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それから1ヶ月半・・・本当に何の手掛かりもなく、気持ちだけが焦ったけど牧野を探しだすことは出来なかった。
とにかくこのままだと仕事が出来ない。藤本にサインの代筆をさせるのにも限界ってもんがあったし。

「そう言えば社長がもうすぐこちらにお戻りだそうですね。しばらくは日本で勤務されると聞きましたけど。そうなったら専務、私にこんな事させてることバレないようにして下さいよ?」

「あぁ・・・わかってる。そろそろヤバいよね」
「わかってるなら自分でサインして下さいよ!自分が花沢類って事、忘れちゃいますよ?」

そう・・・ヤバいんだよ。
父さんが帰ってきたら今度は本気で妙な話を持ち出すに決まってるんだから。でもどうしたらいい?何処を探せば牧野の居場所がわかるんだろう。早いうちに発信器でもつけておけば良かった・・・なんて、あきらみたいなことを考えてしまった。

やっぱり「陽だまり」があった方向を窓から見てしまう。もうあそこは違う経営者が現われてまったく違う店に変わっていた。

今でもはっきり思い出すよ。牧野・・・あんたに初めて出会ったときのこと。”木の年輪”・・・まだ”ハートマーク”に出来ないの?
プレーンオムレツのバゲットサンド、まだあの味を忘れてないよ?


**********

<side花沢副社長>
「そう、わかったわ。来週にはこちらにお戻りになるのね?それで、例のお話しを類にするおつもりなの?」

『グラッセ家の娘の話か?まぁ、先方がえらく乗り気なのだよ。そこのお嬢さんが類の事を気に入っているらしくて会う度に催促されるので一度ぐらいは会わせようかとは思っているが・・・類はどうなんだ?本当に興味がないのか?』

「どうかしら。興味がないわけじゃないと思うけど、面白い出来事はあるみたいよ?あの子、今、病気だから!」


フランスからパパが戻ってくるけど、類はまだ牧野さんを見つけられてない様子だった。
それが母親としてはどうも不思議な気持ちなのよね。まったく人に興味を持たない子に育ってしまったから将来が不安だったけど、やっと好きになった子は何処かに逃がしちゃうし!でも、やっぱり他の人に盗られちゃう気がして悔しいし・・・。

初めて会った彼女はとても素直そうで可愛らしかったわ。
全然野心もなくてこの世界のことを何も知らない普通の子・・・だけど、類に食事をさせた子ですもの。
この世のあらゆる欲を持たなかった類。そんな子に食べることにも、誰かの手を欲しがることにも目覚めさせた子・・・そんな彼女をどうにかして類の手元に戻してあげたいけど、私にもどうすることも出来ない。

「一体何処に行ったのかしら。花沢の情報機関も当てにならないわねぇ!・・・ったく、もう!」


「副社長、宝石商の岩倉様がお見えですがいかが致しましょう」
「あぁ!ここにお通ししてちょうだい。頼んでいたものが出来たのかしら!」

私はこの宝石商にあるものを頼んでいた。それはこの花沢に伝わる指輪のメンテナンス・・・そろそろ出番が来そうだったから、花沢のお義母様にいただいたものを綺麗に磨いてもらった。
それなのにねぇ・・・届けられた指輪を前に溜息しか出ないわ。

「奥様、確かこちらは代々受け継がれているものではございませんでしたか?やっとご子息の類様に良いお話しでも?」

「はぁ・・・まぁ、そうだといいんですけど。どうなるかわかりませんのよ。困ってますの・・・」

「は?あぁ・・・それは変な事を聞いたようで、申し訳ございません!」

別に岩倉さんが謝らなくても、あなたは全然関係ないし。面白い娘が出来そうな気がして先走っちゃったのは私だし。
まぁ、いずれ役には立つでしょ・・・そう思いながら彼を1階受付まで見送るために副社長室を出た。


正面玄関まで来たとき、少し離れた場所で数名の女子社員が何かを見ながらはしゃいでいるのを見かけた。花沢の受付横だっていうのにそんなに騒いでどういう事かしら!その子達に注意をしようかと近づいたときだった。

「ねぇっ!やっぱりこれってうちの専務のことじゃないの?この名前は滅多にないわよ?」
「でもさぁ、ここ島でしょ?九州の・・・長崎だっけ?」
「それに何でこのセリフ?誰が教えたのよ~!笑っちゃうわよね!」


うちの専務?って類の事を話しているの?長崎の島ですって?・・・この子達、何を見ているのかしら?
気になって後ろからそーっと覗いてみた。

そこに映っているのは大きな青いインコだった。・・・これはルリコンゴウインコじゃないの。外で放し飼いしてるのかしら?
もっと見たくなってグイッと顔を前に出したとき、そのインコが言葉を話すところが流れた。そしてその後ろの方に僅かに映ってる黒髪の子の後ろ姿。じゃあ、この言葉は彼女が・・・そういう事なのね?


「ちょっと、あなた達・・・今のは何?もう一回見せてちょうだい!」

「「「きゃあぁーっ!副社長っ!!!」」」
「申し訳ありません!勤務中なのにっ・・・すぐに戻りますから!」
「ごめんなさいっ!あまりにも可愛かったし、この名前がっ・・・!」

女子社員達は私を見るなり驚いてスマホを後ろに隠したけど、私はその画面がもう一度見たかった。

「いいから!今のは何?コンゴウインコが喋っていたでしょ?私に教えてくれないかしら?どうやったらそれが見られるの?」

「・・・・・・は?」

どうやらそれは最近流行のI写真投稿アプリ。私は岩倉さんの事をほったらかしたまま、受付横のロビーに座って彼女たちからそのアプリの見かたを教わったわ。
そして自分のスマホでもこれを確認することが出来た!


類・・・どうやら私の方が先に見つけたわよ?ふふふ・・・どうやって教えてあげようかしら!
あの子の驚く顔が見たいわ!でも、ちょっとぐらい意地悪しようかしら。だって私の類が他の人のものになるんですもの。

どっちにしても、パパが帰ってくるまでに掴まえてこないと・・・ね!


*********


「類、ちょっと入るわよ?」

その日の夜遅くに自室でぼんやり寝そべっていたら部屋をノックして母さんが入ってきた。
この部屋に来るなんて何年ぶり?それも随分とセクシーなバスローブ姿・・・この人、ここが自分の息子の部屋ってわかってるの?
俺はまた面倒な話が始まりそうだったから、思いっきり嫌な顔を見せて起き上がった。

「なに?どうかしたの?仕事の話なら明日会社でいいでしょ?」

「ううん、仕事じゃないのよ。・・・ねぇ、うちの別荘を作ろうと思うんだけど、あなた、その場所を見に行ってくれない?」

「・・・なんで?今まで一度も俺が見に行ったことないよね。世界中のどんな危険地帯に作っても、絶対に行かないようなジャングルの中に作っても、無人島に作っても俺は見に行ったことないけど?」

「今度はちゃんと日本に作るのよ!それにもしかしたら頻繁に行くかもしれないからその目で見て欲しいの!・・・ダメ?」

なんだ?この回りくどい話し方・・・妙にニヤついてる母さんの顔が気になる。
何か裏でもありそうなんだけど、っていうかこれ以上の別荘って必要なの?俺が返事もしないで黙っているとスマホを見ながらやけに嬉しそうに話を続けた。


「実はここにね、私はよく知らないんだけどお喋りなインコがいるらしいわ。私もそんなインコに会ってみたくなったの」

「・・・え?喋るインコ?」

それって・・・それってそういちろうのこと?
どうして母さんがそういちろうのことを知ってるの?あれは藤本だって知らないのに?

「見てみる?この子、とっても素敵な言葉を教えてもらってるみたい。誰が教えたのかしら・・・ねぇ、不思議じゃない?」

そのスマホを俺の目の前に差し出して、映っている映像を俺に向けた。


・・・そういちろうだ!じゃあ、後ろに移っているのは・・・それを見た時に思いっきり笑ってしまった!
それはもう、涙が出るくらいに!母さんのスマホを抱き締めながら俺はベッドに倒れ込んだ!

なんだ!やっぱり一緒にいたんだね。それにこの言葉・・・伝えるなら俺にじゃない?そういちろうに言ってどうすんのさ!
馬鹿だよ・・・あんた、ホントに大馬鹿だよ!

ふと考えた。っていうことはマスターがいるんだよね?この後ろに映ってる小さな店が今の店なんだ。


「ねぇ、母さん!ここに別荘じゃないもの作ったらダメかな。花沢の利益に繋がりそうなもの・・・俺、行ってくるよ!」

「あら、会社の為になる物ならいいわよ?さっそく藤本に計画書を提出させなさい。呆れた・・・こういう仕事なら楽しいんでしょ!
その代わり今後もきちんと専務としての仕事もしなさいよ?サインぐらいは自分でね!」


この後、母さんが俺の行き先だけ教えてくれた。



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2017/12/07 (Thu) 00:46 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/07 (Thu) 06:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、こんにちは~!

実は私はインストールしてないので、子供に聞きまくりました。
不思議だっただろうな(笑)「お母さん、始めるの?」って言うから、「別に」って言うと「・・・」ってなってたみたい。
無茶苦茶スマホとか嫌いなんですよ、実は。
だから、スマホだと投稿も修正もしません。スマホだけでブログやってる方を尊敬します。
コメント返信だけはスマホでも出来る(笑)

お母様、ホントに何処に別荘作ったんでしょうね!
危険地帯って何処よ(笑)無人島って・・・この前聞いた島?(もう忘れた)
さーて!類くんが張り切って行ってきまーす!

素直にあえるかな・・・ど、どうだろ(笑)

2017/12/07 (Thu) 12:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

おかん、流石でしょ?この花沢夫人は好きです♥
まぁ、よく考えたら類が見つけなかったってオチはこれでいいのか?って気もしますけどね。
藤本が見つけるよりはいいだろうと。

藤本が「専務~!こんなの見つけましたよ~!」って持って来るのも考えたんだけど、その後の繋がりが浮かばなかった!

ここで疑問・・・コンゴウインコってすごいだみ声なんですが、こんなにはっきり言えるんだろうか。
「ルイガスキ」・・・「ルイボスティー」って聞こえそう(笑)

「マッテルヨ」も「オナカスイタ」も聞いたことがあるんですよ。
あの五文字は・・・「アイスクリーム」に聞こえるかも?

もうわかっちゃった?えへへ!

2017/12/07 (Thu) 13:24 | EDIT | REPLY |   

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