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plumeria

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「牧野・・・?おいっ!牧野!!」

叫んでみたけど返事がない。
一体今のはなんだ?あの風は・・・?
牧野はどこへ行ったんだ?まさか・・・連れ去られた?そんなバカな!
心臓が止まりそうなくらいドキドキした。
こんな暗い中、1人でどこかにいくなんて有り得ないのに・・・探さないと・・・!


カサ・・・・・・


後ろから音が聞こえた。なんだ、いたんだ・・・って振り返りながら

「牧野、そんなとこに・・・・え?」




そこにいたのは・・・花魁?   いや・・・牧野?


赤と黒の着物に金色の帯を前に結び、長い裾の打ち掛けの両褄を持って立っている。
大きく結った髪に笄を付けその飾りの音がシャラシャラと鳴る。
うなじからの後ろ襟を大きく抜き・・・前襟も緩めて少し胸元を見せている。
暗い庭園の中にど派手な色彩が浮かび上がる・・・


はっと自分を見ると、桜の花びらの中に跪いている?これだけの桜、いつの間に?
何がおきたかわからない・・・もしかして夢の中か

目の前の花魁はにっこり笑ってその持っていた裾を下に降ろした。

音もなくその花魁は俺の方に来る・・・ゆっくりと。まるで映画のワンシーンを見ているようだ
その白く美しい顔から目が離せない。あまりにも妖艶なその姿に・・・


裾を引きずり、その末広がりの着物の中に薄紅色の襦袢が見えて・・・すごく色っぽい。
花魁独特の歩き方で、わざと見せつけるようにしているんだ。


「牧野・・・なのか?何してんだ?」

そう声をかけるけど花魁はただにっこり笑って近づいてくる。
牧野じゃないのはわかってるんだけど、ここには他に誰もいないはずだ・・・


さわさわと風が吹き、花びらが尚美しく舞い落ちる。無数の花びらが俺の周りに降っている。

月明かりで桜の花は白く浮かび上がり、まるで提灯のようにあたりを照らす。
その花魁の顔も月明かりではっきりと見えるところまで来た。

赤い口紅、白い肌・・・金銀の髪飾りが風で揺れる・・・シャラシャラと音が鳴り続ける。
その着物の大きな袖が翻る・・・前で結んだ帯も同じように。


身動き一つ出来なかった。

花魁は俺の前に来て目の前でしゃがみ込んだ。
そして俺の手を取る。その冷たさに身震いをした。

怪しく美しいその顔は少し目を細めて誘うように微笑む・・・
俺の手は花魁の着物の襟元まで運ばれた。
冷たくてたまらないのに、その手を振りほどけないのは何故だ・・・?


『総さん・・・ずっと逢いたかった』

細くした目でジッと俺を見つめる・・・口元が少し笑う・・・



『来てくれたのね・・・やっと』

髪飾りが光り輝いて眩しいくらいだ。


俺の手を自分の襟元の奥に入れる・・・自然と俺の手がその奥に伸びる。

花魁の眉間が少し歪み、尚艶やかな眼で見つめてくる。

俺の左手を掴み自分の襟元に誘いなから、もう片方の手は俺の頬をなでる。
その顔はもう目の前まで来た。

その赤い唇が俺の唇に重なろうとした瞬間・・・朦朧としていた意識が戻った



「誰だ?あんた」

やっと、声が出せてそう聞くと途端に花魁の顔が変わった。

『総さん・・・忘れてしまったの?』


悲しそうに囁いた・・・・・・その時再び強く風が吹いた!!
まるで渦を巻くように俺の周りを無数の桜の花びらが舞った。

ザザーっと音を立てて・・・


そして、しばらくしたらピタッと音が止まった。

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ラストは明日06:00!
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