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その日、マスターがまだ来ていない時だったな。
ツクシが全部吹っ切れたような顔して俺に向かって話しかけた。

「そういちろうさん。色々お世話になったわね。ありがとう・・・楽しかったよ。ここにいるときだけが本当に楽しかったよ」
「ソウイチロウ、マッテルヨ。ソウイチロウ・・・ダイスキ」

「あはは!お利口さんだね!・・・私が毎日”類、大好き”って言ってたの覚えたんでしょ?流石だね!」

「ソウイチロウ、ダイスキ!」
「うん、私も類が大好き!だから・・・さようならするんだよ」

くっそーっ!あんまり言わないって決めたくせにツクシがあんまり情けない顔するからまた言っちまったじゃねぇか!

だけどサヨナラするってどういう意味だ?
世の中にはな、サヨナラしたくなくてもそうなる場合ってのがあるんだから、自分から逃げちゃダメなんだぜ?


そしたら今度はマスターが入ってきて、いつも夜になって掛ける札を取りだしたんだ。まだ昼間だぜ?マスター、どうしたんだ?
その札を外に掛けて、ガチャって扉に鍵をかけたんだ。
待てよ?・・・って事は俺はこんなに明るいうちから1人にされるのか?おいおいおい!そりゃないぜ?

「おはようございます・・・マスター、どうしたんですか?今日はもうお店を閉めるんですか?」
「あぁ・・・そうだよ。今日だけじゃなくて、もうこの店を閉店するんだ。つくしちゃん、話があるんだ。少し・・・いいかな」

ヘイテン?それって毎日のことだろ?今日に限ってなんでこんなに早いんだよ!ルイが夕方来るって言わなかったか?
約束は破っちゃダメなんだぞ?破られた方の身にもなってみろ!ルイがびっくりするぞ?


でも俺は所詮インコ・・・黙って2人の話を聞いていた。
マスターはツクシのためにコーヒーまで入れてる。しかも自分の分まで入れてカウンターに向かい合って座っちまった。

何だか俺までドキドキする・・・何がこれから始まるんだろう。
そのうちマスターは昨日会ったことを話し始めた。

「昨日ね、夜に亮と名乗る男が来たんだよ。君の・・・同居人だそうだね」
「え?・・・亮が?な、何を言ったんですか?」

あぁ、そういや来たな・・・暗くなってから随分薄汚いヤツがフラフラ入ってきたが、俺はイラッシャイマセって言わなかったぜ?
一目でコイツは客じゃねぇってわかったもんな!
マスターに喧嘩売ってたから噛みついてやろうかと思ったけど、俺は繋がれてるから飛びかかれねぇんだよ!

なんでもツクシの弱みを握ってるからから必ず帰れって言う話だったな・・・。もし帰らなかったら店も潰すとか何とか・・・。
マジ、男の趣味が悪いぜ!どう見たってルイと比べもんにならねぇじゃん!なんでツクシはあんな男に捕まってるんだ?
あんな奴、蹴り飛ばして、張り倒して、ぶん殴って追い出しゃいいんだよ!

それにこの店に手を出してみろ!いつもは大人しい俺だけど、そうなったら話は別だ・・・そいつが血まみれになるまで噛んでやるのにっ!実はそのぐらい出来るんだぜ?・・・やったことがないだけで。


「・・・僕もこの店を閉めて田舎に帰ろうかと思ってね。そういちろうを連れてさ」
「どうしてですか?私のことでこのお店を閉めるんですか?ダメですよ!そんなの・・・私はこのお店を今日で辞めようって思っていたんです!それで解決するでしょう?」

ちょっと待てーーっ!
今度は俺を何処に連れて行くって?びっくりして全身の毛が逆立ったじゃねぇかっ!!
俺はサトミサンが帰ってこなくなって、理由もわからずにこの店に寝泊まりさせられてんだ!それなのに今度はまた俺を連れて別の場所に移動するって?

インコってのは丈夫に見えるかも知れねぇけど実は繊細な生き物で、車とかの移動はストレスなんだって!
一つの場所に落ち着きたいの!マジ、迷惑!!

なんでどいつもこいつも暗くなって悲しくなっていくんだよっ!HAPPYな毎日を送ろうとは思わねぇのかよ!


ってなことを1人隅っこで呟いていたらマスターが昔話を始めたんだ。
俺が「マッテル」って家で言うのが辛かったんだと。それならそうと言ってくれよ・・・わかんなかったんだよ!
急にサトミサンも子どもも戻ってこないって・・・ちゃんと言ってくれなかったから「マッテル」って繰り返したんだ。


そしてとうとうツクシまで俺と一緒にマスターが行くところについてくるって言いだした。
ルイはどうすんだよ!・・・ツクシがルイと離れて暮らしていけるのか?ルイは無理だと思うぞ?
あいつはマジでつくしの事が好きだからな!インコの俺でもわかるんだから、ツクシは気が付いてるはずだろう?

ルイから離れても楽しくなんてなれないって!そんな事言うんだったら俺の頭、貸さねぇぞ!
もうヒマワリのタネも食わねぇぞ!俺が餓死してもいいのか?それが嫌ならルイから離れるなって!


