FC2ブログ

plumeria

plumeria

居酒屋でのバイトは決まったけど、昼間に遊んでいるわけにもいかない。
次の日にはさっそくバイトを探しに行った。朝から夕方までで「さくら」の就業時間、6時に間に合うところ・・・?
都合よくそんな働き口があるのかどうか・・・疑問に思いながら近くの職業安定所に行ってみた。


私は道明寺に反対されたけど、大学では保育士養成課程を選択していたから保育士の資格を取得していた。

だから保育園とか託児所とか、そういう所でもいいかな?なんて呟きながらそこのパソコンで検索したら・・・!
最新の求人情報で私立の保育園が臨時の保育士のアルバイトを募集していた!すごいラッキー!

慌ててそこに連絡をいれて、その脚で面接に向かった。
急募だったらしく極簡単な面接で採用が決まって、時間も8時半から4時半まで。お昼休憩が1時間で、時給はなんと1200円!これは東京の平均時給よりも上で私のテンションは一気に上がってしまった!

ここのあとに居酒屋で6時から10時まで働く・・・これが私の1日になるわけだ。


「つい最近、年中さんクラスの先生のつわりが酷くてなってね、早期の産前休暇に入られたから困ってたの。代わりの方を募集したばかりだったけど、うちも急いでるから助かったわ。明日から大丈夫なのね?」

「はい。問題ありません。こちらこそ助かります!宜しくお願いします」

「うちは少しプライドの高い保護者さんがいるのよ。だからちょっと何かあったらすぐクレームとか通報とかされるから子どもに対してはもちろんだけど、あなたの勤務態度とか通勤途中のことまで煩く言う人がいるから気をつけてね?絶対に保護者さんに送ってもらうとかご飯食べに行くとかしないでよ?」

「もちろんです。通勤は徒歩ですし、一緒にご飯食べに行くとか考えたこともないですから!」


意外と大きな保育園・・・確かに園庭で遊んでいる子どもたちの中には上品そうな子どもがいるわ。
クスッ・・・あの人たちもこんな子どもだったのかしらね。

その時に私の背中にボールが当たって、びっくりして振り向いたら1人の男の子が立っていた。

「あら!ボールが変な方向に飛んじゃったのね?はい、取りにおいで!」
「・・・ごめんなさい。僕、サッカーが苦手だからボールがね、上手く蹴られなくて」

「あはは!痛くなんかなかったよ?大丈夫!練習したら上手くなるよ!私、明日からここにくるの。一緒にサッカーしようか?
お名前はなんて言うの?」
「僕、山本 一樹(かずき)!お姉ちゃん、明日からくるの?先生?」

その子はちょっと小柄で色が白くて、まるで女の子のような顔立ちの可愛らしい男の子だった。あはっ!なんだか花沢類の子どもの時みたい!これで茶色の髪で茶色の瞳だったらそっくりかもね。

「先生?うーん・・・見習いかな?宜しくね、一樹君!」
「うん、じゃあ、ありがとう・・・」

私の手からボールを受け取ると、目を細めて笑った・・・その時の感じが本当によく似てる。
この子、モテるんだろうな。なんて事を考えてしまったわ。


明日から一日中仕事が出来る。ここでなら何もかも忘れて子どもたちと遊んで笑って・・・そうやって過ごしていたら、これまでの事がだんだん過去になっていって昔の自分を取り戻せるかな。


ここから「さくら」までは歩いて20分ぐらいかしら。
今度から夕方のおにぎりも持って来なきゃ・・・何処かで食べてから直接お店に行こう。

毎日疲れてクタクタになるだろうけど、このぐらいがちょうど良かった。
居酒屋のバイトが終って自宅に戻ったらすぐに銭湯に行って・・・アパートに帰ったらすぐに寝る。

そんな余裕のない毎日でも、ニューヨークで過ごした無言の日々に比べたら天国かもしれない・・・そう思ったの。


********


次の日、朝8時過ぎにはもう保育園に行って園内で子どもを迎える準備をしていた。
30分からだから本当はもう少しゆっくりしてもいいんだろうけど、初日ってことで緊張もしたし。
だんだん増えてくる子どもたちは新しい顔の私の事を警戒しているのか、あまり傍には寄ってこなかった。

まぁ、それでも子どもに慣れる自信はあったし、そこまで気にもせずに窓の外を見ていた。流石にキャリアウーマン風の綺麗なお母さんたちが子どもの手を引いて入ってくる。
大きな会社に勤務しているのかしら・・・スーツ姿のお母さんたちが高級車で乗り付けては子どもを降ろしていく光景も見えた。

