FC2ブログ

plumeria

plumeria

花沢に向かう車の中でさっき空港で見た女性のことを考えていた。

やっぱり似てた。背格好もそうだけど、寂しいときの牧野の歩き方だった・・・それを俺が見間違えるはずはない。
何かの理由で1人で帰国した?そういう事だってあるよね・・・結婚前に両親に会いに来たとかさ。

それなら話さずに別れて正解だったかも。
あんたの口から司の名前も、結婚のことも直接聞きたくないから。
来てくれるよね・・・なんて、あんたから言われたら俺、断わらないと思うし、笑えないって思っても無理に笑顔作ってしまうから。

牧野・・・今、どこに向かってるの?
もしかしてすごく近くにいるの?

後ろ姿だけだったけど寂しそうに見えたよ?本当に・・・幸せにしてるの?


俺は流れる景色の中に、1年前の牧野の姿を見ていた。


****


1年前・・・俺がフランスに赴任してちょうど1年経った時だった。
牧野が大学を卒業するからってみんなで集まることになったから、俺もフランスから帰国して会いに行ったんだよね。

その話が来たときに探した牧野への贈り物は、特別な言葉を添えて渡したかった指輪。
みんなの前じゃなくて、二人っきりになったとき・・・フランス行きのチケットと一緒に受け取って欲しくて、ドキドキしながらポケットに入れていたんだ。

それとは別に卒業祝いを持って、言われた店に行ったらすでに全員が揃っていた。

アメリカからは司が、イギリスからはあきらが帰国していて、元々日本にいる総二郎と一緒に久しぶりに4人で顔を合わせた。
何にも変わらないあきらと総二郎に比べて、司は随分と大人っぽくなってた。道明寺の仕事を本格的に始めたこいつはすでに世界中を回っていて、あらゆる分野の事業に関わっていたからかもしれない。
噂では少し手荒なそのやり方で、敵も多く作っている・・・逆に数多くの成功例もあって、道明寺の次期代表となるべく着々とあの楓社長の右腕となっているらしい。

そして三条や大河原に囲まれた牧野がこっちを見た。
「花沢類」・・・小さく俺の名前を口にして、席を立ったその姿にドキッとして俺の脚は止まった。

牧野は誰に用意してもらったのか大人っぽい黒のドレスなんか着て珍しく化粧もしていた。似合わないとかじゃなくて、何だかいつもと違いすぎて戸惑った。

俺の中の牧野はそんな色のドレスじゃなくて、カラフルなビタミンカラーの自由な服装だったよ。こっちまで元気をもらえそうな明るい色に囲まれてたよ?

あんたをそんなに変えてしまったのは誰なの?もしかして・・・司なの?司が牧野をこんなに大人にしたんだろうか・・・。
そう思ったら本当に何も言えなくなった。


牧野と司が想い合っていたのは全員が知ってる。それはもう高校の時からだから。
だけど道明寺家が牧野を受け入れなかったから2人であの大きな組織と闘っていたよね。何度断わられても、何度追い返されても向かって行くあんたをみて俺たちは何も言えなくなって、応援するしかなくなった。

本心なんてものは心の奥深くに隠してさ・・・。

そして相手の方が何倍も強くてとうとう諦めかけたとき、俺たちの卒業式があった。
司はアメリカにあきらはイギリスに俺はフランスに・・・総二郎を除いてみんなが日本を離れたんだ。それから先は風の便りでしかあんたの事は聞かなかった。いや、聞かないフリをしたんだ。

司の情熱があんたをアメリカに連れて行きそうだって思ったから。


女の子達が集まっていたテーブルから出てきた牧野は真っ直ぐに俺の方に歩いてきた。
そんな牧野をさりげなく見ている司の横を通り過ぎて・・・俺も彼女の方に脚を進めた。

「久しぶりだね、牧野。元気だった?卒業、おめでとう・・・はい、これ、卒業記念。使いやすいといいんだけど」
「わぁ!腕時計?素敵だね!・・・花沢類、今日はありがとう。わざわざ帰ってきてくれたのね」

「もちろん!牧野のお祝いでしょ?俺が来ないとでも思ってたの?」
「ううん、来てくれると思ってたよ?会えて・・・嬉しいよ」

そんなドレスを着ててもやっぱり中身は変わんないんだね。少しホッとした・・・でも、次の言葉は俺の心を凍らせるものだった。


「私ね、卒業したらアメリカに行くことにしたの。道明寺と一緒に・・・」


渡せなくなった指輪は俺のポケットに入ったまま。
総二郎もあきらも賑やかに囃し立てて2人を祝ってたけど、俺は何も言えなくて1人で隅に行って酒を飲むしかなかった。
卒業後も司があの楓社長に何度も掛け合って、半ば強引に婚約者の立場を勝ち取ったんだって・・・司の得意気な口調は俺を苛立たせた。

そこに牧野の強い意志はあったの?・・・それは真実だった?


