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パーティー会場の隅にあるケーキバイキングにはアランが立っていた。

今まで緊張しすぎて周りをよく見てなかったから、彼がここにいる事すら気が付かなかった。類を見たら平気な顔してる。
もしかしたら類は知っていたのかしら・・・そうなのかも。主催者だもの、聞いていてもおかしくないし。

あの日以来だから緊張する。でも、思い切って目の前まで行って彼に話しかけた。


「今日はまたお手伝い・・・なのね。お店、忙しい?」
「あぁ、1人減ったままだからね。それに年が明けてから父さんが倒れてさ。少し店が大変なんだ」

「えっ!オーナーが?なんで?病気?」
「まぁね、心臓が少し弱ってるらしくて入院してさ。今は自宅で寝てるよ。だからみんなで父さんの仕事を分担してるから休みもなくてね。でも、このホテルとは付き合いも長いからこうして手伝ってるんだ」

「そうなの・・・ごめんね、私が急に辞めたから・・・」
「仕方ないよ。それはツクシのせいじゃない。それより、ケーキは何にする?取りに来たんだろ?」

テーブルの上には懐かしいケーキが並んでいた。
苺のパイにティラミスのミルクレープ、ガトーショコラにアップルパイ。サバランにカラフルなマカロン、どれを見てもその味が思い出されるほど何度も試食したケーキばかり。

「やっぱりいいなぁ・・・可愛い。みんな美味しそう!」
「・・・戻ってきたらいいのに。そんなドレス着て立ってるより、コックコートの方がツクシには似合ってるんじゃない?」

ハッとしてアランの顔を見た。

以前と変わらない表情で私のことを見てる・・・その少し切なそうな瞳にドキッとしてしまった。


「嘘だよ!ホントに騙されやすいんだから。はい、今日のオススメのケーキ入れとくね。二人でどうぞ!」
「・・・アランったら!もう、びっくりした・・・でも、ありがと・・・」

可愛らしいお皿に数種類のミニケーキを載せてくれて、お揃いのフォークを2つ。


「もうすぐ日本だって?しっかり勉強していいパティシエになってね。またいつか店に来てよ。今度はお客さんでね」
「うん!そうする。必ず行くわ・・・オーナーに宜しく。お大事にね」

「あぁ、伝えておくよ。ツクシが次に来る頃には俺にも可愛い恋人が出来てると思うから。その時は自慢してやるよ、ハナザワみたいにね!」

くすっと笑ったアランは類の方にも視線を向けて、今度は少し怒ったような顔をして言葉を出した。


「ハナザワさん・・・ツクシのこと、泣かしたら許さないから。こんな世界に引っ張って行くんなら全力で守ってよ。わかってるよね?」

「もちろん。あんたに心配されなくても守っていくよ。牧野は俺の命よりも大事だからね。悪いけど牧野があの店に行くときは俺も一緒だから。フランスの男は油断出来ないからね。すぐ待ち伏せるし・・・」

「憎たらしいヤツだな!」
「お互い様だよ」

そんな会話をしながらでも最後はお互いに笑ってた。

私たちがケーキバイキングの前から移動したら、数人の女の子がそこに行ってアランに真っ赤な顔して話しかけてる。
なんだ、人気あるんじゃない!って、彼の方を見てたら類にグイッと身体を回された!

「何処見てるの?あんたは見なくていいの!」
「えっ?だってアランの周りにあれだけ女の子が寄ってるのよ?誰か恋人になればいいのにって思って」

「・・・あいつはこんな中から見つけないと思うよ?女性を見る目がちゃんとあるから」



その後に類と食べたケーキ・・・1番甘くないのもを口に入れてあげたのに、すごい顔して口を押さえてる!それでも、もう一回フォークを向けたらちゃんと食べてくれた。

今度のバレンタインはやっぱり甘くないチョコにしないといけないわね。
そんな事を考えながら残りのケーキをいただいた。



「あ、牧野、ワルツが始まったよ?せっかくだから練習の成果でも披露する?」
「え?出来たらこのまま食べていたいかも・・・」

「ダメだよ」って言われてフロア中央まで連れて行かれた。
お母様もクスクス笑いながら見てるし、他のお客様も類がいるからみんな見てくるし・・・ドキドキしながら類の手をとった。

