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5月になって世間ではゴールデンウィークって事で騒がしかったが俺たちには何の関係もなく、何処に出掛けるわけでない。
祥兄の話があって以来つくしは口数も少なくなり、笑い方も大人しくなった。テレビでは色んな行楽地が映し出され、楽しそうな家族連れが何組もその中で笑ってる。

別に羨ましいとは思わなかったが、こんなにも息を潜めて暮らさなくてはいけないのだろうかとそれだけを考えた。
時間がない・・・何をやっても、もうここで静かに暮らす時間が なくなってきてることを感じ取って、2人共が無言になってしまうんだ。


「どうしよう・・・お夕飯で使いたいのに玉子頼むの忘れちゃった。ドジだよね!」

つくしが冷蔵庫の中を覗き込んでしょぼくれた声を出したのはもう夕方近くになってから。
宅配業者にも注文が出来ない時間になってからだった。はぁ・・・って大きな溜息をついて悩んでる。俺も家事をするようになってから、玉子ってのが意外と色んなものに使われるってことを知ったからつくしの悩む姿もわかる気がする。

「それだけでいいなら買ってきてやるよ。そのぐらい問題ねぇだろ」

俺が買い物に行こうと立ち上がったら慌ててキッチンから走ってきて首を振った。
「心配すんな!」そう言ってもつくしは俺の服を掴んで離そうとしない。泣いてはいないが今にも泣きそうな眼をして「行くな」って訴えていた。

「それじゃ一緒に行くか?そこのスーパーでいいんだろ?玉子だけ買うのも勇気がいるけど仕方ねぇよな」
「総二郎、大丈夫かな。ごめん、私がうっかりしてるから」

「今更ジタバタしてもしょうがねぇよ。どうにかなったらその時だ」


本当に何かがあったらどうするか、だなんて考えもせずに俺はつくしを車に乗せて店へと走った。今日も少し腹が張るって言っていたつくしは車の中でも時々さすりながら繭を顰めてる。むしろそっちの方が心配だった。
近くの大型スーパーの駐車場に車を入れて、俺1人が降りた。どう見てもつくしは動けそうにない。

「すぐに戻ってくるからシート倒して寝て待っとけよ。いいか、勝手に出てきて無茶すんなよ?」
「うん、ごめんね・・・家で大人しく待ってれば良かったよ」

「1人になりたくなかったんだろ?大丈夫だ、すぐ戻る」

不安げなつくしを1人残していくのは気がかりだったが、そこまで悩むような時間でもない。横になったらすぐに眼を閉じたつくしの瞼にキスしてからスーパーに入った。
店内ではサングラスの方が目立つだろうと外していて、考え事をしながらフロアをウロウロしていた。

その時だった。



「西田先生・・・ですよね?それとも西門さんと呼んだ方がいいかしら?」


俺の真後ろから女の声で名前を呼ばれた。

しかも、西田と西門の両方を知っているってどういうことだ?
始めは振り向けなかった。このまま無視した方がいいんだろうかと迷った・・・しかし、女の声が続いた。

「奥さんの、っていうか彼女はお元気なの?もうそろそろ産まれるんじゃない?あぁ、6月だったっけ?」

その言い方で気が付いた!この女は上野明日香だ・・・ゆっくり振り向いたら勝ち誇ったような顔でニヤリと笑った。
病院で最後に見たこいつは怪我で搬送された時だったから真っ青だったし、何処かで転んだのかあちこちに擦り傷や汚れがあってボロボロだった。今のように派手でギャル風な格好じゃなかったから、そういう意味では見違えた。

「あんたか・・・。何の用だ?悪いけど時間ないんだ」


「時間なんて作りたくなるんじゃない?茶道家の・・・西門総二郎さんでしょ?もうわかってんのよ?」


・・・え?こいつが俺の素性を知ってるのか?
西門でもなく千春でもなく、ここで初めて俺を西門の人間だと言ったのがこの女だっていうことに驚いて声が出なかった。まさかこいつが西門と繋がってるのか?それでつくしを狙った?いや、それは無意味だろう?
目の前で笑っているこいつのことがわからなくて動揺したが、こんな店の中でやばい話をするわけにもいかず、場所を変えることにした。

変えると言っても駐車場ではつくしが待ってる。

俺が停めた駐車場とは反対側にも出口と駐車場がある。そっちに足を向けて、その出口のすぐ外にある自販機の横で上野明日香と並んで立っていた。お互いに顔なんて見ずに・・・俺は真っ直ぐ前だけを見ていた。この女の顔を見たら殴るかもしれない、そのぐらいの怒りと恐怖があった。


