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すごく幸せな気持ちでこの家で三度目の朝を迎えた。
前は朝起きたときから悲しくて、泣きながらシャワーをしたのを思いだした。あれから数ヶ月・・・こんなにも違う気分で目覚めるとは思わなかった。
眼を真横に向けると子供みたいに長い睫毛の彼がすぅーっと寝息をたててる。
そっと私の身体にくっついている腕を外しても眼を開けなかったから、そっとベッドを抜け出した。

だって、朝ご飯、作らないといけないんだもの。

私はこの花沢邸の厨房とは別の、ダイニングに繋がっているキッチンに向かった。ここはお客様用ではなくて花沢家用のダイニング。簡単なものならここで作れるようになっていたから、エプロンをつけてそこに立った。

材料は昨日のうちにシェフからもらっていたから、さっそくご希望のバゲットサンドから。
プレーンオムレツのバゲットサンドに定番のスモークチキンのヤツと、ツナとグリーンサラダのヤツ・・・今日は3種類作るんだ!
フワフワのオムレツを作って、スモークチキンは今日はズルしてシェフからもらったもの。ツナに味をつけて色とりどりの野菜を用意する。特製ドレッシングはちゃんと自分で作った。

そして少し多めに作って、一種類ずつ包んでおいた。これは後で来る藤本さんの分。

類とお母様の分は出来たから、次はカフェラテの準備に入ろうって思ったときに眼を擦りながら類がドアを開けて入ってきた。


「おはよ・・・ねぇ、酷くない?自分だけ起きてさ。ベッドが冷めててすごくショックだったんだけど」

「おはよう。ふふっ!だって類が朝ご飯、リクエストしたんじゃない。だから早起きしたんだよ?」
「でも許せない・・・そんなの」

そう言うとコーヒーメーカーに手をかけている私を後ろから抱き締めてキスをする。
少し唇を離して「明日からは一緒に起こして」って悪戯っ子のように笑った。


類がテーブルに並べたバゲットサンドを前にニコニコ笑って座ってるから、少し緊張しながらエスプレッソを作った。

今日は失敗しないかしら。ちゃんと綺麗なハートマークになるかな・・・”木の年輪”になっても笑って許してくれる?

カップを温めておいてミルクのスチームに取りかかる。ここが一番大事で丁寧に丁寧に・・・艶のあるミルクを作らないと綺麗に仕上がらないの。でも、さすが花沢家の業務用ミルクピッチャーで作ったらこの私でも上手に出来てない?
カップに注いだエスプレッソにこのミルクを慎重に入れていった。そして集中して作ったラテアート・・・今までで一番の出来じゃないかしら!綺麗なハートマークになってるっ!

嬉しくてすぐに類に見せたくて!でも運んだら形が崩れそうだったから手招きで類を呼んだ。

「ねぇっ!見て見てっ!これ・・・ハートマークになってるでしょ?」
「あっほんと!木の年輪じゃなくなってる!・・・上手くなったんだね」

「そりゃ、まぁ・・・類がいるからね」!

あなたのために練習していたんだもの。そりゃ頑張るよ!なんて言葉は出せなかったけどこれが私からのメッセージだから。
綺麗に出来たラテアートを類がそっとテーブルに運んでバゲットサンドのお皿と並べた。

「いただきます!牧野も食べよ?今日から牧野も出勤だよ?」
「はっ?!何処に?・・・何処に行くの?」

「あれ?言わなかったっけ!牧野は花沢の秘書課に入るんだよ。残念だけど専務付きじゃなくて副社長付き。母さんについて会社のことを覚えるらしいよ?頑張ってっ!」

「・・・え?お母様に?」

大きな口開けてバゲットサンドを食べようかと思ったのに、類の突然の発言に両手が止まった・・・。


「おはよう~・・・きゃあぁーっ!これが類が言ってた最高の朝ご飯ね?やっと食べられる~!!」

ダークワインのナイトガウン姿のお母様は朝一番から綺麗だった。ちょっとボサボサの髪でさえ色っぽいのね!
そして類の真横に座って目の前に並んでるバゲットサンドを手にとってぱくんと食べた!

「あら!ホントに美味しい・・・いやん!類はいいけど、私まで太っちゃう!」
「ね?美味しいでしょ?藤本になんかあげなくてもいいのに。毎日腹を空かせて迎えに来るよ?」

今日の花沢家の朝はいつもより賑やかだと加代さんが笑っていた。


***


それからは本当にお母様について花沢の事を勉強することになった。
すればするほどこの家の大きさがわかって自信がなくなったけど、それを支えてくれる手が沢山あった。
お母様も藤本さんも加代さんも・・・私がこの家に来てから少ししてフランスから戻ってきたお父様も優しくて、何も持たない私でもいいと認めて下さった。

その代わり、誰からも文句を言われないだけの努力と勉強はしなさいと・・・それだけ言ってまたフランスへ帰っていった。


花沢家はあれからも私の作った朝食で始まる。執事さんも加代さんにも朝ご飯を作ることもあるの。
ラテアートは少し上達して鳩が描けるようになったわ。そうしたら猫にしてくれって類が言ったから今はそれを練習中。


そして必ず毎日そういちろうさんにも会いにいくの。あれから天気のいい日には外で過ごせるようにそうじろうさんの”ワイルド庭園”の横にそういちろうさんの”木漏れ日庭園”を作った。

「ソウイチロウ、オナカスイタ、ソウイチロウ、マッテルヨ!」
「はいはい!わかったわよ。そういちろうさんにもそうじろうさんにもあげるからね!」

そういちろうさんにはいつものご飯とヒマワリのタネを。そうじろうさんにはお魚をあげる。
何だか不思議なこの光景にも慣れてしまったわ。あんまり動かないそうじろうさんの目の前にお魚を置いてあげると・・・
まるでニヤッと笑ったかのような顔でほんの少し動くの!やっぱり怖いって!

雨が降ったり風が酷いとサンルームを改造した室内部屋に2羽を移す。驚いたことにそうじろうさんは加代さんと仲がいい。
加代さんが呼ぶとゆっくり歩いてきて、このサンルームまで2人が並んで来るの!それには毎回大笑いした。
そういちろうさんは今まで通り、私の腕に止まって移動するの。嵐の日でも類と2人、サンルームでこの2羽と一緒に過ごすこともあった。

「ソウイチロウ・・・ソウジロウ、ダイスキ!」
「・・・・・・」

残念だけど恋には発展しそうになかった。


そんな日々はあっという間に過ぎていって、花沢に来て1年が過ぎた。


**


「つくしーっ!支度できた?そういちろうは大丈夫?」
「はーいっ!準備出来たわ。今から行ったら何時に着くの?」

「今日はプライベート用の大型ヘリだからすぐだよ。昼過ぎかな?」
「専務~っ!私は高所恐怖症なんですけどやっぱりヘリですかぁっ!」

「・・・藤本も来るの?来なくていいのに」
「何言ってるんですか!仕事でしょ?私がいなかったらお二人がいちゃいちゃしっぱなしで仕事にならないじゃないですか!」


明日は福江島で花沢が経営するコテージのオープン記念セレモニーが行われる日・・・だから前日から3人でお祝いに行くの。
私はそういちろうさんを抱きかかえてヘリに乗り込んだ。

類が最後に乗り込んで、この大型ヘリは東京の空を西へ進んで行く。
窓から日本地図を眺めながら、ワクワクした気分でそういちろうさんの頭を撫ででいた。


「そういちろうさん、マスターに会うの1年ぶりだね。楽しみでしょう?」
「ソウイチロウ、マッテタヨ!ソウイチロウ、ダイスキ!」

「うん!私もマスターのこと大好きだよ!」

瀬戸内海上空を通り過ぎて九州に入った。そして・・・沢山の島が見えてきて、長崎に来たんだって思ったら1年前を思い出して眼が熱くなった。

やがてマスターのいる懐かしい福江島に着いて、私と類は手を繋いでその場所に向かった。

「木漏れ日」のあった場所から少しだけ南側に花沢のコテージは作られていた。広い庭園にプールまであるの。すごく可愛らしい内装や南国風の建物が評判で、すでにオープン開始から予約はいっぱい。忙しい日が続きそうね・・・マスター!

コテージのすぐ横には類がマスターのために小さな家を建てていて、大きな犬を連れたマスターがその家の前で両手を広げて私達に合図を送っている。
そういちろうさんはマスターを見るなり喜んで飛んでいった。

「ソウイチロウ、マッテタヨ!ソウイチロウ、オカエリ!」
「あはは!両方とも私が言うセリフだよ!そういちろう・・・元気だったかい?待っていたよ、お帰り・・・!」

抱き合ってる二人に新しい仲間のラブラドールレトリバーがじゃれついてる!



「あはは!変わらないんだね、そういちろうとマスターは!」
「変わったのは私達だよ。マスター、驚くかな?」

「幸せな変化だから大丈夫・・・喜んでくれるよ」


左手薬指にはめられたリングと少し大きな私のお腹・・・穏やかな島の風が私達を包んでくれた。


**


驚いたんだけど、マスターの家にはあの時の張り紙が今でも壁に飾られていたの。

【店内の隅に同居人のそういちろう、コンゴウインコのオス、がいます。気になる方はご遠慮ください】



fin.

15100254920.jpeg
ほのぼのとした(何処が!)お話しの完結でございます!
読んで下さった皆様、ありがとうございました。

明日からのクリスマスストーリーは00:00になります。
間違えなければ(笑)
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Comments 18

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2017/12/12 (Tue) 04:12 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 05:50 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 06:35 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 06:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

kyoro様 おはようございます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
あはは!途中ですか?・・・いきなりの急カーブみたいですみませんでしたね(笑)
つくしちゃんには申し訳ありませんでした。

私的にはほんわかしてたんですけど、どうも皆様驚かれたようで。
どっちかって言うと切なかったのはマスターではないかしら(笑)

とにかく「そういちろう」を書きたかったので最後は花沢邸で飼えて良かった!
ハシビロコウは皆さんにウケが良かったので急遽取り寄せてみました(笑)
初めの設定では花沢邸にはそういちろうの家しかなかったので。

そうやって変更するから長引くんですけどね!

今年の連載はクリスマスストーリーで最後です。
どうぞ宜しくお願い致します。

kyoro様もお風邪など引かれませんように、気をつけて下さいませ。
今日は応援コメント、ありがとうございました。

2017/12/12 (Tue) 08:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます。

そうそう長い短編!最初に考えたときは13話だったんだもん!(笑)
何で20話もオーバーしたんだろう。謎ですよね~!

加代さん、実は強かったのですよ。
でもさすがにハシビロコウは腕には乗せられんでしょうから一緒に歩いていただこうかと。
そのうちペンギンもペリカンもフクロウも飼って、花沢鳥類園が出来る予定です(嘘)

ゴールデンレトリバー!何でわかったの?(笑)
初めはそれ、書いてたんですよ!彼だけ出てなかったから!
(総二郎は・・・ハシビロコウでいいかと)
でもね、遊び過ぎるかな~って思って名前を消したんですよね!

彼の名前はペット向きじゃないような気がしません?
「あきら」って犬はいそうな気がする。
レトリバーの「あきら」・・・格好いいかも!ごめんね、総ちゃん!(笑)

ハシビロコウが書けて良かった!
実は結構楽しんで、ストレスなく終わったのでホッとしてます!
いつもコメントありがとうございました。本当に嬉しかったです!

さっき・・・雪降ってた。寒い・・・。

2017/12/12 (Tue) 08:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ないない様、おはようございます。

あはは!ハシビロコウはバレバレでしたもんね!
いや、バレてもいいと思って書いていたんですよ(笑)
名前だけで笑っていただけたらそれで満足!しかもメスのそうじろう!

ハラハラさせたりしんみりさせたり・・・でも、実は私の中ではコメディだったのですよ。
そういちろうっていうインコが出ることがすでにギャグですよね!
うちのオカメインコも喋ったらいいのに・・・今はホットカーペットの上で寝てます(笑)

クリスマスストーリー♥
甘々なヤツですね!今回は舞台がフランスなので非常に困っておりますが
パリの市内地図見ながら頑張って書いてます!
パリ・・・20年前に行きましたが記憶が・・・。
「料理の食べ方が下手だね」ってレストランの人に言われたこと、
路上でクレープ売ってたお姉さんに「中国人?」って言われたこと、
セーヌ川クルーズ中に全裸の男性が5人ぐらいで川岸に並んでいたこと・・・この3つは覚えています。

いや、全部いい思い出です!(笑)

最後まで読んでいただきありがとうございました。


2017/12/12 (Tue) 08:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: ありがとう

happy様 おはようございます。

ご訪問&コメントありがとうございます。
私も最後はHAPPYに終わらせたいのでそのように書き進めておりますよ。
まぁ、そのためには切ない部分や悲しい部分がスパイスとして存在しないとお話しとしては面白くないと思っているので
こんな感じになるんですけどね!

クリスマスストーリーにはそこまで切ない部分はないかな?
甘く仕上げたつもりです。
是非、クリスマスまでお楽しみいただけたらと思います!

応援コメント本当に嬉しいです。今日はありがとうございました!

2017/12/12 (Tue) 09:00 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 12:21 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 17:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

凪さん、今晩は!コメントありがとうございます!

えっ!ハシビロコウまで・・・そりゃ怖いねぇ!(爆)
実はね、ひらがなで「そうじろう」とか「そういちろう」とか書くから私もわかんなくなって
下書きの時、「そうじろう」が「総二郎」って漢字になっててびっくりしたのよ。
いつ総ちゃん、この話に出たっけ?みたいな!(笑)

総二郎には魚をあげた・・・ん?


これで完全に「そういちろう」とお別れだわ~!(笑)

登場させることが出来て良かった!満足しました!
さようなら・・・そういちろう。

あ、そう言えばジークフリードが怪我をしてギプスになりました!ピンチ!!
凪さんは大丈夫かしら?まだフェッテとかしないでね?頼むから!

2017/12/12 (Tue) 18:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あらあら!ほっこりしていただけました?良かったです!
色んな画像が満載でしたねぇ、今回は!
ハシビロコウやらコンゴウインコ、白フクロウにバゲットサンド!
最後の画像の猫・・・結構怖くないですか?

実は使っておきながら言うのもなんですけど、ゾクっとするんですよ。
コーヒーが黒いから?闇の中から顔出してるみたいで。

「許さへんで・・・」(何故か関西弁)って言ってるような気がしてならんのです。
でも、使った!(笑)

で・・・(笑)
最後の藤本のって・・・まだ覚えていたんですね?(爆)
マジ、お腹痛い!

今日もありがとうございました。

2017/12/12 (Tue) 19:11 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 21:12 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/12 (Tue) 22:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

うんうん!怖かった(笑)
お汁粉の中から白玉だんごの猫がでてるみたいでしょ?
調べたとき、「私、カフェラテで検索したよね?」って思って見直しましたもん!

コンゴウインコはないでしょ(笑)
ハシビロコウはもっとないですよね!

バリスタの皆さん、挑戦して画像下さい!(笑)

2017/12/12 (Tue) 23:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、今晩は♥

あはは!びっくりしました。
一瞬ホントに自宅でハシビロコウを飼っていらっしゃるのかと・・・!
それならうちにもおります・・・と言いたいところですが、うちの旦那は休みの日には
動きまくります。
掃除はもちろん、気が付いたら買い物に行き、ゆっくりしていたかと思えば散歩に行き、
たまにはご飯も作ります。
ただ、すべてが無言で行われるので私は全然気が付かないんです(笑)

言葉がないのがアイツに似ていますね!

ほんわかさせたつもりが途中の爆弾が大きかったようで申し訳ございません(笑)
でもまぁ、最後は何とか私の希望通りに終わったかな?って思っています。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。
今日はありがとうございました。

2017/12/13 (Wed) 00:16 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/06 (Sat) 00:35 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

mizutama様、おはようございます!

おぉ!そう言っていただけて凄く嬉しいです!
初めは12話程度のお話しで組み立てたのですが、終ってみれば33話(笑)
書き始めたら自分でも調子に乗ってしまって、どんどん話が膨らんでいきまして。

私も自分の書いた中ではお気に入りなんです。
あ!途中が悲惨ですけどね!(笑)

気に入ってしまったが故に、今、そういちろうの呟きなる番外編を書いております!

今年もほんわかとしたお話しを書いていけたらと思っています。
どうぞ宜しくお願いします。

2018/01/06 (Sat) 09:03 | EDIT | REPLY |   

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