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plumeria

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類と初めて一緒に夜を過ごして、25日のお昼頃までベッドから出なかった。
フランスに来てこんな時間まで何もしないのは初めて。さすがに起きて何か作らなきゃって思ったけど身体が動かないの。
つまりは・・・全身の筋肉痛ってやつ?それを言うのも恥ずかしくて「痛い」って言葉も我慢していた。

類は昨日と同じ服を着て・・・いや、だってここには何もないから仕方ないんだけど、先に顔を洗ってすっきりしてる。
私はこの狭い部屋でどうやって着替えようかとソワソワしていた。


「牧野、ちょっと食べるもの買ってくるからコーヒーだけ入れてくれる?すぐ戻ってくるね!」
「う、うん!わかった」

食べるものがなかったわけじゃないんだけど、多分このキッチンを見て何も出来ないだろうと思ったのね。
昨日、ケーキを作った時に後片付けもせず飛び出したんだもの。ものの見事にキッチンは荒れていた。
類が買い物に行った隙に急いで着替えて身支度を調えて、さっさとキッチンを片付けた、洗い物の山でとんでもない状態だったけど、お湯を沸かしてコーヒーの準備をする。

プレゼントされた「くるみ割り人形」はテーブルの真ん中に置いて、その横にイミテーションのツリーを並べて・・・ちょっとは雰囲気でてるかな?ポインセチアかクリスマスローズでもあったらいいけど、そんなもの買う余裕もないし。

テーブルクロスを新しいものと変えて綺麗にした頃に類はパンの袋を持って帰ってきた。

「お帰りなさい・・・あれ?その袋・・・」
「うん!牧野の店に行ってきたんだ!焼きたてのパン、買ってきた。食べようか!クスッ、食べ飽きてる?」

「あはは!まぁね!もうこの時間じゃ焼きたてじゃないよ?・・・何か話したの?」
「牧野がお世話になりましたって。日本に連れて帰るってあいつに言ってきた!・・・泣きそうな顔してたよ!」

うそっ・・・!アランにそんな事を?

悪戯っぽく笑う類は急いで温まるためにコーヒーを飲んで、クロワッサンを食べてた。私もそれを1つ手にとって食べてみた。

「美味しいなぁ・・・オーナーのクロワッサン!人気商品なんだよ?もうこれで食べ納めかなぁ・・・」
「そうだね。今度から牧野はうちのキッチンで自分で焼かなきゃいけないからね!」


「・・・え?」

「昨日の母さんの話はそういう事だよ。食べ終わったらうちに行くよ!で、このアパートはもう今日で最後だから。今からはうちに住むよ。当然新年は花沢で!うちの母さんは厳しいから覚悟して?でも、俺がいるから心配要らないけどね!」

全部食べ終わったら思い出したように「あ!」って声を出した。


「牧野のケーキ、食べてない!ダメじゃん、あれは記念のケーキなのに!今どこにあるの?」
「あぁ!そうだった!類の家でお母さんに渡して来ちゃった・・・まさか、食べてないよね?」

なんてこと!私の一番の夢がこんなにもあっさり忘れられてしまうなんて!
私達は急いでコートとマフラーを手に持って、手を繋いて花沢の自宅までの道を走った。


********


自宅に戻ったらやけにニヤニヤした母さんが2階から顔を出して俺たちに手を振っていた。
別に俺はどうでも良かったけど牧野は一気に頬を赤くして俺の後ろに隠れた。まぁ、この時間に帰れば想像されても仕方ないし。母さんがそんな事をイチイチ聞く人じゃないって事も知ってるから大丈夫なんだけどね。

「おはよう!一緒にいなさいって牧野さんには伝えたけど随分ゆっくりだこと!もうお昼過ぎてるわよ?・・・昼食は?」

「牧野の家で済ませた。ねぇ、昨日の牧野のケーキは?母さん、食べてないよね?」
「ちゃんと置いてあるわよ!類が食べてないのに私が先に食べたら一生恨まれるじゃないの。早く着替えなさい、類。いただくのはそれからにしましょう?お父様もいらっしゃるから!」

よく言うよ!試作品の時は俺にも牧野にも言わずに勝手に食べたくせに!

牧野の肩を抱いて自分の部屋に向った。途中何人かの使用人はそれを見て多少驚いた顔をしていたようだけど、そんな事を気になんてしない。牧野の方が戸惑っているから耳元で囁いた。

「自信持っていいよ。そうしてたら使用人達は何も言わなくなるから。いつもの牧野のままで笑ってて?」
「・・・うん、わかった。が、頑張る!」

頑張らなくっていいんだって!そう言っても手が拳を作ってる。その緊張した顔が余計に俺を笑わせた!


俺の部屋に入るとキョロキョロと見回してる。もしかしたら男の部屋なんて初めてなのかもね。それか、あまりにも何もなくて驚いているのかも。他の部屋とは違ってシンプルだからかえって落ち着かないかな。

「どうかしたの?何か気になる?」
「ううん。あの、男の人の部屋ってこんなに物がないのかと思って・・・お部屋が広すぎるからかな。私って小さいアパートにしか住んだことがないから何処にいたらいいのかわかんないの」

「クスッ!そうだと思った!そこのソファーにでも座ってて?シャワー済ませてくるから!」

**

シャワーを済ませて部屋に戻ったら、本当にソファーに座ったまま全然動かずに待ってたみたい。その困ったような顔が可愛くてやっぱり笑ってしまう。

「そんなに緊張しないで?今度から牧野が俺の部屋を飾っていってくれたらいいんだよ。置きたいもの置いて、飾りたいもの飾って好きなように変えていってくれたらいいんだよ。そういうの、俺は苦手だから任せるよ」
「えっ!私ってこの部屋に住むの?」

「何処に住む気なの?まさか違う部屋?・・・そんなの許すと思う?」


この後、俺が用意した牧野のドレスに着替えてもらった。
クリーム色のカクテルドレス。パールのネックレスにブレスレット。ピアスホールが開いてないからイヤリングにして綺麗な髪はそのままで。牧野は鏡で自分を見ながら溜息をついていた。

「うそっ・・・!私じゃないみたい。こんなの着たの初めて・・・似合ってるのかな、それもわかんないわ」
「すごく綺麗だよ。まだこんな感じが似合うけど、そのうちもっとレディになったら違うドレスも贈るよ。でも、その時は誰にも見せたくないかも・・・2人だけの時にね」


牧野の手をとってこれから両親に挨拶に行く。

それが終わったら一緒にケーキを食べよう?牧野の願い事・・・叶えてあげられるのは俺だけだから。


**


「私の一番の願い事は大好きな人に私の作ったクリスマスケーキを食べてもらうことなの!」


そう伝えた年のクリスマスに私はその願い事を叶えることが出来た。
甘すぎないように作ったのに、やっぱり甘いって言いながら、それでも類は全部食べてくれた。

お父様もお母様も、シェフの高木さんもみんなで食べてくれて「美味しい!」って言ってもらえた。


「父さん、母さん。こちらが牧野つくしさん・・・彼女を花沢に迎えることを認めて欲しいんだ。花沢が喜ぶものは何も持ってないけど、俺が俺らしく生きていくために必要な人だから。日本には彼女と帰るよ・・・いいよね?」

「・・・母さんから聞いてるよ。とても良い腕を持ってるじゃないか。それをうちで発揮してくれればいいさ」
「あら!私は記念日には毎回つくしさんのケーキでパーティーしたいわ!それが今から楽しみなの!いつかはあなたのアイディアで生まれたケーキを色んな人に食べていただけるようにしましょうね!」

「ありがとうございます!・・・私、これからも頑張ります!」

なんだ・・・!
初めから逃げずにこの家の扉をノックしても良かったの?もっと素直になれば・・・ううん、私達にはあの日の夜は必要だったのよ。そうじゃないとこの勇気は持てなかったと思うから。



そして私はその日の夜から類と暮らすようになった。
もうすぐ日本に彼と帰れることを夢見ながら・・・今日も類の腕の中で眼を閉じる。


Joyeuse fête de Noël!

最高のクリスマス・・・新しい私の夢は類と一緒に叶えるの!



fin.

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明日からの3日間は「花沢専務の悩み事」です!
久しぶりだわ~♥
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Comments 4

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2017/12/26 (Tue) 00:53 | EDIT | REPLY |   
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2017/12/26 (Tue) 04:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはよございます!

ひとり21人の翼(笑)どははは!
もう、何書いてるかわかんないですよね!
もう慣れたんですけど、これやってて何が困るかって言うと、オリキャラの名前がわからなくなります。
今回アラン・小林でしたから良かったけど、どっちも日本人だったらわかんなくなるのでメモし忘れたら
戻って読まなきゃいけないの(笑)

このお話、実は途中からオーナーが「マスター」になっててね(笑)
マスターは長崎やーーっ!!って1人爆笑してました。

3人とも合体(笑)!!
そうそう、クリスマスストーリーですから特別よ♥

次は・・・バレンタインかな?

まだ全然回復してないけど(笑)お正月短編もあるので何とか復帰しなくちゃ!
病院に行ってから出勤します!
ありがとうございました!

2017/12/26 (Tue) 08:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

kyoro様 おはようございます!

えへへ!クリスマスストーリーですから、そこまで爆弾も落とさずに可愛く仕上げてみました。
綺麗に25日に終われれば良かったのに、どうしても話が長くなって申し訳ない・・・26日まで延びちゃって。
なのでわざわざ「おまけ」にしてしまった(笑)

でも、来年の類君のお話し・・・ちょっと悲しいお話しかも(笑)
ラストは辛いまま終りませんけどね!
今年の連載は終ったので、また来年宜しくお願いします!

年末年始は短編が続きます。しばらくはそちらで楽しんで下さいね!

今日はありがとうございました!

2017/12/26 (Tue) 12:09 | EDIT | REPLY |   

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