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<side 類>
祥兄の診療所の特別室・・・そこで出産を終えた牧野は寝ていた。

疲れ切ったんだろうね。一度生まれたての赤ん坊の顔を見て「総二郎に似てる」ってわんわん泣いて・・・タオルごと抱き締めてた。その後は俺も分娩室を出されて、少し早くこの世に生まれた赤ん坊が保育器に入れられるのをガラス窓越しに見ていた。


総二郎に似てる・・・か。確かにそうかも。

小さく生まれたからまだしわくちゃで本当はどっちに似てるかなんてわからないけどね。

この子は早く自分が生まれてこないといけないって思ったのかな・・・もし、総二郎が西門に連れ戻されたのなら牧野は一人になる。それをさせないために・・・予定をこんなに早めたとしたら親孝行な息子だね。
予想が当たっていれば総二郎はすでに東京に連れて行かれてるだろう。俺は西門に潜伏中の田中に電話をした。

「俺・・・今日、あの後西門に動きはあった?」

『今のところ何もございませんが、今日に限ってお家元夫妻がまだお部屋にお戻りではありません。数人の弟子と茶室に籠もっておいでです。何かありましたらメールを致しますが、この後私は使用人専用の棟に移動しますのであまりお屋敷内をうろつけません・・・隙を見て監視は致します』

「あまり動いて正体がバレるのも避けたい・・・無理はしなくていい。でも、何かあったら連絡を」
『了解しました』


いつもと違う行動は何を意味する?
そんなの一つしかないよね・・・家元は総二郎を待っているんだ。


「ホント・・・お前の父さん、今頃どうしてるんだろうね。でも・・・見たいだろうしね」

看護師に頼んで赤ん坊をよく見える位置に移動させて一枚だけ写真を撮った。もちろんあいつに送るため。
俺からだってわかったらそれだけで怒り出すだろうけど。

祥兄の話ではこの子は暫く入院。牧野は一週間で家に帰ってもいいけどこの状態では不安だからここに置いておくらしい。


撮った写真を眺めていたら不思議な気持ちになった。
この子は牧野と総二郎の子供なんだよな。愛し合った故に授かった命・・・それがこの子だもんね。

牧野が孝三郎に襲われた時、俺を利用してまで助けたかった総二郎の子供。俺もこの子の命を救うために頑張った1人って事かな・・・悔しいのか羨ましいのか、自分の気持ちがよくわからないけど、やっぱり生まれてくれたことが動く嬉しいってのは確かだ。
変なの・・・父親でもないのにね。

特別室のドアがノックされて、祥兄が顔を出した。


「類・・・つくしはよく寝てるか?」
「うん、よく寝てる。疲れたんだよ・・・お産ってすごいんだね。俺も肩凝っちゃったよ」

「・・・すまなかったな。手伝わせて。俺の部屋で話そう。つくしは暫く起きないだろうからな」


牧野の寝顔をもう一度確かめてから俺たちは祥兄の部屋に向った。
とにかく何が起きたのか・・・全部の話を繋げないと何もわからない。


**********


その日の夜遅くになって飛行機は成田に着いた。

東京に入ってからリーダーの男につくしの身柄は心配するなと、安全な場所にいるとだけ伝えられ、それが何処だという質問には応じようとはしなかった。少しでも口調を荒げるとつくしのことを出されて脅された。

そのまま迎えに来ていた西門の車に乗せられ、久しぶりに眩しい東京の街を車窓から眺め、次第に閑静な住宅街に入り見飽きた門が見えてきた。
とうとう帰ってきてしまったのか・・・二度と戻らないと決めたこの家に。

車は静かにこの門を通り過ぎ車庫へと向った。そして数人の弟子が待ち構える中、ドアが開けられ俺は半年以上留守をしたこの家の敷地に足を着けた。相変わらず重苦しい閉塞感溢れた空気・・・この中でまた暮らせというのか。

「お帰りなさいませ。総二郎様。お家元がお待ちでございます。どうぞ・・・」

年をとった古株の弟子が深々と俺に頭を下げた。まだ、この俺に頭を下げるのかと冷ややかに笑ってしまった。
そして正面からは入れられず裏口から、深夜になって隠れるように、まるで犯罪者のように家元達の前に突き出された。

見慣れているのにまるで他人の家にいるような錯覚。
大広間ではなく、家元が使用している茶室で俺と両親は対面していた。ただし、俺の両端には名寄で俺を拘束した男が控えていて部屋の外にもそいつらが待機している。
俺が逃げ出さないように、いつでも動ける体勢で構えていた。


家元は流石に険しい顔をしていたが、俺がこの家に戻ったからなのか幾分安心して落ち着いているかのように見えた。
その隣の家元夫人は、以前に比べ随分と痩せていた。心痛があったのかもしれないがそれを気の毒だとは思わなかった。
元はと言えばこの人が考以外の何も見ようとしなかった、偏った愛情から始まった悲劇だ・・・つくしもその犠牲者の1人だからな。


「思ったより元気そうだな。むしろ面構えは以前より逞しくなった・・・しかし、お前がこのような騒動を起こすとは思ってもいなかった。もう少し利口な男と思っておったがな・・・」

