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昼前に「木漏れ日」に行くとマスターの方が赤い顔して最初で最後の遅刻を許してくれた。
もう私は何処を見ていいのかわからなくてしょんぼり・・・そうしたらマスターが笑いながら声をかけてくれた。

「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。さぁ、花沢さんと一緒に東京にお帰り。つくしちゃん・・・頼みがあるんだがいいかな?」
「はい、何でしょうか」

「そういちろうを連れて行ってもらえないかな。この子は花沢くんもつくしちゃんも大好きだからその方が私も安心なんだよ。これからは君たちのことを東京の家で待ってくれるんじゃないかな」

私は類と顔を見合わせて、同時に室内の止まり木で毛繕いをするそういちろうさんを見た。


「私はここで自分のためのパートナーとして今度は犬を飼おうと思ってね。もちろんそういちろうのことは可愛いんだけど一度犬を飼ってみたかったんだよ。ははっ!許してくれるかい?そういちろう」

「ソウイチロウ、ダイスキ!ソウイチロウ、マッテルヨ」

「あぁ、そうだね!私もお前が大好きだよ。今度はここでそういちろうが来てくれるのを待つことにしようと思うよ」

マスターはそういちろうさんを抱き締めてほんの少し涙を浮かべた。そういちろうさんは最後に”掻いて”って頭を差し出すと泣き笑いのマスターが何度も指で掻いてやっていた。
「元気で暮らせよ」・・・そう言いながら腕に乗せたそういちろうさんを私に渡してくれた。

「それじゃあ、花沢さん。2人を宜しくお願いします。例の件、有り難くお受けするよ。それまではここで1人で頑張るさ!」
「はい。それではまた・・・ここに帰ってきますから、マスターもお元気で」

「マスター、本当にお世話になりました。ありがとう・・・そういちろうさんのこと、大事にしますから」


いつの間にか準備されていたのは花沢家所有のヘリだった。
大きな音にびっくりするそういちろうさんを抱きかかえてそれに乗り込んで、開かない窓から一生懸命マスターに手を振る。


私を助けてくれた優しい人との別れに涙が溢れて止まらなかったけど、それを全部拭ってくれる暖かい手を私は握っていた。



*********


「まぁっ!お帰りなさい・・・って、今度も随分変わったお友達が一緒なのね?ふふっ!上手くいって良かったわね!類」

花沢邸の玄関で出迎えてくれたのは今日もすごく綺麗な類のお母様だった。
ヘリコプターの中で聞いたけど、そういちろうさんの事を投稿動画で見つけてくれたのは類ではなくてお母様だったらしい。
私はこの大きなお屋敷のドアの前で、そういちろうさんを抱きかかえたまま頭を下げた。

「あの、ご心配をおかけしました。探していただいたようで・・・本当に申し訳ありませんでした!」

類と同じ茶色の巻き毛を掻き上げながら首を傾けてクスクス笑うお母様。
意外にもそういちろうさんにすっとその綺麗な手を出して背中をさすった!噛まれたらどうしようってびっくりしたけど、そこはさすが親子!
そういちろうさんは初めて会うのにお母様には威嚇もせずに背中を触らせた。類の動物に好かれるところってもしかして母親似なのかしら?

「あら、いいのよ。だってあなたのバゲットサンドもまだいただいてなかったし、類がせっかく食べられるようになった朝食が出なくなって、また痩せちゃったから仕方ないでしょ?さぁ、明日からは朝食が楽しみねっ!類」

「あぁ!そうだった。牧野、明日の朝はプレーンオムレツのバゲットサンドがいい!それとカフェラテ!」
「ええっ?あぁ、はいはい!・・・えっと、お母様も?」

「もちろんよっ!そのためにあなたを探したのよ?いただきますとも!」

うふふ!って類の腕をとってお母様はお屋敷の中に入って行く。私はそういちろうさんを抱っこしたまま2人の後ろを走ってついていった。バゲットサンドのために・・・か!その一言は私を安心させてくれた。ここにいてもいいんだよって・・・。



リビングの窓から庭を見たら以前はなかった不思議な場所を発見した。なんだろう・・・少し背の低い木や草や岩なんかも置いてあって柵で囲まれてる。洋風庭園ですごく綺麗なのに、何故かワイルドに作られたそこが妙に気になるんだけど。

「ねぇ、類。あそこはなあに?前にもあったのかしら?」

「ん?あぁ!あれ?・・・後で行ってみる?可愛いのがいるよ。牧野に見せようと思って取り寄せたのに、その日にあんたがどっかに行っちゃうからさ」

可愛いもの?でも、あそこには何もいないような気がするけど?

お母様と一緒にお茶をいただいた後に類がその不思議な場所まで連れて行ってくれた。もちろん腕にはそういちろうさんがいる。もしかしてそういちろうさんのお友達かな?そう思って柵の前に行くと・・・そこにはとんでもない先客が立っていた!

「あっ、あのさ、見間違いだったらいいんだけど、私には目の前に”あの子”が見えるんだけど・・・気のせい?」

「ううん。取り寄せたんだよ、アフリカから・・・ハシビロコウのそうじろう。可愛いでしょ?」

「そうじろう?そういちろうさんの次だから?」

「うん。色々考えたんだけど面倒くさくなったからそうじろうにしたんだけど、よく考えたら友達の名前も総二郎だから間違えそうだよね!目付きが少し似てるんだよ」

このそうじろうさんがジッとこっちを見ているから、そういちろうさんを柵の中に入れてみた。コンゴウインコの3倍くらいあるそうじろうさんに、同じくらい怖い顔したそういちろうさんが歩いて寄っていく。
そして2人並んでジッとしていた・・・プッと噴き出しそうなその光景に類と2人でお腹を抱えて笑った。

「ソウイチロウ、オナカスイタ!」
「・・・・・・」

そりゃ話さないって!そういちろうさんの言葉にもそうじろうさんは顔の向きすら変えなかったからもう一回大笑いした!

変な人だね。本当に変な人だよ!花沢類って!
私のためにハシビロコウを飼って、コテージを作って、あの人も救ってくれて!


「ここが動物園みたいになっちゃうね!毎日が楽しいわ、友達が出来て良かったね、そういちろうさん!」
「なんならペンギンも飼う?探してくるよ?あ、ちなみにそうじろうって雌なんだよ。これも笑えるでしょ?」

もういいから!って手を振るけど、類ったら真剣に考え始めた!
そんな彼に横から抱きついたら、びっくりしたように顔を赤くされた。いつも類からだもん・・・たまにはね。
そういちろうさんとそうじろうさんが見ている前だけど・・・少し背伸びして類にキスをした。


**


その日の夜も類の部屋のベッドに抱き合ったまま眠っていた。
以前は恐怖で震えていたのに今日は幸せすぎて暖かすぎて、まるで夢の中にいるような気分で類の腕の中にいた。
明日からは類のために早起きをするわ。だから・・・早く寝ようねって言ったのに!

やっぱり・・・許してはもらえなかった。


そういちろうさん?
そういちろうさんはサンルームに止まり木を作ってもらって、今度からそこが彼の部屋になったの。


yjimageHV48TOMZ.jpg
明日がラストです。
長い短編にお付き合いいただきましてありがとうございました。
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2017/12/11 (Mon) 06:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます!

え(笑)泣きそうになっちゃった?それなのに?
昨日、「そういちろうとお別れかぁ!」ってコメントにあったので、実はニヤリとしていました。

申し訳ございませんねぇ!初めから名前はこれにしようと思っておりましたので!
見た目だけなら「つかさ」が良かったかな?ぶははは!
白フクロウの「あきら」も考えたんですけど、やっぱりここはハシビロコウで「そうじろう」が一番かと。

コンゴウインコとハシビロコウが一緒に映ってる画像を必死で探したんですけどなかったの。残念!

明日でやっと終わりますが30話くらいって、あっという間なんですね。
事件が1回くらいしか起こせないのね~!って思いました。

今日は天気が悪いなぁ・・・雪が降ればいいのにな!




2017/12/11 (Mon) 08:15 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/11 (Mon) 10:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

すみませんねぇ、そんなにウルウルしてもらったのにそうじろうが出てきて(笑)
しかも雌だしね。

本気で名前考えたんですよ。お話し考えたときにね。
でも類じゃないけど面倒くさくなって「いいや!そうじろうで!」ってなったのは本当です。

え?総二郎と対面・・・そこは考えてなかったなぁ(笑)
この話に総ちゃんが出てなかったから。
会ったら怒るでしょうね。いや、雌だから怒らないか!基本女には優しいから。
それがたとえハシビロコウでも女は女だから♥

そういちろうが食べられると言う発想はさとぴょんさんだけだから!
びっくりしちゃった!ぱくんって・・・バゲットサンドじゃないんだから。

毎回面白いコメント、脇腹痛いです。ホントにありがとうございます!

2017/12/11 (Mon) 20:17 | EDIT | REPLY |   

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