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つくしの出産に立ち会ってやれなかった悔しさと、我が子を抱けない悲しみでどうにかなりそうだった。
もう二度と会うことが出来ないんじゃないか・・・そのぐらいの絶望が俺を襲った。

その時に祥兄が突然話を変えてきた。

『総二郎、これからは違う話になる。よく聞いてくれないか』


「違う話?どんな話になるんだ?・・・これ以上悪い話ならもう聞きたくねぇな・・・」
『そうじゃない。これから先、お前とつくしが一緒に住むための提案・・・そういう事だ』

俺とつくしが一緒に住む?この状況でいきなり祥兄が出した言葉にスマホを持つ手に力が入った。何が残ってるって言うんだ?
今の俺にはここを逃げる手段は残されてはいない。西門がつくしに危害を加えるとも思わなかったが精神的に追い込むことならやりかねない。今以上の苦しみをつくしにはもう与えたくなかった。

『あのな・・・今年になってから考え始めていたんだが・・・』


この時、祥兄から聞いた提案というのに驚いた。それは俺が全然考えたこともなかった内容だったからだ。


「でも、それじゃあ祥兄はどうするんだ!そんなことをしたら・・・」

『ちゃんと考えているから心配するな。俺の事はいいんだ・・・問題はお前とつくしがこのまま離れちゃいけないって事だから。明日になったらお前は普通に西門で家元の言う通りにしておけ。そして西門の現状を見てこい。少しは気持ちが変わると思うから』

「西門の現状・・・?」

『お前が出て行ってからこれまでの変化っていうものを見るんだ。少なくともお前にも責任はあることだからな。これから先の自分の道を考えるためには必要だと思う。そしてさっき話した俺の提案の実行までは西門のために働け。それまでつくしのことは俺が守っててやるから』

俺は小さく「わかった」としか答えられなかった。
つくしと話せるか・・・そう聞いたら時間を考えろと言われた。時計を見たら夜中の2時だ・・・いつの間にこんな時間になったんだろう。つくしとは明日、様子をみて話をさせてくれる事になった。


「祥兄・・・俺はどこで間違えたんだろう。なんでこんなにつくしを泣かせてるんだろうな」

『間違えたわけじゃないさ。タイミングが悪かっただけだ・・・もし間違えたって言うなら俺も同じだよ』

電話を切ったあと、もう一度子供の写真を見た。

俺に似てる・・・か?そうかな・・・俺にはつくしに似てるように見えるけどな・・・この子に会えるのはいつだろう。
それを思うと空が白んでくるまで眠ることなんて出来なかった。


********


夜遅くにカチャ・・・ってドアが開く音がしてそっちに眼を向けたら、心配そうな顔の類がゆっくりベッドの横までやってきた。
そして私の顔を見るなり「おめでとう・・・」って小さな声で言ってくれた。うん・・・ってほんの少しだけ首を動かして無理して笑った。

「眼が覚めたんだね・・・まだ、痛むんでしょ?大丈夫?」
「うん・・・痛いけど、こんなのさっきに比べたら全然だよ・・・ねぇ、花沢類・・・赤ちゃんは?どうしてるか知ってる?」

「1ヶ月早かったから保育器に入ってるけど大丈夫だってさ・・・牧野が元気になるまであの子も向こうで頑張るんだよ。心配ないよ。よく頑張ったね」

よく頑張った・・・それを言って欲しかった人はここにはいないんだって事はわかった。
花沢類は知ってるのかしら・・・聞いてもいいんだろうか、それとも聞かない方がいいんだろうか。私が花沢類の顔を見上げると、少し悲しそうに彼は笑った。


「総二郎のこと、聞きたいんだよね?俺が知ってることで良かったら話すけど・・・どうする?」
「彼は今は何処にいるの?あの人が・・・連れて行ったの?」

「あの人?牧野・・・総二郎が上野明日香といるところ、見てたの?」
「うん・・・総二郎があまりにも帰ってこないから探しに行ったらね、彼女と総二郎が話してるとこ見てしまったの・・・それで・・・」

「それでびっくりして動き回ったの?・・・だから、車の外で倒れたんだね?可哀想に・・・」

でも、よく考えたら花沢類はどうしてここにいるんだろう。あの時、どうしてスーパーの駐車場に来てくれたの?
痛みで聞くことも出来なかったけど、本当はそれすらわからなかった。

何もかも・・・わたしには知らないことが多すぎて頭がついていかないよ・・・何か言おうとしたけど声にならない。
涙だけが頬を伝って落ちていった。


「じゃあさ、ゆっくり話してあげるから・・・何も言わなくていいよ。俺の話を聞いててね」


まるで子守歌でも歌ってくれるみたいに類の声が耳に入ってくる。
静かな病室に優しい類の声だけが響いた。


*********

<side類>
祥兄と総二郎が話し終えるまで傍で聞いていて、電話が終わったから俺は牧野の病室に向かった。

西門の内部のことにまで口を出すわけにはいかない。祥兄の出した提案には俺も少しは驚いたけど、上手く事が運べば一番いいのかもしれないと思った。俺にはちょっと苦しい提案だったけど、それでも牧野の笑顔には変えられないからね。


