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plumeria

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お昼過ぎになって西門さんが京都に行くため準備を始めた。

それをずっと横で見ていた。

あの日から何もかもが嫌になって、考えることもしなくなって・・・でも西門さんに支えてもらっていたのはわかっていた。
どうしてここを出なかったのか、自分でもわからないんだけど。

毎晩側にいてくれて、泣いたときにはすぐに来てくれて・・・嬉しかったんだ、確かに。
誰かが付いててくれることに。

でも不思議だった・・・ずっと。

今までそんなに関わってなかったのに。私の事なんて相手にもしなかったよね?
いつも綺麗な女の人と一緒で、美作さんとふざけてばかりだったじゃない?
どうして・・・今は私によくしてくれるの?そんな仲だったっけ。


「牧野、何か土産いる?京都の名物で好きなもんとかあんのか?」

「京都のことよくわかんないから・・・考えとくよ」

ふふって笑ってる・・・この人もすごく綺麗な顔立ちしてるんだけど、冷たい感じがしてこの笑顔を怖いって感じてた。
でも、違うんだね。今までのはなんだったんだろう。
こんなに優しい顔、持ってたんだね。


「よし・・・出来た。もう時間か」

「もう、行くの?」

どうしてだろう。のどの奥が痛い・・・西門さんが行ってしまうから?
ドキドキしてきた・・・あの日以来初めて1人になる。

「牧野・・・?」

どうしよう。でも、泣いちゃダメだよね。ダメだよね・・・



「ほら・・・来いよ」

いつものように手を出してくれた。
まるでそれが当たり前のように私の身体は西門さんの腕の中に入る・・・
そしていつも通り優しく抱き締めてくれる。
この人の腕の中・・・本当に暖かくて安心するんだよね。

「今から出ると京都には7時には着いてるから。何かあったら電話しろ。今日は移動だけで仕事はないからな」

「うん。そうする」

「じゃあ、行ってくるから」

西門さんは挨拶代わりに私の額に軽くキスをして笑ってた・・・
恥ずかしくて、キスされた所を慌てて手で覆った・・・もう!すぐそんなドキドキするようなことを・・・!

車に乗り込む西門さんを、多分泣きそうな顔で見送ったんだろう。
心配そうに笑って片手を上げて・・・車はお屋敷を出てった。
その車が角を曲がって見えなくなったとき、私の頬を涙が落ちた・・・


****


やっぱり離れの方に帰った。
新しいお部屋にはまだ入れなかったから。

でも、おば様が作ってくださった私の部屋・・・今までそんな自分だけの部屋なんて持ったことがない。
すごく嬉しかった。こんな風に住み込んでしまった私なのに。


なのに、まだ類の顔が浮かんでくる。
忘れられたらいいのに、どうしても夢を見てしまう。
あの金髪の女の人と別れて、私のことを迎えに来てくれる夢を・・・

たった数ヶ月の恋人だったけど・・・それでもあんなに好きだったのに。
道明寺とは違うって、今度は大丈夫ってそう思ってたのに・・・。

このドレスを捨てずに持ってたら、いつか類が来てくれそうな気がしたのよ。
だからこうしてずっと置いてたのに・・・やっぱりもう来てはくれないんだね。


****


日が落ちてすっかり暗くなった。
いつもは西門さんがいるから思わなかったけど・・・すごく静かで怖い。

庭の木がザワザワと揺れる音が、自分の心臓の音と重なって。
怖くてベッドの中に潜り込んだ。
頭から布団をかぶって体を丸めて、自分で自分を抱くように。

そうか・・・

いつもこれを西門さんがしてくれてたんだ。だからいつも暖かかったんだ・・・



どのくらい時間が経ったんだろう。身体が寒い・・・。
ベッドに入ってるのに体が冷たい。


気が付いたらスマホを手にしていた。
もうすごく遅いのに西門さんに電話をしてしまった。


『牧野・・・?どうした?』

西門さんの声・・・涙が出てきた。止まらなくなって話すことが出来ない。

『眠れないのか?』

「うん・・・眠れない。寂しいから・・・」

『そんな事言ったら次から連れて行くぞ?』

「無理・・・まだ外に出られない」

『心配すんな。俺はそこに帰るんだって言ったろ?』

西門さんはこのわずかに離れていた時間の間に起きた何でもないことを話してくれた。
多分、私が落ち着くようにわざとそうしてるんだろうな。

耳にスマホをあてたまま・・・西門さんの声を聞いたら、そのまま眠ってしまった。


****


朝になったら一番に電話があった。

『牧野!お前、突然寝るなよっ!!俺は1人でずっと喋ってたんだぞっ!寝るときは一言いえよっ!』

「ご・・ごめん。声聞いたら安心して・・・ほんとにごめんなさい」

『・・・いいけどよ。別に。今から仕事に行くけどまたなんかあったら着信残しとけ。あとでかけてやるから』

「ありがとう。でも、今日はおば様とお食事だから大丈夫」

『あぁ・・・そうか。美味いもんたくさん食べとけ!じゃあな』


少し低いけど優しい声。
いつも私を救ってくれるこの声に、私の心はいつか向かうのだろうか。



もう一度恋をすることなんて出来るのかな。

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