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次の日は今年になって初めての出勤日。

当然俺達を見る社員の視線は牧野に集中・・・そりゃそうだ。左右に俺と母さんが並んでるんだから。
そんな中、コックコート以外着たことない彼女が頑張ってスーツなんて着て、少し高めのヒールに蹌踉けながら危なっかしく歩いてる。だから背中に手を添えてやると真っ赤な顔して涙眼だ。

「そ、そんなに心配?大丈夫だって・・・誰も怒ったりとか喋れって言ったりしないから!あぁ、俺の方が心配で仕事が出来ない!
一緒に行こうか?牧野・・・」
「ふぇ・・・!どうしよう・・・すごく怖い~!」

「何言ってるの!類はさっさと上に行きなさい!つくしちゃんは私が連れて行きます。どうにかして自分の仕事をサボろうとするんだから!ダメよ?立場を考えなさい!・・・ほら、つくしちゃんもしっかりして!」

「・・・鬼!」
「何ですって?!」

可哀想に・・・。牧野は母さんとヘルスケア事業部のある階でエレベーターを降りて、まるで引き摺られるようにして連行・・・じゃなかった、挨拶をしに向かった。


それでもお昼になったら元気よく俺の部屋にやってきた。
どうやら思っていたより楽しそうに話せたんだろう、一緒に昼食をとりながら初出勤の感想を聞いていた。

「あのね、1人日本人の女の子がいてね、色々教えてくれたの。フランスってお菓子が高カロリーでしょ?だからヘルシー嗜好が高まってるからそういうお菓子の研究するんだって!モニターさんで検証を重ねて、上手くいったらそれを花沢系列のホテルのレストランとかでお客様に出すらしいのよ?明日からさっそく作ってみるの!楽しそうだったよ?」

「そうなの?ふふっ・・・良かった!牧野がお店を辞めるきっかけを作ったみたいなものだったから心配してたんだ。新しくやりたいことを見つけて欲しくてさ・・・自分のお店はもう少し先になりそうだもんね」

「うん、ありがとう。これもいい勉強になると思う・・・私、頑張るね!」
「ん、頑張って!でもさ、牧野の中の1番は仕事にしないで?・・・俺が働くからさ」

食事が終わったあと、役員室のソファーで牧野の肩を抱いてそんな会話をしていた。
「1番は・・・類だよ?」なんて言われると、もう我慢できなくてその唇を塞いでしまった。


********


花沢の仕事を始めて一週間。思ったより仕事内容は楽しくて会社に行くのも辛くはなかった。同僚の女の子、中村さんは優しいし、もう1人、日本人の女性で渡辺さんという主任がいて色々と教えてくれた。
今ある人工甘味料を更に開発して逆にカロリーを消費する手助けをする材料で作れないかとか、甘さ控えめでも美味しく感じる作り方とか、身体に脂肪分として残らない工夫とか・・・今まではそんなもの全然考えずに作っていたからとても新鮮。


それよりも辛いのは夜になったら始まるワルツのレッスン。
この時は類がすごく嬉しそうな顔で踊れない私の前に立つの。ホントに天使のような笑顔で・・・。

「ほら、牧野!また足が反対だよ?背筋伸ばして、足元は見ないの!顔は上げないと姿勢が悪くなるでしょ?」
「だ、だってこんなに近寄るの?身体がくっついちゃう!」

「だってくっついて踊るものだよ?仕方ないじゃん・・・相手が俺なんだから問題ないと思うんだけど」
「いや、だって・・・他の人の前で踊るんでしょ?は、恥ずかしくて・・・!」

「・・・裸で踊るんじゃないんだから。ドレス着てるよ?」
「やだっ!そんなのは当たり前でしょっ!あ~ん!難しいよぉ!足が、足が攣る!」

類はとっても優しく教えてくれるんだけど私は所詮素人、その上運動音痴、しかもリズム感なし!こんな私が類とダンスなんて拷問だわ!何度やっても上手くいかないのに全然怒らなくて、むしろ笑ってる。

「類・・・どうしてそんなに我慢強いの?私、さっきっから類の足、踏んでばっかりだよ?」
「努力してるんだから怒らないよ。何もしないなら嫌になるかもしれないけど・・・それでパーティーで足踏まれても気になんてしないよ。上手く誤魔化してあげる・・・だから安心して?」