出産を終えてもうすぐ5時間ぐらい経つ。牧野はまだ寝てるだろうと思って静かに病室に入ったけど、予想に反して牧野は起きていた。そしてここに居ないあいつの事を思っていたんだろう、顔には涙の跡があった。

待ちに待った子供が産まれたのにそんな悲しそうな顔をして・・・せめて俺ぐらいは笑ってあげるね?なんて思ったけど流石に上手くいかなかったよ。

ベッドの横に座ってそっと声をかけると子供の心配をしていたから今の様子を教えてあげた。
少し安心したのか、ほんの少し笑うけど、その眼は別の事を知りたがってる・・・当たり前だよね。ここに居ないんだから。
総二郎のことを聞いたらどうなるんだろう・・・取り乱して暴れたりとかしない?でも気になるよね?
だから、今聞ける状態かどうかだけ質問してみた。

「彼は今は何処にいるの?あの人が連れて行ったの?」

「あの人?牧野・・・総二郎が上野明日香といるところ、見てたの?」
「うん・・・総二郎があまりにも帰ってこないから探しに行ったらね、彼女と総二郎が話してるとこ見てしまったの・・・それで・・・」

あぁ、だから車から出て倒れていたんだね!見てしまったのか・・・じゃあ、もしかして上野明日香と何処かに行ったと思ってるの?

そんなわけないのに・・・でも、究極に追い詰められた状態だったから混乱しちゃったんだね。
牧野にゆっくり説明するからと声を掛けた。不安そうな牧野の顔・・・聞いたら多分自分を責めるんだろうね。どんな言葉を選んだら苦しめずにすむだろう。だけど、それを考える時間もなくて真実をそのまま話すしかなかった。


「総二郎はね、今は東京の西門本邸に連れ戻されてるよ。でも、自分で帰ったんじゃない。総二郎・・・騙されたんだ」

「え?総二郎が・・・東京に?騙されたって何?彼女が・・・あの人が何かしたの?!」

「牧野、落ち着いてね・・・総二郎は牧野を守ろうとして言うことを聞くしかなかったんだ。決して牧野の事を裏切ったとか、置いていったとかじゃない。偶然が重なってしまったんだ・・・とても不幸な偶然がね」


このあと、ボロボロと涙を流す牧野の手を握ったまま、これまでの説明をした。
自分の事を楯に取られてしまったために無理矢理車に押し込められていく総二郎を想像したんだろう、その話の時には頭から布団を被って声をあげて泣いた。

「牧野、まだ終わってないよ?これからだよ・・・総二郎はこれからあんたのために西門と最後の闘いをするんだよ。だから泣かないで?待ってやりなよ・・・絶対に帰ってくるからさ。俺のライバルはそんなに弱い男じゃないよ。それまでは・・・俺がいるから」


またそんな事言ってる。自分でもバカだって思うけど、仕方ないんだ・・・牧野の事、まだ愛してるから。

俺の手を掴んでくれなんてもう言わないよ。
だけど笑顔になって欲しいから・・・そのためならどんなことでもするよ。


東京では総二郎が涙を流してるだろう。
やりきれない思いを誰もが抱えた、とても長い夜がもうすぐ明けようとしていた。



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2018/01/06 (Sat) 14:52 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/06 (Sat) 15:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは。

えーと・・・最後の質問からお答えしますと、ギリ何とかいけそうです。
すでに私の頭が次のお話しに変わっておりまして、予定では末ギリギリ・・・。

ただ、この祥兄の提案が難しくて私には書けそうにない(笑)
そんなバカな!!誰が書くんだよーーっ!!って言わないでね?

もう真っ暗闇な部分は終ったのでこれからラストに向けて(何回言ったかわかんないけど)
突っ走りたいと思います!

でね、えみりん様に考えていただいたお名前の彼のお話・・・いま、煮詰めてるので
先に他のお話しを出します。
京都のお話しですが、その書きたい世界のシステムが難しくて本を読んでるとこなんです。
前から挑戦したかったけど、中々進まなくて・・・向日葵のせいですが(笑)

一応ご報告まで。

2018/01/06 (Sat) 15:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは♥

祥兄の提案はもう少しあとに載せるんですが、うーん、どうだろう(笑)
実は凄く困っています。(今困ってどうする!)

初めから考えていた案なんですが、どうやって書いたらわかりやすいんだろうなぁ!って感じで。
今、毎晩祥兄と打ち合わせしてます(笑)

ここが過ぎればもうゴール直前!自分との闘いに入っています。
(で、ストレスが溜まってそういちろうの話が始まった、というわけです)

類君・・・あんまり類君の事を可哀想にしたら読者様に怒られるので程々にしたいのですが、
自分がこういうシーンが好きでしてねぇ・・・ごめんね、類君。
ここは総ちゃんのお話だから許してねって毎回謝っています(笑)

今日も頑張ってお話し進めなきゃ!祥兄、頼むよーーっ!!


2018/01/06 (Sat) 15:58 | EDIT | REPLY |   

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