FC2ブログ

plumeria

plumeria

1つ年が上がる度に俺とつくしは何となく離れていった。考とは何にも変わらなく遊んでいるし、祥兄とも変わらず話している。
それなのに俺だけはつくしと離れていった。
どっちから離れた?俺か・・・それともつくしなのか?それさえもはっきりしない。


あれは俺が中等部に上がった年の正月だ。つくしは小学部の6年生・・・もうすぐ俺と一緒に中等部に来るのかと思うと少し鬱陶しかった。つくしがっていうんじゃない。あいつらが寄ってくるからだ。

*

司は昔っからつくしをからかって苛めて泣かして、俺はそれを助けることはしなかったけど、さりげなく司に仕返ししていた。
あきらはいつもつくしに優しくて甘やかした。それ以上すればつくしのためにならないって事までするから俺と喧嘩になった。

類は・・・何もしなかった。でも、いつも隣にいた。誰よりもつくしの近くにいてあいつを守っているみたいだった。
つくしがすることを見守って、つくしが話すことを黙って聞いて、何処にいてもつくしだけを見ていた。


そんな類が俺には一番怖かった。
俺にはないものを持っている類。自分の気持ちを正直に表してるのにそれを無理に押しつけないんだ。とにかくつくしが笑っていられるように、それを害するものには立ち向かっていたっけ。

司が手を上げようとしたら、つくしの前に立ちはだかった。
あきらが余計な手出しをしたら、あきらの手を止めた。
そんな類だけど、俺とだけは衝突しなかった。多分類は知っていたんだ。俺の気持ちもつくしの気持ちも・・・。

*

「総二郎さん、ご自分の茶室の掃除は終わりましたか?後で志乃に見ていただきますが指摘を受けることがないようになさい。それが済んだら家元のところに行きなさいな。そろそろお客様がお見えになります。あなたも祥一郎さんと一緒にお客様にご挨拶しなさい」

「はい。わかりました」

「あぁ、それと今日はお客様がお帰りになってもつくしちゃんは広間に呼ばないからそのつもりでね」
「え?何でですか?いつも最後の年越しそばは一緒にいましたよ?」

「風邪で高熱なのよ。うつったらいけないからあなたもお部屋には行ってはいけませんよ?」

風邪で熱?昨日まであんなに元気だったのに?
俺はつくしの部屋がある方に眼を向けた。みんなが年末でバタバタしてるのにつくしの部屋の前だけは確かに閉め切られていて誰も入っていかないみたいだ。そういや今日の朝からあいつの声が聞こえなくて静かだった。


いつから苦しんでいたんだろう。
熱、高いのかな・・・薬は誰が飲ませてるんだろう。

凄く気になったけどその時は部屋に行くことも出来ずに俺は家元のところに向かった。

年末に来る客は毎年決まっている。この辺りの後援会の会長や副会長、関東の支部長クラスの爺さん達が顔を揃えるんだ。
そして年が明ける前には帰って行く。次に来るのは年明けの初釜の時だから、それまではここも宗家だけの正月になる。


客が帰った後、俺はこっそりつくしの部屋に行ってみた。
流石に中学生にもなると女の部屋に入るって事はそれなりに緊張する。例えそこが小さい頃から一緒にいるつくしの部屋でもだ。そーっとドアを開けて中に入ると苦しそうな息が聞こえた。

「つくし・・・風邪だって?熱、高いのか?」
「総ちゃん?・・・ここに来たら怒られない?家元夫人が誰とも会うなって・・・言ってたよ?」

「別にうつったりしねぇよ。俺、そんなに病弱じゃねぇし!で・・・熱は高いのか?」
「計ってないけど・・・汗が出るから高いのかなぁ。喉が痛いし、背中が痛いし・・・総ちゃん、私、死んじゃうのかなぁ・・・」

「バカか!風邪ぐらいで死んでたらこの世の中に人がいなくなるっての!ほら、水飲んどけ」
「総ちゃん・・・起き上がれないよ」

仕方ねぇなぁ・・・俺はつくしの背中を支えて身体を起こしてやった。すげぇ熱い!なんだ、こいつ・・・無茶苦茶熱が高いじゃん!
急いで水を飲ませてすぐ傍に置いてあって薬の中から解熱剤を出した。

「おい!こいつも飲んどけ!少し熱を下げないと寝られないから」
「総ちゃん・・・苦しい、よ・・・」

わかったから!傍にいたらいいんだろ?何処にも行かないでくれって言うんだろ?
俺はつくしに薬を飲ませてもう一度布団に寝かせた。布団からでている手を中に入れようとしたら、つくしの指が俺の手を掴んだ。
本人は眼を閉じてるから無意識って事?その燃えるような指を退けることが出来なくて、俺は自分の手をこいつに貸したまま暫く寝顔を見ていたんだ。

その後、年越しそばが出来たからって俺を捜し回る志乃の声を聞いたけど、つくしの部屋で息を潜めていた。
別に年越しそばなんて食わなくても長生きしてやるよ!そんな事を呟きながらつくしの所から離れなかった。