そんな中、大人の間を擦り抜けて一樹君が走ってきた。

あれ?この子はお母さんと一緒じゃないのかしら?
下駄箱に自分の靴を入れている一樹君に近寄って声をかけてみた。

「おはよう!一樹くん、お母さんは?門の所から1人で来たでしょ?」
「あ、おはよう!僕んちは送り迎えはパパなんだよ。だから門の前で降ろしてもらったらいつも1人で来るの。パパはそのまま車で会社に行くんだよ」

「あぁ!そうなんだ。今日からサッカー、頑張ろうね!」
「うん!お昼の自由時間、遊ぼうね!」


こうして私の昼間の保育士の仕事はスタートして、1週間も経てば子どもたちとはすっかり仲良くなった。

「つくし先生」なんて呼ばれると照れくさいけど、この子たちのパワーで毎日すごい筋肉痛と闘う事になり、夜の「さくら」でも料理を運ぶ手が震えるほどだった。
でも、昼間は子どもたち相手に笑い、夜はお客さんとの会話で笑い、そうやって無理矢理にでも笑うようになると時間が経つのを忘れる事が出来た。その反動は・・・独りぼっちの夜にやってくる。

この寒くて暗い、寂しい部屋に戻ると途端に悲しくなってきて、毎日のように写真を抱いて眠った。


今頃、花沢類は何をしてるんだろう。
お願いだから・・・私が立ち直って全部思い出に変えるまで、あなたの腕の中に誰もいませんように・・・。


自分勝手なひどい願い事を、夜空の星を見上げながら呟いてる・・・そんな自分が堪らなく惨めだった。


*********


「専務、まだお帰りにならないんですか?随分長いことパソコンを見ていらっしゃいますが、そんなに気になることでもあるんですか?」

「いや、仕事のことじゃないから気にしないで帰っていいよ。個人的に調べたいことがあっただけだから。もう少ししたら俺もここを出るよ」

「そうですか?お車をエントランス前で待機させておきましょうか?」
「あぁ、そうだね・・・頼むよ」

森本に声をかけられた時に調べていたのは道明寺の動きだった。
もちろん仕事絡みじゃない。司の最近の動向を調べていた。

道明寺のホームページで確認できたのは司が最近アメリカの本社に戻っているということだった。
日付から考えたら牧野と入れ違い・・・おそらく牧野が向こうのマンションを出た次の日ぐらいだ。それまで出向いていた先での仕事を終えて、今度は中東の方に向かうらしい。

そして結婚についても何の記載もなかった。
過去にあった牧野を同行させたときのパーティーの記事は削除されている。このホームページの中に牧野の存在はなくなっていた。代わりに新しくアメリカの大手企業の令嬢と楓社長の対談の記事が最新で上がってる・・・今度の婚約者候補ってこと?

この令嬢なら楓社長は認めるってわけだ。司が認めるかどうかは別としてね。


パソコンの電源を落としてコートを手に持って、俺も専務室を出た。


もう誰もいなくなった役員フロアの廊下で、コートを羽織りながらエレベーターのボタンを押す。
すぐに開いたドア・・・音もなく降下を始めたエレベーターの中で、さっき見た画面の中の幼馴染みを思い出していた。

あいつは今、何を考えてるんだろう。
何年間もかけて自分のものにした牧野を、なぜあっさり帰したんだ?もしかして別れただなんて思ってないとか?
でも総二郎には牧野がギブアップしたって言ってるし、楓社長の動きももう新しいターゲットに移ってる。

何故動かない?何故、必死にならないんだ?昔のように・・・。


その静かさが恐ろしかった。
俺よりも先に牧野を見つけて、また目の前で連れ去られるような気がして。



1winter-2893867__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/01/17 (Wed) 14:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

なるほどね~!!それなら納得!

私のいた会社はね、そりゃもう大手だったんです!ここで書けないくらい(笑)
それなのにやけに緩い会社で、マンガ本は引き出しにあって一人の時読んでたし、暇なときは編み物してました。
この前辞めた会社も大手ですけど、そこは監視カメラだらけで何も出来ませんでした(それが普通よ)

そこの店長さんが実は昔保母さんやってて、体調壊して辞めたって言ってたなぁ。
子どもと遊ぶって簡単に言うけど、あれ、遊びじゃなくて拷問だから!ってよく言ってた(笑)

だから、このつくしちゃん・・・無茶するなぁって感じですよね!

なんで、こんな無茶をさせたか?それはこの後の話に繋がるから・・・ふふふ。

どうしよう、すでに何話になるかわかんなくなってきた!
絶対に長編だけは避けなきゃ・・・!

2018/01/17 (Wed) 21:52 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply