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plumeria

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結婚式の日の朝・・・2人で抱き合ったまま同時に眼が覚めた。

「おはよう・・・いい天気みたいだね」
「うん、おはよ。良かったね・・・これで結婚式が出来るね」

そう言って2人で窓の外を見る。目の前は白い砂浜と真っ青な海が広がってる。


そう、今俺たちは2人で日本の南にある小さな島に住んでるんだ。本当に小さくて島に住んでる人も少なくて何もないところ。
毎日何処かから観光客は来るんだけど、静かで穏やかな島。

ここで俺たちだけの結婚式をする。立ち会ってくれる証人は2人だけ・・・もうすぐここにやってくるはずだ。

こいつらにあの時会わなかったら、俺たちは結婚しようなんて思わなかったかもね。



****************



俺の気持ちはもう随分前から知っている2人。
疲れた笑顔で牧野のウエディングドレス姿を見つめるのを、あいつらの方が苦しそうに見ていたっけ。

だから、牧野が司の腕を振り払って俺に飛び込んできた時、司と俺の板挟みみたいになってあいつらは何も出来なかった。
どちらにもつくことは出来なかったんだ。だから頼ることはしなかった。

司は荒れ狂ってあいつらを責めただろう、幼いころから繋がってきた4人の絆を断ち切ってしまったのは俺だ。


それでも俺は牧野を選んだんだ。

今まで一度も何かを欲しいと思わなかった俺が、唯一欲しかったもの・・・それが牧野の心だったから。
俺に伸ばされたこの細い手を取らずにはいられなかったんだ。
誰を敵に回しても・・・誰を傷つけても、そのために追われるとしても。何もかも失っても、この手の中に彼女が残るなら何も要らなかった。

**

二つの家から逃げ始めて2年近くが経ったある日、地方の都市で暮らしていた俺は偶然そこに総二郎が講演に来るっていうのを知った。

講演会のパンフレットに載った総二郎の名前と写真・・・凄く会いたかった。会って謝りたかったんだ。

連絡を絶つために携帯なんて持っていなかったから、話をするには直接会うしかなかったんだけどそれさえも躊躇った。
総二郎が花沢に連絡するなんて思わなかったけど、逆に俺に会ったことで迷惑をかけたくなかったから。でも、足は正直に会場に向かった。一目でいい・・・あの日、別れたままの親友の顔を見たかった。

会場の1番後ろの1番端で総二郎の話を聞いていた。正確に言えば声を聞いていた・・・とても、懐かしくて。

壇上のあいつは輝いていて昔と何も変わらなかった。変わったのは俺1人・・・でも、悔しいなんて気持ちじゃない。
俺は十分に幸せだったから。


その時、肩に触れた手・・・ビクッとして振り向いたら西門の付き人のような男が「こちらに・・・」と、言った。

その男に悪意を感じなかったから後についていったら、そこは総二郎の控え室・・・講演中の総二郎がその部屋のモニターに映っていた。なんだ・・・バレたんだ!クスッ・・・相変わらず隅までよく見てるんだね!

暫くして講演が終わった総二郎が戻ってきた。付き人さえも部屋から出して俺たちは二人きりになった。


「よくわかったんだね。あんな隅っこだったのに」

「バレないと思ったのか?自分の事をわかってねぇヤツだな!逃げられたら困るからうちの者にメモ渡してお前をここに連れてきたんだ。・・・元気にしてるのか?あいつは?」

「うん、元気だよ。俺も牧野も・・・この街はまだ3ヶ月だけどね。そろそろ何処かに移動しようかって思ってたとこ。総二郎・・・あの時、何も言わすに逃げ出してごめん・・・迷惑かけたね」

「・・・もう忘れたよ!2年も前だぜ?」


それから時間の許す限り俺たちの事を話した。そして、東京の話も聞いた。
うちの両親がまだ俺を探しているけどフランスと日本を行ったり来たりで前ほど必死ではない事、道明寺ともいくつかの事業で決裂はしたけど最近はまた取引が開始され始めたこと・・・司に新しい相手が現われたこと。
あきらにも縁談が持ち上がったこと、総二郎は縁談を断わったこと・・・話は尽きなかった。

