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新しい年が明けたばかり・・・1月のニューヨークは今日も凍えるような寒さだった。

この新年早々、俺はとんでもない事件に巻き込まれた。
まぁ、これが俺と翔子の仲を一歩進めたのは間違いない。俺は机の上に置いた小さな小箱に眼をやった。

そして今度は窓から空を見上げた。たった今飛び立った飛行機・・・あれに3人が乗ってるはずだ。
俺は見送りになんか行かないって言ったから、TAKASHIROの役員室からそれを見ていた。


今度はいつ会えるんだろう。
もしかしたらその時は・・・俺にとって特別な日になるかもしれないな。

数日前の事を思い出しながら俺は仕事に戻った。
今日は彼女にこれを渡しに行くって決めてるから、早く切り上げて帰らなきゃ・・・もう一度振り返ったけど、すでに飛行機は見えなくなっていた。

飛行機雲だけがそこにあって・・・少し寂しかったな。


********


「この度我々は新型電動スーパースポーツカー開発プロジェクトの一員として研究してきたわけだが・・・どうだろう。そろそろ走行可能段階まで来ている試乗車の最終チェックに入ろうと思うんだが」
「でもまだカーボンボディの自己修復機能の実証実験は済んでないわ。試乗には早いんじゃないかしら」

「翔子の担当箇所だね?いつ頃実験できそう?来月には試乗できないかな」
「そうね、急いでみるわ!明日にでもメンバーを集めてもう一度実験の準備に入るわね」


一体、何の会話してるんだろう・・・。

俺は会社に年明け早々から無理言って休暇をもらったんだけど。それで翔子とデートしようと思って張り切ってんだけど。
なんでデートの前にマサチューセッツ工科大学のニューヨーク研究施設で小難しい研究グループの集まりに参加されられてるんだ?
待ち合わせがここだって言うから仕方なく来たんだけど、まさか研究室に入れられてこんな討論を一緒に聞くことになるとは思わなかった。部外者立ち入り禁止じゃないの?って言ったけど、オープンな研究だからって誰も何も言わない。

いや、聞いてもさっぱりわかんない。

何でも何処かのメーカーと協力して次世代の新型電動スポーツカーを開発するらしいんだけど、走るだけで蓄電する機能やカーボンボディってのが傷がついたら自己修復するとか?
そんな夢みたいな実験の一部の責任者が翔子らしい・・・っていうのはわかった。

今でも続いている物理学なのか科学なのか、お伽話の世界なのかさっぱりわからない話の中心に彼女は間違いなくいるんだ。
俺は肩肘付いてただぼーっと聞いていた。


「翔子!こっちもいいけど人工筋肉の研究の方はどうなってるんだ?自動投薬装置が終わったんだろ?人工筋肉の実験にも入ってくれよ?」
「はーい!トーマス、ごめんなさい!早いうちにやるわねーっ!」

今度は窓の外から違うグループが翔子に実験依頼・・・どうなってるんだ?この子の頭の中は!


俺は高城誠、28歳。こう見えて「TAKASHIRO HOLDING」の社長をしている。自慢じゃないがこの若さでだ。
義理の弟は認めたくないけど花沢物産の専務、花沢類で、妹はその妻、つくし。
世間には公表していないが血の繋がっているヤツの中に茶道表千家西門流の西門総二郎がいる。

そして、去年偶然出会ったこの西門翔子・・・一応、人生二度目の告白をして現在恋人・・・のはず。

翔子は西門家の一員のくせに茶道を一度もしたことがないという変わり者の上に、マサチューセッツ工科大学(MIT)にストレートで入学した才女で、特に物理学では教授もビビらせるほどの研究をしているらしい。

現在は期間限定でボストンにあるマサチューセッツ工科大学本校から、ここニューヨークに新しく出来た研究施設で様々な実験をするって事で来ていた。だから俺の自宅の近くに住む場所まで手配していたんだ。
それで少しは甘い雰囲気に持っていけるかと期待してたんだけど、物理が初恋の彼女はどうも俺の事が後回しみたいだった。


こんな彼女に恋をした俺って・・・初恋が妹ってだけでもドン引きなのに!