まぁ、俺の眼力が通じないのも仕方ねぇ。

この後、ツクシは自分が抱えている問題をマスターに話し始めた。
そりゃもう泣いて泣いて、泣き続けるからさ・・・マスターもツクシの背中をさすって慰めてたな。

そして自分の隠してることをルイには知られたくないって言って泣き続けた。


切ないよな・・・好きなのに離れなきゃいけないなんてさ。
サトミサンのことを思いだしたじゃねぇか。

俺はこの夫婦に飼われて、マジ良かったって思ってたんだ。
マスターは優しかったし、サトミサンもいつも俺を可愛がって抱いてくれたし。本当はインコってのは抱かれるのは嫌なんだよ。
頭の上に手なんか持ってこられたら恐怖心がMAXになって噛もうとするのが本能なんだ。

だけどさ・・・とにかく「愛」ってもんがあったからさ。サトミサンに撫でられるとうっとりするんだよな。照れるけどよ!

その人がある日、急にいなくなってさ、小さな箱の中にいますって言われても信じられなかった。
もうあの優しい声で「そういちろう、おはよう」って言ってくれないなんて思いもしなかった。



ツクシとマスターは何だか段ボールってものに店のものを詰めていくんだ。
それを止まり木から見ていた。手伝う気なんかなかったし、手伝えって言われても困るしな。

だけど、本当は2人が作業してるのを見たくなくて窓から外を眺めてたんだ。
ルイ・・・早く来いよ!ツクシがここを出ていくって言ってるぞ!

ダメかなぁ、間に合わねぇか?
チラッと人影が見える度にルイか?って思ったけどみんな違った。


「ソウイチロウ・・・マッテルヨ?ソウイチロウ・・・ココニイルヨ」

「そういちろうさん、類に会いたかったよね・・・ごめんね。でも、私がいるからさ!類の分まで私が遊んであげるからね」
「ソウイチロウ、マッテル!」

「うん・・・本当は私も待ちたかったよ」


じゃあ、待とうぜ?
ルイなら何とかしてくれるって!

サトミサンと違ってツクシは今ここにいるんだから!だからルイを待とうぜ?


俺がこんなに言ったのに、とうとうこの日、俺たち3人は東京を離れたんだ。
ぐちゃぐちゃに泣いた顔でマスターの車に乗り込んできたツクシは俺を膝に置いたまま、「陽だまり」が見えなくなっても後ろを振り返っていた。

だから言ってるじゃねぇか!今からでも間に合うって!戻ろうぜ、ツクシ!
だが、完全無視されて俺たちの車はフェリー乗り場に向かった。


チクショーーーっ!!なんで俺の言葉はこうも役に立たねぇんだよーーっ!
マスターでもツクシでもどっちでもいいけど俺の言うこと聞いてくれよーーーっ!!


フェリー、乗りたくねーっ!!



macaw-1817586__340.jpg
↑これ、木にぶら下がってるんです。間違って逆さまにしてるんじゃないのよ(笑)
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2018/01/06 (Sat) 11:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

あはは!そういちろうに伝えておきますね!
でも彼は今から大変な状況になるんですよ(笑)
5話めの出だしでわかると思うんですけどね!

我が家のインコは毎朝私がムギューって掴まえるので、すごく嫌がって大暴れします(笑)
だから何にもしない旦那の方が好きみたいです。
旦那の肩だと結構大人しく乗っていますけど、私の所にはエサをもらう時だけ来ます。

あんまり腹が立つと私の頭を後ろから殴ってきます(飛んだときの翼で・・・)
そういうインコです・・・でも、可愛い♥

誠君・・・!そうですね、実は書いてって言われてましたが12月は話が多くて書けなかったので今になりました(笑)
まぁ、このシリーズも気楽に書けるので好きですけど。
ただ、自分でも何書いてるんだかわかんないMITの話(笑)
調べても意味がわかんないんですよ!でも、本当にカーボンボディの実験とか人工筋肉とかはしてるみたいです。

誠君じゃないけどさっぱりですよ。
だからそこは省く・・・!

番外編なのでお気楽にお読み下さいませ!

今日もありがとうございました。

2018/01/06 (Sat) 14:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/06 (Sat) 15:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~!

確かに軽いですよね(笑)
HAPPYに行こうぜ!は流石に私もこのままでいいかどうか迷いましたよ。
あの顔ですからね・・・。

もうこうなったら総ちゃんでも竜ちゃんでも(エラい差があるけど💦)どっちでもいいや!
ってぐらいのそういちろうの動揺ぶり。
そうです・・・実はインコというのは乗り物に非常に弱いのです。

それを知っていながら私はオカメインコを肩に乗せて、子どものバレエ教室にお迎えに行ってました。
夜に行くから対向車のライトで大暴れですよ。

一度警察に止められて、「インコはどうかと思うよ~」って注意を受けました。


おそらく本編のヘリコプターもかなりのストレスではなかったかと思われます。

ごめんよ、そういちろう。
可愛い嫁さん探してあげるからね・・・。

2018/01/06 (Sat) 15:44 | EDIT | REPLY |   

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