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plumeria

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PM17時15分。
俺たちは駅のホームにいた。


ここに至る経緯は簡単だ。
それは俺の誕生日旅行だから。これに尽きるだろう。

計画はどこから破綻したのか?
そもそも破綻したのか?
これが本来のプランなんじゃね?




朝からつくしを美味しくいただいた後のこと。


つくしが食い物のことで頭がいっぱいになっている横で、全然別のことを考えていた。

っつーか、もうこの際、観光要らなくね?

数時間前には藻岩山に夜景を見に行こうと思ってた。
けどつくしもきっと観光どころじゃねえだろうし、俺としちゃその方が楽しめる。

食わせるもんだけ食わせて…。

そうすると…どうなる…?



当初の旅行のプランはふたつあった。

ひとつはつくしが喜ぶであろう観光。
ひとつは場所はどこでもよくて、ただ二人でのんびりする。

後者の為に用意したチケットは財布にしっかりと入っている。
たぶんつくしに見せれば一発で決まりだろう。

で…その後はもちろん……。
くくっ、もうそれでよくねぇか??

頭の中は既に別プランへとパズルを組み立て始めていた。



「…う……総?」

さっきまでキラキラと輝いていた瞳は、俺を心配そうに見上げていた。

「あぁ、わりぃ。この後のこと考えてた」

「そう?それならいいんだけど……。
でね、今いろいろと見てたんだけどね!!
やっぱりここがいいなぁって思うんだけど、どうかな?
総のイメージじゃないかもしれないけど……」

そう言うと上目使いで見上げ、さっきまで弄っていたスマホを手渡してくる。

ふぅっ。
もっと高級なもんとかでもいいんじゃね?
誕生日だろ?
せっかくの旅行だろ?
ま、もう観光なんて行く気もねぇけどな。
くくくっ。

つくしのスマホにはスープカレーの文字と共に、骨付きのチキンと色とりどりの野菜が入ったスープカレーの画像が写し出されていた。

「いいぜ、この店なら近そうだし歩いてくか?」

「うん。じゃあ着替えてくるね!」

好きな料理を楽しめるだけのことはあって、つくしは満面の笑みを浮かべてリビングを出ていく。

あいつは全く気づいちゃいない。
何にってもちろん俺の意地の悪い発言に…だ。

いくら店が近いとはいえ、目と鼻の先って訳でもない。
夕べからやりまくってるつくしにしてみれば、そんな距離でもすぐに疲れちまうに決まってる。それを見越した上での問いだったってのに。


「………総?」

いつのまに戻ってきたのかリビングの入口にバスローブ姿のままのつくしがいた。

「どうしたんだ、そんなとこで?
着替えるんだろ?」

「そ…そうなんだけど………あれしかないの?
ほ、ほら!やっぱり、寒いし…ね…ね?」

くくっ。デジャブかよ?
そんなに可愛く言われちまうと聞いてやりたいけどな。

「着たくなきゃこのままここでのんびりするのもいいかもな?」

よからぬことを考えながらニヤリと笑えば、

「へっ?えーと…うーんと…き、着替えてくるね!!」

身を翻し寝室に戻るつくしに笑いが溢れる。
今日用意したのはニットの真っ白なミニワンピ。つくしの意思も少しは尊重してAラインにし、小物はキャメルで合わせてる。

ソファーに座り暫く待っていると恥ずかしそうにつくしが部屋に入ってくる。

「似合ってんじゃん。俺も着替えてくるな」

居心地悪そうにソファーに座り裾を必死に伸ばそうとする姿を横目にリビングを離れた。



例の如く行列に並んでようやくありついたスープカレーは予想を裏切り旨かった。
やれチキンが柔らかい…やれ野菜の旨味が凝縮されている…そんな感想を漏らすつくしの頬は終始緩んでいて、たぶんそれを見ていた俺の頬も緩んでいたに違いない。

今はメインディッシュも食べ終わり、目の前に出されたデザートにまた瞳を輝かせている。
年をとってもそんなところは昔と何一つ変わらない。
そんなつくしが可愛くて、愛おしくて堪らない。
自分のデザートを無言で差し出せばまたニッコリと微笑む。

「くくっ。子供と一緒だな」

「いいの!
嬉しいものは嬉しいんだから♪」

クスクス笑いながらデザートをせっせと口に運ぶつくしを見てそろそろ本題に入ることにした。

「ちょっとの距離だったのに疲れたんじゃね?
そんなんじゃ観光は無理だろ?」

「それは総が無茶ばっかりするからで、あたしのせいじゃないでしょ!!」

「お前、声でかすぎ。くくっ」

真っ赤になったつくしは口に手を当て俯いた。

「ほんとはさいろいろ連れてってやろうと思ってたんだけどな。けどそれとは別にこんなプランも用意してたんだ」

財布にしまったままになっていたチケットを取り出して、デザート皿の横に差し出した。

「観光かこれか、お前が好きな方選べよ?」

「総、これって……?」

「俺はお前と一緒ならどこでもよかったからな。
たまにはこんなのもいいかと思ってさ」

デザートを食べていたつくしの手が止まる。

「ねぇ?これって…確か…今……??」

「その辺はあんまり突っ込んで聞くなよな。
せっかくの誕生日が台無しだろ?」

「あ…うん、分かった……。
総、せっかくだからこれにしよ?」

呆れたようにため息をついたつくしだが興味はあったんだろう。
最後は笑顔で決めてくれた。

悪いな、つくし。
まだまだゆっくり休ませてやれなそうだぜ?

心の中でそう呟き、にやけそうになる頬を引き締めた。


その後札幌の街を当てもなく散策し、疲れてるつくしをカフェで休ませながら時間を過ごした。




今は札幌駅のホームに立ち列車を待っている。

「ドキドキするね。あたし初めてなんだ~!
総は?ある?」

「いや、俺も初めてだ」

つーか、あるわけねぇだろ。
列車といえば新幹線ぐらいなもんだし、お前とじゃなきゃこんな発想なんか出てこねぇっつーの。

そっか~、そうなんだ~、とつくしは幼稚園児みたいにはしゃいでる。
ま、はしゃいでいられるのも今のうちだけどな。

「あっ!!
総、見て見て~来たよー!」

漸くホームに現れた寝台列車カシオペアにつくしのテンションは上がる一方。そして俺もこれからの二人きりの時間に、期待に胸を膨らませていた。
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