**


「お待たせーっ!誠さん、楽しかった?ここの討論会、激しいでしょう?」
「ごめん・・・激しさすらわかんなかったよ・・・」

MITニューヨーク研究施設の正門を翔子と並んで歩いていた。気になるのは翔子の腕がびっしりと資料の詰まった鞄で塞がっていることだ。普通はこの腕が俺の腕を掴むんじゃないの?さりげなく翔子側の左腕、掴みやすいように空けてるんだけど・・・。

そんな事を思いながらチラッと横目で見ると、翔子の横顔がやけに眩しい。

総二郎を見たらわかるんだけど西門家は意外と整った顔立ちの人間が多い。
でも俺が何度かあの一族の女性を見た中では翔子が断トツで綺麗だと思う。染めていない黒髪も艶やかだし、肌も真珠みたいに白い・・・まさに東洋的美人。

だからかもしれないけど、こうして歩いていてもすれ違う男子学生が必ず振り返るんだ。俺のことなんかまるで無視。
だが自分で言うのもなんだけど俺だって結構いい男のはず!そんなとこだけ西門の血を引いてて良かったって思わなくもない。
それなのに・・・だ!恋人だと見られないのか俺がいても平気で声をかけてくる。

「ハイ!翔子、今日も綺麗だね!明日のランチ一緒にどう?」
「あら、ケイ、こんにちは。明日から実験が多いの。ごめんね!」

「よぉ、翔子、今度宇宙工学の研究施設にも顔出しなよ!みんな待ってるから」
「ハイ!ルーク、そうねぇ・・・暇になったらね。チームのみんなに宜しく!」

マジむかつくんだけど!翔子が男連れだって事に気が付けばいいのに!
俺がいけないのか?・・・肩ぐらい抱かないと恋人にはみえないって事?じゃ、ここは思い切って・・・って片手を上げた時だった。


「よぉ!翔子、いい男連れてんじゃん!何処で引っ掛けたんだ?大阪だっけ?」

・・・は?大阪って?・・・俺は中途半端に翔子の肩辺りまで腕を上げていたのに慌ててそれを引っ込めた。
しかも聞き覚えのあるその声は・・・っ!
凄く嫌な予感がしたけど声がした後ろ側を振り向いたさ!


「ヤッホー!誠に翔子、元気そうじゃん!今年も宜しくなー!」

「総二郎お兄様!」
「何しに来やがった!総二郎っ!!」

ニヤけた顔で片手をポケットに突っ込んで、反対側の手で似合いもしないのに手を振ってる!
何でだ!なんで日本の茶道家が新年早々こんなMITニューヨーク研究施設の正面入り口に立ってるんだっ!

「何だよ・・・久しぶりなのにそんなに嫌そうな顔しなくてもいいだろう!友達じゃなかったっけ?新年の挨拶の方が先じゃね?」
「誰が友達だよ!そっちが勝手に懐いてるだけだろう!俺は別にそんなつもりはない!・・・話しかけるから答えてるだけだよ!」

「よく言うよ!会えて嬉しいくせに!」

総二郎はそう言うと俺の肩をガシッと掴んだ。お前に抱き付かれたくはないんだって!そうじゃなくて俺は翔子にこの左腕を持って欲しくて、そればっか考えてたのに!
そしたら総二郎が俺の耳元で小さく囁いたんだ。

「さっき・・・何しようとしたんだ?翔子の肩でも抱こうとしたのか?」
「・・・・・・!」

くそっ・・・!腹の立つヤツ!自分がそういう事に慣れてるからってうるさいんだよ!
俺は思いっきり総二郎の背中を膝蹴りした!「ゲッ!」って小さい声で唸った総二郎は俺の肩にまわしていた腕に力を入れて、今度は両手で首を絞めやがった!

「何すんだっ!離せっ!この野郎・・・っ!」
「お前が先に俺の腰を蹴るからだろうっ!ビビりのくせに生意気なっ!」


「やめなさいよ、2人ともみっともない!ここを何処だと思ってるの?MITの正面だよ?!」

翔子の声で俺たちはピタッと動きを止めて、お互いに掴み合っていた手を離した。
しまった・・・何でこいつが現われたらこんな事になるんだろう。確かに大阪でも母さんに叱られたような気がする・・・。
横を向いたら翔子が腕組みして睨んでる。先に余計なことを言ったのは総二郎だから!って言おうとしたらそれを遮るかのようにヤツの方に話しかけた。


「総二郎お兄様、どうしたの?まさかアメリカでもお茶教えてるの?」
「馬鹿言うな!そんなの疲れるじゃねぇか!毎週アメリカまで通えっていう気か?いくら俺でもやんねぇよ!」

誰も言ってない。しかもそんなの迷惑だ!総二郎には年に1回会えば十分・・・2年に1回でもいいぐらいだ!