********

<side類>
昼を少し過ぎて、俺が乗った飛行機は新千歳空港に着いた。そこからは花沢のヘリで名寄の別荘まで行くことにしていた。
総二郎には話してないけど名寄の別荘周辺はすべてうちの土地で、裏山一つ超えた所にはヘリポートがあるんだ。そこから祥兄の診療所まで車で移動すればいい。それが一番時間的に最短でいける。わりと早めに目的地に着くだろうと思っていた。

空港を出たら迎えに来ていたうちの車で近くのヘリポートまで行き、そこで待機させていたヘリに乗った。


「類様、牧野様の検診予定は明日のようです。本日は別荘の方でお二人でお過ごしです」

「そう・・・じゃあ、動くのは明日って事だね。それなら牧野達を今日中に名寄から出そうと思う。向こうに着いたらそのままヘリを待機させてくれる?日が落ちたらもう飛行できなくなるから急がないとね。冬中悪かったね。ご苦労様」

ヘリで待っていたうちの人間から牧野達の様子を聞いて、以前から考えていた名寄からの移動を決行することにした。
海外に連れて行きたいけど二人ともパスポートも持っていないだろうし、万が一密入国的な扱いを受けたら本当に総二郎の将来が見えなくなる。
だから取り敢えず、日本国内で二人が安全に暮らせるようにしてやりたかった。

「花沢所有の物件で世間に知られてないようなとこってあるかな。この名寄みたいにさ、滅多に使わない別荘で小さなものがいい。西門が探れない程度のね。いくつかピックアップしといて?」

「畏まりました。すぐに・・・」

ヘリは名寄に向けて飛び立った。まだその頂に少し雪を残した山々を見ながら、何故か危険を感じていた。
何だろう、すごく・・・何かが手遅れのような気がする。


飛行に問題はない程度だったけど少しだけ風が強くなり、一度旭川で着陸して気象情報を確認してから再度飛び立った。そのために思ったより時間がかかったが夕方前にヘリは名寄に着いた。
そしてヘリを降りた場所にも車で待機していた花沢の人間がいて、すぐに祥兄の診療所に向おうとしたその時・・・。

電話が鳴った・・・知らない番号だけど俺の電話に直接かけてくる人間は限られている。この状態の中で登録以外でかけてきたとなると思い当たるのは1人しかいなかった。

「もしもし、俺だけど・・・」
『西門に潜入中のSP、田中と申します。和泉千春様が直接類様とお話ししたいとのことですがどうしましょうか』

「・・・代わってくれる?」
『了解しました』

やっぱり、潜入したSPからの連絡。
直接話したいほど深刻だってことか・・・暫くしたら、聞き慣れない女性の声が俺の耳に届いた。


『花沢様・・・で、いらっしゃいますね?千春と申します』


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2017/12/19 (Tue) 18:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

いや、つくしちゃんには玉子が必要だったのよ・・・お出掛けしてもらわなきゃ困るんだもん(笑)
きっと晩ご飯が親子丼だったのよ!

トイレットペーパーの方が良かったかなぁ・・・あれはないと困るもんね!
総二郎がトイレットペーパー持ってレジに並ぶ姿を想像してください。笑える~!

ん?笑ってる場合じゃないって?
うーん・・・実はそろそろ展開がヤバすぎて困ってます。

暫く明るい場面ゼーロー!なもんで批判殺到するかもね・・・って覚悟してます。

どうにかしてギャグコメ下さいね!待ってるから!

2017/12/19 (Tue) 23:06 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/20 (Wed) 23:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・おはようございます!

えっ!新しいシリーズ作られた(笑)!!

でも熊本の人が見たら怒るかもよ?私の会社にたまたま熊本出身者がいて、たまに話してくれるから書いただけで(笑)
本当は違ってたりして・・・!

類「おかん、俺、好きな人が出来たんじゃけどどうしたらええと思う?告白ってしたことないけぇわからんのじゃけど」
母「そうやねぇ、紅葉饅頭でも持って行って「好きになったけぇ付きあってくれん?」って言うてみたらどんな?勇気出してみんさい!案外上手くいくかもしれんじゃろう?」

今度は広島弁風・・・ごめんなさい、もうやめますから(笑)広島弁、平仮名でわかりにくい(笑)

2017/12/21 (Thu) 09:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・ちょっとーーっ!!(笑)

あとから気がついたけど、これ、「向日葵」のコメントでしたね!(大爆笑!)
こんなシリアスな場面で・・・(笑)お腹痛いっ!!

2017/12/21 (Thu) 09:20 | EDIT | REPLY |   

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