FC2ブログ

plumeria

plumeria

「ねぇ、類。あなたクリスマスイヴはどうするの?花沢としてはパーティーを予定してるんだけど、あなた、そこにエスコートするお嬢さんはいないの?秋のパーティーでも結局誰も選ばなかったし、静ちゃんのお友達も全員ダメだったの?」

「またその話?悪いけどそっちから持って来る話は断るって言ったよね?ちゃんと紹介するよ・・・時期が来たらね」

牧野を厨房に待たせてるのにすでに帰宅していた母さんに捕まっていつもの話を持ち出された。
ホントに面倒くさい・・・どうして毎回同じ話しか出来ないんだろう。自分たちだってそんなに早くに結婚してないくせに!


「城ヶ崎建設、知ってるでしょ?今度こっちでうちと共同でホテルを手掛けることになったの。お父様が張り切ってるわ。
そこにあなたより一歳年上の娘さん、聖美さんって綺麗なお嬢さんがいるわ。静ちゃんのお友達で秋のパーティーにも来ていたらしいわよ?どういう意味かわかるでしょ?」

「・・・関係ないよ」


その城ヶ崎建設の娘と会ってみろって言ってるわけだ。
実際に結婚するのは先でもいいが早く決めておけという父さんの命令みたいなもの。理由なんてないんだろうと思う。会社として後継者が出来る環境を早く整えておきたいって事だろう。

「もう一つ重要なことがあるのよ」

母さんに背中を向けて出て行こうとしたときに、少し強い口調で止められた。

「あなた、次の春からは日本本社勤務になるわ。お父様からまだ聞いてないでしょうけど、今日の役員会で正式に決まったの。日本本社内が少し規律が乱れてきて経常利益も随分下がってるしね。お父様はこちらを動けないから副社長の私が戻ることにしたんだけど、後々はあなたに任せたいから研修も兼ねて私と一緒に帰国するわよ。そのつもりでね」

「・・・それは決定事項?」

「そうよ。年が明けたら世間にも公表されるわ。それにお父様は他にも色々考えておいでだから類の言ってる”時期が来たら”って言うのはなるべく急いだ方がいいわよ?」


母さんが何を言いたいのかはわかった。
日本に帰るときに同行して帰るような誰かを準備するっていうことだ。それの有力候補が城ヶ崎の娘って事か。


「わかった。情報ありがとう・・・じゃあ、牧野が待ってるから行くね」

「あら、今日も来てるの?熱心なのね。根性がある子っていいと思うわ。でも、彼女に夢を諦めてもらわないといけない・・・それが心配なんでしょ?それも全部ひっくるめて何とかしなさいね!」

多分、面白がってる。昔からそうなんだ、母さんは!そして全部見抜かれてる。
ホントに苦手だ!何となく気恥ずかしくて素直に顔が見られない。だから返事もせずに牧野の所に向った。


日本に帰るなら牧野を連れて帰りたい。それを伝えてもいいだろうか・・・そんな事を考えながら足を速めた。


********


「あれ、どうしたの?ここでも泣かせる人がいたの?」
「ううん、何でもないよ。類を待っていたら寂しかっただけだよ。もう大丈夫・・・来てくれたから」

なんて泣き虫だろうって思われたかしら。出会ってから何度も類の胸で泣いてる気がする。
心配をかけちゃダメだ。それにこれ以上類に迷惑をかけちゃいけない・・・さっきの人達が言った通り。類はこんなに大きな会社の跡取りだもの。釣り合う人はいくらでもいるんだ。

多分、類の気持ちに嘘なんてないんだと思う。それは信じられた。信じられるからこそ、私の方が近づいてはいけない。
そう・・・思ったの。


「どう?今日は試作品出来そう?俺でも食べられる?」

「あはは!類には無理じゃないかなぁ!だってマカロンやエクレアがダメなんだよ?ケーキは甘いよ?」

「でも、少しでもいいから牧野のケーキ食べてみたい。またここで大人しくしておくから作ってよ。早くしないとまた遅くなるよ?泊まっていってくれるなら時間なんて気にしないけど・・・」
「ううん!それはダメ!アパートに帰る!」

類の言葉を遮るように叫んだ私のことを、彼はびっくりした眼で見ていた。しまった・・・つい大声で断わっちゃった!
急にそんな大声出しておかしく思われなかったかしら。慌てて類に背中を向けて、エプロンのリボンをキュッと結び直した。


まるで自分の気持ちを縛り付けるかのように。そしたら喉の奥がむず痒くて痛いような重苦しい気がした。


「ごめんね、急に大きな声出して。やっぱり関係ない人の家で泊まっちゃうのって気になるでしょう?慣れた自分の家の方がよく寝られるし、落ち着くし、朝早く起きなくちゃだし。前みたいにならないように早くするね!」

「関係ない人って・・・どういう意味?」

少し怒ったような口調にドキッとしたけど、そのあとは類の顔を見ずに作業を進めた。

ダメ・・・ダメだよ。これ以上は好きになっちゃダメ。類の手をとっちゃダメ・・・忘れられなくなっちゃうから。
後ろから見られてるってわかっても振り返っちゃダメだよ。つくし・・・泣きたくても泣いちゃダメだよ。

ダメなことばっかりが増えていく恋はしちゃいけないよ・・・辛くて辛くて、1人で過ごせなくなるから早く忘れなきゃ!


呪文のようにその言葉を繰り返しながらレシピと闘った。今までお菓子を作るのにこんなに苦しい顔して作ったことがあっただろうか。そのぐらい苦しかった。だって、類はずっと私を見てるんだもの。

抹茶とホワイトチョコの分量は丁度よかったかしら。
小松菜をミキサーにかけた時間は長くなかった?
生クリームの泡立てはしっかり出来てた?メレンゲも失敗してない?
さっきゼラチンを入れたっけ?あぁ!全然覚えてない!

何とか試作品を作ってテーブルの上に置いた。うーん・・・見た感じは可愛いわ。味がどうかしら・・・少し心配だけど。
ちょっと顔を類に向けたらさっきと同じ、ちょっと拗ねた表情のままだった。


「類、試作品出来たの。明日オーナーに食べてもらうね。ありがとう、協力してくれて」

「・・・ううん。頑張ったね・・・見てもいい?」

見るぐらいなら全然いいよ、甘いものがダメな類でも見るだけなら大丈夫でしょ?私が頷いたら椅子から立ち上がって側まで来た。そしてケーキを見てクスって笑った。


「ホントだ、日本のケーキ屋さんで売ってるみたいだね。可愛い・・・ホントに可愛い」
「ありがとう!類・・・」

あれ?・・・気が付いたら類の腕の中にまたすっぽり入っていた。
類はケーキなんて全然見なくて私の身体を抱き締めてた。背中に回った手の力・・・アランと違って優しすぎる抱き締め方だ。
私は自分の腕をどうしたらいい?類の背中にまわしてもいいの?でも・・・でも・・・!



「牧野、俺についてきてくれない?来年の春・・・日本に帰るんだ。一緒に帰ってくれないかな」


・・・え?日本に帰る?類と・・・類と日本に?


「離したくないんだ。牧野のこと・・・好きだから」

ドクン!・・・となった私の胸は何かが割れたみたいに大きく揺れた。
類の背中を掴みかけた私の手がピタッと止まってしまった。


apple-1883940__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/20 (Wed) 06:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます。

そうそう、お母様なかなかいいスパイス役で(笑)
ただ、このお話素直になれないつくしちゃんなんですよ。

いいじゃないの、飛び込めば!って思うんですけどねぇ!
ケーキなんか作れない私が一生懸命調べて書いてるのに(笑)
つくしちゃんが衣装屋さんだったら細かいことまで書けるんだけど、誰の衣装?ってなるし・・・。

一番苦手な分野に挑戦するもんじゃないですね(笑)

今日は身内の手術のために病院です・・・。
今から「向日葵」チェックして病院に行ってきます!悪夢の100話(笑)

2017/12/20 (Wed) 08:27 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/20 (Wed) 15:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

いやいや、さとぴょん様には負けますよ。ノリはいいかもしれませんが落ち込み方も半端ないけど(笑)

しかし、栗色の髪の毛を巻いてゴージャスなドレス着て超がつく美人のお母様を「おかん」と呼ぶとこが好き♥
思わず類とおかんが炬燵に入ってみかん食べてるの想像しました。

類「おかん、好きな人ば出来た時っちゃどうやって告白ばしたら良かとね?」
母「そりゃ、あんた悩んどらんで体当たりったいね!男やろうが、ぐだぐだ言わんとどーんといかんと!」

ごめん、ちょっとふざけて熊本弁風に・・・(笑)

2017/12/20 (Wed) 19:35 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply