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ニューヨークの冬は日本より寒い。

特にここは高層マンションの最上階・・・随分長いことここに1人で住んでる。誰とも話さずに・・・誰とも会わずに。
一緒に住むはずだった人が帰ってくることがないから。

だから毎日窓から外を眺めては溜息をついた。

最上階とはいえ、ここにはテラスがあって外に出ることは可能だった。ガーデン仕様の豪華なテラス・・・当然のようにある高い柵に囲まれてはいるけど、下を見ればニューヨークの夜景が一面に広がってる

そんな夜景なんて興味ない。1人で見たって綺麗じゃないもの。
私はいつもそこで空を見上げた・・・でも、そっちもあまり綺麗には見えないの。まわりが明るすぎるから。

だけど、空を見上げては日本にいる彼を思った。


もう帰ろうかな・・・こんなの、私の望んでいた生活じゃないもの。
あの人はもう助けてなんてくれないだろうけど・・・本当は日本にいるかどうかさえ私は知ろうとしなかったけど。

凍てつくような寒さの中、空から沢山の雪が振ってきて私の身体を凍らせようとしてるみたい。

もう凍ってしまえばいいのに・・・これはあの時、彼の手をとらなかった私への罰なのかもしれない・・・。
髪に肩に頬に・・・雪はどんどん落ちてきた。足元はすっかり真っ白になってる・・・だけどここはビルの上で風があるから滅多に積もらない。雪ですら私を素通りしてしまう。


ただ、心が冷たくなるだけ・・・私が手を伸ばしたら雪がそこに落ちてくる。
そっと手の平に落ちた雪はすぐに溶けてなくなる・・・一瞬、美しい結晶を私に見せて、あっという間に消えていくの。

これは誰に対する気持ちと同じなのかしら。


悴んだ手は凄く冷たくなっているのに、その中に落ちたくせに消えてしまう雪の結晶・・・それを見た時、私は決心したの。


ここを出ようって・・・道明寺と別れようって。


********


「お話しがあるんですが」

次の日、久しぶりに道明寺ホールディングス本社に出向き、その言葉を向けたのは道明寺楓社長・・・道明寺のお母さんだ。
私との婚約を一番嫌がった人・・・この人は反対などしないだろう。むしろ喜んで私をここから追い出すに決まっている。
だから、道明寺に言わずにこの人を選んだ。

道明寺に言えば止めに入ることはわかりきっている。この生活が何一つ変わらないにもかかわらず、彼は私をビルの「籠」から出そうとはしない。


「何なの?少しは会社のことでも勉強しようという気になったのかしら?それなら私の所でなくていいのよ?西田に言って然るべき人間をつけてあげるわよ?あなたの頭で理解出来るかどうかはわからないけどね」

「いえ・・・そうではないんです。私、ここを出て日本に帰ろうかと思っています。お許しいただけますよね?」

この言葉にも何一つ表情を変えない鉄の女・・・一瞬、私の顔を見たけれど、その眼はすぐに手元の書類に戻った。
そのあとは何も言わない。どうしろとも、何故なのか、とも聞かない。


「あの・・・ご理解いただけたと思っていいんですよね?婚約を解消したいという意味ですが」

「ほほっ!心配しなくても私は初めからあなたのことを司の婚約者だと思って見たことは一度もないわ!黙ってついてきたネズミぐらいにしか思っていなくてよ?司には元々他のお嬢さんとのお話があったんですもの。むしろ邪魔が消えていいんじゃないかしら?
どうぞご自由に日本にでもどこにでもお帰りなさい。許すも何もこっちから頼みたいぐらいだったのよ?」

そう言うとすぐ側にいたSPに眼で合図をした。

彼らに両腕を掴まれて引きずるようにしてこの社長室を追い払われた!
相変わらずだ!日本を出る時には道明寺に私への教育はきちんとするようにとか、万が一子供が出来てもいいからとか好きなことを言ったくせに!


「もう二度と会うことはないでしょうね・・・お元気でね!ドブネズミさん!」



これがアメリカとの・・・”道明寺”との別れだった。
この後も特にあいつからなんの連絡もなく、私は小さな荷物1つを持って日本に帰る日が来た。

見送ってくれる人もいない。付き添ってくれる人もいない・・・アメリカに来たときとは正反対の今の私。
だけど、こっちの方が私らしいのかもしれない。全ての手続きを自分1人で済ませて飛行機に乗り込んだ。

珍しく晴れたニューヨークの空を飛び立ち、懐かしい人達がいる日本に向かう機内でずっと夢を見ていたの。

楽しかった学生時代の夢・・・。
毎日のように怒鳴り合って喧嘩したのに、最後にはいつも笑顔になった道明寺と私。
優しくていつも味方になってくれた美作さん・・・いつも「大きな妹が出来た」って助けてくれたよね?
お調子者で毎日笑わかせてくれた西門さん・・・でも、ホントに大事なことは凄く真面目に伝えてくれたよね?

何も言わなくても気が付いたら傍にいてくれた花沢類・・・ただそこにいるだけで私はいつも安心して羽目を外したわ。あなたはそんな私が心配で、いつも困ったような笑顔を向けてたよね。
その笑顔は・・・いまでは他の人に向けてるの?

目を開けたら現実の世界に戻ってしまう・・・だから、日本に着くまで私はずっと目を閉じていた。



日本に着いた、その日も寒かった。
珍しく東京に雪が積もるような寒さの中、私は久しぶりに故郷に帰ったんだ。


*********


「専務、久しぶりの日本ですね。しばらくはこちらで勤務されると聞きましたが?」

「あぁ、そうみたい。フランスに3年間ってのが初めの約束だったのにまさか2年で帰されるとは思わなかったよ。でも、やっぱり日本の方がいいな・・・向こうの家は騒々しくて嫌いだから」
「ははは・・・ご両親が揃っておいでですからね。色んな話を持ってこられるのでしょう?仕方ないですよ」


俺がフランスから帰ったのは東京に珍しく雪が降った日だった。
辺りは真っ白でほんの少し到着時間も遅れた。迎えに来た花沢の人間も今年初めてだと言ってたっけ・・・とにかく寒かった。
もちろんフランスの方が気温は低いんだけど。

ここに帰れば少しは暖かいと思っていた俺には誤算・・・数人の出迎えを受けて花沢の車に乗ろうとした時だった。


「あれ?・・・あの子、牧野に似てる・・・」

アメリカからの到着ロビーでチラッと見えた後ろ姿。ストレートの黒髪がサラッと揺れたのが見えた。
あの歩き方は牧野じゃないかって思ったけど、その姿は人混みの中に消えていった。


「専務、どうかされましたか?車が到着しましたのでどうぞ」
「あぁ・・・わかった」


見間違いか・・・確か司と牧野はもうすぐ式を挙げるんだって噂で聞いたしね。
それに道明寺の婚約者って立場の牧野が1人で帰ってくるわけがない。帰るんならプライベートジェットを使うだろうし、そもそも1人じゃないはずだ。いつも考えてるから似た人が全部そう見えるのかもね・・・。


牧野は幸せに暮らしてるのかな。何度か総二郎達とニューヨークまで行ってみようって話になったけど、結局俺は一度もアメリカには行かなかった。
素直に言えば司と一緒にいる牧野を見たくなかったから。

行けばそれを見ることになるだろうし、また1年前みたいに自分の気持ちと反対のことを言ってしまうかもしれない。
もう2度とあんな思いはしたくなかった。

だから、結婚式は仕事の理由を付けて欠席しようと思ってる。
司のために純白のウエディングドレスを着る牧野なんて我慢できそうにないからね。

笑ってる牧野が見られたらいいなんて思っていたのは随分前だよ。今は・・・多分、あんたを自分のものにしたくて堪らないんだ。
その感情を抑えることで精一杯・・・祝福なんてしてあげる自信はない。

「専務・・・どなたかお知り合いでも?急がないと本社の役員方が待っていますよ?」
「あぁ、悪い・・・時差ボケだよ。少し頭が痛いだけ」



本当に見間違いだった?この俺が?・・・もう一度振り向いたけど、もうその姿はどこにもなかった。




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新しい類君の連載です!
ちょっと切ない系です・・・でも、ちゃんとハピエン目指します!
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2018/01/13 (Sat) 00:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、おはようございます!

すみません、出だしが暗かったですよね!(笑)
雪が降る季節なので、雪の中でも温かくなるようなお話しを書こうと思ったら
逆に超冷たい出だしになってしまった!( ̄∇ ̄)

ウルウルって感じよりも、あぁっ!もうっ!って感じでしょうか(笑)

大人になってから偶然出会う設定が多いので、この英徳繋がりのお話しは久しぶりで新鮮でした。
目指せ30話!で、頑張ります!

いつも応援コメントありがとうございます。

2018/01/13 (Sat) 08:07 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/13 (Sat) 08:30 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

みわちゃん様、おはようございます。

あはは!ホントに寒いときに寒い出だしですみません!
切ないとは書いたんですが・・・向日葵のような悲恋っぽくはないんですよ?

よく考えたらそういちろうが終るでしょ?向日葵・・・暗いでしょ?
それに加えて今度は類くんが寒い(笑)

困ったなぁ!!明るい要素がないっ!(笑)
12月が明るかったので余計にどんよりしちゃうかも?

司君・・・(笑)mariageほど悲惨ではありません。ご安心下さい。

雪の降る中でも、2人は温かい・・・ホントはこんな話にしたいんです。
(ただ私が爆弾落とすだけ・・・そこが一番の問題)

ドキドキもハラハラもしないと思いますがお付き合いいただければ嬉しいです。

2018/01/13 (Sat) 10:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/13 (Sat) 11:12 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/13 (Sat) 11:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、今晩は!

はいはい!落ち着いて読めると思います!
自分でももう少しかき乱したいくらい、事件は少ないと思います。
誰も怪我しないし、誰も行方不明にはならないと思うし・・・なったりして(笑)

最近よくプロットが変わるのでどうなるやら!
でも、暫くっていうかもう長いのはいやなので中編ぐらいで終らせたいですね。

寒い中、ほっこりするエンドを目指してます!

今日もありがとうございました!

2018/01/13 (Sat) 19:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

kyoro様💦今晩は♥

いやいや、切ないとは申しましたが泣くほどではないと思います!
ちゃんと出会いますよ!うんうん、私の類くんはつくしちゃん愛に溢れてるのでご心配なく!
(いや、今まで色んなコトしてるから説得力がないか・・・)

でも、切ない部分が多くてもちゃんとイチャイチャしていくと思います。た、多分ですけど。

爆弾・・・kyoro様、実はこの話を書く前に考えていたものがあるんですけど
それを公開したら、kyoro様倒れるかも・・・(笑)
初回からメガトン級の爆弾投下だったので。それも類くんボロボロの・・・。

よかった・・・お蔵入りにして(笑)

きっと雪を溶かすようなエンドになると思うので(予定)楽しんで下さいませ。

2018/01/13 (Sat) 19:48 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/13 (Sat) 20:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

楓さん、嫌いじゃないんですけどね(笑)この人はこうでなくっちゃ!って思うので
セリフも酷くなるんですけど、もう登場しないので忘れましょう(笑)

司君は・・・後々顔を出します。その時に話を聞いてあげましょう。

出だしが寒いのでどんだけ悲恋なの?って思われたら・・・ごめん。結構ふざけた部分もあったりします。
今までのお話しに比べたら切ないかなぁ?って感じかな?切ない話は向日葵で十分?
はい、ご尤もです!!許してくだされ!!


どうぞ、最後までゆったりと読んでいただけたらと思っています。

今日もありがとうございました。

2018/01/14 (Sun) 10:15 | EDIT | REPLY |   

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