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plumeria

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6月の中頃になったある日の夜、家元から大きな茶会の亭主を務めるようにとの話があった。

この半年近く大きな茶会を控えていた西門が、俺が戻ったことで復活したんだと世間に知らしめたいのだろう、招待客も著名人や伝統工芸関係者を含め豪華な顔ぶれだ。
もちろん各支部の支部長から大企業の重役、政財界のドンと呼ばれるような名前もあった。

これだけの人数を招待ともなれば正式な食礼、茶礼の茶事ではなく、薄茶のみの茶会・・・自分1人が亭主というわけではなく家元も家元夫人も同時に客に対して茶を振る舞う事にはなるのだが、そのメインの席での亭主を俺に務めよ、というものだった。

「このような大きな茶会に私がですか?お家元で宜しいのではありませんか?・・・なにか理由でも?」

「茶会が終ればお前がこの西門を継ぐ者だと正式に発表し、今度こそ千春さん同席で婚約会見をしようと思うのだ。それでこの西門も安泰・・・離れていった後援会の方々もいくつかは戻ってくださった。この茶会で西門を支えて下さる方々にお前を見ていただき、西門流が依然と変わらないところをお見せしようと思うのだ。要するに会見を開くためのきっかけ・・・同時にお前を評価していただかねばならんからな・・・しっかり務めるようにな」

「・・・そうですか。茶会の件はわかりました。お引き受け致します」


いよいよ祥兄の計画を実行するときが来た・・・!
俺はこんな茶会が開かれ、家元が会見をすると言い出すのを待っていたんだ!

家元には適当に挨拶をして自分の部屋に戻った。そして、祥兄に電話を入れた。

俺は24時間監視の目がある。自室に盗聴器などの細工がされてないことは確認していたが、万が一のことを考えて、この部屋で祥兄に電話をすることはなかった。つくしと話すときもいつも外出先の控え室からだった。


すでに9時前・・・こんな時間だから祥兄はすぐに電話に出た。


『もしもし・・・何かあったのか?』

「あぁ、家元から茶会の亭主をしろって話があったんだ。そのあと正式に会見をするらしい」

『・・・そうか。こっちもこの診療所の医者が海外から引き揚げてくるのが決まったらしくて連絡があったばかりだ。帰ってきたら俺も名寄を出られる。いいタイミングだな』


祥兄の立てた計画・・・それは祥兄が西門に戻って次期家元として西門を継ぐというものだった。

そのために祥兄が産婦人科を離れる準備期間と俺たちがその立場を入れ替わるためのチャンスを待っていたんだ。
それがこの茶会の後に行われる公式な会見・・・この報道機関の前で俺自身が公表する。

家元が何も口を挟めない状況を作り、俺が西門の継承放棄を宣言し、祥兄が戻ると発表するんだ。
その時に千春を正式に祥兄の婚約者として発表する・・・つまり、西門がついたいくつかの嘘を暴露することになる。
しかも俺はここでつくしの存在も発表して、考が犯したつくしに関する傷害事件以外の可能な限りを公表する。ただし、花沢の名前は一切出さない。類に矛先が向かないように別荘のことも病院のことも、花沢に関する内容は伏せることにしていた。


「本当にいいのか?もう訂正なんて出来ないぞ?」

『あぁ、もう決心したんだ。それにまだお前にも話してないけど・・・もう一つ考えてることがあるんだ。もし、俺が西門を継ぐということが正式に決まればお前に話すよ。結構お前も驚くと思うけど』

「なんだよ・・・俺に関係あることか?今は言えねぇの?」

『正式に決まってからにする。これは俺とお前だけじゃなくて、つくしと千春にも関係することだから』

意味深な発言をした祥兄だけど、意外と声は落ち着いていた。
あれだけこの家を嫌がって医者になりたいって出て行った祥兄が何故こんな計画を立てたのか・・・本当の所は俺も納得できてはいなかった。まだ自分の病院すら持ったこともないし、医者として患者を看るようになってから1年しか経っていない。
そんな祥兄が医者に満足したとも思えないし、何かトラブルが起きて患者と揉めたこともない。

名寄の患者達からは逆に喜ばれていたと思うんだけど。

『総二郎・・・今度の茶会はお前が西門で行う最後の茶会になるかもしれない。精一杯務めてこい・・・お前は一生、茶道からは離れられないと思う。それはお前の中の西門の血だ・・・俺に中にも流れてるからわかるんだ。だからこそ、今度は家から逃げるような行動はするな。何処にいても茶を点てて生きていける、そんな生活が送れるようにな・・・。それがつくしも望んでることだと思うから』

「・・・俺にはわかんねぇよ。祥兄・・・あんたの行き方は?嘘にならねぇのか?」

『大丈夫だ。さっき話しただろ?もう一つの考えがあるって・・・それが叶えば俺は自分の思った通りの生き方が出来るんだ』


祥兄は何を考えてるんだ?
まだ話せないと言うその内容が気になったが、とにかく俺は次の茶会・・・そこで最高の茶でもてなす事にだけ集中することにした。そのために雑念を取り払い、心穏やかに過ごしその日に備えなければならない。