「総ちゃん・・・総ちゃん、そこにいる?」
「あぁ、いるよ。お前が手を離してくれないから仕方ねぇじゃん。離してくれるのかよ!」

その後の返事なんてなかった。
結局朝までつくしは俺の手を持ったまま寝ていて、俺はそんなつくしの布団の上に倒れるようにして寝ていた。



つくしが起き上がれるようになったのは2日めの朝。
逆に俺が少し風邪気味で朝からくしゃみや咳が出て気分が悪かった。でも、これは誰にも言えないし・・・つくしにももちろん言えないしな。夜通しつくしの手を持ってたなんて誰にも知られるわけにはいかねぇから。

そしたらつくしがパタパタと足音をさせて俺の部屋までやってきた。
もうすっかり熱も下がって気分も良さそうだ。その様子じゃちゃんと飯も食ったんだろうな。少しホッとするような、なんか腹が立つような不思議な感覚だった。

「総ちゃん!このお着物着せてくれないかな!それで一緒に初詣、行かない?」
「はぁ?!このクソ寒いのにお前と初詣?冗談じゃねぇよ!絶対に行かない!」

「・・・ん~、じゃあ、お着物だけでもいいからお願いします!」
「・・・仕方ねぇな。今回だけだぞ?」

毎年言ってるんじゃねぇかな、俺。


まだ小学生だからかもしれないけど、男の前で気にもせず長襦袢になってる。その無防備な姿にドキッとしたのは俺の方だ。
ほんの少しだけど胸だってあるんだ・・・やっぱりこいつも女だもんな。顔には出さずに平静を装ってつくしに着物を着せていった。

帯まできちんと締めたら嬉しそうに笑顔で礼を言われた。

「毎年ありがとう!総ちゃんの着付けが一番好きだから我儘言ってごめんね。じゃあ、1人で行ってくるね!」


全然淑やかでもないヤツなのに着物を着たら少しは上品な動きになるもんだ。
まだまだ子供だけど時々見せる女らしい仕草に俺の心臓がザワザワする。つくしが出て行ったら今度はチクチクと痛んだ。

廊下に出たら薄紅色の振り袖が渡り廊下を歩いて行く。そして玄関の方に消えていった。


何考えてるんだ・・・俺はもう中学だし、あいつは使用人の子供だ。俺にはなんの関係もないヤツだ。
それなのにどうしてこんなにイライラするんだ?あいつを見ていたらマジでイライラする・・・もう我慢できねぇっ!

俺は急いで裏門から出てつくしが行くはずの氏神さんのある場所に向かった。


その着物はすぐに見つかった。だってもう2日だから初詣客なんて少ないんだから。
急いで後を追いかけてつくしに声をかけた。


「つくし、迷子になったらいけないからついて行ってやるよ!」
「総ちゃん・・・来てくれたんだ!良かった、今年も1人じゃないんだ・・・でも迷子にはならないよ!」

「お前、ぼーっとしてるから1人で行ったら転んで着物を汚すか、どっかのジジイの言葉に騙されて連れて行かれるかも知れねぇじゃん。だからだよ・・・」

「あはは!そんなに子どもじゃないよ!でも、心強いや!やっぱり1人は嫌いだもん。ありがとう・・・」


・・・仕方ねぇよ。おばさんとの約束だからな。つくしが寂しくなくなるまでは側にいてやるって。
手なんて繋げなかったけど、つくしが俺の着物の袖を掴んで歩いていた。

「恥ずかしいから離せよ・・・誰かに見られたらどーすんだよ!」
「だって・・・転びそうでホントは怖いんだもん。袖だけ・・・ダメ?」

「・・・そこだけだぞ!でも、躓きそうになったら止めてやるから心配すんな」


俺が13歳、つくしが12歳・・・好きだって言葉が上手く伝えられない2人だったな。



yjimage5OG86GTZ.jpg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/04 (Thu) 01:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

ほほほ!このぐらいの年頃の男の子ってのは中々可愛いですよね!
とにかく素直じゃないってのが、これまたいいのよ(笑)

思ってることとやることが真逆だったりね。そんな事言いながら娘しかいないからホントはわかんない(笑)
初恋について・・・男の心理ってものはどうなんでしょうねぇ。
会社の若い男に聞いてみたことはあるんですが、夢も希望もない答えが多かったので参考にはならなかったですよ。

胸だけ見てた、とか、可愛ければ全部OKとか、顔より髪が長い方が好みとか。
そんなんじゃなくてさっ!人間の中身は見なかったのかよっ!って言いたかった。


私はこの頃好きな男の子がいたけど話すことが出来なくて(笑)シャイだったのねぇ!
廊下を擦れ違っただけで赤面して、体育の授業は眼で追ってましたねぇ!名前は・・・カズ君でした!キャーっ!!

懐かしいなぁ・・・12歳の頃。

何年前か数えることも出来ません・・・。

2018/01/04 (Thu) 11:39 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply