夜桜の色に魅せられて(前編)

「総二郎、お花見って行ったことある?」

牧野がウズウズした感じで聞いてくる。
花見ねぇ・・・桜の木の下で・・・ってやつだろう?もちろん知ってるけど行かねーよな。


「いや、ないな。桜の季節は茶会が多いからな」

「そっかー・・・」

そんなにがっかりしなくても・・・行きてーのかな?あんなものに。

「お前、行きたいの?花見」

「うん!・・・でもそうだよね。忙しい時期だもんね。それに、よく考えたら総二郎と行ってもお花見にならないかもね」

「なんで?」

「だって!そこら中のお姉さんが寄ってきそうじゃない?お花見なんて酔っ払ってたりするのよ?
なんか嫌なことが起こりそうだからやめとこうかな・・・ふふっ・・・」

なんて可愛らしいこと言うんだ、こいつ!まぁ・・・そうだろうけど。
そんなに行きたいんならどうにかしてやるか・・・?


「行ってやるよ、どうしてもって言うんなら。どんな女が来てもお前しか見ないから心配いらねーし、
なんなら誰もいない所でも探すか?」

そう言って、後ろから抱き締めると嬉しそうに笑ってる。
マジ、この表情には弱いんだよな、俺。情けねーけど。
言ってはみたけど、誰もいない花見の場所って・・・どこだ?そりゃ。



「あ、ねぇ、夜はどう?」

「夜?夜桜か。昼よりはいいかもな」

夜桜・・・!尚更よくね?やっぱりここは人の少ないところで、尚且つ桜の綺麗なところを探して・・・
いっそのこと親父に黙って貸しきりだな。事務所には明日早速言っとかないと。

今度は俺がワクワクしてきた!
真っ暗な中、外で夜桜見物・・・やったことはないけど色気を感じるよな。


3月に入ってから牧野はどこに行くか、毎日のように探してる。
でも、残念だが行く場所は俺が決める。
こいつが探したら宴会場みたいな、飲んだくれのジジイと女が満載な所見つけてきそうだからな。
冗談じゃねーよ。そんなんじゃ、昼だろうが夜だろうが関係なく牧野の嫌がる展開になっちまう。

******

そして、次の日に茶会の入ってない今日・・・夜になって2人で出かけた。

場所は千葉の、とある城山公園の中・・・明日から夜桜祭りが開催されるらしいがその前日を西門で貸し切りにした。
この風情ある庭園を二人っきりで歩く。
やっぱり貸し切りは成功だな。最高な雰囲気・・・まだ寒いから抱き合うにはいいよな。
薄っぺらいコートを着てる牧野を後ろからそっと抱き寄せる。


しかも、今日は月がよく見えて一層幻想的だ。

こんなのだったら花見もいいもんだな。


静かで・・・風が少し吹くと桜の花が揺れ遊んで・・・花びらが舞い落ちる。
思わず見上げてしまう美しさ・・・


「総二郎・・・すごく綺麗・・・」

「は?俺?桜じゃなくて?」

「そう。ふふ・・・良かった。やっぱりたくさんの人が居るところじゃなくて。こんな総二郎見るのは私1人でいいもん」

ちょっと赤い顔して、また俺の前を歩きだす。

わかってないな、お前。
おまえといるからこんな顔になるんだって。
こんな風に夜桜の中を歩くなんて今まで考えたこともない。
俺がまともになって、こうやって自然と向き合えるようになったのも、全部お前のおかげだから。

花一つが美しいだなんて・・・俺の中にはなかった感覚だ。



桜の枝にそっと手を伸ばした。
薄いピンクの花手鞠に触れると・・・急に風が吹いた!!

ザザーっと言う音と共に桜の花びらが盛大に舞い上がった?!
それは見たこともない量の花びらで・・・どこから来たんだ?

目の前を覆うほどの花吹雪が止まった後・・・

「何だ?・・・牧野?」



どこにも牧野が・・・・・・いない?

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次は18:00です
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