FC2ブログ

plumeria

plumeria

俺の方を気にしながら、それでも知らんふりしてレシピを見る牧野の事を少しだけ・・・少しだけ睨みながら見ていた。
急に俺の事を関係ない人だと言ったのは何故なの?その問いには答えようとしなかった。
1人でいた時間に何かがあったのかもしれないけど、それでも信じてもらえなかったことが悔しかったんだ。

そのうち必死にケーキを作り出して、1人で厨房内を行ったり来たり・・・ブツブツ独り言も出始めた。


その姿を見て思った。

やっぱり牧野はこうやってお菓子を作っていたいんだろうか。もし、俺が正式に申し込んだらどうするだろう。花沢に入ったらこんな事に夢中になる時間なんてなくなるだろうし、逆に覚えなきゃいけない事が山ほど出来てキッチンに立つ時間もなくなるだろう。

それが牧野にとっていいことなんだろうか。俺の我儘じゃない?この家に縛り付けることになってしまわないだろうか。
牧野がそれでもいいっていってくれると嬉しいけど、その答えは自分の夢を捨てるって事だよね。


暫くして牧野が大きく肩を降ろして息を吐いたかと思うと、俺の方に顔を向けてニコって笑った。ほっぺたにちょっとだけクリームなんてつけて。

「類、試作品出来たの。明日オーナーに食べてもらうね。ありがとう、協力してくれて」
「・・・うん。頑張ったね・・・見てもいい?」

テーブルの上にはまるで薔薇が咲いたようなデコレーションの抹茶入りチーズケーキと、斬新な濃い緑色と白と苺の赤が鮮やかなケーキが並んでいた。両方とも牧野らしい可愛いケーキ・・・いや、可愛いのはそっちじゃないよね。

「ホントだ、日本のケーキ屋さんで売ってるみたいだね。可愛い・・・ホントに可愛い」
「ありがとう!類・・・」

気がついたら牧野を抱き寄せていた。ケーキも可愛いけどそうじゃない・・・もう俺にはあんたしか見えない。
そんなにケーキに夢中にならないで俺の事だけ考えて・・・そう言えたらどれだけ楽だろう。もっと他の夢なら叶えてあげるよ、どんなことをしてもね。

それを望まないってわかってるけど、伝えてもいいかな。


「牧野、俺についてきてくれない?来年の春・・・日本に帰るんだ。俺と一緒に帰ってくれないかな」
「・・・・・・」

牧野はビクッとしたけど俺の腕からは出ようとしなかった。それをYesって受け止めてもいいの?
小さな肩が震えてる。牧野・・・あんたも俺のことを抱き締めてはくれないの?

「離したくないんだ。牧野のこと・・・好きだから」


「ごめん・・・類。私は一緒には帰れないよ。それに、類とは・・・類とはそんな風に考えられない。・・・ごめんっ!!」
「牧野っ!」

牧野はいきなり俺を突き飛ばすようにして厨房を出て行った!
俺はそこにあった厨房の椅子に躓いてバランスを崩してしまった・・・でも急に飛び出した彼女の事が気になって、テーブルの端に置いてあった牧野の荷物とコートを手に持って玄関の方に向かった!

もう、外は真っ暗だし、それにノエルって事もあって酔っ払いも多いし何が起こるかわかんないのに!

「牧野・・・っ!待って、危ないから!」

その声は屋敷中に響いたと思う。だけどそんな事はどうでもいい!開けっ放しにされた玄関・・・やっぱり牧野は飛び出していったんだ!俺も急いで出てみたけど牧野の姿は何処にもなかった。
こんなに寒いのに上着も着ずに、しかもエプロン姿で・・・とにかくアパートに向かったのは間違いない。

俺もコートなんて着る間もなく、自宅を飛び出して牧野のアパートに向かって走った。


*********


類が日本に帰る・・・そう言ったとき、あぁお別れだって思ったのに、次に出た言葉が「一緒に帰って欲しい」だなんて思わなかった。
本当に嬉しかったのにこの手は類を掴めなかった。逆に突き飛ばしてしまうだなんて・・・なんて酷いんだろう、私。


凍えるような寒さのパリの夜に薄着で飛び出してしまった。しかもエプロンのままだ。慌ててそれを外して両手で丸めて持った。
手が悴むぐらいはそれで防げそうだし、通りすがりの人がそれじゃなくても見ていくんだもの。
きっと可哀相な子なんだろうって思われてるんだろうな・・・その通りなんだけど。

類が追いかけてきそうだったからいつもとは違う道を歩いて帰った。人通りが少ない、表通りより一本外れた裏道。
だけどまだ深夜じゃないから少しは人の目があるし、怖くはなかった。ただ、薄暗くて心が寂しかっただけ・・・。

そういえば鞄も置いて来ちゃった。レシピノートも、アパートの鍵も。
ついでに言えばせっかく作った試作品さえも置いて来ちゃった・・・ホント、馬鹿だ。

「はぁ・・・寒い!・・・どうしよう。大家さんに言ったら開けてくれるかなぁ。それとも類が来ちゃうのかな。それも困るな・・・」

後ろから誰も来ないのを確認しながらトボトボと歩いてた。

もうすぐアパートだ・・・でも入れない。こういう時は本当に困る。誰にも助けてもらえないし、泊めてくれる人もいないから。
やっと自分の部屋の真下まで来たけど、大家さんを訪ねるかどうか迷っていた時、またアランが現われた。でも今日は彼と話す気も怒る気にも起こらない。茫然と彼の顔を見てしまった。

「ツクシ、今日も出掛けてたんだね。あれ・・・どうしたの?その格好、風邪引くじゃないか!早く中に入らないと」
「いや、その・・・鍵をなくしてしまって入れないのよ。どうしようかと思って考えてたとこなの」

