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plumeria

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急に声をかけられて、振り向いたときに見えた彼の姿・・・毎晩夢を見すぎたせいで幻でも見たのかと思ったくらいびっくりした。
でも、その姿を見て普段まったく飛ばないそういちろうさんがバサッと羽を広げて飛んでいくのを見た時に・・・本物の類が来てくれたんだって思った。

思ったけど、素直に喜んでいいのかわからなかった。

会いたかった。会いたかった・・・会いたくて死にそうだったのに、本当に眼の前に現われたらどうしていいのかわからない。
抱き締めていいの?その手を掴んでもいいの?・・・こんな私でも受け止めてくれるの?

大笑いしながらそういちろうさんを抱き締めてる類・・・全然変わらないんだね。

そして彼はそういちろうさんを抱き締めたまま私の方に向かって歩いてきた。どんどん距離が縮んできて、類の瞳がはっきりとわかるところまで来て・・・そうしたら、類はそういちろうさんを空に羽ばたかせて私の方に両手を広げて走ってきた!

でも、私は自分の手を広げることが出来ない。東京から逃げた私にはそんな資格なんてない。類の手をとることは出来ないんだって・・・そう思ってしまった。
だから、思いっきり抱き締めてくれる類に答えることが出来なかった。

その時、類の小さな声が聞こえた。

早くその手で抱き締めて・・・って。


気が付いたら私の両手は類の背中に回っていて、彼の力が強くなるにつれて自分もその身体を引き寄せていた。

「牧野、もう何処にも行かないで・・・傍にいてよ」
「・・・バカな人だね。いくらでも他に選べるのに・・・!でも、やっぱり私も限界だよ・・・類、愛してる」

「わかってるよ。だってそういちろうが教えてくれたんだからさ」

少しだけ潤んだ眼を指で拭いながら、類と身体を離した。それでも彼の手は前みたいに私の指を絡めてるんだけど。

「そういちろうさんが?どういう事?」
「クスッ・・・!ほら、これだよ?」

類が見せてくれたスマホ・・・そのアプリの中に投稿された動画に私はびっくりして口を塞いでしまった!この人達・・・そう言えば最近来た東京の観光客のお姉さん達だ!そういちろうさんが可愛いってスマホで撮っていたっけ!
そこに映っていたそういちろうさんはご機嫌だったのかよく喋っていた。私が何度も教えた言葉で、私の前では一度も言わなかったのに!


『ルイ、アイシテル、ルイ、ダイスキ・・・ソウイチロウ、マッテルヨ!マッテルヨ!』


この外の止まり木で日向ぼっこさせていたときだから私が知らなかったんだ。
それを何度も見ながら類は嬉しそうに笑った。「ね?そういちろうが教えてくれたでしょ?」・・・照れたように顔を赤くして。

そういちろうさんはもう自分の止まり木に戻っていたけど、類の方を見て落ち着かない。短い止まり木の上を行ったり来たりしてソワソワしていた。腕を差し出したらすぐに飛んできて、類に青い頭を差し出すの。

「うわっ!この感触、久しぶり!やっぱりそういちろうって可愛いよね!」
「顔は怖いわよ?今でも子供が見たら半分は泣いちゃうんだから!」

そんな話をしていたらマスターが何事があったのかと、扉を開けて出てきた。そして類の顔を見るなり両手を広げて喜んでいた。
類もすぐにマスターの所に行って握手をして、「中にお入り」って言葉に甘えて、私も類と一緒にお客さんの席に座った。


幸いにもこの時間お客さんはいなくて、マスターはすぐに「CLOSE」の札を扉にかけて、つけたばかりの外の照明を落とした。


********


「申し訳ありません。突然来たために店を閉めさせたようなものですね」

「いや、いいんですよ。花沢さんにお会いできて良かった。つくしちゃんがすごい決心をしてここに逃げていたのに、それを探してくれるなんてねぇ。想い合っているのに離れてしまうのは悲しいことだと思っていたのでね」

マスターはそう言ってコーヒーを入れてくれた。
俺の隣には牧野が座っていて、その顔はさっき再会したときとは違って強張って震えていた。あのことを心配してるんだね。
東京を離れたかった理由を俺が知ったかどうか。

「花沢さん、私はつくしちゃんからすべてを聞いているから大丈夫ですよ。そのことで来たんでしょう?私のことを気にしなくていいから2人で話しなさい。いない方がいいならそういちろうと散歩にでも行くよ?」

「いえ、ここにいて下さい。マスターにもお願いしたいことがありますから」

牧野の固く握られた手がグッと強くなったのがわかった。唇を噛みしめて俯いてる・・・だから、そっと強張った手を握った。
ビクッと肩を震わせたけどすぐに深呼吸して、覚悟を決めたかのように俺の方を見上げてきた。

「亮のことだけど、全部終わったんだよ?牧野の怖かったものはもうこの世には存在しないんだ。全部綺麗に消してきたよ」

「・・・え?ほんと?」

「うん。牧野のアパートに行ったら亮がいてさ、お金と引き替えにって言われたんだ。だけどそんなものを払う前にさっさと消しちゃったんだ。ただし、その手口は聞かないで?少し荒っぽいことしたからさ」

そう言うと妙な顔したけど、マスターは後ろを向いてクスクス笑っていた。
話してもいいけどさ・・・本当は亮が牧野の事を愛してたんだよ?なんて教えたくもない。

「類は・・・もしかして見たの?亮が持っていたもの、み、見ちゃったの?」
「ん~・・・見たけど、俺の頭からもデータが消えたから覚えてないんだよね。それにそこまで眼が良くないからボケててわかんなかったんだよ。はっきり見た方が良かった?」

「そっ、そんなわけないでしょうっ!!もうっ・・・類ったら!」

固く握っていた手を振り上げるから、それを逆に掴んで両手で包んでしまった。ついでに言えば眼が悪いのも嘘だけど。

「もうそんなに心配しなくていいんだって!悲しまなくてもいいし、悩まなくてもいいんだよ?あんなもの何処に保存してても消すことぐらい出来る・・・ちょっと違法行為も入るから言わないだけだよ。でも、どんな手段使っても牧野を苦しめるものを消したかったからさ。だから戻っておいで・・・マスター、牧野を連れて帰ってもいいですか?」

「もちろん!君たちは2人でいるのがいいと思うからね。私からお願いしたいぐらいだよ」


ポロポロ涙が溢れるのを両手が塞がってるから唇で受け止めてあげる。
慌ててマスターが後ろを向いたから、そのままキスまでしてしまった。


**


「ルイ、アイシテル!ルイ、ダイスキ・・・オカエリ!オカエリ!」

そういちろうさんの声が店内に響き渡ってる。「お帰り」だって!違うよ?類は迎えに来てくれたんだよ?
それとも、私に類の所に「お帰り」って言ってるの?それだったら嬉しいけど・・・寂しい言葉だね、そういちろうさん。

あまりにもそういちろうさんが騒ぐから側まで行って背中を撫ででやった。そうしたら私にも頭を差し出して「掻いて」って強請った。
類がいると調子がいいんだから!その頭を指で掻いてやるとマスターが嬉しそうに笑っていた。


「それとね・・・」

類の言葉が続いた。

「亮は俺の友人の会社でプログラマーとして働くことになったから。ちゃんと更生させて仕事させてる。もちろん監視もついてるから心配しなくていいよ。亮ももう懲りたと思うから真面目にやってるってさ!」

「・・・そうなんだ。良かった」

本当は気になっていた。
彼が昔のように穏やかな人に戻って、いつの日か心から大事に出来る人を見つけられたらいいって・・・ずっと思っていた。

ありがとう・・・その言葉を何度言っても足りないぐらいだけど、それしか思いつかないの。


ありがとう・・・本当にありがとう、類。


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2017/12/09 (Sat) 07:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます。

そういちろう、歩いて帰る(笑)
うちのオカメインコじゃないんですから。
ちなみにうちのオカメは私の部屋から出て、リビングに行くときは
少しドアが開いてれば勝手に歩いて行きます。いつか踏まないかと心配💦

今から・・・そういちろう、困りましたね。
せっかく類と再会できたのに。でもまだ出演しますから♥

まぁ、花沢邸にはもう1人(笑)いますからね。

何気にラストになってきました~!短編・・・だったでしょ?

2017/12/09 (Sat) 08:34 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/11 (Mon) 09:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは!

マスター・・・名前もつけてあげなかったのに意外と人気者(笑)
このマスターのモデルは私の子供の主治医の先生です。
あ、主治医って間違えた!F4か!(笑)

かかり付け医のことです。小児科の先生なんでけど、めっちゃ優しいんです。
診察だけじゃなくて、成長の相談とかすごくのってくれたりとか、
学校帰りに気分が悪くなったら私が行くまで休ませてくれたりとか。
公園で会ったときも子供に色んな話をしてくれるいい先生なんです~!

でもね、内科小児科だから、私も行くんですけど私の時には「加齢によるものだからね~」
で全部の病気が終わるんですよ。
お腹が痛くても、熱が出ても、目眩がしてもすべて加齢。

もしかして・・・ロリ・・・(笑)

2017/12/11 (Mon) 15:58 | EDIT | REPLY |   

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