「優しすぎると甘えちゃうよ?」
「甘えて欲しいから大歓迎!・・・よし、休憩終り!ラストにもう一回ね!」

「・・・優しくなかった」


あはは!って笑いながら手を差しだしてくれる・・・本当は誰よりも優しいんだけどね。


*********


そして花沢家が開いたパーティーの日。

表向きは新しく始めたエネルギー開発事業の記念パーティーって事になってるけど、実際は牧野を俺の恋人として披露するのが目的だ。
何かと自分の娘を売り込んでくる企業関係者にうんざりしていた母さんの策だけど、やっぱりこの日もそんな連中は多かった。


可愛らしい薄いブルーのカクテルドレスを着て髪もいつもと違ってふんわりと巻いて。
プロにメイクしてもらって凄く綺麗に仕上がった。母さんが手配したボディクリームと美容液の効果かな?肌もスベスベしてるし。

最後にダイヤとサファイヤのネックレスを俺がつけてあげて、この日のために開けたピアスホールに同じデザインのピアスを通して支度は完了!

「すごく綺麗・・・今日は俺の腕を離さないでね?」
「うん。でも、大丈夫かな・・・お、踊れるかな?転けないかな・・・ヒールが高いよ?」

「ホントにお菓子作り以外は臆病なんだね!怖くないように俺が横にいるでしょ?フォローするよ」
「絶対だよ?絶対だからね?!」

「はいはい!」

可愛く仕上がっているのにすっごい眉毛をハの字にして困っている牧野・・・それが可笑しくて思わず抱き締めてしまうよ。
そうしたら俺の腕の中で苦しそうにジタバタしてる。
こんな時間がどのくらい俺を幸せにしてるか、きっとまだわかってないんだろうね!


時間になって両親と共に会場入りしたら、想像どおり俺の腕をとっている牧野に視線は集中している。
すこし緊張しながら、それでも頑張って前を見て引き攣った笑顔を皆に向けてる。母さんもそれにはクスクス笑っていた。

挨拶なんてものは父さんの仕事。
俺は隣にいる牧野の背中を支えながら色んな取引先に彼女を紹介していった。

数人ほど会場を出て行く年頃の女性もいたけど、そんなのは無視!
暫く会場内で時間を過ごしていたら牧野も慣れてきたみたい。シャンパンをもらって飲んだり、少し料理に手をつけたりして楽しみ始めた。

「どう?落ち着いた?クスッ・・・料理が食べられるんなら大丈夫そうだね」
「うん、フランス語で話しかけられたらどうしようかと思ったけど、日本の方が多いから助かったわ。」

「向こうにケーキバイキングもあるよ。行ってみようか?」
「あはは!類は食べられないくせに!でも・・・見てみたいな!」

牧野を連れて会場の隅にあったケーキバイキングのテーブルに近づいたら・・・その足が止まった。
ケーキコーナーに入っていた長身の男。そいつを見て固まってしまった。


「アラン・・・?」

「ツクシ、久しぶりだね」


なんてことだ・・・今日のケーキバイキングは牧野がいた店が担当していたみたい。

牧野にプロポーズしたあの男が、相変わらず生意気そうな顔でそこに立っていた。
主催者側には知らせてあったのかもしれないけど、こういうことにまで目を通さない俺は何も知らなかった・・・。
でも、いかにも知っていたかのように冷静に・・・この男の前でも牧野の前でも、慌てた表情なんて見せるわけにはいかないからね。



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2018/02/04 (Sun) 12:54 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/04 (Sun) 15:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様~!今晩は♥

害なんてないない!あったら書けない・・・短編よ?短編!
7話?8話程度の短編で事件ないない!!

これはもう悪戯書きのようなふざけたお話です。
こっちはね・・・類が甘えんぼですね(笑)もう、アホか!って感じの男になっています。

総二郎はあのまま・・・かな?
まぁ、両方ともバカップルです。バカだなぁ・・・って読んでもらえたら嬉しいです!

いや、ほとんどがそうなんだけど(笑)

今日もありがとうございました!

2018/02/04 (Sun) 20:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

え?若いから・・・?
そういう考えもあり?(笑)

大丈夫・・・ただの繋ぎみたいな人だから何もおきませんよ~♥
このお話は誰が楽しいか・・・おかんですね!

私はこのおかんが好きなので遊んでみました!
14日までのんびりと読んで下さい。
かなり類が可笑しくなっていますが・・・(笑)

2018/02/04 (Sun) 20:14 | EDIT | REPLY |   

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