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plumeria

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類に電話をしたらフランスに戻るため空港にいると言った。
てっきり俺が戻るまではつくしの側にいるんだろう、そう思っていた。

祥兄も東京に戻ったからこの数日、あの別荘で二人っきりだったはず・・・それを気にしないわけはない。つくしも類も疑うわけじゃないが、あいつの想いの強さは嫌って程知っているから。
だから、俺の声だけでも聞かせてさりげない牽制をするつもりだったが、すでに名寄を出たという事実には少し驚いた。

悔しいが有り難かった・・・その気持ちに嘘はなかったから「礼を言うな」と類は言ったけど、自然とその言葉は口から出ていた。
その時のあいつの返事は本心だろうな。

『もう友人の役目はしたくない』・・・・・・悪かったよ。でも、つくしのことだけは俺も誰にも譲れねぇんだ。



その電話を切ったあと、すぐつくしに電話をした。

『もしもし、総二郎?・・・昨日はよく寝られた?』

その優しい声はいつもより沈んでいるように聞こえた。多分、類がいなくなって本当に1人きりになって寂しいんだろうな。
蒼がいるっていってもまだ話し相手にはならない。むしろ自分1人で守らなきゃいけないから余計に不安なんだろう。

「あぁ、電話が遅くなって悪かったな・・・結構遅い時間まで色んな連中に捕まってたから。祥兄の方が大変だったけどな」

『祥兄ちゃんが?どうして?・・・なにか酷いこと言われたの?』

「酷い事っていうより今までの事かな・・・5年も離れてて本当に茶道に戻れるのかとか、何が目的かとか・・・最後の方は病院でも建てたいのか、なんて言われてたけど冷静に答えてたぜ?俺の方が熱くなって怒鳴りそうだったよ」


実はあのあと、九条会長たちが引き上げてからは西門の長老や数人の分家連中が残っていて俺たち2人に集中攻撃してきた。
俺には会見の席での無断発言についてとつくしのこと。俺の話を無視して蒼を西門に連れてくるようにと話を進める連中もいて、そいつらに食って掛かった俺を祥兄が必死で止めていた。

祥兄にはこの5年間の謝罪要求と今後何をしたいかという追求。
特に医師免許を持っていながら西門に戻る祥兄を開業のための金目当てととる者もいて客間は大混乱だった。
祥兄は取り乱すこともなく、自分に開業する意思はないと繰り返すだけで、そのほかの事は素直に頭を下げて謝罪していた。

家元は頭を抱え、家元夫人は泣き崩れる中、俺たち2人は交互に自分たちの気持ちを説明するのに必死だった。


『可哀想に・・・祥兄ちゃん、大丈夫?今はどうしてるの?』

「祥兄は大丈夫だ。今朝も早くから起きて門前から茶室までの掃除とかしてたぜ?千春と一緒にな。まだ、昨日の騒動が治まってないからあの2人もそんなに話は出来てないけど、仲良く笑いながらやってるよ」

『ふふっ・・・!そうなの?良かった・・・のかな?』

祥兄が誘ったってわけでもないだろうに、千春は黙って祥兄に付き従っていた。
それをここの連中がどう見たのかはわかんねぇけどな。

俺はここを出ると宣言した以上、もう何も出来ない。
家元から指示があるまでは自室から出ないようにとの命令があっただけで、どうやら特別警備の人間たちも俺から離れたようだった。どこからか見られているようなあの気配はなくなった。


「俺は自分の心の中に溜め込んできたものは全部話してきた。後悔なんてしていない。すっきりしたよ・・・心配させてごめんな。
これからのことはまだ決まっちゃいないからわかんねぇけど、お前の所に戻れる日も遠くないと思うから・・・踏ん張ってくれよ。類がいなくなったんだろ?」

『・・・知ってるの?今日、ここを出て行ったんだよ?』

「さっき電話したら空港だって言ってた。早く帰ってやれって・・・最後に怒られたよ」


電話の向こうで蒼の泣き声が聞こえた。
なんだ、すっげぇ元気な声で泣くんだな・・・その声も蒼の顔を見ながら聞きてぇな。

「つくし、また電話するから蒼の所に行ってやれ!大泣きじゃねぇか!」
『お、お腹すいたのかな!ごめんね、総二郎、またね!』


すっかり母親になったつくしの事を頼もしく思う。
次に会ったときは・・・俺が泣いてしまわないかと心配になったよ。


*********

<side祥一郎>
思っていたとおり会見場では家元も声を荒げたり退席するなんて行動はとらなかったが、西門に戻ったらその態度を急変させた。
せっかく総二郎で立て直しが出来ると思っていた矢先に俺たちがこんな行動に出たんだ・・・無理はない。