賑やかな店内の音が俺の耳には入ってこなかった。
楽しそうな笑い声も、時々上がる歓声も、俺の事を呼んでる声もすべて聞き流していた。一言も喋らずにただ飲んでいたんだ。

そしたら俯いていた俺の視界に、黒いドレスの裾が映った。
ハッとして目線をあげたら・・・悲しそうに笑う牧野がいた。
「隣、いいかな?」って言うから少し移動して椅子を空けたら、そこに静かに座ったんだ。

シャンパンのグラスを手に持って、ほんとに軽い乾杯のポーズをお互いにとって・・・牧野の次の言葉に俺は少しだけ焦った。

「花沢類・・・どうして何も言ってくれないの?あの・・・私ね、本当は自信なんてないのよ。本当は迷ってるの」
「どうしてそれを俺に聞くの?自分で決めることでしょ?・・・迷ってるならもう一度考えたらいいんじゃない?」

「よく考えたつもりなの!でも・・・凄く怖くて・・・アメリカで上手くやっていけるのかな・・・って」
「行くことは決めたんでしょ?それって・・・どういう意味かわかってるよね?司の事・・・愛してるんだよね?」


この質問に牧野は頷いたんだ。
アメリカに行くって事は道明寺の人間になるって事だよ?それをちゃんと理解してるって牧野は答えたんだ。
それ以上俺に何が言える?司の事を愛してるって言ってるのに俺の方を見て欲しいなんて言えなかった。

「愛してるなら大丈夫だよ。あいつにしっかり守ってもらいなよ・・・安心していいと思うよ」

「・・・そうかな。うん、花沢類がそう言うなら頑張ろうかな!」


思ってもない言葉で牧野を送り出してしまった。引き留めたい気持ちに封をして、感情を全部殺した。
世界中の何処にいても牧野が笑顔ならそれでいい・・・その時は本当にそう思っていたんだ。

なのに牧野は凄く寂しそうにドレスを引きずって司の所に戻っていった。張り付いた笑顔のまま司の腕をとったんだ。


「どうよ!久しぶりだし、このあと4人だけで飲みにいかねぇか?牧野はまだこの歳になってもお子ちゃまだから飲めねぇだろうし!いい店出来てるんだ、行こうぜ?」
「いいな!日本で飲むのも久しぶりだし。類、司も行こうぜ?」

総二郎の誘いにあきらが乗って、俺たちに声をかけてきた。


「いや、俺と牧野は明日の便でアメリカに行くから今日はここで帰るわ・・・また帰国したときにな。牧野、帰るぞ!」
「あっ・・・うん、じゃあみんな、今日は本当にありがとう!アメリカにも会いに来てね!待ってるから!」

司の一言で慌てて牧野も席を立った。
そしてあいつの後ろを追うように小走りで出口に向かったんだ・・・俺の前を通り過ぎてさ。

少し振り返った牧野と一瞬目が合ったよ。
でも、すぐにそれは悲しい笑顔に変わって、司に手を添えられてこの店を出て行った。



「牧野もよく決心したよな。あの楓社長に苛められるんじゃねぇの?司、守れるんだろうな!」
「大丈夫だろう?もう何年間も付き合ってるんだから上手くやるさ!類、お前は飲みに行くのか?」

「・・・ごめん、俺も帰る」

付き合いが悪いな!って怒る2人に片手をあげて、俺は1人でこの店を出た。

当然だけどもう2人の姿はなかった。
もしかしてホテルにでも泊まるのかな・・・それってやっぱり・・・当然のことなのかな。

それにしては悲しそうな顔で帰ったね。


向日葵みたいな牧野は何処に行ったの?
俺はそっちの方が好きだったな。元気に大きな口を開けて笑ってるあんたの方が・・・好きだったのにな。


****


久しぶりに牧野に似た女性を見かけてしまったからそんな遠い昔の事を思いだしていた。

「専務、随分難しいお顔ですけど、頭痛はまだひどいんですか?」
「え?・・・あぁ、いや、大丈夫。もうすぐ本社だね・・・懐かしいけど、日本はなにも変わってないね」

「そんなもんですかねぇ!あぁ、そうだ、今度うちと大きな取引を開始する山城商事っていう会社があるんですが、そこの会長のご家族と食事会があるんですよ。日程の調整中なんですけど、帰国早々申し訳ないですがご出席願いますね」

「はぁ・・・何処に行ってもあるんだね。そういうの・・・」


雪が酷くなった・・・彼女はこの雪の中、無事に目的地に向かってるのかな。
そんな事ばかりを考えていたら俺の電話が鳴った。


それは幼馴染みからだった。


551c537c6fc8ea44f491c03ecb063cad_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/15 (Mon) 08:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

水香様 おはようございます。

あらら!大丈夫ですか?
寒いですものね・・・気をつけて下さいね!
私ですか?そうですねぇ・・・仕事が変わったので少し疲れ気味ですかねぇ。

まだ慣れてないので。このお話と同じですよ(笑)
始めたばかりでよくわかんないって感じですね!

うんうん。こっちはそのうち明るくなると思います。
もう少し待ってて下さいね!

2018/01/15 (Mon) 08:23 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/15 (Mon) 12:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

えっとね(笑)さとぴょん様的には有り得ないと思うんですけど
この2人・・・ないんですよ!
(ていうか、司君相手に私が書けないんですよ。描写じゃなくても拒否反応が・・・)

まぁ、そこはねぇ・・・納得出来ないかもですが!!
そういうことにして下さいっ!!


そうよねぇ・・・何故頷いた?って感じですが、これが2人の男の間で揺れる女ゴコロみたいなもんですか?

どっちを選んだらいいのぉ!ホントは私、どっちを好きなの?誰か教えて!みたいな?
(殴らんといて下さいね)

自分がそんな経験ないんでわかんないんですけど、つくしちゃんはフクザツだったんですよ。
どっちも金持ちだし、どっちもイケメンだし。
そういう時は迷わずあきらをとろう!(笑)大事にしてくれるよ?きっと!

2018/01/15 (Mon) 19:08 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply