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夜になって祥兄ちゃんはまた手におつまみを少しだけ持ってやってきた。その表情は明るかったけど、ふとした時に見せる不安な顔はすぐにわかった。
何かがまた動き始めたんだ・・・そう、思った。

総二郎もすごく普通にしていたけど私の眼も祥兄ちゃんの眼も見ようとしない。声だけが明るいけど態度はわかりやすかった。

「地下からワイン取ってくるわ。何でもいいかな・・・そろそろ類に頼んで新しいワインでも追加してもらえねぇかなぁ!ここにあるものは飽きちまったな」
「贅沢言うなよ。あいつも忙しいんだろ?」

祥兄ちゃんの返事に総二郎も私も動きが止まった。
ここが花沢の別荘だということは知っているはずだけど、何故類が忙しいだなんて言葉が出るの?祥兄ちゃんと類って接点があるの?多分総二郎も同じ事を考えたんだろうと思う。だけど、それ以上は言わなかった。

祥兄ちゃんは何も気がついていない。私達が一瞬止まってしまったことに何も気がついていなかった。


「祥兄ちゃん、今日は肉じゃがにポテトのオムレツとお味噌汁だけどいいかな?後でおつまみ作るね!今日は泊まっていけるの?緊急な患者さんはいない?」

「あぁ、でも帰るけどな。もう夜もそこまで冷えないし、朝早く帰るのもしんどいから。つくしはどうだ?張りは少し治まったか?」

「ううん。ちょっと無理したらすぐ痛くなっちゃう。臨月って大変だねぇ!これであと1ヶ月もこのままなんて信じられないわ。早く産まれたらいいのになぁ!」

「自然に産まれるまでは大事にしとけよ?もう産まれてもそこまで心配はないけど、出来るだけ腹の中で栄養摂ってから出てきた方がいいからな。何あったらすぐに休んで、酷い痛みが出たらうちに来いよ?夜中でもいいからな」

ワンピースの上からお腹を触っているときに総二郎が地下から上がってきて、祥兄ちゃんが私に触ったってぎゃあぎゃあ騒いで怒ってる!それに大笑いしてたら脇腹が痛くなった!

「あたたたっ!もう、2人で笑わせないでよ!お腹が痛くなっちゃう!」
「うそっ!大丈夫か?後は俺がやるから座っとけ!ほら、祥兄、お前も運べよ!」

「あ?あぁ、すまん!どれを運べばいいんだ?」

大事を取って座らされたのはいいけど、キッチンでアタフタする2人を見て・・・何故か苦しかった。

その後はテレビもつけずに前みたいに昔話ばかりして大笑いしてご飯を食べていた。私のオムレツが美味しいって祥兄ちゃんが言うとそのジャガイモの皮を剥いたのは俺だって得意気に言う総二郎が可笑しくて。
祥兄ちゃんが自分でも味噌汁を作れると言えば、俺はお好み焼きが作れるって変な対抗心で2人は言い争っていた。

そんな時間はあっという間に過ぎて、洗い物も済ませてお茶を入れるようになったら2人共が真剣な表情に変わっていた。


「もう、そろそろ本題に入れよ。何があったんだ?西門が動いたんだろ?」

総二郎の一言で祥兄ちゃんの眉間に皺が寄った。それを見て、私も指先が震えてお茶を入れるとカタカタと音をさせてしまった。

「西門が動いたっていうか・・・千春から電話があったんだ」
「千春から?・・・なんて?」

「誰かから電話があったらしい。総二郎のことで・・・それだけ言われて電話を誰かに取り上げられてるんだ。それからは千春の電話が繋がらなくなった。だから、それ以上の事がわからないんだ。お前、心当たりないのか?」


***


西門邸にいる千春に俺の事でと言って電話をかけるヤツ?そんな人間に心当たりなんてなかった。
ここにいる事を知っているのは類だけだし、類の家の使用人もおそらく俺たちの事なんて知らされていないし、知らされていても信用できる人だと思う。そうじゃなかったらもっと早くに通報されているだろうから。

わざわざ今の時期に千春に電話したのなら、最近俺たちの事を知った人間のような気がする。


「心当たりなんかねぇよ。なんで千春なんだ。普通は西門だろ?どうして千春のスマホにかけるんだ?」

「いや、何処に電話したのかも何故千春なのかもわからないんだ。話し始めてすぐに取り上げられたからな。でも、西門内部だろうと思う。出て行ってって言葉と、私を誰だと思っているの・・・そう千春が叫んでいたから、誰かが彼女の部屋にいきなり入ってきてスマホを取り上げた。そんな感じだろうと思うが」

つくしは何も言わずに湯飲みを俺たちの目の前に置いて、大人しくその場に座っていた。
考えられるのは最近見た女だ。だけど、それも確かじゃない・・・似ていただけかもしれないし、今頃俺の事を知ったとしても何故西門に連絡なんて入れるんだ?俺たちとはまったく無関係な女だ。

でも、つくしを階段から落とそうとしたことはどうなる?その意図も実はわかっていなかった。

「とにかく千春に電話を入れたけど出なかった。もし、千春が俺の名前を正直に登録していれば取り上げた連中に俺の事がバレているし、俺は本名で医師登録してるから調べればここに勤務していることが西門に知られる。もう、覚悟はした方がいいだろうな」

「覚悟・・・か。でも、千春が俺との婚約を解消するって言うなら問題はなくなるんじゃねぇのか?」

「いや、もしそうだとしてもつくしの事が調べられる。孝三郎が起こした事件のことでかなり西門の内部が暴露されてるし、現に考が傷害事件を起こしたのは実は初めてじゃないって報道もあったぐらいだ。その相手が一応婚約者だったつくしで、今度は総二郎がその子と結婚するなんて報じられたらどうする?あれだけ千春との婚約を堂々と公表した西門の嘘が明るみに出る。
家元はそんなスキャンダルは出さないだろう。つくしの事はどっちにしても時間がかかる・・・そう思わないか?」

祥兄の言うとおりかもしれない。
そしてお互いの意思なんてものは無視されて西門と和泉によって一番避けたい結果になりかねない。

もっと怖いのは・・・つくしと子供を楯に取られることだ。

「総二郎・・・実は少し俺にも考えてることがあるんだ。まだ少し纏まっていないけど、俺の中で纏まったらお前に話そう。だから2人ともこの現実だけは知っておいてくれ。どうにかして子供が産まれるまではお前達も離れたくないだろう?」


「悪いが産まれたらもっと離れられないだろうけどな。この土地からは動けないのかな・・・そうすりゃ楽になりそうなのに」

「それも少し頭には入れてるよ。俺1人の力じゃどうにも出来ないけどな」


その時、俺には祥兄の後ろにいるあいつの影がはっきりと見えたよ。
そんな事が出来るのは1人しかいねぇもんな。少し腹が立つけど・・・その手を借りてでも俺はここから逃げようと思った。


「その考えが纏まったらすぐに教えてくれ。つくしを守ってくれるなら誰の手でもこの際文句は言わねぇよ」

つくしは何のことかわかっていないようだった。
ここに来てから時々感じてた誰かの視線と気配。俺たちに気付かれないようにって指令でも出して見張らせていたわけだ。
誰もこの別荘に近づかないようにってな。旭川の病院にも潜り込ませてたんだろう、だから手続きすべてがスムーズに進んだ。
宅配業者もあいつの仕業だろう。うちに来ている宅配業者は調べたらその名称では登記がなかった。


そんなにまでしてつくしを守りたかったのか?
次に会ったら一発殴ってやる!俺の事を信用しなかったのか・・・ってな!

あいつが病院を出て行くときの後ろ姿を思い出して笑ってしまった。
あの時すでに全部を手配していたのかと思うと・・・やっぱりすげぇ男だな。


類・・・それでも今はお前の力を借りたい。それが本心だった。


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2017/12/18 (Mon) 13:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は

あのー・・・そこの奥さんにお話しされてるの?もしかして・・・私?(笑)
ここで奥さんって言われたことがないから笑ってしまった!

祥兄ちゃん、考えが中々纏まらないうちに事件の方が進むんじゃないのかしらねー(笑)

どうしてもこの祥兄の考えが「長崎に避難せよ」に思えてしまう。
マジ、今でもなかりウケている私。

何だか今日はすごく寒いんですよね・・・わたし、鼻水が止まんないって思ったら鼻血がでました!
何年ぶりかしらっ!変なもの書いてもないのに!(笑)

今ね、ティッシュ詰めてます。(そんな報告要らんでしょうけど)

2017/12/18 (Mon) 23:05 | EDIT | REPLY |   

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