だが、総二郎がもしこの家を継いだとしても、千春との間に子供なんて出来ないだろうし、つくしから蒼も奪うわけがない。
どちらにしてもここで跡継ぎ問題は必ず起きてくる。

そういう問題をなくすためにはもっと柔軟な考え方を取り入れないとダメなんだ。

何処か繋がりのある家から婚約者をたてるとか、ある程度の資産を持った家の娘じゃないと迎えないとか・・・そういうのじゃなくて、愛情の深い家族にならないと良い茶なんて点てられるわけがない。


5年前までの俺はそういう意味では千春が相手だったのは幸運だった。
当時ははっきりとした言葉も交わさず、恋人という関係ではなかったけど、お互いに好意は持てていたんだから。
だけど、肝心の俺の方が医学に興味を持ってしまった・・・。

素直に医者になりたいと言える親子関係じゃなかった。確かに家元というものは威厳もなくちゃいけないし、強い存在でなくてはこれだけの組織の頂点には立てないだろう。
だけど、それが家族という立場になった時には「父親」に戻って欲しかった。いつでもどんなときでも父親は「家元」であり、母親は「家元夫人」だった。

そういう所の風通しをよくしてこの家を明るくしたい。
その改革をするために俺たち兄弟はここにいるんだと信じたい。

強く厳しく、恐れられる長ではなく、これからは人間味のある暖かな長であっても良くないか?そう思うのは俺の甘さかな。
そのまだよく掴めない部分も千春と共に悩みながら変えていきたいと思っている。


「祥一郎さん、お茶が入りましたわ。今日は珍しいお菓子をいただきましたの・・・ご一緒にいかが?」

「あぁ、もらおうか・・・君もここでどう?今日は少し風があって気持ちいいよ」

後ろから声をかけてきたのは千春。小さな盆にほうじ茶を入れた湯飲みを乗せてにこやかに立っていた。
昨日の会見も会場横で真っ直ぐ俺のことを見てくれていた千春・・・全部が終って彼女もホッとしているんだろう。

まだ何も決まってはいないけどな・・・。


「千春・・・まだ総二郎にも話してないんだけど君にだけ言っておこうと思う。これは多分、君が一番気になることだろうから。この先、俺が次期家元に承認されてその立場になったとしたら・・・どうしてもしたいことがあるんだ。それに協力して欲しい」

「なんでしょう?私に出来ることですか?」


始めてこの話をしたのは、やがて妻になるだろう千春だった。
そしてこの俺の話を聞いてやはり驚いていたけど、悲しそうではなかった・・・むしろ少し笑っていた。

「どうだろう。これは俺の我儘・・・だけど夢なんだ。ダメ・・・かな?」
「ふふっ・・・!欲のない方ですこと。私の役目はなんでしょう・・・”それ”を考えなくてもよいということですか?」

「ははっ!そうだね・・・気が楽だろう?」
「はい、そうですね。楽ですわ・・・わかりました。その時は賛成致しますわ」

「・・・ありがとう。感謝するよ」



いつ頃西門が俺たちの”処分”をするのだろう。
少しでも早く総二郎をつくしの元に返してやりたくて、それを願いながら千春と夕日を眺めていた。



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2018/01/29 (Mon) 12:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~!

祥兄ちゃん、出番あるある!こんなに<side祥一郎>を書くとは思いませんでしたよ。
そして類並みに考えること!困るんですよね、頭脳戦の人を書くの・・・自分が追いつかないから。

総ちゃんみたいに突っ込んでいくタイプは書きやすいのに(笑)

この祥兄ちゃんの最後の提案・・・ここで読者さんの反感を買うんですよ、きっと・・・。

今から「plumeria、最低っ!」って声が聞こえそうで怖い(笑)
もうわかったかな?えへへ!

これを想像しながらあと少し、お付き合い下さいね!

今日はありがとうございました。

2018/01/29 (Mon) 17:20 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/30 (Tue) 10:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます(笑)

あはは!もう、朝からすごい案が飛び交っておりますが!

どうしても長崎からマスター呼びたいのね?
むっちゃ評価高いマスターですね(笑)
抹茶ラテとか作りそうじゃないですか?怒られそう~💦

私としては2番が好きですね!
「ニッシー」、じゃなくなるのが寂しいですが、なんて呼べばいいんでしょ(笑)

そう言えば会社にいたときに若い子がAAAの西島くんが大好きで、よく「ニッシー!」って
叫んでたんですよ。
その度に私だけ頭に総二郎が浮かんでおりました(笑)

冗談で「私もニッシーが好きなんだよね~♥」って言ったら「若いねぇ、お母さん!」って言われましたよ。
ニッシー違いだけどね・・・って一人で笑っておりました。

2018/01/30 (Tue) 10:36 | EDIT | REPLY |   

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