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<side祥一郎>
あと少しで会見が始まるって時に廊下で話し声がした。家元夫人・・・お袋の声だ。田中が連れて来てくれたんだ。
俺は少し緊張して家元夫人ががこの部屋に入ってくるのを待った。

ノックと同時にドアが開いて田中が顔を出した。それに黙って頷くと、入れ替わりに難しい顔をした家元夫人が入ってきた。
そして俺の顔を見るなり驚いてその場に立ち尽くした。


「ご無沙汰しています・・・お母さん。祥一郎です」

家元夫人とは呼ばずに挨拶をして頭を下げたが家元夫人の方は声も出せないようだ。
それもそうだろう、俺は家元に勘当されたようなもの・・・あれだけ可愛がってくれたこの人を裏切って出て行った息子だから。
しかも茶道とは関係ない医学を勝手に学び、家に内緒で医大を受け・・・自分の夢のために西門を捨てたんだ。

そんな俺がこの場所に来ていたら驚くのは当然。
だけど、この人を味方に付けなくてはこの先の計画が上手くいかないだろう。だから、田中に頼んで会見直前に全てを話すことにしたんだ。


「お母さん、お話しがあるんです。お座りいただけませんか?」
「し、祥一郎さん・・・あなたが、何故ここに?今まで連絡すらしてこなかったのに・・・!どうしたんです?何があったの?」

「無断でこんなところにまで押し掛けて申し訳ありません。私がこれから話すのは総二郎のことです。もう今までの事はご存知でしょうが、まだ話せてないこともあるのです・・・お願いします。私の話を聞いていただけませんか?会見場には戻らないでいただきたいんです」

「何ですって?そんな事は出来ないわ!お家元の会見を直接見なくては・・・総二郎さんの正式な継承発表の会見です。私がそれを見逃すわけにはいきません!」


「総二郎は西門を継ぎません。あいつは今からそれを会見の場で自分の口で話すんですよ」

家元夫人は再び驚いて完全に動きを止めてしまった。


「申し訳ありません、驚かせて・・・私の話を聞いていただけませんか?さぁ・・・お母さん、座って下さい」

家元夫人の身体を支えるようにして手を添え、すぐ側の椅子に座らせた。
まだ何が起こったかわかっていない家元夫人は震えながら持っていたバッグを握り締めてる。
俺とは眼を合わせようとはしなかった。


「お母さん、実は総二郎と私で今日の事を決めていたのです。このように総二郎が同席する正式な会見が行われる時、西門の継承放棄を話すと・・・そして、私が西門に戻ります。今日の会見でそれを総二郎が公表するんですよ」

「何ですって・・・祥一郎さんが西門に?今更そんな事が出来ると思ってるの?!」

「西門内部で話しても取り合っていただけなかったでしょうね。だからこの場で言うのですよ。誰も止めることが出来ない状況で説明させていただきます」
「それじゃあ、今から総二郎さんは家元の横で継承放棄の話をするというの?そんなっ・・・!」

両手で自分の顔を押さえ込んで身体を屈めてしまった家元夫人・・・総二郎が言っていたように本当に小さくなってしまったんだな。俺がまだ西門にいるときにはもっと広かった背中が細くなってしまった。

親不孝な息子ばかりでごめんな・・・自分の胸の中だけでそう呟いた。


「お母さん・・・総二郎をこの家から開放していただけませんか?もう、これ以上辛い思いをさせたくないんです。あいつは逃げるようにしながらも茶の稽古をしていましたよ・・・傍につくしを置いてね。それはとても幸せそうだった。
これからはそんな風に茶道をさせてやりたいのですよ。私も医者をしながら少しは稽古をしてきました。やはり、完全に忘れることは出来なかったんです。ならば、私が戻ろうと決心したのです。どうか、私達の意見に賛成していただけませんか?」

「・・・せっかく総二郎さんがこの前のお茶会で皆様に認めていただいたばかりなのですよ?それなのに・・・こんなバカなことを!」

「バカなこと・・・そうかもしれませんが、お母さんもご自分の事でおわかりでしょう?総二郎にご自分と同じ思いをさせたいのですか?総二郎はあなたよりもっと苦しいでしょう。婚約者は兄の恋人で、自分の恋人は弟に傷つけられたのです。そんな家にこれから先の長い時間、縛り付けたいですか?そうなっても総二郎は西門で茶を点てていけなくなるでしょう。今回あいつが頑張ることが出来たのは待っている者が2人いるからです。そこに戻るためだからこそ、総二郎はこの度の茶会に西門で築いたもの全てを出したのですよ」


「待っている者が・・・2人?」

家元夫人の表情が変わった。多分察したんだろう・・・涙を浮かべた眼を俺に向けてきた。


「そうです。総二郎には男の子が産まれたんですよ・・・つくしとの子どもです。総二郎によく似た可愛い子です。その子から父親を奪うようなことはしてはいけない。今は腕の不自由なつくしが1人で育ててます。その子はね、あなた達が総二郎を拘束したその日に産まれたんですよ・・・だから、あいつはまだ自分の子どもを自分の目で見てないんです」

「・・・つくしちゃんが総二郎さんの子どもを・・・!しかもあの日に・・・それは本当なの?!」

「はい、私が担当医ですから。鎌倉を出たときにはすでに妊娠していたようです。流産しなかったのが不思議なぐらいの怪我だったんですね。偶然ですがつくしが転院してきたのが私の病院でした・・・つまり総二郎達と今年になってからずっと同じ場所にいたんです。あいつらが逃げてきた北海道に私も臨時医師として派遣されていましてね。そりゃ驚きましたよ」

花沢が間に入ったとは言えないからな。
そんな事があるのかと家元夫人は動揺していた。


「もう一つ・・・千春も全て知っています。彼女が報告したとおり偶然旭川で出会ったのです。それは本当です・・・ただ、千春が報告してないのは俺と千春が今でも愛し合っていたということを確認したということでしょう。ですから、千春は5年前と同じように私の婚約者として発表します。それも総二郎が全て話します・・・前回の婚約発表が嘘であったことも申し訳ないが会見の場で伝える事になりますね」

「千春さんまで・・・ですって?それじゃあ彼女は初めから総二郎さんのことは何とも思っていなかったの?喜んでいたんじゃないの?」

「千春のことは責めないで下さい。これは私の責任なのです・・・私が5年前、彼女からも西門からも逃げたのがこの度の事態を招いたのです。全てはこの私がいけなかったんですよ・・・お母さん」


この時、会見開始の合図が聞こえてきた。
ビクッとした家元夫人は慌ててドアの方を見たが立つことが出来なかった。持っていたバッグを膝の上から落としたがそれさえも気が付かないのかジッとドアを見つめていた。・・・その数秒後、諦めたように俯いた。


「お母さん、私はこのあと、西門の紋が入ったこの着物を着て皆の前に立ちます。どうか、その後に本邸で話し合いがされるでしょうから総二郎の味方になってやって下さい。つくしと子どもの所に総二郎を戻せるようにお力添えをお願いします」

「祥一郎さんの5年前の決心はそんなに簡単に捨てられるものだったの?それならあんなこと、しなければ良かったのではなくて?そんな人に西門を背負っていけるのかどうか・・・今の私には信じられないわ」

「その気持ちも会見でお話しします。でも、この5年間は私にとっては自分を見つめ直すいい機会でした。それ故にこの度のことも覚悟を決められたのですよ。お二人にはご心配かけましたが、有意義な5年間でした。感謝しています。その恩返しをこれからしたいと思っていますよ・・・お母さん」


下を向いたまま家元夫人はその目を開けようとしなかった。
固く閉じられた唇も僅かに震わせ、床に落としたバッグも拾うことは出来なかった。


「・・・・・・総二郎さんの子どもは元気なの?名前は?」

「早産でしたが元気にしていますよ。名前は蒼(あおい)と言います。小さい頃の総二郎にホントに似ているんです。あなたには初孫になりますね。会いたいですか?」

軽く頭を横に振った家元夫人。
それはつくしに対する思いからだろう・・・会わせてもらえないとでも思ったのかな。
つくしはそんな子じゃないけどな。俺はそれ以上は言えなかった。


「祥一郎様、左側入り口にお控えいただけますか?西門の人間は全て右側に回してあります。こちらには誰もおりませんから」

田中が少しだけドアを開けて俺に話しかけた。
もう会場では家元の挨拶が始まっていた。


*********


「皆様、本日はわたくしども西門流の今後につきましてお話しをさせていただこうと、このような席を設けました。お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。えー・・・先だって行いました会見の時は不在にしたおりましたが、わたくしの横におりますのが息子の西門総二郎でございます。本日は・・・」

家元がこう発言して会見が始まった。

目の前には先日の考の事件の事もあるからなのか、意外と多くの報道陣がカメラを構え、並んでいるマイクの数も凄かった。
記者達はノートパソコンを広げて今から話す内容を漏らすまいと必死なんだろう、鋭い眼を俺たち向けていた。

家元が俺の紹介をしようとしたとき、ここでその言葉を止める。
そこから俺たちの計画はスタートするんだ。


「・・・息子の西門総二郎でございます。本日は・・・」
「大変申し訳ございません。ここからはわたくし、西門総二郎が直接皆様にご報告したいことがございます」


俺の予定外の発言に家元が動きを止めた・・・そして唖然とした顔で俺を見ているのがわかる。
だが俺は家元の方を見なかった。


それじゃあ、始めさせてもらう・・・俺が西門流で行う最後の会見だ。



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2018/01/22 (Mon) 12:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/22 (Mon) 13:30 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/22 (Mon) 13:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

ちょっと待って!そんな読み方しなくいいですから(笑)
出来たら普通にベッドの上とか胡座かいてとか、トイレの中でとかでいいんで!
そうじゃないと私が緊張するやないですか!

これってある意味、Rシーンよりも緊張するんですよ(笑)
なんかねー、失敗が許されんって感じでしょ?
Rはさ、「この総ちゃんヘタクソー!」って思われたら、それはそれでいいんだけど(笑)
ド真剣な場面は一歩間違えたら今までのが台無しですもん・・・嫌やわーっ!

明日休もうかな(笑)連載・・・インフルかなんかで(パソコンは関係ないか)

だから流し読みでお願いします。


祥兄ちゃん・・・実はこれからも祥兄ちゃん喋りまくり(笑)
応援してやって下さい・・・この兄弟(ってすっかり考ちゃんがどっかに行ってるけど)

雪降ってます?うちは全然です。
もし、雪降ってたら車とか気をつけて下さいね!

2018/01/22 (Mon) 18:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!雨です。

えみりん様~!今晩は♥

あはは!最初何かと思いましたよ!
こりゃ長いわ!でもわかる~!!小さい文字で書いてあるサブタイトルですよね!
そうそうこんな感じでね!何処まで書いてんのーっ!って長いのありましたよね・・・懐かしいわ。

それって意外と華道の家元殺人事件とかなかったっけ・・・茶道はあんまり知らないけど華道はよくあった気がする。
あと、日本舞踊もありましたよね!踊ってる最中に毒が回って舞台で倒れるとか!

何故茶道の記憶はないんだろう・・・。華やかじゃないからか?


ここで残念なお知らせです。
そう・・・1月エンドが出来ませんでしたっ!!
エンドは2月上旬っ!!(わかってるって?)「2月の紅白梅」って感じで終りそうです!

でね、えみりん様にいただいたお名前の彼のお話が難しくて少し延びてます(でも、絶対に書く!)
ちょい待ってて下さいね!



2018/01/22 (Mon) 18:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 間違えた!

不要・・・了解しました!!・・・したけど(笑)

2018/01/22 (Mon) 18:50 | EDIT | REPLY |   

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