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plumeria

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その日の夜は西門さんには電話をしなかった。
1人だったけど、なんとなく大丈夫な気がしたから。今日は風の音も気にならない。
でも、西門さんの方から電話をしてきた・・・心配したのかな?

『おーい!つくしちゃん、元気か?』

「うん、元気。明日、帰ってくるんだよね?お土産考えたの。チョコの八つ橋!」

『おっ?!チョコの八つ橋?わっかんねーけど聞いてみるよ』

ほんとうはお土産なんてなくていい。側にいてくれたら・・・
早く帰ってきてくれたらそれでいいんだけど。

「今日ね、お昼はとっても美味しいところに連れてってもらったよ」

『良かったじゃん。また、連れてってもらえよ。甘えとくと喜ぶから』

「うん。そうする」

おば様と話した事も伝えたいけど、親子の事だからやめておいた。私が口出ししちゃいけないことのような気がして。
西門さんは京都の話しや、お茶会であった事・・・そんな何でもないことを昨日と同じく話してくれる。
電話越しに西門さんの声を聞きながら窓の外の月を眺めていた。京都でもこの月、見えてるのかな?

「ねぇ、西門さん・・・ううん。やっぱりいい・・・」

『・・・何だよ?気になるじゃねーか!』

「何でもないって。明日さ・・・帰ってきたら・・・」

また抱き締めてくれるよね・・・?そう言いそうになったのを慌ててとめた。
西門さんの気持ちを聞いてるのに、そんな言葉簡単に言っちゃいけないよね。

『ん?帰ったら・・・なに?』

「やっぱり何でもない。今日はもう寝るね・・・おやすみなさい、西門さん」

本当はもっと声を聞きたい。出来たら今すぐここに戻ってきて欲しい。
でも、その気持ちがなんなのか・・・まだ自分でもわからないの。

類のことをまだ愛してるのかも、西門さんの腕の中にいたいのかも
それさえも今はわからないの。

ただ、安心できる場所は・・・今は一つしかない。
それだけはわかってるから。

**

明日は田村さんと花の種を植えよう。
今日できなかったから。
ここのお茶会で生ける花って言ってたから・・・私が育てた花で、西門さんにお茶会してもらおう。

なにか一つ・・・小さな事からでいい。始めてみよう。
もうこれ以上悪い事なんて起きないだろうから。

せめて、類があの人と結婚するところをこの目で見たくない。


あとは元気になったら学校へ戻りたいな。ちゃんと卒業して、仕事にもついて・・・

ここでお世話になった分をお返ししなくちゃ。

色々と考えてたらすぅっと寝てしまったみたい。
今日は類も夢には出てこなかった。

**

<京都>

さっき牧野は何を言いかけたんだ?
でも、随分と元気な声だった。久しぶりに聞いたな、あんな声で話すのを。
やっぱり、女同士で話すと気が晴れるんかな・・・


京都は元々西門があった場所・・・つまりここの爺達は東京の宗家に対しても絶大な影響力を持っている。
だからこそいい加減な仕事が出来ない。今でもこの俺が次期家元なんてのをよく思わない連中もいるだろう。
足下を掬われないよう必死だ。

おかげで今日はマジで疲れた。
あの爺達、刺すような目つきで俺の手前を見てくんだからな!

おまけにここでも俺の嫁探しってのは始まってる。
絶対親父はそれを知っててわざと俺にこの仕事させたな!?
試してやがるとしか思えねーぞ?

「早く帰りてーな・・・」

ベッドに寝転んで天井にむかって呟いた。

いつもは隣に牧野がいて、泣かないようにずっと抱いててやるんだ。
だからなのか、すごく自分の周りが空っぽみたいに、どこか隙間があるような気がして落ち着かない。
手を伸ばしたらいつもこの辺りにあいつの身体があったのに。

「泣いてないかな・・・あいつ」

昨日は寝られなかったって電話してきたくせに・・・。
もう一回電話が鳴ればいいのに・・なんて事を思いながらスマホを手放せなかった。


明日、午前中の仕事が終わったら速攻帰ってやる。
牧野に頼まれた土産だけ買って。


俺が寝たのはもう随分遅く・・・とっくに次の日になってからだった。

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