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<side祥一郎>
東京のホテルで総二郎の茶会の成功を聞いた。報告は千春からだった。
総二郎がもてなした数多くの客人からは暫く留守をしたにも関わらず、その出来に賞賛の声が上がったらしい。家元も満足気に客の見送りをしていたと。

各支部長始め後援会の役員達も皆、これで安心と声に出して喜んで帰ったようだ。


総二郎は自分の思いを十分に出せただろうか。
俺は客人の感想よりも総二郎自身が満足したかどうかが気になったが、千春からの連絡だとそれも問題ないのかもしれない。
終った後に満足した顔で何処かに電話をする総二郎を見たらしい。

『相手はつくしさん以外には考えられませんわ。凄く優しそうなお顔でお話しでしたもの。だから、お側に寄るのも遠慮しましたの』
「ははっ!総二郎らしいな。すぐにでも知らせたかったんだろうね」

『もう2ヶ月も離れておいでですもの・・・お子様もいるので気になるのは当たり前ですわ』

俺は君を5年以上待たせてるのにな。
そして今は5ヶ月も会ってない。本当はここに千春を呼びたかったけどそうもいかなかった。
全ては会見が終ってからだ。そうなれば俺は5年ぶりにあの家に戻る・・・二度と戻らないと誓って出た家に、今度は全てを背負うために帰るんだ。


はっきり言って恐怖心はある。
この俺に総二郎を超えるだけの茶が点てられるだろうかと。

多分、それは無理だろうな。
だけど、心だけは込められる・・・天性の才能はないとしても、もてなす心は今でも忘れずに持っているつもりだった。それに今度は西門にいながら「夢」を持てる。
きっとこの「夢」は総二郎もわかってくれるだろう・・・そう信じている。

「千春、そこに花沢のSPはまだいるんだろ?少し頼みたいことがあるんだが・・・」

『田中さんですか?はい、いらっしゃいますよ。お呼びしましょうか?』
「あぁ、頼むよ」

俺は田中という女性に西門からこっそり俺の着物を持ってくるように頼み、ついでに会見場で西門の連中からバレないように少し動いて欲しいと頼んだ。その打ち合わせは着物をホテルに持ってきた時にしようと話して電話を切った。


**


ほんの1時間ぐらいでその田中という女性はホテルに来た。

「失礼致します。ご依頼のお着物、志乃さんに選んでもらってお持ちしました。申し訳ありませんが早めに戻らねばなりません。どのように動けば宜しいのでしょうか?」

思ったより小柄な女性・・・一見そんな職業の人間だとは思えないほどあどけない風貌だった。
だが部屋に入るなり、鋭い目付きで俺を見るとすでに指示の催促・・・さすが花沢のSP。女性故に怪しまれないだろうし頭が良さそうだ。彼女なら問題なく動いてくれそうだと直感で感じた。

「明後日のホテルの控え室を家元達に知られずに一つ準備してほしい。それと正確なタイムスケジュールが知りたい。それを送ってくれるかな。後は・・・会見が始まる少し前に家元夫人と話したい。準備してもらった俺の控え室に連れてきてくれないか?
そして会見中は西門の連中を一カ所に集中させてくれ。俺が出て行きやすい場所の確保をして欲しい」

「そのぐらいで宜しいのですね?了解しました。類様からは全面的に祥一郎様の指示に従うように言われておりますので、他に何かあればご連絡下さい。それでは失礼します」

必要最低限な会話でさっさと部屋を引き上げた。


俺は持ってきてもらった着物を広げた。
西門の紋が入ったもの・・・これでないと意味がないんだ。

明後日、久しぶりにこの紋付きの着物を着て両親の前に立つ。まるで鳥肌が立つような感覚だった。


*********

<side類>
総二郎からの電話を終えて牧野はまた蒼を見ていた。
やっと寝たばっかりなのにね。今日はあんたがドジばっかりやるから蒼が泣き止まなかったんだよ?

そのぐらい落ち着かなかったのは純粋に総二郎の成功を願ったの?
それとも・・・祥兄の計画が実行されるためには、茶会が成功しなくちゃいけなかったからなの?


蒼の髪の毛を撫でながら何かを話しかけてる。
俺はそれを少しだけ開いていたドアの隙間から見ていた。

この別荘に来てから俺は牧野の部屋に入ることはしなかったけど、何故かこの時初めて声を掛けてしまった。
総二郎と牧野の部屋・・・そこに足を踏み入れようとした。


「牧野・・・電話終ったの?あのさ・・・蒼を見たいんだ。入ってもいい?」

「え?あ、うん・・・寝てるけど。珍しいね、蒼の顔が見たくなったの?」
「うん・・・ちょっとね」

変なの。元々は花沢の別荘なのに、この俺が断わって入るだなんて。

ゆっくり中に入って行く。まるで禁断の場所に入るみたいに少しドキドキしながら牧野に近づいた。
牧野は自分のベッドに座ってて、となりに並べてるベビーベッドを見ていた。だから俺もその隣に座って蒼の顔を覗き込んだ。
クスッ・・・牧野は総二郎に似てるなんて言うけど、俺には牧野そっくりに見えるよ。

眼を閉じてるからかな。蒼は口元が牧野に似てるから余計にそう思えるのかも・・・。

俺は今まで一度も蒼を抱いたことはなかった。総二郎がまだ抱いていないから・・・それが一番の理由。
変な気分になるって言うのもある。眼を開けていたら確かに総二郎に似てるから。


「可哀想に・・・涙の跡がはっきり見えるじゃん!牧野、ホントによく泣かしたんだね!」
「そうだね!ははっ!総二郎にもさっき怒られたわ。何やってんだって・・・。蒼のこと、任されてるのにね。ダメなママだよね」

「ダメなママなんかじゃないよ。だって愛情はたっぷりあるでしょ?それだけで子どもには最高のママじゃない?」

「そうかな・・・そうだと嬉しいな」


牧野は蒼に顔を寄せた。
キスするの?俺の前で・・・蒼に?


ごめん・・・牧野!それは、見たくない!
何故だろう、今までだって何度も見てきた光景なのに今日はどうしても見たくなかった。

そして俺の手が牧野の肩を掴んで、そのままベッドに押し倒してしまった。
びっくりして固まってしまった牧野の顔を俺の両手が包んでる・・・自分でも予期していなかった行動に驚いた。


「ごめん・・・牧野、ごめん・・・」



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2018/01/19 (Fri) 13:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・爆笑っ!!

やめてーーー・・・ここまで来てそりゃないわーーー(笑)
総ちゃん、超びっくりですやん!!

帰ってきたら我慢できないのは総ちゃんなのにその時に・・・まさかのっ?
どうしますの?そうなったら200話越えしないと総つくに戻りそうにないけど。

今日のお話は絶対に前半の祥兄ちゃんの部分はぶっ飛んで、
類の行動だけ頭に残ると思っていました(笑)

さぁっ!どうする?
崖っぷちの類!飛び降りちゃうのかーーっ!!
それとも踏みとどまるのかーーっ!
意外な所でつくしが「カモン!」って言うのか?

明日をお楽しみに・・・(笑)


2018/01/19 (Fri) 13:24 | EDIT | REPLY |   

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