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やけに騒がしくなったと思ったら1階のフロアに司が見えた。その後ろには類と総二郎も。
なんだ、帰ってきたんだな・・・特に気にすることもなく俺もあいつらの所に行こうと思って席を立ったんだ。よく見たらそこに牧野もいて2人が向かい合っていた。だけどこの2人はもう終わってるんだ。

久しぶりに会って驚いているだけ。そう思っていた。司の声を聞くまでは・・・。

「お前は俺と別れたって言うけど、俺はあの時、お前をもう一度迎えに来るつもりだった。一時的に別れただけだと思ってるんだが?」
「・・・は?何言ってるの、道明寺」

俺の足は大勢の生徒の中でピタッと止まった。
ざわついたフロアでその声が耳に入って、周りの連中も静かになって・・・類と総二郎がびっくりしているのも見えた。
牧野を迎えに来たって?司がまだ、牧野の事を好きで、ここまで迎えに来たって言ったのか?

再び足を進めると、みんなが俺の前で道を開ける。その先には司と牧野がいる・・・牧野はすぐに俺に気が付いた。


「司、今なんて言った?」
「お?あきらか!お前どこにいたんだよ」

「いいから!今、牧野を迎えに来たって言ったのか?」
「あぁ・・・。俺の許可もなく勝手に別れたとか言ってるから迎えに来てやったんだよ」

「勝手に?お互いに話し合って納得したんだろ?だいたい牧野の気持ちにお前の許可なんているのか?」

俺の言葉を聞いて、司が牧野の方から俺に向き直った。以前にも増して堂々とした雰囲気・・・俺たちより少し先に企業人になった司はえらく大人に見えた。1年前と比べると随分違う。もしかしたら今の司には牧野も惹かれるんじゃないかって思った。
だけど、言ってることは子供だ。相変わらず自分勝手・・・そこは成長してないんだな。

「あきら・・・何でお前がそんな事を言う?お前に関係あるのか?」

「俺に関係あるっていうより、一度決心して別れた牧野を惑わせるようなことを言うなって事だ。何度も連れて行ったり別れたりするなんて、相手のことを考えているとは思えない。押しつけるだけの愛情しか持ってないのか?」

「なんだよ、あきら。随分言うようになったんだな。まぁ、いい。・・・おい牧野!クリスマスの夜にアメリカに行くからな!そのつもりで待っとけ!」
「はぁっ?!だから何で私がアメリカに行くのよっ!行かないわよーっ!」

牧野の叫びも聞かずに司はコートを翻して校舎から出て行った。
そこに残ったのは大勢のギャラリーとあきれ顔の総二郎と類、そして顔を赤くさせた牧野・・・一番困惑しているのは俺だろうな。


*********


「あら、何の集まりかしら?賑やかなのねぇ!」

そう言ってこの騒然としたフロアに現われたのは後藤助教授だった。今日も黒のスーツに白いブラウス、プラチナのネックレスをキラリとさせて女の私から見てもドキドキする美しさだ。

「美作くん、頼まれてたもの、手配できたわよ?はい、これ!」

後藤助教授は彼の傍まで行くと小さな箱を手渡していた。何か小さな声で会話していたようだけど全然聞こえなくて、私はさっきの道明寺の大声よりも2人の内緒話の方が気になった。だんだん人が少なくなってきて最後の方だけ話が聞こえた。

「すごく上質な物だから綺麗に仕上げなさいよ?」
「あぁ、わかってるよ。ありがとう、助かるよ」

「うふっ!そのお礼はデート1回で許してあげるわ!また例の話が来てるの・・・お願いしてもいい?」
「またなの?仕方ないな。わかった・・・今度時間と場所教えてくれる?」

デ、デート1回で許して・・・ってなに?
美作さんは後藤助教授と軽めのハイタッチなんてしてにっこり笑ってるけど、それってこの2人・・・付き合ってるの?じゃあミス英徳は何なの?さっき「待ってる」って言われてたよね?西門さんじゃあるまいし、ふ、二股?

「おい!牧野・・・お前、独り言聞こえてんぞ?誰が二股だよっ!」
「えっ!声に出てた?マジで?」

「うん!ココロの声、全部世間に披露してたよ?」

うそっ!でも、美作さんには聞こえてないみたいだけど?だって今でも後藤助教授からもらった小箱の方見てるもんっ!
よっぽど大事なモノなのね・・・そんな嬉しそうな顔して。中身はなんなの?って聞く勇気があればどんなに楽か・・・。


「私、帰る・・・バイトあるから」
「あれ?牧野、まだ授業あるんじゃなかったの?」

花沢類の言葉には返事もしないで、私はこの後大学を出てしまった。あんな溶けそうな笑顔なんて見たくなかったんだもん!
私にはいつだって怒ってばっかり!私にはいつだって似合わないって言葉ばっかり!私はいつだって・・・妹のままだ。

どうしてこんなに好きになっちゃったんだろう。一番何にもいってくれない人なのに・・・優しい笑顔を色んな人に配っちゃう人なのに!それを独り占めなんて出来ないんだよね。あぁ!もう・・・っ!大バカだよ、私ってヤツは!


ラウンジにはもう行かないって決めた。美作さんから少し離れよう・・・あの笑顔が私の中から消えるかどうかなんてわかんないけど他の人を見る彼をもう見たくなかった。辛い恋なんて1回で十分・・・次はすっごく幸せな恋をするんだって、それが夢だもん!

かなり早くにバイト先についた私はすでにこの時、道明寺の言葉もすっかり頭から抜けてた。


*********


牧野は司に会って以来、ラウンジには来なくなった。俺たちに何か言われることを面倒だと思ったのか、わざと避けられているような気もする。類とも総二郎とも話さなくなったらしいけど、その理由がよくわからなかった。

いや、それが牧野の希望なら構わないんだ。とにかくあいつが笑顔で生き生きしてくれるんならラウンジになんて来なくったって全然いいんだ。だけど、そうじゃなかった。

時々見かける牧野はいつも寂しそうで悲しそうに見えた。
なにか我慢してる?なにか悩んでるのか?・・・どうしてそんなにしょんぼりしてるんだ?

今もラウンジの窓から下を見たら1人で俯いて歩いてるあいつを見かけた。午後からの講義のために南側の校舎に向かってるんだ。俺は黙ってそれを眺めていた。手を振れば気が付きそうだけどそっとしておいた方がいいような気がして、類と総二郎がそんな俺を呆れて見てるなんて思わずに、牧野の姿が小さくなっていくのを見ていたんだ。

「なんだかすごくじれったい・・・」

類が意味ありげに俺を睨みつけて言う。何がじれったいんだよ!

「どっちもどっちだよな!見てて笑えるけどそろそろ動くのはお前の方じゃねぇの?優しさだけじゃ前に進まないと思うけどな」
「・・・え?」

「牧野の気持ちって言うけどあきらの気持ちってどうなの?よく考えて?牧野は自分の感情を抑えちゃうとこがあるし、我慢ばっかりする子だよ?意地っ張りだし、なのに臆病だし。そういうとこ見ててわかんないかな・・・あんまり動かないなら俺が動くよ?」

「素直じゃない女を素直にさせてみれば?・・・ほら!どっか行っちまうぞ?」


もしかして、それって・・・。


「ごめん、ちょっと行ってくる」

2人をラウンジに残して急いで牧野の歩いて行った方に向かって走った。


少し追いかけたら牧野の姿が見えた。風が牧野の髪を靡かせて、それを手で押えながら歩いてる。すごく綺麗だ・・・その黒髪。
・・・って思った時にいきなり突風が来て牧野のスカートをっ!

「きゃあぁーっ!ちょっと、何この風っ・・・!」
「うわぁっ!牧野っ、早くスカート押えろって!丸見えだぞっ!」

「うわぁっ!み、美作さんっ?」
「誰が見てるかわかんないんだから・・・!」

ハッと気が付いたら俺が牧野のスカートを押さえ込んでて、牧野はびっくりしたように大きな眼をして俺を見下ろしてる。
そしてすぐに真っ赤な顔を見せて俺から飛び退いた!

「あっ、ありがとう!急に風が吹いたから驚いちゃって」
「いや、こっちこそごめん。びっくりさせて・・・でも、気をつけろよ。こんなに風が吹いてるのになんで外を歩いてるんだ?」

「・・・特に意味はないもん」

頬を紅潮させてそっぽを向く。どうして俺の顔を見ないんだ?牧野・・・それを俺は素直に受け取っていいか?
いつか渡そうと思って持っていた招待状、今渡してもいいかな。俺はジャケットの内ポケットに入れてたものに手をかけた。


「牧野、これを受け取ってくれないか?」

「なに?これ・・・」

「うちのクリスマスパーティーの招待状だ。待ってるから必ず来て欲しい」


今年のクリスマスパーティーは特別だから・・・この日は俺と過ごして欲しい。
この一言は言えなかったけど、牧野の手に真っ白な招待状を握らせた。


その時、お前に全部伝えたい。俺の気持ち・・・そして、牧野の気持ちも聞かせて欲しい。




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このお話のエンドはクリスマスで~♥
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2017/12/07 (Thu) 00:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは♥

そうですよね~!この人言わないんですよ。
言葉の節約でもしとんかいっ!っていうぐらい言わないイメージがあります。

でも、手に入れたら毎日言い続けそう(笑)
「愛してるよ」の前に色んな装飾がつきそうな感じ?
たとえて言えば「類よりも深く総二郎よりも広く司よりも熱く・・・君を愛してるよ」って感じかな!

ま、よくあるあきらくんのお話しっぽいですが楽しんで書いております。

2017/12/07 (Thu) 11:46 | EDIT | REPLY |   

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