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パリの10月・・・日本でいえば11月ぐらいの冬の初めの気候だ。
秋が深まってパリの街は随分気温が下がってきた。この時期ぐらいから朝早く起きるのが辛くなってくる。最低気温が10℃を下回る日もあってベッドから出るのに勇気がいるんだもの。でも最近はちょっとだけ朝からウキウキしてる自分がいる。

仕事は楽しい・・・って素直には言えないけど、やり遂げたいって思ってるから頑張れる。だけど、やっぱりアパートに帰ると独りぼっちで寂しかった。独りぼっちなのは慣れていたんだけど、ここは言葉も風景も何もかもが違うから。
時々、全部投げ捨てて日本に帰りたいって思うこともあった。


そんな時に彼と出会った。

寂しがり屋の私の前に、救世主のように現われてくれた類・・・彼が今は私の心の支えになっていた。
恋人かって言われると違うと思う。そんな話には一度もなっていないもの。あの薔薇がどういう意味だったのかは今でもわからない。社交辞令・・・多分、そんなものだったんだよね?

ただ、あれからは類がよくお店に来てくれるようになっていた。お店が終わる頃にやってきて、その時に残っていたお菓子を買って2人でパリの街を歩くこともあった。今日はちょうど類が会社をお昼で終われるからって待ち合わせをしていた。

待ち合わせっていってもうちのお店だからお昼過ぎたらソワソワしちゃう。
時計をみたら2時30分。明日の仕込みも終わったから最後に片付けをしようとゴミを集めていた時、アランが少し不機嫌そうに厨房に顔を出した。

「ツクシ、あの男が来てるよ?今日も出掛けるの?」
「え?あぁ、類が来たの?早かったのね!少し待ってもらってて下さい。すぐに支度するからって!」

それから大急ぎで自分の持ち場を片付けて、オーナーに挨拶して着替えに向かった。

類と約束をした日はほんのちょっとだけお洒落する。
お金なんてないから洋服なんて滅多に買えないんだけど、オーナーの娘さんが着なくなった服をくれたりするからそれをリメイクして自分に合うように手直しするの。
あとは仲良くなったお客さんに安いお店を教えてもらって、少ないお給料の中から貯めたお小遣いで1回1枚だけって決めて買っていた。その中でも可愛く見えるものをって・・・枚数が少ないから選ぶって言ってもすぐに決まるんだけどね。

お店の裏口から出て、今度は表からお店に入ると夕方まで店番をするアランが私を睨んだ。
あれ、何で?・・・って思うけど、私の眼は類を見てしまうからアランの不機嫌な理由なんてすぐに頭から消えてしまっていた。

「お待たせ!ごめんね、随分待たせた?」
「ううん、そうでもない。15分ぐらいだから」

今日も類の手にはうちの店の紙袋があってそれを片手にブラブラと歩いて行く。

「ねぇ、セーヌ川の川岸にベンチがあるでしょ?そこで食べない?」
「うん!今日は風もないしね。いいかも!」

私のお店はパリのド真ん中、オルセー美術館に近いところにあったからセーヌ川は目の前なんだけど、一緒に行く人でもいなければわざわざ1人では行かないような場所だ。
だって恋人達のデートスポットで、至る所で抱き合ったりキスしたり。目のやり場に困るときがあるんだもの。
だから1回行っただけでそれ以来行ったことがなかった。

「類はいつもはどんな所に行くの?こんな所、誰かと来るの?」
「ううん、実は俺も初めて。そんな時間なかったし、そんな気にもならなかったから。でも、話としては知ってるよ?あれがコンコルド橋でしょ?その向こうが公園でぐるっと回ってルーブル美術館・・・そのぐらいは知ってるけど、歩いたことがないだけ」

「そうなんだ!てっきりこの辺は案内してもらえるもんだと思っていたわ」
「あはは!ごめんね?でもさ、2人で新発見ってのもよくない?1人だけが物知りなんて楽しくないよ」

類は私が欲しい言葉をくれる。
2人で探そうなんて、そんな嬉しいこと平気で言うの。私が照れて真っ赤になるのを知ってるくせに!

セーヌ川のほとりでベンチに座って類が紙袋をガサガサと開ける。うちのお菓子なんだから当然見たことあるのに、何故かここでは違うものに見えちゃう。それがとっても不思議だ。

「あ!これね、今日の朝、私がクリーム詰めたシュークリームだ!でね、こっちはマカロンの中にライチとフランボワーズが挟んであるでしょ?挟んだのは私なの!」
「牧野って詰めたり挟む役なの?」

「そうよ。だってまだ1年目だもん!生地を焼いたり作ったりするのはベテランの職人さんよ?そうなるまでは何年もかかるわ」
「それまでずっとお手伝いなの?自分では焼きたくないの?」

類はこの世界のことを何も知らないから私のことがもどかしいのかもしれない。いつまでも下にいたら上のポジションにいけるまでに年取っちゃうよ?なんて思ってるのかな・・・すごく心配そうに私を覗き込むから、はいっ!てマカロンを差し出した。

「自分でも焼くわよ。ただ、お客様に売るにはまだまだって事なの。職人ってそんなものなんだよ?でもね、私にはそれ以外でもちゃんと夢はあるの!」

「どんな夢?自分のお店を持つ以外にまだあるの?」

「うん!いつか大好きな人と私が作ったクリスマスケーキを一緒に食べるの!私さぁ、子供の時にみんながやってるクリスマス会が羨ましくってね。プレゼントが買えないから行けなかったの。その時に思ったんだ・・・それならケーキ作りたいって。それがこの道に進んだきっかけだから、いつかこの夢を叶えるの。それだとお店に出すわけじゃないから早く叶いそうでしょ?」

私は自分で詰めたクリームが入った一口シュークリームをポンって口に放り込んだ。
類も渡したマカロンを口に入れたけど、困ったような顔をした。彼は甘いものがダメなんだって!プッて噴いたらゴクンって飲み込んでた!

「あはは!類って可笑しい人だね!ダメならダメって言いなよ!無理して食べなくてもいいよー!」
「だって、牧野が挟んだんでしょ?俺が食べなかったら捨てられるじゃん。それはダメだよ、せっかく作ったんだから」

「ちょっと待ってて」って近くのカフェでテイクアウトのコーヒーとカフェオレを買ってきてくれた。
それを川沿いのベンチで夕日を浴びながら2人で飲んでいた。


「ありがとう。そう言ってくれて。お客さんがみんな類みたいだったら嬉しいわ」

「そう?じゃあ、俺が牧野の作ったデザート、全部引き受けてあげる。だから、甘くしないでくれる?」
「そんな事出来ないよ!もうっ・・・それじゃあ、お菓子じゃなくて料理だよ!」

「料理・・・?あっ!牧野料理作れるの?俺、日本食食べたい!今度作りに来てくれない?」

はっ?今度はそっち?
子供みたいな眼で日本食を強請られるなんて思わなかった!でも、それもいいかもね!
私は今度の休みに類の自宅でリクエストに応えることになった。類が食べたいおかずを聞きながら、材料を何処で買うかとか、どっちが買うかとか・・・やっぱり二人で行こうよって話しになってその約束もした。


そんな、何でもない会話が楽しくて、アパートに帰る頃にはすっかり日が暮れていた。


***********

<side花沢夫人>
「あら?ねぇ、少し停めてちょうだい!」

車で自宅に戻る途中、セーヌ川の近くのリヴォリ通りを歩いてる類を見つけた。隣には全然みたこともない女の子がいる・・・。
日本人?でも、この様子じゃ何処かのご令嬢ではなさそうだけど。

だけど、その子と手を繋いで歩く類がとても良い笑顔をしていて驚いた。あんな顔、家で見せた事なんてなかったもの。

誰かしら・・・類にあんな顔をさせる娘さんなんて。
ふふっ!でも良いのもを見たわ。あの子にもちゃんと恋が出来るのね!


「いいわよ、出してちょうだい」


うちの車がすぐ近くを通ったことにも気が付かない類なんて初めてじゃないかしら。

何処のお嬢さんかなんて考えなくてもいいわ。このまま少し見守りましょうか・・・楽しみだこと!


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2017/12/14 (Thu) 06:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます!

そうそう、スパイスです!七味唐辛子ってやつです。
私のイメージでは185㎝に長身でブルーアイに金髪の巻き毛(笑)鼻が高くてそばかすがある。
やせ形で色白で声が高い(笑)どんな男だ!

この状態を何というか・・・仲のいい男友達でしょうかねぇ。お子ちゃまなつくしちゃんですから。
あぁ!何かムカつくわ、その言い方!って感じ?(笑)

お母様、今回もいい人の予定。(予定?)
そう言えば「独りぼっち」の家元夫人もいい人でしょ?ほのぼの・・・(笑)

お名前、ありがとうございました!
やっぱりネットで調べると人気の名前はあるけど、当たり前だけどよく聞く名前なんですよね。
皆さん、女の子は考えやすいのかしら(笑)
私もね、男の子の名前は「瑞希」って決めてたんですよ。女の子1人なのでもう無理ですけど。
この名前・・・類で使っちゃったからな~!

ホント、助かります!嬉しいなぁ♥

2017/12/14 (Thu) 09:10 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/15 (Fri) 00:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~!

アランね、つくしちゃんの5歳上だから26歳!
そうそう、今からこの仲良しの2人を引き裂いて邪魔してドロドロな世界に・・・
長編ならそうしたいけど、これは期間限定のお話しなのでそんな事したら来年のクリスマスまでかかってしまう!

セーヌ川沿いでデート・・・日本で言えば隅田川脇の小道でデート。

ちなみに私、マカロン苦手なんです。
フランスのマカロンって美味しいのかな・・・。

2017/12/15 (Fri) 13:20 | EDIT | REPLY |   

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