「実はな、日本政府主催で日本の伝統文化について知ってもらおうってことでニューヨークでジャパンフェスティバルってのをやるんだよ。それに茶道家として俺が選ばれたからこうやって来てるわけ!で、今日は暇だったから誠に会おうと思っておばさんに聞いたら、ここに来てるって言うからさ。ちょうどあいつらも今度アメリカで仕事するからってここに来てたから一緒に連れてきたぜ?ほら・・・あっち!」

「は?あいつらって?」

総二郎が指さした方向を見たら・・・俺は自分の目を疑った!


この通りの反対側の道でつくしの肩を抱いて、花沢類が俺に向かって手を振ってる?!
俺が翔子に出来ないことをっ・・・よくも目の前であっさりと!

「きゃあぁーっ!誠さん、あれは誰っ?凄い格好いい人がこっちに手を振ってるわよ!ね、誰?誰っ!」
「・・・えっ!格好いい男って・・・あいつのこと?」

「そうそう!あれは誰なの?ちょっと滅多に見ないわーっ!あんなに素敵な人!」
「・・・女連れだけど?」

そう、連れてるのは妹で、つまり・・・あれは義弟だけど?


「翔子、今日はこれから5人で遊びに行こうぜ?面白いもんが見られるからさ!」


ニヤリと笑った総二郎・・・くそっ!せっかくのデートなのに!
無茶苦茶頑張って勝ち取った俺の休暇・・・何でいきなり現われたこいつらに滅茶苦茶にされるんだーーっ!



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*MITニューヨーク研究施設はこのお話のために作った架空の施設です*
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2018/01/06 (Sat) 07:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、おはようございます!

そうそう、これは誠と翔子ちゃんのお話ですよ(笑)
でね、えみりん様ご提案の話は番外編第3弾なんです!これは第2弾(笑)
あの話は書きたいので必ず最後にもってきますよ!

ただ、他にもリクエストがあったので「恋人編」?なるものを書いたのです。
類君の出番も結構あるんで、類君の時間に公開してます。
まぁ・・・全体的にギャグですけどね。

ここの類君も本編と違ってComedyになってますし。
全6話ですので楽しんでいただけたら嬉しいです!

ちなみに・・・今回も誠と翔子に甘い場面はございません(笑)
そこはR筆が動きませんので。あはは!期待してないって?そうでしょうね!

2018/01/06 (Sat) 09:14 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/06 (Sat) 13:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは!

えぇっ!今度はそっち?
そんな薬・・・パラレルになっちゃう!(笑)

私ねぇ、ふざけた話は結構書くんだけど、パラレルだけは苦手なんですよ。
イベントの時もパラレルだけは100%無理だって思いましたもん。

女装・・・じゃないんでしょ?(本気にするな!!)

で、よく覚えてますねぇ!2話目の頭で出てきますが覚えてないんです。
まるで興味がなかったから。
ブーケだって人にあげてますからね!
「結婚式」ってものにその時だけ憧れてたんでしょうね!

若い子にありがちなヤツ・・・会社にいたときもドレスだけ着たいとかよく聞きましたよ。
友達の結婚式に行ったら「誰とでもいいから結婚式がしたい」とかわけわかんないこと言ってましたね(笑)

したらわかるよ・・・楽しい事ばっかりじゃないから!

って言いたいですけどね。夢を壊しちゃいけないから(笑)
まぁ、私が旦那の悪口をバンバン言ってるのを聞いてたから、それで現実がわかるかもしれないけど。


あっ!いけない!
夢のある話を書こうという私がこんな事を言っては!

誠君と総子翔子ちゃんの恋は何とか無事に進めますから~♥

2018/01/06 (Sat) 15:13 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/06 (Sat) 16:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あはは!そうか!悟空はパラレルか!(笑)
あの時はひたすら闘わなきゃ!って思ってて考える暇はなかったですね!

でもファンタジーの人はとにかくRが多かったでしょ?
私には世界を変えてまでそんな事はかけなーいっ!って思ってました。

パラレル=エロと勘違いしてたかも(笑)


で?そんな薬をつくって総ちゃんが飲んで・・・そんな事になって、司がでるの?
無茶言うわーーっ!!
その薬まではいいと思うんですよ!書けそうじゃない?

でも・・・司と誠と・・・?そこはねーーっ・・・
さっき真剣に考えたけど思いつかなかったよ?(意外と真面目)

何かで使いたい(笑)
翔子が作った短時間性変換薬で数時間だけ女になるの!
これは司を相手に3人に飲ませたいぞっ!!

いかん・・・こんな事考えてたらまた連載が止まる・・・(笑)

2018/01/06 (Sat) 23:27 | EDIT | REPLY |   

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