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総二郎とあきら・・・2人と約束したのは次の日の朝。

指定された場所に牧野を連れて行き、俺の手には僅かな荷物が握られていた。
すーっと近づいてきた車にビクッとする牧野。「大丈夫、あいつらだよ」って言うと不安そうな笑顔を見せた。

運転していたのはあきら。助手席に総二郎・・・俺たちに近寄ると窓が降りて「早く乗れ」って指で合図された。
特に付けられてる様子もなく、少し走ったら牧野もホッとしたみたい。その表情に笑顔が戻った。

「牧野!久しぶりだな、元気してたか?類の面倒も大変だろ?」
「西門さん・・・うん、元気だよ。ふふっ!類は頑張ってるんだよ?大変じゃないよ」

「お前・・・また痩せたんじゃないか?ちゃんと食べてるのか?」
「美作さんったら!ご飯は食べてるよ。栄養は自信ないけどね」

変わらない2人に安心して牧野の声も明るくなった。

だけどあの日の事は誰も話さない。
俺たちが多くの罪を作った日のことを2人は何も言わなかった。
それを言われるんじゃないかと恐れていた牧野の手を強く握ったまま、暫く走ると車は近くのヘリポートに着いた。

「ここからはうちのヘリで向かう。1回で行けないから途中給油に降りなきゃいけないけどな。もう少し我慢しろよ」
「ありがと・・・何処に行くの?」

「ここから随分離れた南の島・・・誰も追ってこないさ。うちの使ってないコテージがあるから家賃がただ!いいだろ?」
「あきら、ごめんね。助かるよ」

ダチとしての最後の手助けだって総二郎が笑った。
何も心配すんな、自分たちのことを考えろってあきらが説教した。


俺たちは笑顔で礼を言うことしか出来なかった。


**


そして連れ出してもらったのが今住んでいる島。
本当に何もないんだ。

ただ穏やかな風が吹いていて俺たちは恐怖も感じずに2人寄り添って暮らしていた。
牧野には言わなかったけど、総二郎達が何かあったらいけないからって援助してくれた。それは大事に持ってるんだ。

それに頼って生きることは出来ないから。
俺たちはあの時にすべてを捨てて手を取り合ったから・・・本当に何も要らなかったんだ。


2人で島にあるペンションで働いた。
毎日観光客が来るから思ったよりも忙しいみたい。こっちから申し込んだらすぐに雇ってもらえたんだ。

朝は7時半から仕事に行く。そこで食事の準備や掃除をして観光客の送り迎えや海で使う道具の貸し出し、たまには海に一緒に行ったりもする。だからこっちでダイビングも習ったし、応急処置の仕方も習った。

夜が遅いから昼の休憩は結構長かった。2時から5時までが休憩・・・だからいつも2人でのんびり海を散歩したり、たまにはボートで沖に出たり、浜辺で砂遊びをする牧野を見ていたり・・・とにかくゆっくりした毎日だった。

夕方から夜には客の夕食の準備と片付け、たまには浜辺で花火をしたり、夜釣りをするのを見守るんだ。


「お二人は何でここに居るんですか?まだお若いのに・・・この島の人じゃないでしょう?」

よく言われるのがこの質問で、いつもこれには同じ答えしか返せなかった。


「お互いしか見えない所で暮らしたかったんですよ。他には何もないところの方が俺たちには幸せなんです」

**

夜9時を過ぎたら毎日牧野と手を繋いで家まで帰る。
何も話さなくても、夜空を見上げてはお互いに笑っていたよね。本当にこの島の星空は綺麗だったから。

海風が牧野の髪の毛を靡かせる・・・それを俺の腕がくすぐったく受け止める。そんな時間がとても好きだった。
こんな島にいると「欲」ってもんがなくなるのかもしれない。現にコンビニもないし夜に開いている店もない。それでも何とか生活が出来ていて、むしろ心地いい。
本当に必要なものが何なのかって事が、この何もないところでわかった気がする。

それはもちろん・・・お互いの存在って事だけ。



そんなある日、あきらから電話があった。

道明寺が司の新しい婚約者を発表して、花沢も後継者を遠縁の人間から選んで公表したって。
つまり、俺たちはもうこの2つの家から自由になったんだ。

『司、あれから少しは荒れたけどさ、今度は上手くいきそうな相手らしいぜ?あの母さんから持ってこられた話じゃなくて、自分で決めたらしいから・・・それでも司にしてみれば牧野以上の女はいないだろうけどな。それを絶対に忘れんなよ?』

「・・・わかってるよ。だから俺から幸せになってくれなんて・・・あいつは聞きたくないだろうからね」


親友だった男には合わせる顔がない。育ててもらった親にはもう恩返しも出来ない。それでも俺たちはやっと本当に自由になれたんだ。


その日、俺はやっと彼女にこの言葉が言えた。


「結婚しよう・・・花沢つくしになってくれますか?」
「もちろん・・・こんな私だけど傍にいていいですか?」


それからは二人で色んな準備をしたね。
俺は2人にだけ連絡をして証人を頼んだ。そしてペンションのオーナーに頼んでペンションの前のビーチに小さな会場を作った。
たった1日だけ休みをもらって島を離れて買いに行ったのは結婚指輪。

昔ならびっくりするくらいのダイヤとか選んだんだろうけどね。そんなものつけて出掛ける所もないから。
お互いの名前だけ彫ってもらったよ・・・eternalの文字と共に。


牧野は真っ白なドレス生地を取り寄せて自分でドレスを縫っていた。
毎晩夜遅くまで頑張って、手で少しずつ完成させていった。本当に何の飾りもない真っ直ぐなドレスだよ?
あの日、脱ぎ捨てたドレスとは比べることも出来ないほど・・・「シンプルすぎて笑いが出ちゃうね!」って言うけど、それを縫う牧野の笑顔は綺麗だった。

余った生地でヘッドドレスも作って・・・それをハンガーに掛けて毎日眺めた。
2人で決めた日にちまであと少し。


そして、前日になって枕を膝に抱えた牧野が泣きそうな顔で俺を見るんだ。


「類・・・私達は幸せだよね?」
「もちろん。牧野は幸せじゃないの?もしそうなら俺の努力が足りないんだよ。おいで・・・牧野」


その日の夜・・・お互いに身体を離すことが出来なかったね。
苦しいほどに抱き合って、求め合って、本当に溶けてしまいそうだった。





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2018/01/04 (Thu) 01:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~!

そうそう!この島、長崎の福江島じゃないから(笑)
モデルは波照間島です。でも、書いてるのは架空の島ですけどね!

類みたいなのがペンションで働いてたら、それだけで繁盛しそうだけど。
短編だからもう書かないけど、本当は海の中のイチャイチャも入れたかったなぁ・・・。

類がダイビングってイメージ全然ないんですけどね。
この人達ってなんでも出来そうだからね~♥

いや、あきらは海には入らないって私の中ではあるんだった!
どなたか忘れたんですけど、総ちゃんがサーフィン出来るって設定になってるの読んだことあるなぁ。

ふふふ、実はこのmariage・・・総ちゃんバージョン予定あり♥です!

2018/01/04 (Thu) 12:05 | EDIT | REPLY |   

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