「・・・またお会いするとは思っておりませんでしたよ。そのぐらいの覚悟でここを出ましたから」

些細な音ですら聞こえるほどシーンと静まった本邸。家元の低い声で会話は始まった。


「総二郎・・・もうこのぐらいで良かろう。子供じみた真似はやめて大人しくこの家で茶の修行をしたらどうだ。それでこの度の騒動は許してやろう。ただし、後援会の重臣にはそれなりに詫びは入れねばならんが、今後のお前の働き具合でそれは納得して下さるだろうと思ってはおるがな。わかったな・・・これ以上この私に頭を下げさせるような行動はとるな!」

「・・・申し訳ありませんが以前と同じ気持ちでこの家にいることは出来ません。それは家元夫人にすべてお話ししていると思いますが?私にはもう西門流を継ぐという気持ちは持てませんね」

「一時的な感情で物事を決めるとはお前らしくない。少し冷静になれんのか。お前に茶を捨てることが出来ないことなどわかっているし、この西門が置かれている現状を放置できるような男だとも思っておらん。孝三郎のことは知っているな?」

「向こうにもニュースぐらいは流れますからね・・・知っていますよ。でも、考のことはそれこそ考えたくもありません」

この一言は家元夫人の顔色を変えた。当然だろうけど・・・。


「お前がこの家を飛び出した時、その詳しい理由を聞いてはおらんかった。ただ、この堅苦しい家が重荷になったのかと思ったぐらいだった。祥一郎もそうだったがあの子には一応別にしたいことがあった。総二郎、お前には茶道以外の道がないと思っていたから不思議でならなかった・・・どれだけ辛かろうが茶道を捨てられるとは思わなかった」

「私もそうでしたよ。常に茶道は私と共にあり、これを無くして自分の人生はないと思って子供の時から修行してきたつもりですからね。考えが変わったのは共に生きたいと願ったつくしの存在・・・私が彼女を望んだからです。それがどうしても認めてもらえず、彼女も意に添わない家元夫人からの申し出に対し、逃げることしか出来なかったから・・・そういう事です」

「それはこの前の孝三郎の事件が起きたとき、あの子の過去を調べてわかった。家元夫人もつくしの事は話してくれたよ。まさかそんな事が私の知らないところで起きていたとは思わなかった・・・それについてはつくしには謝りたいところだがな」

「・・・その割には今回手荒なことをされたんですね。私を連れ戻すためとはいえ、つくしに手を出させるとは卑怯ではありませんか?それで私にこの家のために働けとは虫が良すぎると思いませんか?」

家元はやはり考によって怪我を負ったと言うことを知っていた。
知っていながらこんな手を使って俺をつくしから引き離したんだ・・・それが許せなくて家元を睨みつけた。
しかし、家元の方はこの言葉に初めて眉を顰めた。


「何のことだ?つくしに手を出したとは?・・・お前の居場所を1億で買えと言った女の言葉には従ったが・・・それ以外になにかあったのか?」


本当に何も知らなさそうな家元は俺の隣にいる男に眼を向けた。

「特に牧野様には何もしてはおりません。総二郎様・・・また後ほど」

リーダーの男は家元に向かってそう言うと、今度は俺の耳元で一言囁いた。

「牧野様は病院におられます・・・後ほど説明致しましょう」


どういう事だ?どうして病院に行ってるんだ?何かあったのか・・・子供は?
何が起きたかわからないまま、深夜ということもあってこの場はこれで終わらせ男と一緒に俺は自室に戻った。



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2017/12/28 (Thu) 16:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは。

年末年始は暗い・・・ってか切ない感じでしょうか?
今度は新しい方向に動いて行くのでそれがラストですかねぇ・・・。

もう大騒ぎはありませんので後はどうにかして総ちゃんが二人の所に戻るかですよ。

うんうん、写真見てどうなるか(笑)
残念ながら両方外れています!!

私は今年のお正月は・・・初めてのんびり出来ます。
理由はご挨拶で書いてます。

でも、お話しが毎日あるので、子供が帰省している中それが出来るか心配です💦
箱根駅伝・・・今年は見られるかもしれません。私も大好きです!!

ただね・・・元気が出てるかどうかだけが心配ですね!!
今日これから子供が帰ってくるので向かえに行ってきます!!あぁ・・・憂鬱。

2017/12/28 (Thu) 17:25 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/29 (Fri) 16:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

お腹痛いっ!今日も最高ですっ!!さすがさとぴょん様!!
捕まってても格好いい(笑)最高の褒め言葉だ!

爪の垢・・・💦確かになさそうだけど、あったとして頼んだらすぐに出しそう!!

「あ!爪の垢?手がいい?足がいい?どっちでもいいなら結構あるかも!」
「出来たら全部もらえんかね?家元夫人も飲みたいらしくてねぇ」


ALSOK!!今は契約外の吉田沙保里!!
いつだっけ?確か前にも吉田沙保里が出たような・・・類の「最後の恋」だった気がする・・・。
なんか吉田さんって人を突然書いた記憶があるぞ?(笑)

こんな話なのに楽しいコメントありがとうございます!

2017/12/29 (Fri) 20:29 | EDIT | REPLY |   

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