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plumeria

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牧野を連れてマンションの自分の部屋に入った。
自分でも何処に何があるか、よくわかっていないぐらい慣れてないこの部屋・・・本当は2人で暮らしたくて、それを想像しながら選んだ場所だったんだ。

夢・・・だったかもしれない。
こんな風に牧野と買い物をして一緒に部屋に戻って、彼女はキッチンで俺のために料理を作ってくれる。
俺はそれを楽しみにしてリビングで待ってる。今、それが恋人になっていなくても現実に行われていることに心を躍らせてる。


「花沢類、えっと・・・お皿とかお鍋とか・・・どこだろう」
「え?俺に聞く?全然わかんないけど」

「だって、ここ花沢類の部屋じゃない!他の誰に聞くのよ!適当に探していい?」
「うん、一緒に探すよ。ちょっと待ってて、着替えてくるから」

ほんの少しだけど服を置いていたから部屋着に着替えてキッチンに向かった。テーブルの上には今買った食材が置かれていて、牧野はその辺の棚を開けて料理道具を探していた。
包丁はあったみたい。小さな鍋が欲しいって言うから探していたら、高い場所にいくつか見つかって俺がそれを降ろした。

「本当にここに来たことがないんだね!何もかも未使用なんだもん。初めて使うのが私で申し訳ないわ。少し待っててね。でも本当に簡単なものだよ?玉子雑炊、作ってあげる。身体が温まるから」

「じゃあ2人分ね。一緒に食べよう?1人だと寂しいからさ」

「私はいいのよ!軽く食べてるし。あ、あの、バイト先がね、居酒屋さんなのよ。だからちょっとつまみ食いしちゃうの!」

居酒屋でバイトをしているのが恥ずかしかったんだろうか。そんなに言葉を詰まらせて・・・。
少し赤い顔して牧野は1人分だけ作るって言った。そして待つこと10分ぐらいで玉子雑炊を作って持ってきてくれた。

「ちょっと手抜きなんだけど・・・ごめんね。花沢類の口に合うかな・・・」

すごく美味しそうな匂いと、見ただけで温かくなりそうな黄色にネギが散れされてる。
今まで疲れて帰ってきたからって、花沢では出されたこともないような「ご馳走」だった。

「美味しそう・・・いただきます!」
「全然大したもんじゃないわよ。本当は色んなものを食べた方がいいんだけど、こんな時間だしね」

「あっつっ!・・・ホントに温まりそうっ!」
「あっ!待って、お水持ってくるね!熱すぎた?ごめんね!」

だってこんな出来たてのものを食べる事なんてないんだよ?だからすごくびっくりした!
作りたての温度って・・・こんなに熱いんだね。慌てて水を持ってきてくれる牧野の真剣な顔が面白くて噴き出した!


「ありがと・・・ホントに温まったよ。ね、少し話をしない?この1年間の牧野の事・・・知りたいことが沢山あるんだ」

「え?・・・でも、私、朝から夕方までは保育園でバイトしてるの。だから泊まるわけにはいかないわ」

「バイト、2つも掛け持ちしてるの?疲れない?」

「疲れるぐらいがいいの。何も考えずにすむから・・・」

お茶を口に運びながら、牧野はまた悲しそうな顔をする。
そんな顔は見たくないんだ。だから今日はホントの気持ちを話し合おうよ。


「明日の朝、必ず送るから。牧野に話があるんだ・・・あんたの事も知りたいけど、俺の事も聞いて欲しい。だから帰さない」


**********


『帰さない』そう言われたとき、ドキッとした。
花沢類の目が真剣そのものになってる気がして怖い。なんだかいつもより男性っぽい?そう感じてる。
なのに、それでも帰る・・・って言えなかった。

ほんの少し買ってきたおつまみをテーブルに並べて、類はここに置いていたのかワインを持ってきた。
そしてグラスに注いでくれて2人で乾杯なんてして。

お酒には全然強くないからほんの少しだけ口をつけた。それでも何となく身体が熱くなってくる。隣に彼がいるから・・・?


「牧野・・・こっちにおいで?」

花沢類は自分が座っているソファーの隣においでと手招きをした。
そんなに近くに?どうしようかと思ったけど、あの瞳に負けてしまう・・・私は自分のグラスを持って類の隣に座った。
肩が少し触れるぐらいの位置に類がいる。さっきまでのスーツじゃなくて普段着に戻った彼は大学生の時と変わらなくて懐かしかった。それに比べて自分はどうだろう・・・少し変わってしまっただろうなって思う。

前みたいに笑えなくなったもの。もう、それもバレてると思うんだけど。


「ねぇ、牧野は今は幸せなの?この1年間、あんた幸せだったの?」


ドキッとする質問・・・私はグラスを口に運ぼうとして手が止まった。
幸せだったかと言われれば答えはNOだ。だけどそれを素直に言えばこの人は理由を聞くだろう。私はアメリカでのことを話すのが怖くて、咄嗟に自分の気持ちと反対のことを言った。

「もちろん幸せだよ。向こうでも楽しく暮らしたんだよ?でもね、やっぱりあの家には私は相応しくないんだって!あんまり厳しく言われるからもう嫌になったの。だから全部自分から投げ出してさ、道明寺には悪いんだけど帰ってきたんだよね!今はすっきりしてるから大丈夫!自分にあった生活してるからホッとしてるの。まぁ・・・いい思いをした1年間だったわ!」

精一杯の演技で自分は幸せだって言ってみたけど、類の表情は何にも変わらなかった。

慌てたように口に近づけていたグラスのワインをゴクンと飲んだら思いっきり咽せてしまった!類がクスって笑ってタオルを取ってくれて・・・そして笑顔と一緒にそれを渡してくれた。


「嘘つきだね・・・」
「・・・嘘じゃないもん」

「嘘つきだよ・・・本当は寂しいくせに」
「・・・寂しくないもん」

「強情なんだから・・・寂しいって言えばいいじゃん」
「・・・寂しくなんか・・・ないもん」


「ねぇ、1年前に戻れない?もう一度聞いてもいい?」


いつの間にか自分の両膝を抱えてファーの上に座って、私は顔を自分の腕の中に埋めていた。多分泣きそうな顔になってるからこんなの、花沢類に見られたくなかった。
1年前に戻れないかって?そんなの無理に決まってるでしょう?私はあの時自分に嘘ついて道明寺を選んだんだよ?


「司の事、今でも愛してるの?」
「・・・・・・」

「今は一年前にタイムスリップしてると思って?ね、俺もあの日に戻って答えてあげる。牧野ももう一度俺に聞いてよ」
「もう、その質問も忘れたわ。時間なんて戻らないもん」

「そんなことないって。行くのが怖かったんでしょ?自信、ないんでしょ?・・・じゃあ引き返しておいで?それともやっぱり司が迎えに来ると思ってるの?」

本当は怖いの。自信なんてないの・・・それは1年前のパーティーの時、あなたにした質問だね。ちゃんと覚えててくれたんだね。
引き返しておいでっていう言葉はここに戻ってきても良かったんだ・・・って思わせてくれた。


「そんなわけないじゃん・・・本当は止めて欲しかったの。だけど・・・あの時は自分で決められないほど迷っていたの」

ふわっと花沢類の両腕が私の身体を包んでくれた。
そして耳元で囁かれた言葉・・・私が一番欲しかった言葉を花沢類が言ってくれた。


「お帰り・・・待ってたよ」



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Comments 4

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2018/01/22 (Mon) 00:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/22 (Mon) 05:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・爆笑っ!!

その目標、大丈夫でしょうかっ?!!1ヶ月、よくて2ヶ月じゃないですか?
言えば聞いてくれるんですか?絶対に聞いてくれそうにないけど・・・(笑)
いや、すでに色んな要求されてる気がするんだけど!もう、お腹痛かった💦笑わかせんといて下さい!
他の作家さんに言いたい!!

「今年のさとぴょん様はねーっ!!」


そうそう、一つ前のコメントにあったからちょっと笑っていました!
また何処かたら侵入して、私の管理画面を見られたのかと・・・(笑)

運転手に間違って「今夜は帰さない」っていわなくて良かったね!


嘘ねぇ・・・つくしちゃんがすごくビビりな設定なのですぐ逃げちゃうんですよ。
まぁ・・・この類なら逃がさないんでしょうけど。むふふ・・・!


で、そのまま合・・・ここ大好き!♥(笑)

2018/01/22 (Mon) 12:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございますです

えみりん様、こんにちは。

あはは!表大歓迎ですよ?

で、私一瞬ビビってしまった!Finって入れてた?って!
もうっ(笑)焦らせないで~💦よくやらかす人間だから心配なんですよっ(笑)

ここで終ってもいいけど・・・明日からの連載がなくなっちゃう(笑)

さて・・・どうなりますかしら。
このお話しのつくしちゃんは素直じゃなさそうですけど。
私の中では最後まで「類の暴走」がテーマです(笑)

私の所も今日は雨ですねぇ・・・雪、降らないんだもん。
今年はチラチラだけで一度もまだ地面が白くなっていません。
だからって積もると私の家が高いところにあるので車が動かせません。
雪解けまで何処にもいけない・・・そのために会社を休んだこともありましたよ。

雪解けって言うより道路の凍結かな?坂道だとブレーキききませんものね。
実は何回か凍結した道路でスリップしてスピンした事があります(笑)

マジ、死ぬかと思った・・・。

2018/01/22 (Mon) 12:37 | EDIT | REPLY |   

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