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plumeria

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バレンタインまであと一週間。副社長である母さんの執務室に出向いた。
この人は俺達には好意的、反対なんてしないだろうと思って少し暢気に構えていたんだ。


「母さん、少し話があるんだけど」

「会社では副社長です。何よ、類が社内で私に話があるだなんて珍しいわね。真面目に仕事する気にでもなったの?そうだと嬉しいけど?」

「・・・毎日真面目に仕事してるけど。そうじゃなくてさ、今月の12日から16日まで休暇とってもいい?」

「何言ってるの?そんなこと言ったら10日の土曜日から18日の日曜日まで9連休・・・そんなこと出来ると思ってるの?」
「ダメ?牧野と旅行に行きたいんだけど。どうしても無理なら12日から14日まで・・・いいだろ?休暇は3日だけだし」


この休暇でロワール地方の古城巡りをして、その後にモン=サン=ミシェルであの指輪を渡したいと思っていた。
別にあの土地になんの拘りもないけど、暫くフランスに来ないから一度は見せてあげたいし。パリのあの一郭から出たことがないらしいから、こっちにいた2年の間に行った場所が雪だらけのコルマールだけだなんて可哀想だよ。

本当はヨーロッパ一周したいくらいなのに。言ったら殴られそうだから言わないだけ。


母さんはパソコンの画面を睨みながら、すごく変な顔して俺の方を見た。

「類・・・ちゃんと自分のスケジュール確認してないでしょ?」
「は?スケジュール・・・あんまり見ないけど。基本この社内から出ないから見る必要ないし」


「あなた、12日から16日まで、ニースで観光施設新築の現地視察と会議でパリにいないみたいだけど?」

「・・・・・・えっ?」

うっそ!!
慌てて母さんのパソコンの画面を覗き込んだ!

そしてそこに書いてあるのは確かに俺の出張予定・・・嫌がらせのように12日から16日?ド真ん中がバレンタインじゃん!

「いつ誰が決めたの?こんなの俺、知らないけど?」
「でもここに電子サインが入ってるわよ?RUI HANAZAWA・・・どう見てもあなたのサインでしょ?」

全然記憶にないんだけど!!
でも、このサインの日付は12月22日・・・クリスマス前の地獄のような日の時だ!
牧野の事が気にになって仕事が全然手につかなかったとき・・・そんな時にこんなもの出されてたの?

「そんなもの他の誰かに行かせてよ!こんな重大なイベントのあるときに会議なんて入れる?普通入れないよね?」
「何考えてるのかと思えばバレンタインのこと?はぁ、情けない!呆れちゃうわ・・・」

「母さんに呆れられてもいいんだけどそこは外せないから。会議こそ俺じゃなくてもいいんじゃないの?他にいくらでも適任者はいるでしょ?バレンタインには当事者がいないと成り立たないんだよ?」
「お父様からの指示です!少しでもこういう経験を積まないと日本に帰ってから馬鹿にされるわよ?それじゃなくても、あなた、ぽやっとして見えるんだから!」

なんて言い方。確かに仕事中に真面目な顔してる時は大抵眠いんだけど。


「じゃあ牧野に休暇くれない?ニースに連れて行くから」
「・・・なんですって?」


いくら母さんが睨んだって絶対に引き下がらないからね!


*********


<ヘルスケア事業部>

「牧野さん、来週なんだけど研修に行って欲しいんだけどいいかな?」
「研修、ですか?」

そう話しかけてきたのはヘルスケア事業部で私の上司にあたる渡辺さん。
日本人の女性でとっても綺麗で気さくな人だった。初日から私のお世話をしてくれて、なんでも仕事の相談が出来て頼りになる先輩・・・私もこんなキャリアウーマンになってみたいって思うような人だった。

「そうなの。あなたは花沢副社長からお預かりしてるから副社長の許可はいただかないといけないけどね。このシェルブールで開催されるデザートのコンテストを是非見学してみたらいいと思うの。
あなたは日本に帰ったらケーキ職人になるんでしょう?日本の味覚とは違うけど、こういうのはヨーロッパの方が盛んだから勉強になると思うわ。どう?行ってみない?」

「はいっ、行きます!で、いつですか?」

「えっとね、14日と15日だわ。前の日から行くことも出来るから花沢家の方と相談してね?」
「えっ?・・・あ、はい、わかりました」

「じゃあ、見学って事で申し込んでおくわね。ちなみにうちからも数名が参加するの。それのお手伝いもしてね?」


14日と15日は類に旅行行こうって誘われた日だわ・・・どうしよう。でも、類ならお仕事優先って言うよね?
バレンタインのチョコレート、帰ってからでも類はきっと怒らないよね?

こっちでのデザートのコンテスト。
製菓学校の時に一度みんなで挑戦したけど全然ダメだった。あの時は会場をゆっくり見ることが出来なかったから、今度はちゃんと見てみたい。
試食も出来るし、有名なパティシエやショコラティエも来るはず。類には悪いんだけどちょっとワクワクしちゃうっ!

今日帰ったらすぐに相談しなくちゃ!


**

<その日の花沢邸>

「今、なんて言ったの?牧野・・・」
「だからね?14日と15日にシェルブールで開催されるデザートのコンテストのお手伝いに行くことにしたの。今日、渡辺さんからそのお話しをいただいて、すぐに行きますって返事しちゃった。いいよね?類・・・あの、旅行はまた今度行かない?」

牧野がその話をしたのは母さんと3人での夕食の時。
マジで?・・・牧野は俺に相談する前に返事しちゃったの?俺の方が先に予約してたよね?

「どうしても行きたいの?それって春までには他でやらないの?なんで、すぐに返事しちゃったの?」
「え?いけなかったの?だって、お仕事だよ?それにすごく有名な人も来るし、お勉強にもなるし・・・試食も出来るし。ダメだったの?新入社員の私がお休みとる方が本当はおかしいよね?・・・違う?」

「ダメじゃないけど、だってその日は俺と・・・」
「ごめんさない。類との旅行はすごく行きたいのよ?でも、そのかわりチョコは絶対に美味しいもの作ってプレゼントするね!約束する!ちょっと日にちはズレちゃうけど・・・類、ダメ?」


そんなに可愛い顔して「ダメ?」って言われたらダメだなんて言えない・・・。

プッ!って笑ったのは母さん・・・ジロッと睨んだら口を塞いで笑いを堪えてる。
そうだろうね。俺だけがこんなに必死になってて笑えるんだろうね。


「お母様・・・どうかしたんですか?」
「ううん!何でもないの。男の必死な姿って見てたら面白いなぁって思って!」


なんとでも言えよ!
何とかして牧野の出張を止める方法・・・何処かにないかな。それに俺の出張の話もまだ伝えてないのに。


さすがにこの日は牧野の寝言を聞く余裕はなかった・・・。



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2018/02/08 (Thu) 12:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あっはは!!このお母さんも好きなんです。

おそらくですが、この類君はすでに心が日本に戻っていて仕事する気が5%ぐらいしかないんだと思います。
で、行ったら最後、現地で事件でも起こしてしばらく帰らないつもりだったのではないでしょうか。

ただ、その前につくしちゃんに爆弾落とされたって感じ?
類よりデザート・・・それでこそ真の職人ですね!(笑)

こんな類君ですからクドいようですが、あのシーンはございません。
ポヤッとしてますから。

ぷぷぷ!

2018/02/08 (Thu) 20:54 | EDIT | REPLY |   

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