「そんなに緊張しなくてもダンスのコンクールじゃないんだから!」
「う、うん・・・みんなの目が怖い・・・」

「そう?じゃあ余計に笑顔だけは作らなきゃ。それで結構上手に見えるもんだよ?」


でも、ほんの少し足を踏んじゃった。ほんの少し蹌踉けちゃった・・・ほんの少しだけ涙が出そう。
一生懸命笑顔を作ったけど、こんな私じゃ類が恥ずかしくないかしら。

ワルツの曲が終ったとき、どうしようって思っていたら、みんなの前なのにフワッと類に抱き締められた。

「素敵だったよ、とっても!」
「失敗してばっかりだよ?・・・やっぱり足も踏んじゃったよ?どうしてそんなに優しいこと言うの?」

「だって俺が楽しかったんだから大成功だよ!」


類はいつも私が1番嬉しい言葉をくれる。


*********


1月の最後の日、母さんが懇意にしている宝石商のオーナーが会社を訪れた。
俺が頼んでいたものが出来上がったからって。

「類様からの初めてのご注文がこのような商品とは・・・おめでたいお話しが間もなくですか?」

「これはまだ正式なものじゃなくてアニバーサリーリングなんだけどね。ちゃんとしたものは日本に帰って向こうの両親に会ってから・・・かな。でも、どうしても来月贈りたくてさ」

「え?これで正式なものじゃないんですか?えっと・・・十分に正式なもので通用するようなグレードですけど?」

中央に輝く大粒の石は牧野の誕生石のタンザナイト、その周りを守るように飾られた俺の誕生石のアクアマリン・・・これをバレンタインの時に渡したくて新年になってから急いで特注したものだ。
お揃いで作った俺のものはプラチナのリングに小さく埋め込まれた同じ石。もちろん内側には二人のイニシャルが入ってる。


でも、本当のエンゲージリングはまた別に・・・特別なダイヤを探さなきゃね。

**

2月になったら牧野は随分会社にも慣れてきて、楽しそうにその日の出来事を話してくれるようになった。新しいデザートの試作品を作ったけどイマイチだったとか、美味しく出来たけどカロリーが高すぎるとか、綺麗な色が出なかったとか。
毎晩ベッドに入ってからの数十分はその話を聞いてるんだ。

はっきり言えば全然専門外でわかんないんだけど、眠そうにしながら話す牧野の声が可愛くて・・・傍でずっと聞いていたいから黙って耳を傾けてるんだ。

片方の肘をついたまま牧野の顔を見てたら、口元まで布団を掛けてる牧野の目がだんだん閉じてくる。
あれ?・・・今日もやっぱり俺を置いて先に寝ちゃうつもり?

そんなの許さないんだけど・・・少し布団を退けて顔を覗きこんだらハッと目を開ける。

「クスッ・・・眠くなっちゃった?」
「ん・・・疲れちゃった。類・・・私ばっかりお話ししてごめんね・・・」

「いいよ。牧野の話を聞くことが楽しいから。出来たらさ、デザートの話じゃなくてデートのプランとかの話しも聞きたいけど?」
「あははっ!それは類にお任せだもん!私、フランスに詳しくないよ?住んでるところしか知らないよ?」

「じゃあ、今度旅行に行こうよ。13日からさ、モン=サン=ミシェルの方に行かない?」
「・・・普通の日?会社を休んでいいの?」


「ん、休暇とろうよ・・・・・・牧野、おいで?」

ごめんね、疲れてるのに。
でも、こんなに近くにいるのに触れずにおく事なんて出来なくて。


この日も牧野のことを離せなくて・・・抱き締めたまま朝を迎えた。



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2018/02/06 (Tue) 14:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

こちらはですね・・・「雪」で悶々としている読者様にサービスとして激甘で書いております。
あちらで悲しい気分になるとのお声をいただいいるので、これで中和していただこうかと。

そのせいでいつもより類君が甘々です。

バレンタインと言うよりも「類の我儘暴走記」と言う感じでしょうか。
こんな人が後継者だったら困るだろうなぁ・・・。

他国まで行ってバカップルしてる2人を最後まで宜しくです!

2018/02/06 (Tue) 23:14 | EDIT | REPLY |   

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