もう時間がなくなったって時に、総二郎がポンっと1つの携帯を俺に投げた。

「それ持っとけ!俺の名義だからわかんねぇよ。お前達がゆっくり出来る場所見つけてやる。だから、もう逃げずに1つの場所で落ち着け。それがあいつのためだ」

「・・・ありがと。総二郎、感謝するよ」

「幸せにしてんだろ?」

「うん・・・幸せだよ。1人じゃないから」


惚気やがって!って最後に笑ってくれた親友は東京に戻っていった。


**

この電話が鳴ったのは総二郎と別れて1ヶ月後だった。相手はあきら・・・総二郎じゃなくてあきらだった。

「もしもし・・・あきら?」
『類・・・久しぶりだな!総二郎から聞いたんだ。まだあの街にいるのか?』

「ん、いるよ。ぼちぼち移ろうって思って準備してたとこ。あんまり長く1つの所にいられないからね」
『じゃあ、荷物纏めとけ。明日、総二郎と迎えに行くからさ。お前達の住むとこ、探してやったぜ?感謝しろよ!』

お節介なのはこいつも変わってないんだね。
それでも何故か笑いが出たよ・・・嬉しかった。あの世話好きのあきらが俺よりも焦ったように話すのが。

こいつも同じように牧野の事を聞くんだ。元気でいるかって、今何してるんだって・・・。

「牧野はコンビニでバイトしてるんだ。だから昼間は俺は留守番なの。夕方から俺がバイトに行くんだ」
『お前がバイト?・・・何が出来るんだ?』

「笑えるよ?工事現場の交通整理とかさ、スーパーの駐車場案内とか?色々だよ」
『・・・そりゃ笑えるな!1回見てみたいもんだ!』

絶対に嫌だ!って言ったら笑ってた。だって昼間は動けないからさ、仕方ないじゃん。

そしてあきらも最後には聞いてくる。

『幸せそうだな。少し、安心した』
「うん、幸せだよ。2人でいるからね」

『心配ばっかりかけたくせに俺たちより楽しそうだな!』
「あはは!ごめんね、楽しくやってるよ。もう・・・あそこには戻れないけどね」


明日、俺たちを2人が迎えに来ると言った。
何処か教えてくれなかったけど、俺たちが静かに暮らせる場所に運んでくれるんだってさ。


本当にそんな場所、あるんだろうか。
あるんだったら牧野をそこに連れて行ってあげたい。そして、そこでずっと・・・2人で暮らすんだ。



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2018/01/03 (Wed) 00:54 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/03 (Wed) 06:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます!

そうそう!類が黄色いヘルメットかぶって誘導棒振り回してるの(笑)
類の事だから適当に振り回して、逆に事故を招いてる可能性もあります。
「あ!ごめんね?」で終るのよ。

いろいろ考えたんですよね~。

お弁当屋さんで卵焼き詰めてる類とか、
クリーニング屋さんでワイシャツにアイロンかけて焦がしてる類とか
お風呂屋さんで浴室をブラシでこすってる類とか
絶対に無理なのはスーパーのレジ(笑)
噂になるって!!すぐに見つかっちゃうよ!

5話目に結婚式があるんですよ(笑)
お楽しみに~♥

2018/01/03 (Wed) 09:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます!

お!復活したんですか?
確かに!!油断しちゃダメですよ?病気の2連発はキツいですもんね!
私も12月は前半腰痛で、後半歯でしょ?絶不調でしたもん。
やっと両方落ち着いたかな!

で、工事現場・・・(笑)

私の頭にあったのは北陸地方の街(笑)
総二郎が来るんだからそこまで田舎ではない感じの?

そうねぇ・・・そんなにスタイルのいい交通整理はいないかもね(笑)
確かにそっちを見て事故しそうだし。ブレーキ踏み忘れて前方車にドッカンと・・・。

それに、この話に司君は申し訳ないが・・・(笑)
出てきたら話が5話で終んないよね!それこそ新年早々とんでもないサスペンスが起きちゃう!
気が付いたら1月が終ってて「向日葵」状態に・・・!

今年の目標は「話数は予定通り!」です♥

2018/01/03 (Wed) 09:48 | EDIT | REPLY |   

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