう、それで良くない?」
「・・・え?良くないって・・・いいの?」

「いいんじゃない?だって牧野が綺麗なままなんだもん。すごく嬉しいけど・・・その答えじゃダメ?」

もう一枚ティッシュを渡そうとして手を差し出した。それを取ろうと手を伸ばした彼女の手首を掴んで俺の方に引き寄せたら、小さな悲鳴をあげたけど、次の瞬間には俺の腕の中にすっぽりと入っていた。

まだ少し震えてるね。でもさ、こうしていたらだんだん暖かくならない?そうしたら涙なんて止まっちゃうよね。


「類・・・って変な人だね」
「そう?・・・そうかもね。小さな動物には好かれるし、気持ちもわかるよ・・・牧野もその中に入ってるんだよ」

「えっ!小さな動物って・・・ひどいっ!そういちろうさんと一緒にしたでしょ!」

あっはは!って笑ったら、小さな拳で胸を叩かれた!ほらね?涙が止まったら笑顔になれるよ!
この笑顔が早く本物に戻れるようにしないとね。それにはまだ解決しないといけないことがあるんでしょ・・・バレてるよ?牧野。


****


夕食は加代さんが類の部屋まで持ってきてくれた。
多分、類がそうしたんだろうけど、家庭的なものを少しだけ。食べやすいように小分けしたお料理を小さなテーブルに並べて、隣に座って並んで食べた。
この家ではこんなものがでるのかしら・・・カラフルなおにぎりに温野菜のサラダ・・・お味噌汁に鮭のホイル焼き。

「ねぇ、いつもこんな夕食なの?」
「ううん、初めて見た。シェフにね、一般家庭の子だから家庭料理にしてって言っただけ・・・どう?こんな感じで当たってる?」

「ふふっ!そうだね・・・うちにしたら豪華な方だよ。このおにぎりもさ、色んなもの塗してあって面白いね。上手だなぁ・・・」
「フランス料理のシェフだから焦ったかもね!ねぇ、後でさ・・・あれ、作ってよ」

「あれ?あれって何?」
「・・・”木の年輪”ってやつ」

あぁ、ラテアート!・・・そういえば3日くらい練習してないかも!
このお屋敷ぐらいになると専門のコーヒーメーカーがありそう。類はお箸で鮭の身をほぐしながら嬉しそうに笑顔で催促した。
上手く出来るかどうかなんて自信なかったけど、ここのシェフさんに教えてもらって作ってみるって返事をした。


「牧野の家庭料理も食べてみたい。俺さ・・・牧野に出会ってから2㎏ぐらい太ったかも!」
「えぇ?全然変わんないよ!・・・っていうか類は痩せすぎだよ?もう少し食べて筋肉つけないと!働き盛りの男なんだから!」

「ん~・・・じゃ、やっぱり離れない方がいいでしょ?牧野がいなくなったら痩せるからさ!」


それにはなんて返事していいかわからなかった。だって、亮のことはまだ終わっていないんだもの。
私は亮からは逃げられない・・・亮が「あれ」を持っているから。でも、それを悟られないように類の前ではわざと明るくしてみた。


***


食事が終わると類とキッチン・・・っていうより厨房に向かった。
花沢邸の厨房はまるでホテルのような広さと器具が揃っていて、私なんかが見ても全然使い方がわからないものばかり!
ほけ~っとしてその全体を眺めていたらコックコートを着たシェフが来てくれて、私にラテアートを見せてくれると言った。


「お嬢様はラテアートに挑戦されているんですって?上達するには何度も練習することですよ。それが例え思い通りにならなくても続けていれば必ず出来るようになりますよ?コーヒーにも愛情を持ちましょうね。完璧を求めずに力を抜いてやるんですよ」

「はい!あの、お手本を見せて下さいませんか?実はうちのマスターも苦手でいつも変なのしか見たことないんです!」

「ははっ!そうでしたか!いいでしょう。それでは今日は直火式で良いエスプレッソから作りましょうか」

シェフはサイフォン式ではなくて直火式でエスプレッソを作ると言った。
コーヒー豆は極細引きで極深煎り(イタリアンロースト)を使うんだそうだ。この、より本格的な方が後でミルクを足すからコーヒーの味が強く出せるんだって。マスター・・・そんな事言ってたっけ?

私はその手元を一生懸命覗き込んでいた。細かな説明をしてくれるシェフは、私があまりにも身を乗り出すので逆に笑い出した!
それを側で見ていた類までが大笑い。
久しぶりに夜になっても厨房で笑い声が聞こえるから、加代さんまでが覗きに来ていた。

「あらあら!今度はなんですの?喫茶店でも始めるんですか?」

「加代、牧野は喫茶店のウエイトレスだよ。今はラテアートの特訓中なんだって。得意技は”木の年輪”!それを、ハートマークに見えるようにするために今、練習してるところなんだ」

「それでは私もいただきますわ。牧野様、どうぞ練習を続けて下さいな!4回も作れば一つくらいは綺麗に出来ますでしょ?」
「えっ!が、頑張ります!」


1つめはシェフが見本ですごく綺麗なハートマークの模様をアレンジしたものを作ってくれた。

「それでは牧野様、やってみましょうか!こちらにどうぞ・・・」
「はい!宜しくお願いします!」

私がミルクを温めて作り始めるとすぐに手を止められた。え?ってシェフを見たらにっこり笑って首を横に振ってる。

どこか作り方を間違った?さっきもすごく見ていたから順番は違わないと思うんだけど・・・そう思ったけどシェフは私からピッチャーを取り上げてもう一度やり方を見せてくれた。

「牧野様はミルクスチームが上手く出来てないのですね。これが出来ないとラテアートは完成しませんよ?1番重要で練習のいる部分がここです。そうですね、2000回位すると上手くなります。逆に言えばここが出来るとほとんど上手くいくということです。
何事も繰り返しですかね。でも、目標があれば続けられますよ?それでは私が作ったミルクスチームでハートマーク、やってみましょうか!」

シェフが作ってくれたミルクを私がエスプレッソの入ったカップに注いでいった。
ゆっくりと、ゆっくりと・・・ハートマークに見えますように・・・ブツブツいいながら注いで形を整えていった。


「あら?・・・いつもより綺麗かも!少しはハートに見えるかしら?」
「ははっ!上出来ですよ!お客様にはまだまだですけど、筋はいいんじゃないですか?さぁ、類様にどうぞ」

何だか恥ずかしいんだけど。
類に私が作ったカフェラテをゆっくりと運んでいった。

「はい・・・えっと、シェフのミルクだけど、私が注いだの。どうかな・・・少しはハートに見える?」

「んっ!ちゃんと牧野のハートに見えるよ。ありがとう!」


類ったら加代さんもシェフもここにいるのに、私の頬にキスをしてくれた!

数時間前のことなんて、まるで何でもなかったかのように優しい空気が流れていて、私は嬉しくて涙が溢れた。
その後、ミルクスチームの練習をしながら加代さんのと私のとシェフの分を作って4人でのティータイム。
喫茶店の話やそういちろうさんの話、昨日の動物園の話なんかで盛り上がってすっかり夜遅くになってしまった。


それをお母様がドアの向こうからクスクス笑いながら見ていたなんて知らなかった。


「類があんな風に笑うだなんて初めて見たわ。ふふっ・・・中々良い恋してるんじゃない?楽しみね!」


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2017/11/29 (Wed) 13:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

ごめんなさい・・・さとぴょんが「あれ」って言うと
「アレ」しか想像出来なかった・・・!(笑)

「あれ」はそろそろ出てきます。
亮の「アレ」・・・ひえ~💦💦

2017/11/29 (Wed) 15:21 | EDIT | REPLY |   

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