そのあと、祥兄につくしと話がしたいと頼んだ。


********


祥兄ちゃんがスマホを持って病室に来たのは夜の9時頃だった。
随分と笑顔で「総二郎から・・・」って。急いでスマホを受け取って耳に当てた・・・前に話したときから半月しか経ってないのに何故か緊張する。


「もしもし・・・総二郎?」

『つくし?元気にしてるか?悪いな・・・あんまりかけないって言ったのに、どうしてもお前の声が聞きたくなってさ』

「ううん!今は大丈夫なの?監視の人・・・いるんじゃないの?家なんでしょ?」

『どっかにはいるだろうけど最近は大人しく仕事してるから油断してんじゃねぇかな。心配すんな、気をつけてるよ。それよりも今、祥兄にも話したんだけどな・・・』


総二郎はさっき祥兄ちゃんと話したという内容について説明してくれた。
祥兄ちゃんが総二郎の代わりに西門を継ぐというその話は前にも聞いてはいたけど、どうしても祥兄ちゃんが私達のために無理をしているような気がしてならなかった。

確かに総二郎とは暮らしたい・・・でも、そのために祥兄ちゃんの夢を奪ってもいいんだろうか。

一度、ここでもそのことを聞いたけど祥兄ちゃんは気にするなとしか言わなかった。それに自分で納得して出した答えだから私にも総二郎にも口出し無用と言われた。
その決断をしたあとの祥兄ちゃんは・・・すごく落ち着いているように見えた。

どうしてなの?あれだけ強い意志をもって西門を出たのに。
また心を病んでしまわないかしら。それが心配で、この計画が最善だとは思えなかった。


「そのお茶会が終ったら・・・総二郎が記者会見場で言うのね?」

『あぁ、自分の口で話すよ。お前の事も・・・多分これで完全に西門とは縁を切るだろうけどな。追われないだけ今までと比べればマシなんじゃないかって・・・そう思うけどな』
「うん・・・何だかすっきりはしないけどね」

まぁな!って総二郎もほんの少し笑いながら言っていた。


『なぁ・・・蒼、今どこにいんの?』
「蒼?私の横にいるよ。1ヶ月検診もね、問題ないって!・・・テレビ電話にしようか?」

『あぁ、頼むわ!』

私はテレビ電話に切り替えて蒼を映した。残念ながら寝てるんだけど・・・でも、時々手足を動かしてる。
ほんの少し顔を動かして・・・薄く眼を開けた。まだほとんど見えてはいないんだけどね。総二郎を・・・パパを見つめてるみたい。

『蒼・・・もう少し待ってろよ?ママを頼んだぞ?生まれて1ヶ月っていってもお前は男だからな!』
「何言ってんのよ!無茶だよ!もうっ・・・総二郎ったら」

『やっぱり俺に似てないか・・・?将来困るんじゃねぇの?女が寄ってきて!』
「バカな事言わないで!顔が総二郎に似るのはいいけど中身は私に似てくれなきゃ困るわよ!」

私の声に反応して蒼が少し声を出した。もちろん「あ~・・・」って言うぐらいの声・・・それでも総二郎は喋った!俺の顔が見えたんだって大騒ぎ。違うよ?まだよく見えてないし、喋ってないって!そう言っても聞いちゃいない。
何度も大きな声で蒼を呼んでいた。私はその声が西門のお屋敷中に響くんじゃないかってハラハラしていたんだけど。


『・・・やっぱ自分の子供は可愛いな・・・早く抱きてぇな。つくしもだけど、蒼も抱きてぇな・・・』
「総二郎、大丈夫だよ。きっともうすぐだよ?ここに戻って来るのがいつになっても必ず抱っこしてあげてね」

『お前の方が先だよ・・・忘れんなよ?蒼より俺だからな!』
「・・・バカだね、相手は子供だよ」


『世の中で一番手強いライバルじゃねぇか!』


バカだね・・・総二郎より好きな人はどこにもいないよ?
何度言っても、何百回言っても・・・何万回言ってもいいよ。


一番愛してるのは総二郎・・・あなただよ。



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2018/01/13 (Sat) 21:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・お、おはようございます!

朝から吹いてしまった!!
そうですか・・・ハードでね!

出窓シリーズ・・・!(笑)21の翼のね!忘れかけてました!
あの時も出窓だったね!
だって耳から首を舐めるって話になってたから(どんな打ち合わせしてるんだか!)
総ちゃんが舐めやすい高さにあげたかったんですよ。
あのお話しは恋人じゃなかったからいきなり押し倒せなかったから(笑)

今回は・・・どうしたんだろう。私・・・今考えたらとんでもないこと書いてましたね。

総誕の時に「最後は何処でヤろうか?」みたいなラインの会話が面白かったんですよ。
その時に山の中とか流氷の上とかラベンダー畑の中とか(咲いてないって!)好き放題話してて(笑)

そうかぁ!そのぐらい羽目外しても総ちゃんの場合はいいよね?って思ったの。
ても、室内から出られなかったから、せめてベッドから出ようかと思って(笑)


え?バレンタイン・・・も?

私、エロ姉妹の中にはまだ入りたくないんですけど・・・。

あっ!これ向日葵のコメントでしたね(笑)あぁ、それすら忘れてた!

2018/01/14 (Sun) 10:34 | EDIT | REPLY |   

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