「何も持ってないしコートも着てないじゃないか!一体何があったの?こうしてても仕方ないな・・・理由はうちで聞こう。父さん達も姉さんもいるから心配しなくてもいいよ」

頷いたわけじゃないけど、ここはアランの言葉に甘えてしまおうかと、彼について行こうとした時だった。



「牧野・・・!」

私の背中側から彼の叫び声が響いた。振り向いたらはぁはぁと肩で息をしている類が、向かいの建物の壁に片手で縋るようにして立っていた。今まで走っていたせいなのか、寒さのためなのか真っ赤な顔をして。


「牧野・・・そいつと何処に行くの?」
「・・・類!あっ・・・あのこれは、その・・・」

類の手には私の鞄とコートとさっきもらったマフラーが握られてた。そして類も厨房にいたときと同じ格好・・・っていうことはやっぱりあのあとすぐに荷物を持って追いかけてきてくれたんだ!
私が道を変えたから見つけられなかったのね?・・・だからこの寒い中を走って探してくれていたの?


あんな風に突き飛ばしてきた私なのに?


どうしよう・・・類の顔を見たら涙が出てくる。類の言葉にうん!って頷きたくなる。
でも私なんかじゃあの家ではなにも出来ないんだよ?びっくりするぐらい私は何も持ってないんだよ?


「ハナザワさん。ツクシの荷物を持ってきてもらったのは有り難いけど、彼女は俺が守っていくからあなたは自分の世界に戻ったらどうかな。はっきり言って迷惑なんだよ。全然立場が違うのに思わせ振りな態度をしないで欲しいな。ツクシが迷ってしまうよ」

急にアランが私の肩を抱き寄せて、類に向ってそんな言葉を投げた!

「アラン!私はそこまで言ってないわ!あの・・・やめてちょうだい!」
「いや、こんな男にははっきり言わないとわかんないんだよ。俺たちみたいな一般庶民の事なんて何も知らないんだから!
ハナザワさん、俺はツクシにプロポーズしてるんだ。もう彼女を惑わせるような事を言うのはやめてくれないか?」


私は咄嗟に類から視線を外した。

アランにプロポーズされたなんて類には言わなかったからどんなに驚いただろう・・・この時の類の顔を私は見ることが出来なかった。外した視線の先には私の肩を抱くアランの手があったけど、振りほどきたいのにそうしなかった・・・自分で自分の事がわからなくなっちゃった!

涙が溢れそう・・・それを見せないために眼を閉じて類と反対側に顔を向けるしかなかった。


「俺はあんたと話をしに来たんじゃない。牧野と2人で話がしたいんだ」

それでもそんなに優しい声で喋ってくれるんだね。それなのに嘘つきな私の口は心と反対の言葉を出した。


「ごめんなさい。私にはもう類と話すことは何もないわ」


15120139420.png
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/21 (Thu) 01:28 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/21 (Thu) 01:33 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/12/21 (Thu) 05:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様 おはようございます!

色んなお話しで素直じゃない人がいるから(笑)
向こうは総ちゃんが素直じゃないですもんね!

まぁ、もうちょい待ってやって下さい!

タイヤ交換で済んで良かったって思うしかないですよね(笑)
私は路上でバーストしましたからタイヤにはやっぱり注意しますよ。
それに銀行の駐車場で当時インテグラに乗ってたんですけど、店内から出て自分の車を見たら傾いてたんですよ。
ん?って思ってタイヤを見たら五寸釘、刺されてました。しかも横からなのでわざとですよ。
完全パンクなので駐車場にJAFを呼んで大騒ぎ。悔しかったですね~!

3年前の12月はいきなり横から車が出てきて私が体当たりしました(笑)
もちろん相手側の進路妨害ですけど、その時結構大事故で私も足に怪我をしたんですよ。
で、旦那に電話したときの第一声・・・「車は大丈夫?買い替えになる?」

車は変えられるけど、私は変えられないんだよッ!って思いました(笑)

2017/12/21 (Thu) 08:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・おはようございます!

どはは!テント張っちゃった!寒そうだ!
スナフキンって忘れたけど、テント生活だったっけ(笑)
しかも・・・どうして類君の・・・にテント張るの?張ったらダメなんじゃないの?(笑)
開放しなくちゃ!・・・あっ!そうそうこの話には残念だけどないんだったわ。

一瞬「割り箸」思い出した・・・あれは亮だったか!(爆)

で、類君と小松さんを合体させるのはやめて(笑)
類君が蝶ネクタイしてるとこ想像しちゃった。(あれ?小松さん、蝶ネクタイしてたっけ・・・)

あれから「愛が溢れる、幸せのバックハグ」・・・すごく考えてる(笑)



2017/12/21 (Thu) 08:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: つくしちゃんどうした!


ゆりのあゆ様、おはようございます!
ご訪問&コメントありがとうございます!
違っていたらごめんなさい、コメントでお話しは初めてでしょうか?

うんうん、自分にまだ自信がないんですよ、つくしちゃん。
無理もないわぁ!類君ですもの。あんな顔が目の前に来たら誰でも自信ないですよね(笑)

これから一人になったら寂しくなるのかも?
今度はつくしちゃんが類君を追いかけるかも?
それとも・・・類君が全部捨てちゃう?

なんと25日完結が1日延びて(笑)26日完結です!クリスマス終わってんじゃん!って言わないで下さいね!
最後まで見届けてヤって下さいませ!

今日はありがとうございました!応援コメント、嬉しかったです。

2017/12/21 (Thu) 15:57 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply